話題≠主題

語研の春期講習会のレジュメ完成。
ELEC同友会の教科書著者ワークショップと並行なので、今、どちらの内容をやっているのか混乱しないように気をつけないと。
さて、桐原書店、Provison English Writingの英文で気になるところを今日は取り上げておく。
第28課 エコシステムを守ろう (pp.28-29)。p.28ではStudy Pointsとしてパラグラフの構成が導入されている。

  • 導入=これから書こうとする内容を提示する
  • 本論=前のパラグラフの内容について、具体的な例をあげて説明する。thus, in the first place, for example などの連結語句を有効に使う。
  • 結び=自分が伝えたい内容を簡潔にまとめる。

という説明があり、これを受けて、p.29で Writing Guidesが示される。

  • 1. 最初のパラグラフで問題を提示する。
  • 2. 次のパラグラフで問題点を具体的に示し、例をあげて発展させる。
  • 3. 最後に、結論をin summary, in conclusionなどの語句を使って書く。

これはこれで、まあ、もっともなことを述べている。問題は、この1,2,3に即した英文の方である。

  • 1. Forests play a vital role in our lives. They not only provide us with timber and fuel, but also support a great variety of animals and plants.
  • 2. However, they are vanishing at the rate of twenty million hectares every year. The situation is particularly serious in those countries which have a wide area of rainforests.
  • 3. In conclusion, it is vital that we take action immediately. For instance, rich countries should make efforts to reduce imports of timber from threatened areas.

この英文は、上述の、1,2,3に合致しているだろうか?
1. は単なる状況説明としての事実の提示であって、何も問題点を示していない。第1文のvitalという主観的形容詞が読者に対して説明責任のある部分だが、それは第2文で示されていると考えられる。
2. で問題となりうる状況が提示される。唯一、読者とのギャップができるとすれば、2文目の seriousという形容詞。ここで読者は、その状況がいかにseriousなのか、twenty million hectaresがどのくらいの面積なのか、というようなサポートの記述を予想するのではないだろうか。
3. では、その予想に反して、in conclusionと急転直下で結論が示されるのだが、ここでの it is vital that we take action immediately.は余りにも唐突。なぜなら、この主張は、1,2の中で全く示されていないからである。さらに、結論部分で、例示をしているようではそれ以前の本論が機能していないことを物語っている。

このWriting Guidesは「ガイド=案内人」として機能しているだろうか。結局、この文章の「主題」が何なのか、どのような目的で、誰に対して語るのか、が全く見えてこない。話題つながりならなんでも文章になるわけではないのである。高校生が書く英文を考えるなら、例えば次のような文章をモデルとしてはどうなのだろう。

  • It is vital that we preserve forests. Forests play a vital role in our lives. They not only provide us with timber and fuel, but also support a great variety of animals and plants. In fact, they are vanishing at the rate of twenty million hectares every year. The situation is particularly serious in those countries which have a wide area of rainforests. We have to hand down the great supporter for life to the following generations. (77 words)

「実践的コミュニケーション能力」の養成を標榜するということは、ただ、カタログとして文章の構成やつなぎ語を示すことではないはずである。