Can it really be so?

先日、突然O先生からメールがあり、「確率を表す副詞の%スケール」を示した文献を知らないか?とのお尋ね。
Possibly / likely / probably / certainlyなどの副詞がそれぞれどのくらいの確率を表すか、ということである。
ちょうど、中間テストで難儀していたときだったので、少し時間をもらって、書棚にある文献などを調べたが、海外の書籍には%スケールは見あたらなかった。日本の英語学習書、参考書、文法書ではいろんな人がいろんなことをいっているので、理科系の学術誌に掲載された論文をデータベースとしたコーパスに基づく、鈴木英次著(1999年)『科学英語のセンスを磨く オリジナルペーパーに見られる表現』(化学同人)から、関連する部分を抜粋して回答した。この種の副詞は、話者の心的態度の違い、共起する助動詞や更なる副詞、疑問文・否定文でのテストなど、一直線のスケールには乗せられない要素が多分に含まれるのではないかという感触がある。しかしながら学習者の心理(裏返せば教師の心理)からいえばやはり単純化して整理できた方が都合がいいわけだ。
その他の話者の確信を表す副詞にも同様のことが言えるかと思う。
『ジーニアス英和』のスタッフも参考にしていたという、The Columbia Guide to Standard American English (1993), Columbia University Pressでは、
doubtless(ly) < no doubt < undoubtedly = without doubt < unquestionably
という関係を示してはいたが、%のスケールは用いていない。パラフレーズでも、probably, certainly, absolutelyという大きな枠の中でのものを示しているのみ。個人的感触としても、大まかな序列は示せるが、%で明示するのは難しかろうと思う。あくまでも目安としてとらえるべきだろう。ということで、上述の鈴木(1999)を参考に序列のみを示しておく。

  • most certainly
  • certainly
  • surely
  • most probably = very probably
  • probably = presumably = most likely = more than likely = more likely = very likely = quite likely
  • likely
  • perhaps = maybe
  • possibly

私の世代は、さだまさし『関白宣言』の歌詞などを引き合いに出して、話者の心的態度を考えさせられるだろうが、今の世代はどんなものさしをもっているのか。西武ライオンズの松坂大輔投手の名言、「自信から確信に変わりました」などのように、異なるレベルのことばをリズムや雰囲気で同じスケールでとらえているのであれば、指導は結構大変かも知れない。
たとえば、今日の標題の疑問文における can を「強い疑い」というのはmisleadingである、ということがなかなか理解されない。canであれば、可能性が0%以外のプラスの領域にあり、cannotは可能性は0%。そもそも、0かそうでないかを問う疑問文なので、強く感じるだけであろう。可能性の助動詞でも、may が may or may not と言えるのとは対照的である。そう考えると、(法)助動詞も、確信・可能性を表すスケールで一列に扱うのは慎重になった方がいいわけである。きれいに説明するだけでは教室の指導は完結しない。