松尾レミは梶芽衣子に声が似ている

過去2回のエントリーで、センター試験の「不要文選択」問題を取り上げ、「英語学習」にどう活かすか、を書いてきました。

この出題が始まった2014 年の下線部の引き方には、稚拙なものも見られました。

Odd Ones Out あるいは The best is yet to come.
http://tmrowing.hatenablog.com/entry/20140119

そこから出題を重ねて早5年。ある程度の水準で「つながり」と「まとまり」の理解を問うことには成功していると思います。

しかしながら、2016年の追試、第3問Bの3番の「英文」は看過できないものだったので、この素材文を取り上げて、この「不要文選択」問題の解説に一区切りつけようと思います。「追試」の問題は、新しい出題形式の「観測気球」としての位置づけでやり過ごしてはいけない、きちんと批評すべきである、と再認識させられた次第です。

まずは、当該の素材文です。

People can show courage in dangerous situations.
For example, someone pulling an injured person out of a crashed car after an accident is considered brave.
However, people do not need to be in dangerous situations to show courage; they can do it in any type of situation.
I will give you the example of my friend Sophie.

  • (1) Even though she was afraid of flying, she boarded a plane for the first time to see her parents.
  • (2) She knew that her parents had never flown even though they were not afraid of flying.
  • (3) Her fear was based on her belief that such a big and heavy machine should not be able to fly in the air.
  • (4) Before getting on the plane, she was shaking with fear, but she overcame that feeling.

I think that Sophie getting on the plane was as courageous as someone taking a risk to help at the scene of a traffic accident.

私の手書きノートの、記号づけをする前の段階のものをこちらに載せておきます。


[file:tmrowing:2016_SP_3B3_org.jpg]

第1文。People / situationsと無冠詞・複数形名詞で一般論での導入です。

  • People can show courage in dangerous situations.

とじカッコを横綱の助動詞 canの左に付けていますか? Showという現在時制での事実や断定ではなく、can show と「可能性」を表しています。Canの可能性はmay nor may notの「そうかも知れないし、そうかもしれない;表裏一体」 とは違います。肯定のcanは「ないことはない」と常に、プラスの可能性であることに注意しましょう。

「人はだれでも危険な場面では勇気を示すことができる;勇気を示すことがある」

第2文の冒頭は、

  • For example,

とありますが、「たとえば」という日本語に置き換えて分かったつもりになるのは危険です。確かに「例示」の目印なのですが、これは、第1文での何を具体化しているのでしょうか?

「読み手の誰でも危険と分かる状況」が取り上げられ、「ごく普通の人が、その危険を顧みず行動をする」ことを「勇気を示す」例とするのではないか、と考えられるでしょう。

  • someone pulling an injured person out of a crashed car after an accident is considered brave.

この文を左から右へと一読で(私の授業であれば「L板のスライド」)理解できましたか?

someoneが主語で、四角化で pullingを見たところで下線延長の後置修飾で「引っ張る人」です。では、「いつ何をどのように引っ張るのか?」が、先程の予想に合致するか読み進めます。ここでも四角化が大事です。
“pull(ing) an injured person out of a crashed car” で四角化されるのは、an の目印で単数形の名詞を探してperson、 aの目印から単数形の名詞を探して car、少なくとも、四角化ができる人は、「pull 人 out of 車」という理解ができる筈ですから、それをsomeoneの下線延長に当てはめておきます。「車から人を引っ張り出す誰か」となります。このように、手がかりを作って分かったところ、見えたところまでを振り返って眺め直すことは大事なのです。
では、after以降の「どどいつ」や、今飛ばして読んできた、injuredやcrashed では当然、「危険」に関わる情報が述べられていることになりませんか?

injuredは本来、「負傷させる;怪我をさせる」という意味の動詞 injureの-ed/en形由来で「負傷した;怪我をした」という意味の形容詞。crashedは「グシャッという大きな音がするように激しくぶつかり原形をとどめない」という意味の動詞crashの –ed/en形由来の形容詞で「衝突してつぶれた;壊れた」という意味です。何をどうしたら、自動車は「つぶれて原形をとどめない」状態になるか? “after an accident” 「交通事故の後で」ですね。ここまで、気の遠くなるくらい長い下線がsomeoneから延長していました。

その後に続く、is considered braveは「be動詞、時制が決まればとじカッコ」という合言葉でしたから、主語は単数形の名詞。英語が苦手な人も、もう直前の accidentが主語だとは思いませんねよ?someoneが主語ですから、is が小結の助動詞で、受け身。付き人はconsiderの-ed/en形で considered、「どのような人だと考えられるのか?」にあたる評価や描写の形容詞がbraveですから、「…な誰かはbraveだと考えられます」という具体化・個別化ができたことになります。受け身(受動態)ではなく、元の形(能動態)であれば、”You + consider + …な誰か +(to be/as) brave.”となっているところです。

ここまでが主題の提示でしょうか?
第3文の「つなぎ語」がHowever で譲歩・対照ですから、

  • A However, B

という大きな流れで見れば、Bの方に重点、焦点があることになります。

  • People do not need to be in dangerous situations to show courage;

「人は勇気を示すのに、必ずしも危険な場面にいる必要はない」

なんと、筆者は自分で、「火事場では人は勇気を出せるものだよ」と話題を振っておいて、「卓袱台返し」がきました。

“do not need to 原形” は「…する/…である必要はない」という「不必要;必然性はない」という表現です。“don’t have to原形” を既に知っている人はそれとほぼ同じ意味だと思っていいでしょう。
“to show courage” は、直前の situationsからの下線延長ではなく、「目的を表す『どどいつ』」のto 原形で「…するために」という意味です。

「卓袱台返し」のままでは、主題が提示されないまま、話が終わりますから、次の;(セミコロン)に着目して下さい。
「否定があれば、それに取って代わる肯定のサポートを続ける」という英語の流儀で、このセミコロンのあとで、「じゃあ、勇気を示す場面ってどんなものなのか?」が示される合図です。

  • they can do it in any type of situation.

「人は、どんなタイプ(類型)の場面でも、それができる」
とあります。ここでの、do it (=それをする)というのは、show courageを、typeというのは、「類型」で、「危険な」とか「安全な」などと、場面に貼る「ラベル」のことと考えればいいでしょう。「火事場だけではなく、どんな場面でも勇気は出せるもの」「どんなときでも発揮できる勇気」という主題が提示されたことになります。余白に「槇原敬之」「マッキー!」とかメモをしておくといいかもしれません。

こうして読んでくると、次に筆者が述べるのは、「恐怖を感じるとか、危険が迫っているということがない場面で、勇気を発揮できた例」であろうと予想できます。

で下線部に入る前の第4文。

  • I will give you the example of my friend Sophie.

「私の友人であるソフィーの、その例をここで示そうと思います」
the example というのは、他でもない、

  • 火事場だけではない、どんな場面でも勇気を発揮できた典型例

だということです。
横綱の助動詞willは「その場のその気」、付き人で原形になっている動詞 giveは「キャッチボールをする」動詞ですから、先にキャッチャー役のyouが座っていて構えているので、ボールの働きをする、the exampleを投げ込める、という並べ方です。意味順とそのスロットの役割との両方を覚えていきましょう。

では下線部1へ。

  • (1) Even though she was afraid of flying, she boarded a plane for the first time to see her parents.

ギャップを埋めるevenがついた譲歩の接続詞even thoughに続いて前提が示され、切れ目があって、メインの主語+動詞へと続きます。
Even though A, B を(×)「けれども(しかしながら)AでありB」と読むのは大間違いです。
(○) Even though A, B. で 「Aではあるけれども、それでもB」という意味のつながりであることに注意して下さい。
「どどいつ」の働きをする接続詞の仲間は「ホワイトボードシリーズ」の、「副詞節マッチアップ」で集中的に扱いました。

“she was afraid of flying” で「ソフィーは飛行機で飛ぶ(=飛行機に乗る)のが怖かった」という「事実」が述べられ、そういう人が普通とるであろう、言動やその心理とはギャップのある言動や心理が、メインの主語+動詞で述べられます。 “she boarded a plane for the first time” 「彼女は初めて搭乗した」と、淡々とした過去形の事実で “board = to get on a plane” と書かれています。この「初挑戦」が「勇気を示す行為」の一例、ということなのでしょうか?状況をもう少し知りたいものですが、この後には、 “to see her parents (=両親に会うために)” としか書かれていません。

下線部2はどうでしょう?

  • (2) She knew that her parents had never flown even though they were not afraid of flying.

「彼女は、両親は飛行機が怖くはないのだが、それでも今まで一度も飛行機に乗ったことがないと知っていた」

とあります。
ワニ使い動詞のknowの過去形 knewは「知っていた;分かっていた」という状態であって、「気がついた」という変化ではないので注意して下さい。that以下のワニの腸内環境は大丈夫ですか?「○ンコ漏らすな、○ロ吐くな」が合言葉でしたね。今度は、C even though D で、「Cでした、確かにDではあるんですけど」という「怖くないなら乗ればいいのに、未体験」ということです。ここでの、ソフィーの両親の例は、「どんなときでも発揮できるソフィーの勇気」の例でしょうか?ソフィーの例でもないし、そもそも勇気が発揮されていませんね。

では、下線部3。

  • (3) Her fear was based on her belief that such a big and heavy machine should not be able to fly in the air.

「彼女の恐怖は、彼女の『こんなに大きくて重たい機械が空を飛べるわけがない』という思い込みに基づいていた」

“her fear” はどこから出てきたのでしょうか?下線部1の “she was afraid of flying” ですから、つながりましたね。
“A is based on B(= AはBに基づく;BがあるからAがある” で「恐怖の原因」を述べています。
“her belief that 主語+動詞” のthatは「同格」を表すものですが、それよりも、

  • she believed that such a big and heavy machine should not ….

という文を名詞化したものだと考える方が後々のためになると思います。

believe that 節でのbelieveは「…であると強く思う;…だ、と考える」という意味であって、日本語の「信ずる」という表現とは完全には重ならないので注意が必要です。エッセイだけでなく、日常でも “I strongly believe that ….” で、「私は…だと思います」、と自分の意見を取り立てて述べることはよくあります。SNSのtwitterの検索窓に、“I strongly believe that” を引用符ごと入れて見ると、たくさん出てくるのではないかな、と思います。

“such a big and heavy machine” のandのペアは、どちらも簡単な形容詞ですから問題ないと思いますが、もし、such a 1 and 2 machine で、1か2のどちらかが分からない語の場合は、「旅客機を形容するのだから…」と、どちらかを頼りに推測することは可能です。でも、1も2も分からないと苦戦を強いられますから、語彙は豊富にあるに越したことはありません。
横綱の助動詞 should は「(強い)推量」で「…のはずである」という意味。ここでは、否定で、さらに付き人には “be able to原形”がきているので、「できる筈がない」となります。あくまでも「主観」です。

最後の下線部4。

  • (4) Before getting on the plane, she was shaking with fear, but she overcame that feeling.

「搭乗前にソフィーは恐怖で震えていたが、彼女はその感情を乗り越えた」

「ソフィーの勇気を示した一例」であることは分かりますよね?
Beforeはここでは前置詞扱いで、get on the plane(飛行機に乗る;搭乗する)のgetは動名詞(=ワニ)に形合わせ。
“she was shaking with fear” の前置詞 withは感情や身体反応の原因を表すもの。「怖くて震えていた」ということです。乗る前は怖かったんですよ。
“but she overcame that feeling” のbutの逆接、対照は大丈夫ですね?
動詞overcome が分からないと、このbutの対照を手がかりに推測するしかありません。「ソフィーは乗る前は怖かったけれど、その感情を…した」の空所には何が入るでしょうか?
“overcome” は動詞で文字通り「乗り越える;克服する」です。

そして、文章(段落)の締めくくりの一文。

  • I think that Sophie getting on the plane was as courageous as someone taking a risk to help at the scene of a traffic accident.

「私は、飛行機に乗ったソフィーは、交通事故現場で救助のために危険をかえりみなかった人に負けず劣らず勇気があったと思うのです」

筆者の主観、個人的見解です。筆者の友人の例で主題を支持していましたから、その伏線を回収するところ。
ワニ使い動詞のthink に続く、that節は、腸内環境を丁寧に見ていく必要があります。
“Sophie was as courageous as someone.” で、A was as 形容詞 as Bという、大まかな構造をつかめる人は、既に結構英語は読めるようになっている人でしょう。

  • A = Sophie getting on the plane
  • B = someone taking a risk to help at the scene of a traffic accident

のように、構造を捉まえる場合に、気になるのは、Sophieという固有名詞に続くgetting on the planeと、不特定の代名詞であるsomeoneに続く taking a risk をどのように扱うか、また同列に扱っていいものか?という部分ですね。

A であれば、意味上の主語つき動名詞として、「ソフィーが飛行機に乗ること (または「乗ったこと」」と考えるか、gettingを後置修飾と見て、「ソフィーという同一人物、ひとりの人間を指しているが、その一人の中でも、場面によって異なる特質が現れている」ことを表現している、とでも考えるしかないでしょう。
もし後者の解釈に立つなら、

  • 飛行機に乗るという勇気を出したソフィーとそうではないソフィーがいる

ということになりますね。

Bも、意味上の主語つき動名詞と考えるか、後置修飾と考えるか。

代名詞が格変化を示してくれていれば、動名詞の意味上の主語は分かりやすいことが多いのですが、主語の位置に、意味上の主語つきの動名詞のかたまりが来る時は、意味上の主語でも目的格にはならないので、やはり、可能性をひとつひとつ確認するしかないでしょう。

As 形容詞 as は「同等比較」と言われることもあるので、誤解を生じやすいのですが、「負けず劣らず」というよりも、「まさるとも劣らない」という日本語表現の方がぴったり来ることが多いです。
“take a risk to原形” は「危険を冒す;覚悟して…する」という意味の表現で、of –ingが続くことが多いのですが、ここでは to原形が来ていますので、このto helpは「目的」または「結果」と読むのがいいように思います。
“at the scene” の atは「直面」を表す前置詞で、「交通事故現場に直面して」ということです。

さて、こうして、ちょっと違和感、引っ掛かりを感じながらも、最後まで読み進めて来ました。えっ?違和感はなかった?そうですか?

私の手書きノートの、記号付けをしたものをこちらに貼ります。


[file:tmrowing:2016_SP_3B3.jpg]

完成英文を通してみるとこうなります。

People can show courage in dangerous situations. For example, someone pulling an injured person out of a crashed car after an accident is considered brave. However, people do not need to be in dangerous situations to show courage; they can do it in any type of situation. I will give you the example of my friend Sophie. Even though she was afraid of flying, she boarded a plane for the first time to see her parents. Her fear was based on her belief that such a big and heavy machine should not be able to fly in the air. Before getting on the plane, she was shaking with fear, but she overcame that feeling. I think that Sophie getting on the plane was as courageous as someone taking a risk to help at the scene of a traffic accident.
(139 words)

ここで、キーワードとなっていた、いくつかの語義を整理しておきましょう。
定義は全て、米国の教育界で定評のあるWorld Book Dictionaryのもの、和訳は私のものです。

  • courage = bravery; meeting danger without fear(勇敢さ;恐れを持たず危険に直面する)
  • dangerous = likely to cause harm; not safe; risky(害を及ぼす可能性のある;安全ではない;危険を伴った)
  • brave = without fear; having courage; showing courage(恐れを持たない;勇気を持った;勇気を示すような)

同じ意味の核を共有していることがわかりますね。

この定義の中で、たびたび出てくる、名詞 ”fear” の語義は大丈夫ですか?

  • fear = the emotion or condition of being afraid; feeling that danger or evil is near(不安な感情またはその状況;危険や邪悪さが近くに存在するという感情)


私の違和感は、これら、冒頭の下線部に入る前に読み取ったキーワードと、下線部1での「飛行機に乗るのが怖いソフィー」というエピソードに起因していました。
先程、示した「定義」を見て下さい。
ソフィーが「飛行機が怖い」理由は、「そんな大きくて重い機械が飛べるわけないでしょ!」という思い込みであったことが書かれていました。
なぜ、「飛べるわけがない乗り物に乗るのが怖いのか」といえば、それは、「飛べないと事故になる(可能性がある)」ということで、「そこに潜在的な危険を感じるから、危険がすぐそこに迫っていると思い込むから」ではありませんか?

少なくともソフィーにとっては、「飛行機に乗ること」は、

  • potential danger; potentially dangerous

なのであって、彼女にとっては、 “risky” な行為、 “an act of taking a risk” だったはずです。

これは、冒頭で筆者のあげた、「人が勇気を示す場面」で、

  • in dangerous situations である必要はない
  • in any type of situationでもできる

をサポートするのに、最適な例だと言えるでしょうか?

確かに、筆者は “any”と言っていますので、そこに、dangerousな状況が含まれていても、「嘘」ではありませんし、 “do not need to be in …” で「不必要」とだけ言っていたわけですから、dangerousな状況にあっても、「嘘」をついたことにはなりません。

しかしながら、However でコントラストを作り、セミコロンで焦点化してまで示した、

  • People can show courage in any type of situation.

という主題を支持するのですから、もう少し、any type of situationsの例を選んだ方が良かったのではないかと思うわけです。

「こういう場面で、○○したとしても、死ぬかも知れないとか、大けがするかも知れない、とか、もう生きていけない、とかそういうことはないでしょ、そんなときに、あなたが思い切って○○する、それも立派に勇気を示すことになるんですよ」
という例は、日常の色々な場面に潜んでいて、何かの拍子に顔を覗かせると思うのです。

電車に乗っていて、困った人に席を譲るとか、dangerous situationsではなく、an embarrassing situation でのちょっとした勇気の一例など、any を具体化できる、他の事例、ネタはいくつもあっただろうに、と思わざるを得ません。今回の素材文は、通して読み返したり、繰り返し復習する、教育的意義をあまり感じませんでした。

ということで、この文章の反省点は、最大のキーワードである、“courage” の語義の吟味の甘さにあったのでは、という指摘をして解説を終わろうと思います。

本日のBGM: 吹き抜く風のように(GLIM SPANKY)

※追記:2023年3月13日 画像リンク等修正