紋切り型を超えて(その4)

『英語展望 2005年夏号』(ELEC)が届いた。『展望』は派手さはないが、堅実な論考を紹介している、おそらく英語教師・英語教育関係者しか読者がいないであろうと思われる雑誌である。残念ながら最近は年1回の発行になっている。ELEC賞受賞論文の掲載もある。
今回の特集タイトルは「変わろう英語教師、変えよう英語教育」。紋切り型の最たるものか。
特集記事12本のうち、対談が1本、座談会が1本。さらに、講演の再録が1本。
対談は鳥飼久美子氏(立教大学)、金谷憲氏(東京学芸大学)による「教師の役割、生徒の可能性」。p.5にある鳥飼氏の発言で、「高3全員がスピーチをするため、ALTの先生に原稿を見てもらうことで英語でのやりとりが生まれるという。否応なく一人一人がinteractionをすることになる。そういう接触は自然ですばらしいと思います」と紹介しているのはSELHiでの実践である。本当にそのinteractionは「自然」だろうか?
p.7での金谷氏の提言、「具体的にあらゆる手段方策を使って教師の仕事をやりやすくしてあげることはできないか。それが本当の応援で、英語教育のためにぜひ、必要なことだと思うのです。」は正論。しかし、氏が座長を務める「ELEC英語教育政策提言」にはこのような英語教師をサポートする具体的提言は残念ながら含まれていない。
興味深かったのは、小泉仁氏(近畿大学)による「みんなで考える英語教育、教師が創る英語授業」(pp.40-45)。「読者としての英語教師」にこの小泉氏の応援歌が響いてくれることを願う。

一般の書店に並ぶことはほとんどない雑誌なので、お読みになりたい方は直接、財団法人英語教育協議会出版部(03-3219-5221)まで問い合わせるのが良いのでは?(電話番号はくれぐれもお間違えなきよう)
ELEC同友会英語教育学会に入会されるという手もありますよ。左のアンテナからどうぞ!