論理と表現

前回のエントリーではセンター試験の第3問の「不要文選択」を取り上げていましたが、最近の出題では、まだ解説をしていなかった、現在のセンター試験の筆記では、第3問のCで出題されている「ディスカッションもどき」問題を取り上げておきましょう。

この出題そのものは比較的古くから出題されていますが、この出題に関しては、このブログでも随分しつこく「ダメ出し」をしてきました。

まずは、この出題に初めて言及した11年前。

http://tmrowing.hatenablog.com/entry/20071121
センター試験の「議論の司会者が要約する」読解問題と同じ視点で分析できるから、そのつもりで。もっとも、センター試験の出題では、なぜディスカッションなのに、リスニングでやらずに読解問題でやっているのか?

そして、6年前。

http://tmrowing.hatenablog.com/entry/20120116
まず、登場人物は4人だけれど、設問が3カ所しかないので、通常は持論を展開するのは3人。司会者がいた場合に、「議題」を整理し、参加者には何が求められているか、というセッティングをするためには、議論の冒頭で5,6行分くらいの英語をつらつらと喋る必要があるかもしれないので、そこは目をつぶる。
議題が明確になったところで、参加者が意見を述べるとして、通常は、

  • 賛成
  • 反対
  • 条件付きで賛成
  • 条件付きで反対
  • 態度保留

くらいのスタンスが考えられる。最後の態度保留は、まとめたり言い換えたりするのが難しいから、稀。議題の条件設定の根底からひっくり返す「そもそも」論はまずない。とすれば、だいたい、上記の4つ目までがどのように出てくるか注意して読んで行けばよい。
ところが、センター試験ではいきなり、長文で意見をぶち上げる人が出てくるので、心の準備を。
演説じゃないのだから、自分の意見を切り出したり、質問したり、という「自然な」議論のオープニングでは、一人が5,6行分、50語とか80語とかもまくし立てることはまずない。そんなに長いこと喋られても、最初に何を言っていたか忘れてしまうこともあるので、必ず、発言内容の確認で綱引き、キャッチボールが必要になる。発言内容をまとめる際に、

  • こういう理解でOKか?

というやりとりがある。しかも通常は、このやりとり一回でお互いの摺り合わせが終わることは稀。
Aさんの意見に、Bさんが同意したとしても、それ以外の人がどう感じているのかは、聞いてみないとわからない。そこが、司会者の役割。でも、たいていの場合、「言い換え」たり、「要約」したりしたあと、そのオリジナルの発言をした人は、それに「同意する」形で、きわめて都合良く議論は進んでいく。

  • いや、そうは言っていない。私の意図は△△。

という綱引きの末、

  • ああ、なるほどね。私は○○というところだけを考えてしまったわけだ。××という条件を踏まえれば、△△という結論になるね。

などという落ち着き先をみることはセンター試験では稀。
最初に確認した、4つのスタンスは明確だけれど、自分の意見に対するまとめやコメントに対して、反論したり、修正を求めたりはしない。
という、「センターならでは」のお約束に慣れておかないと、英語の運用力があればあるほど、不自然さが鼻について解答に集中できなくなる。

それ以外にも、何回か取り上げていますが、現在のセンター試験では、

  • リスニングでも意見を交わして、議論する出題がなされるようになった。
  • 筆記では、議論の登場人物が倍増した。

という特筆すべき変化が起こりました。歓迎すべきことではあるでしょう。
その登場人物倍増で話題となった、2017年の本試験に続く、2017年追試験では、さらなる形式の変化が見られました。

  • 発言者本人による要約

です。
不要文選択に比べると、全体の英文量が多いので、英文全体に関しては、DNCが提供しているファイルか、私の手書きノートのコピーをご参照下さい。

DNC過去問 (2017年追試・筆記・問題のみ)
https://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?f=abm00009649.pdf&n=%E7%AD%86%E8%A8%98.pdf

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「アメリカの大学の授業でのやりとり」という設定ですが、私はBecker教授のこの発言にまず引っかかりました。この点について、受験界隈での解説ではどのように扱われているのでしょうか?予備校の中の人とか出版社の中の人とか、もっと突っ込んでDNCの中の人、分かる範囲で教えて下さい。

This is our first class since you all finished your eight-week-long farm work experiences throughout Washington State.

「農場での体験実習」の期間が8週間。約2ヶ月です。常識的に考えると、農場での主たる活動は春から秋でしょうから、その間の2ヶ月を大学を離れて過ごしやすい時期となれば、年度 (= school year) の合間である、7月、8月ではないかと思うのです。でも、そうすると、学年が上がるのに、同じ授業が続くことになります。どういう大学、学部、専攻の教授&学生なのでしょうか?

体験報告の口火を切るのは Melanie。

I was interested in traditional farming, and I thought many of the methods might be very useful in modern commercial farming, too. So, I chose a farm that adopted ways of farming once used in the region.

ここでのキーワードは、traditional(昔ながらの)とmodern(今、現代の)、methodsとwaysですが、そこがキーワードだとわかるのは、ここまでが読めているからです。
基準時制は過去形ですが、 and I thought の内容と、tooの意味のつながりを実感するのは結構大変です。

  • 私は昔ながらの農業に興味があり、多くの伝統的手法は現代の商業的農業にも同様に、とても役に立つかも知れないと思っていました。それで、私は、かつてこの地域で用いられていた手法をいろいろ採用しているある農場を選んだのです。

という日本語訳を読んで、何と何がどのように「同様」なのか?が一読了解な高校生は少ないのではないかと思います。
ここで読み取るべきは、「伝統農法と現代農法の二者択一ではない」ということですが、それでも、tooでの論理はどうなっているのか、悩むことでしょう。

何しろ、 “… and I thought … might …, too.” ですから。
せっかく主張、意見を述べるところなのに、その中身で、「そうかもしれないし、そうではないかもしれない」という助動詞の mayやmightを使っている場合には、その話しは、「話半分」で聞いておかないといけません。時制の一致で、that節中の may がスライドしてmight になっている場合でも同じことです。これが、持論の支持、理由付けのところにmay / mightが来ていたりすると、もう目も当てられません。
文法問題や語法問題では、ドヤ顔で助動詞mayの解説をする講師も、読解問題や、ライティングの問題の解説では、あまり的確に捌いてくれないことが多いんですよね。

本題に戻って、ここで並列されるべき内容は、

  • A: 伝統的手法は、伝統農業で役に立つ(立ってきた) (=常識;歴史)
  • B: 伝統的手法は、現代農業で役に立つ(かもしれない) (=仮説;可能性)

ということでしょうが、Aの内容は直接書かれていないのです。

それに続いて、自分の仮説を確かめるべく、実習先を選択したことが述べられます。

  • a farm that adopted ways of farming once used in the region

での、関係代名詞thatでの後置修飾の中の usedという –ed/en形による後置修飾を適切に読めるかどうか。
関係代名詞 that の後の、adopted は過去形ですが、これは「採用していた」という、実習時よりも上流に遡るのではなく、メインの動詞のchoseが過去形であり、それに合わせて過去形を使っていると考えるべきでしょう。「その時点で、伝統的手法を “採用している” 農場を “選んだ“」ということです。
さらには、“ways” の無冠詞複数形と、 in the region の捉え方にも注意が必要です。ここは、具体的に例を挙げてくれると嬉しいところだなぁ、と思ったら、次の文では、現在時制で、この農場のポリシーのようなものが語られます。理解の助けになるといいですね。繰り返しますが、ここから現在時制です。

The workers there don’t use any artificial chemicals. They plant various crops together in a field, rather than planting only one.

「その農場で働く人たちは化学合成肥料などを一切使わない。一つの畑にひとつの穀物だけを植えるのではなく、多様な穀物を同時に植える。」
“any” は「ゼロでなければ何でもアリ」ですから、その否定の “not any” で残るのは「ゼロ」だけ。 A rather than B では、Bは却下でAを選択でした。
この文の基準時制が現在時制ですから、「昔の話ではなくて、今、こういう手法を使っている」という、”ways of farming once used in the region” をリアルに感じさせる効果がありますね。

  • かつてこの地域では使われていたけれども、今ではやらなくなってしまった農法のいくつかを、この農場では今(も)使っている。

という理解が求められるところです。

その農場のポリシーの背景は?と思って先を読んでも、明示はされません。

I didn’t really know planting multiple crops would help prevent plant diseases, decrease the number of harmful insects, and maintain the quality of the soil.

Melanieにはよく分かっていなかった内容として、「同じ畑に複数の穀物を一緒に植える」ことの効果・目論見が述べられています。
know に続く目的語は、本来ことがらを表すワニ (= that節)ですが、ここではthatは使われていません。問題は、ワニの腸内環境の整備です。

  • A would help B 「AはBにきっと役立つだろう」

で、Aに planting multiple crops ということがらのワニ(=動名詞)、Bの help には動詞の原形が続いていますから、「…するのに役立つ」という意味になります。
ここまでをまず確認です。

  • 「複数の穀物を植えることが、きっと…するのに役立つだろう」

では、何をすることに役立つのか?という並列・列挙を一つ一つナンバリングでもしながら確かめます。

  • 1. plant diseases
  • 2. decrease the number of harmful insects

and

  • 3. maintain the quality of the soil

1. でdiseaseは疾病や症状の軽重には差こそあれ、明らかにマイナス評価の名詞です。
2. でinsectsには、善玉もいれば悪玉もいます(し、どちらでもないものもいます)から、この名詞に harmfulとつくことで「害虫」であることが分かります。
3. maintain=維持する、the quality of the soil = その(畑;農場の)土壌の質、ですから「その土壌の質を維持する」という日本語約は容易いでしょうが、では、「土壌(の質)を維持する」とは、どういうことでしょうか?私の授業では、折りに触れ「反意語を援用した語義の理解」を求めていますが、ここでは、「土地の質を維持できないと、どう変化するのか?」という内容を考えてから、それをひっくり返せばいいでしょう。まず、すぐ思いつくのが「劣化」でしょう。では、どのような状態を「劣化」とみなすのか?

  • 土地が痩せて、栄養分が(足り)なくなる。作物が、以前よりも実をつけなくなる。

などということでしょう。ですから、それをひっくり返して、

  • 土地がやせ細らないようにする = 土壌の質を維持する

とメモして、先に進みます。

最初の高いハードルが来ました。

At the same time, I was surprised that workers on this small farm were using very modern technology. For example, …. In short, ….

“at the same time” は「それと同時に;その一方で」という並列や対照を示すときに用いられるつなぎのどどいつ表現です。World Book Dictionaryの定義を引くと、

  • while saying this; however; nevertheless

となっています。

ここでは、“I was surprised ….” と言っているので、これよりも前に、何かに対して “surprised” だったと言えるような内容があったかを確認しておくことが大事でしょう。

「昔ながらの農法に、様々な効果があるとはあまりよくは知らなかった」というところで、少なからず驚いていてくれないと、この “at the same time” が活きてきませんね。ただ、この前までの「農場・農法」の記述はエピソードでありながら、現在時制を用いて書かれていて、この "didn't really know" から、また過去形に移っているので、分かりにくかったのではないかと心配します。

驚いた理由・原因としては、“workers on this small farm were using very modern technology” 「この小さな農場で働く人たちは、すごく今風の技術を使っていました」とあります。
英語の流儀は、generalな情報提示からspecificな例証へですから、このあとに具体的な体験談で詳述されるはずです。

では、For exampleに続く具体例、と最後の自分語りでの要約へ進みましょう。

  • they used computers to decide when to supply water to their fields.

「彼らは、コンピューターを使って、いつ畑に水を与えるのかを決めていた。」

ここでの3つの toの違いは大丈夫ですね?私の手書きノートの記号付けを写真で確認して下さい。

最初の to decideは、どうして?という「どどいつ」で目的を表す to 原形 (= 不定詞)。
二つ目の to supply も不定詞ですが、ここは、wh- + to 原形でワニ(=名詞句)。ワニの腸内環境で、何に、どこにsupplyするのか、を表す前置詞+名詞で to their fields となっています。

ここまでの、Melanieの体験談を before / afterで整理すると、

  • 実習前のMelanie本人の目論見 = 伝統農法を現代農法に活かしてがっちり!
  • 実際の農場体験実習での驚き = 伝統農法だけじゃなく現代のテクノロジーも活用

とでもなるでしょうから、 “In short, these farmers were ….” での要約は、
(they were)

  • 1. integrating older and newer farming techniques

「旧新の技法を統合している;古い手法と新しい技術を一緒に使っていた」

を読んだ瞬間に正解だと判断できると思います。 確認のために、これ以降の選択肢も読んでおきましょう。

  • 2. spraying artificial chemicals according to the schedule

「決められた予定に応じて化学合成物質を散布していた」
体験談冒頭の “they don’t use any …” に矛盾。

  • 3. updating and developing advanced computer software

「先進のコンピューターソフトの更新と開発をしていた」
「コンピュータを活用している」記述はありましたが、このようなコンピュータの開発そのものへの言及はありません。

  • 4. using insects to protect crops from harmful diseases

「害のある病気から穀物を守るために、昆虫を使っていた」
「害虫から穀物を守る」ことへの言及はありましたが、それとて、「効果のほどは知らなかった」という感想でした。さらには、いくらダミーの選択肢を作るとはいえ、 “harmful diseases” って、いう名詞の形容が果てしなくセンスがない。 “disease” とか “damage” というものは、そもそもマイナスの評価を表すことばでしょうに。 “harmful influence” とか “harmful effect” というならまだわかりますよ。「ホントにもう!」って感じです。

ということで、Melanieの発言は終わり。
このようにMelanieの一人がたり&要約による、最初の農場実習体験談発表の締めくくりを受けての、Becker教授の反応があまりにそっけないので、この二人の人間関係がちょっと心配になります。

Thank you, Melanie. That’s interesting. Who’d like to speak next? Eric?

同じような感想がいくつも続いた、とかではないんですよ。
Becker教授が「体験談をいくつか皆でシェアしようね」というから、Melanieが口火を切って発言してくれたというのに、Melanieの体験談を受けて、その体験した内容とか教訓とかの異同を他の誰かに振るとか、司会役としての何の芸も配慮もなく、「では次に喋りたい人?エリックは?」ですからね。

でも、まあ、私が一貫して「もどき」と読んでいるのは、こういう部分があるからこそなのでね。その「もどき」という意味では、クオリティは満たされていますね。


ここまででも、A4で7ページくらい書いていますので、今日はこの辺りで終わりにしようと思います。
もう一度、Melanieの発言に戻って、読み直しをして復習するのもいいでしょう。
助動詞の mightの「そうかもしれないしそうじゃないかもしれない」という可能性の表現を「意見の表明や持論の裏付けに使う危うさ」に関しては、確実に復習しておいて欲しいと思います。

だって、考えても見て下さい(= after all)、

  • このディスカッションもどきの解説の続きは、日を改めて書くかも知れないし、書かないかも知れません

とあったときに、読み手はその続きを期待して待ち続けますか?

ということで、この続きは書くかも知れないし書かないかも知れませんので、冒頭に貼った画像ファイルだけでもご確認下さいますようお願いします。

高校の新学習指導要領では、「論理・表現」などという科目が新設されるそうですが、今日のエントリーで私が述べたようなことは、どの程度扱われるんでしょうか?

本日のBGM: 誰も気にしちゃいない(佐野元春)

松尾レミは梶芽衣子に声が似ている

過去2回のエントリーで、センター試験の「不要文選択」問題を取り上げ、「英語学習」にどう活かすか、を書いてきました。

この出題が始まった2014 年の下線部の引き方には、稚拙なものも見られました。

Odd Ones Out あるいは The best is yet to come.
http://tmrowing.hatenablog.com/entry/20140119

そこから出題を重ねて早5年。ある程度の水準で「つながり」と「まとまり」の理解を問うことには成功していると思います。

しかしながら、2016年の追試、第3問Bの3番の「英文」は看過できないものだったので、この素材文を取り上げて、この「不要文選択」問題の解説に一区切りつけようと思います。「追試」の問題は、新しい出題形式の「観測気球」としての位置づけでやり過ごしてはいけない、きちんと批評すべきである、と再認識させられた次第です。

まずは、当該の素材文です。

People can show courage in dangerous situations.
For example, someone pulling an injured person out of a crashed car after an accident is considered brave.
However, people do not need to be in dangerous situations to show courage; they can do it in any type of situation.
I will give you the example of my friend Sophie.

  • (1) Even though she was afraid of flying, she boarded a plane for the first time to see her parents.
  • (2) She knew that her parents had never flown even though they were not afraid of flying.
  • (3) Her fear was based on her belief that such a big and heavy machine should not be able to fly in the air.
  • (4) Before getting on the plane, she was shaking with fear, but she overcame that feeling.

I think that Sophie getting on the plane was as courageous as someone taking a risk to help at the scene of a traffic accident.

私の手書きノートの、記号づけをする前の段階のものをこちらに載せておきます。

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第1文。People / situationsと無冠詞・複数形名詞で一般論での導入です。

  • People can show courage in dangerous situations.

とじカッコを横綱の助動詞 canの左に付けていますか? Showという現在時制での事実や断定ではなく、can show と「可能性」を表しています。Canの可能性はmay nor may notの「そうかも知れないし、そうかもしれない;表裏一体」 とは違います。肯定のcanは「ないことはない」と常に、プラスの可能性であることに注意しましょう。

「人はだれでも危険な場面では勇気を示すことができる;勇気を示すことがある」

第2文の冒頭は、

  • For example,

とありますが、「たとえば」という日本語に置き換えて分かったつもりになるのは危険です。確かに「例示」の目印なのですが、これは、第1文での何を具体化しているのでしょうか?

「読み手の誰でも危険と分かる状況」が取り上げられ、「ごく普通の人が、その危険を顧みず行動をする」ことを「勇気を示す」例とするのではないか、と考えられるでしょう。

  • someone pulling an injured person out of a crashed car after an accident is considered brave.

この文を左から右へと一読で(私の授業であれば「L板のスライド」)理解できましたか?

someoneが主語で、四角化で pullingを見たところで下線延長の後置修飾で「引っ張る人」です。では、「いつ何をどのように引っ張るのか?」が、先程の予想に合致するか読み進めます。ここでも四角化が大事です。
“pull(ing) an injured person out of a crashed car” で四角化されるのは、an の目印で単数形の名詞を探してperson、 aの目印から単数形の名詞を探して car、少なくとも、四角化ができる人は、「pull 人 out of 車」という理解ができる筈ですから、それをsomeoneの下線延長に当てはめておきます。「車から人を引っ張り出す誰か」となります。このように、手がかりを作って分かったところ、見えたところまでを振り返って眺め直すことは大事なのです。
では、after以降の「どどいつ」や、今飛ばして読んできた、injuredやcrashed では当然、「危険」に関わる情報が述べられていることになりませんか?

injuredは本来、「負傷させる;怪我をさせる」という意味の動詞 injureの-ed/en形由来で「負傷した;怪我をした」という意味の形容詞。crashedは「グシャッという大きな音がするように激しくぶつかり原形をとどめない」という意味の動詞crashの –ed/en形由来の形容詞で「衝突してつぶれた;壊れた」という意味です。何をどうしたら、自動車は「つぶれて原形をとどめない」状態になるか? “after an accident” 「交通事故の後で」ですね。ここまで、気の遠くなるくらい長い下線がsomeoneから延長していました。

その後に続く、is considered braveは「be動詞、時制が決まればとじカッコ」という合言葉でしたから、主語は単数形の名詞。英語が苦手な人も、もう直前の accidentが主語だとは思いませんねよ?someoneが主語ですから、is が小結の助動詞で、受け身。付き人はconsiderの-ed/en形で considered、「どのような人だと考えられるのか?」にあたる評価や描写の形容詞がbraveですから、「…な誰かはbraveだと考えられます」という具体化・個別化ができたことになります。受け身(受動態)ではなく、元の形(能動態)であれば、”You + consider + …な誰か +(to be/as) brave.”となっているところです。

ここまでが主題の提示でしょうか?
第3文の「つなぎ語」がHowever で譲歩・対照ですから、

  • A However, B

という大きな流れで見れば、Bの方に重点、焦点があることになります。

  • People do not need to be in dangerous situations to show courage;

「人は勇気を示すのに、必ずしも危険な場面にいる必要はない」

なんと、筆者は自分で、「火事場では人は勇気を出せるものだよ」と話題を振っておいて、「卓袱台返し」がきました。

“do not need to 原形” は「…する/…である必要はない」という「不必要;必然性はない」という表現です。“don’t have to原形” を既に知っている人はそれとほぼ同じ意味だと思っていいでしょう。
“to show courage” は、直前の situationsからの下線延長ではなく、「目的を表す『どどいつ』」のto 原形で「…するために」という意味です。

「卓袱台返し」のままでは、主題が提示されないまま、話が終わりますから、次の;(セミコロン)に着目して下さい。
「否定があれば、それに取って代わる肯定のサポートを続ける」という英語の流儀で、このセミコロンのあとで、「じゃあ、勇気を示す場面ってどんなものなのか?」が示される合図です。

  • they can do it in any type of situation.

「人は、どんなタイプ(類型)の場面でも、それができる」
とあります。ここでの、do it (=それをする)というのは、show courageを、typeというのは、「類型」で、「危険な」とか「安全な」などと、場面に貼る「ラベル」のことと考えればいいでしょう。「火事場だけではなく、どんな場面でも勇気は出せるもの」「どんなときでも発揮できる勇気」という主題が提示されたことになります。余白に「槇原敬之」「マッキー!」とかメモをしておくといいかもしれません。

こうして読んでくると、次に筆者が述べるのは、「恐怖を感じるとか、危険が迫っているということがない場面で、勇気を発揮できた例」であろうと予想できます。

で下線部に入る前の第4文。

  • I will give you the example of my friend Sophie.

「私の友人であるソフィーの、その例をここで示そうと思います」
the example というのは、他でもない、

  • 火事場だけではない、どんな場面でも勇気を発揮できた典型例

だということです。
横綱の助動詞willは「その場のその気」、付き人で原形になっている動詞 giveは「キャッチボールをする」動詞ですから、先にキャッチャー役のyouが座っていて構えているので、ボールの働きをする、the exampleを投げ込める、という並べ方です。意味順とそのスロットの役割との両方を覚えていきましょう。

では下線部1へ。

  • (1) Even though she was afraid of flying, she boarded a plane for the first time to see her parents.

ギャップを埋めるevenがついた譲歩の接続詞even thoughに続いて前提が示され、切れ目があって、メインの主語+動詞へと続きます。
Even though A, B を(×)「けれども(しかしながら)AでありB」と読むのは大間違いです。
(○) Even though A, B. で 「Aではあるけれども、それでもB」という意味のつながりであることに注意して下さい。
「どどいつ」の働きをする接続詞の仲間は「ホワイトボードシリーズ」の、「副詞節マッチアップ」で集中的に扱いました。

“she was afraid of flying” で「ソフィーは飛行機で飛ぶ(=飛行機に乗る)のが怖かった」という「事実」が述べられ、そういう人が普通とるであろう、言動やその心理とはギャップのある言動や心理が、メインの主語+動詞で述べられます。 “she boarded a plane for the first time” 「彼女は初めて搭乗した」と、淡々とした過去形の事実で “board = to get on a plane” と書かれています。この「初挑戦」が「勇気を示す行為」の一例、ということなのでしょうか?状況をもう少し知りたいものですが、この後には、 “to see her parents (=両親に会うために)” としか書かれていません。

下線部2はどうでしょう?

  • (2) She knew that her parents had never flown even though they were not afraid of flying.

「彼女には、両親は飛行機が怖くはないのだが、それでも今まで一度も飛行機に乗ったことがないと知っていた」

とあります。
ワニ使い動詞のknowの過去形 knewは「知っていた;分かっていた」という状態であって、「気がついた」という変化ではないので注意して下さい。that以下のワニの腸内環境は大丈夫ですか?「○ンコ漏らすな、○ロ吐くな」が合言葉でしたね。今度は、C even though D で、「Cでした、確かにDではあるんですけど」という「怖くないなら乗ればいいのに、未体験」ということです。ここでの、ソフィーの両親の例は、「どんなときでも発揮できるソフィーの勇気」の例でしょうか?ソフィーの例でもないし、そもそも勇気が発揮されていませんね。

では、下線部3。

  • (3) Her fear was based on her belief that such a big and heavy machine should not be able to fly in the air.

「彼女の恐怖は、彼女の『こんなに大きくて重たい機械が空を飛べるわけがない』という思い込みに基づいていた」

“her fear” はどこから出てきたのでしょうか?下線部1の “she was afraid of flying” ですから、つながりましたね。
“A is based on B(= AはBに基づく;BがあるからAがある” で「恐怖の原因」を述べています。
“her belief that 主語+動詞” のthatは「同格」を表すものですが、それよりも、

  • she believed that such a big and heavy machine should not ….

という文を名詞化したものだと考える方が後々のためになると思います。

believe that 節でのbelieveは「…であると強く思う;…だ、と考える」という意味であって、日本語の「信ずる」という表現とは完全には重ならないので注意が必要です。エッセイだけでなく、日常でも “I strongly believe that ….” で、「私は…だと思います」、と自分の意見を取り立てて述べることはよくあります。SNSのtwitterの検索窓に、“I strongly believe that” を引用符ごと入れて見ると、たくさん出てくるのではないかな、と思います。

“such a big and heavy machine” のandのペアは、どちらも簡単な形容詞ですから問題ないと思いますが、もし、such a 1 and 2 machine で、1か2のどちらかが分からない語の場合は、「旅客機を形容するのだから…」と、どちらかを頼りに推測することは可能です。でも、1も2も分からないと苦戦を強いられますから、語彙は豊富にあるに越したことはありません。
横綱の助動詞 should は「(強い)推量」で「…のはずである」という意味。ここでは、否定で、さらに付き人には “be able to原形”がきているので、「できる筈がない」となります。あくまでも「主観」です。

最後の下線部4。

  • (4) Before getting on the plane, she was shaking with fear, but she overcame that feeling.

「搭乗前にソフィーは恐怖で震えていたが、彼女はその感情を乗り越えた」

「ソフィーの勇気を示した一例」であることは分かりますよね?
Beforeはここでは前置詞扱いで、get on the plane(飛行機に乗る;搭乗する)のgetは動名詞(=ワニ)に形合わせ。
“she was shaking with fear” の前置詞 withは感情や身体反応の原因を表すもの。「怖くて震えていた」ということです。乗る前は怖かったんですよ。
“but she overcame that feeling” のbutの逆接、対照は大丈夫ですね?
動詞overcome が分からないと、このbutの対照を手がかりに推測するしかありません。「ソフィーは乗る前は怖かったけれど、その感情を…した」の空所には何が入るでしょうか?
“overcome” は動詞で文字通り「乗り越える;克服する」です。

そして、文章(段落)の締めくくりの一文。

  • I think that Sophie getting on the plane was as courageous as someone taking a risk to help at the scene of a traffic accident.

「私は、飛行機に乗ったソフィーは、交通事故現場で救助のために危険をかえりみなかった人に負けず劣らず勇気があったと思うのです」

筆者の主観、個人的見解です。筆者の友人の例で主題を支持していましたから、その伏線を回収するところ。
ワニ使い動詞のthink に続く、that節は、腸内環境を丁寧に見ていく必要があります。
“Sophie was as courageous as someone.” で、A was as 形容詞 as Bという、大まかな構造をつかめる人は、既に結構英語は読めるようになっている人でしょう。

  • A = Sophie getting on the plane
  • B = someone taking a risk to help at the scene of a traffic accident

のように、構造を捉まえる場合に、気になるのは、Sophieという固有名詞の後置修飾でのgetting on the planeと、不特定の代名詞であるsomeoneの後置修飾での taking a risk を同列に扱っていいものか?という部分ですね。

ここでは、Aを「ソフィーという同一人物、ひとりの人間を指しているが、その一人の中でも、場面によって異なる特質が現れている」ことを表現している、とでも考えるしかないでしょう。
つまり、

  • 飛行機に乗るという勇気を出したソフィーとそうではないソフィーがいる

ということです。

As 形容詞 as は「同等比較」と言われることもあるので、誤解を生じやすいのですが、「負けず劣らず」というよりも、「まさるとも劣らない」という日本語表現の方がぴったり来ることが多いです。
“take a risk to原形” は「危険を冒す;覚悟して…する」という意味の表現で、of –ingが続くことが多いのですが、ここでは to原形が来ていますので、このto helpは「目的」または「結果」と読むのがいいように思います。
“at the scene” の atは「直面」を表す前置詞で、「交通事故現場に直面して」ということです。

さて、こうして、ちょっと違和感、引っ掛かりを感じながらも、最後まで読み進めて来ました。えっ?違和感はなかった?そうですか?

私の手書きノートの、記号付けをしたものをこちらに貼ります。

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完成英文を通してみるとこうなります。

People can show courage in dangerous situations. For example, someone pulling an injured person out of a crashed car after an accident is considered brave. However, people do not need to be in dangerous situations to show courage; they can do it in any type of situation. I will give you the example of my friend Sophie. Even though she was afraid of flying, she boarded a plane for the first time to see her parents. Her fear was based on her belief that such a big and heavy machine should not be able to fly in the air. Before getting on the plane, she was shaking with fear, but she overcame that feeling. I think that Sophie getting on the plane was as courageous as someone taking a risk to help at the scene of a traffic accident.
(139 words)

ここで、キーワードとなっていた、いくつかの語義を整理しておきましょう。
定義は全て、米国の教育界で定評のあるWorld Book Dictionaryのもの、和訳は私のものです。

  • courage = bravery; meeting danger without fear(勇敢さ;恐れを持たず危険に直面する)
  • dangerous = likely to cause harm; not safe; risky(害を及ぼす可能性のある;安全ではない;危険を伴った)
  • brave = without fear; having courage; showing courage(恐れを持たない;勇気を持った;勇気を示すような)

同じ意味の核を共有していることがわかりますね。

この定義の中で、たびたび出てくる、名詞 ”fear” の語義は大丈夫ですか?

  • fear = the emotion or condition of being afraid; feeling that danger or evil is near(不安な感情またはその状況;危険や邪悪さが近くに存在するという感情)


私の違和感は、これら、冒頭の下線部に入る前に読み取ったキーワードと、下線部1での「飛行機に乗るのが怖いソフィー」というエピソードに起因していました。
先程、示した「定義」を見て下さい。
ソフィーが「飛行機が怖い」理由は、「そんな大きくて重い機械が飛べるわけないでしょ!」という思い込みであったことが書かれていました。
なぜ、「飛べるわけがない乗り物に乗るのが怖いのか」といえば、それは、「飛べないと事故になる(可能性がある)」ということで、「そこに潜在的な危険を感じるから、危険がすぐそこに迫っていると思い込むから」ではありませんか?

少なくともソフィーにとっては、「飛行機に乗ること」は、

  • potential danger; potentially dangerous

なのであって、彼女にとっては、 “risky” な行為、 “an act of taking a risk” だったはずです。

これは、冒頭で筆者のあげた、「人が勇気を示す場面」で、

  • in dangerous situations である必要はない
  • in any type of situationでもできる

をサポートするのに、最適な例だと言えるでしょうか?

確かに、筆者は “any”と言っていますので、そこに、dangerousな状況が含まれていても、「嘘」ではありませんし、 “do not need to be in …” で「不必要」とだけ言っていたわけですから、dangerousな状況にあっても、「嘘」をついたことにはなりません。

しかしながら、However でコントラストを作り、セミコロンで焦点化してまで示した、

  • People can show courage in any type of situation.

という主題を支持するのですから、もう少し、any type of situationsの例を選んだ方が良かったのではないかと思うわけです。

「こういう場面で、○○したとしても、死ぬかも知れないとか、大けがするかも知れない、とか、もう生きていけない、とかそういうことはないでしょ、そんなときに、あなたが思い切って○○する、それも立派に勇気を示すことになるんですよ」
という例は、日常の色々な場面に潜んでいて、何かの拍子に顔を覗かせると思うのです。

電車に乗っていて、困った人に席を譲るとか、dangerous situationsではなく、an embarrassing situation でのちょっとした勇気の一例など、any を具体化できる、他の事例、ネタはいくつもあっただろうに、と思わざるを得ません。今回の素材文は、通して読み返したり、繰り返し復習する、教育的意義をあまり感じませんでした。

ということで、この文章の反省点は、最大のキーワードである、“courage” の語義の吟味の甘さにあったのでは、という指摘をして解説を終わろうと思います。

本日のBGM: 吹き抜く風のように(GLIM SPANKY)

Rebuilding Foundation

前回の「2017年本試験、第3問Bの1」に続いて、2017年追試から、第3問Bの3を解説してみます。

前回の解説でも、一つ一つ読み進めて、その都度判断し、全体像を構築、修正していましたが、今回もほぼ同じやり方です。ただ、前回は、個々の表現や所謂構文の日英比較で取り上げるべきところ、例えば「無生物(ことがら)主語が他動詞をとる文で、主語を条件設定と読み替え、副詞的に処理する」などということは、後回しにするつもりで言及していませんでしたが、今回は、必要なところには解説を多めに付け加えようと思います。

では問題文です。

Some people do not like to throw things away and may feel a sense of comfort by keeping them well ordered and ready for use.
When Kenta’s grandmother asked him to help clean her house before New Year’s Day, he found a lot of old stuff of no value to anyone else.

  • (1) She had kept all of the wrapping paper she had received, which was neatly folded, along with nice ribbons.
  • (2) There were pill containers stuffed with spare buttons as well as small pieces of thread and string wrapped around strips of paper.
  • (3) There were rare collector’s items that she was going to sell to make money for charity.
  • (4) All these things were well organized and made ready for use whenever she might need them.

However, she realized no one would use them, not even herself.
So, Kenta and his grandmother decided to throw them all away.

論説文や解説文よりも、エピソードに近いナラティブの色が濃い文章ですが、それは、この文章が読める人だからわかることです。それを裏返せば、

  • あ、今回の英文は何かエピソードを通じて主題を伝えようとしているんだな。

ということがわかった人はかなり英語のセンスがあるということです。

第1文

  • Some people do not like to throw things away and may feel a sense of comfort by keeping them well ordered and ready for use.

本当に分かっているか?を日本語訳で確かめるのが難しい、some+複数名詞とandでのペアの理解です。
ここでの some peopleは(X)「何人かの人」、(X)「数人」という意味ではなく、全体から漠然と部分を取り出す表現です。allに対するsome。「中には…な人もいます」というような日本語に相当します。英語のどこにも「いる、いない」という表現がないじゃないか、と思う人がいるかもしれません。
日本語では「数量表現は存在を表す文で右へ行くと安心する」ということをちょっとメモしておいて下さい。

Someという部分を取り出す表現で少し「絞られて」はいますが、とじカッコは “do not like” と平幕の助動詞 do が使われていますから、事実で断定です。
“throw away” は「不要なものを捨てる」。北海道の私の田舎では「投げる」といいます。

「好きではない人もいる」→  何を?「捨てること」を、という部分までは現在形で断言ですから反論は受け付けない、一般論での入り方です。でも、「捨てられない;捨てたくない」人にも、その背景にはいろいろあるでしょうから、同じ主語に続くandの並列で may feel と横綱の助動詞 mayが来ていることに注意が必要です。この2つを天秤ばかりに乗せて釣り合いをとる、というのは、ちょっと違うかな、という感じです。
“and may feel a sense of comfort”
の部分は、横綱の助動詞 may ですから筆者の主観です。

may = may not で表裏一体ですから、「その人たちは感じているかもしれませんし、感じていないかもしれません」と、その前の「断言」と違って一歩引いています。feelの目的語の “sense of comfort” は「安心感;心地よさ」でしょうか?「癒し;慰め」?それだとあまり積極的なプラスの価値が見いだせませんね。comfort という語は発音と強勢も要注意ですが、ここでは名詞であるということで、「品詞」を押さえておきましょう。英英辞典で定義を見ても、今一つピンとこないものです。

  • comfort = a pleasant feeling of being relaxed and free from pain (Cambridge)

不可算名詞として使われているくせに、英英辞典で定義を見ると、 a pleasant feeling で可算名詞のfeeling が使われていたりすると、全然 “a sense of comfort” を得られないような気もします。

World Book Dictionary で引いてみると、

1a. anything that makes trouble or sorrow easier to bear; consolation.
Ex. The news that their missing son was well brought great comfort to his parents.
b. the feeling of relief or consolation.

と出ています。「安心感;心地よさ」で浮上する前に、どこか沈んでいる状況が必要だということですね。
では、どのようにして、その「沈んだあと浮き上がる安心感;心地よさ」を得るのか?
手段を表す前置詞の by+名詞のかたまり(ここではkeeping以下のワニ)です。ここでのkeepは日本語の「キープする」よりは、もう少し射程が広く、 “keep A + B” で、「AをBの状態にしておく」と、Bのところに何が来ているのか、まで気をつける必要があります。
でも、英語が苦手な人は、themの後がごちゃごちゃして「戦意喪失」のようなことが多々あるのでしょう。少なくとも、A = themまでをつかめれば、「捨てられないので、取っておくことで、心地よさ、安心感を得ているのかもしれません」という最低限の意味は理解できるでしょう。
Bに来ているのは、Aがどんな状態なのか?という情報ですから、“well ordered and ready for use” でのand の並列をきちんと読む必要があります。andは確かにペアを表すのですが、ここでは well ordered 「きちんと整理された」状態にあるからこそ、ready for use 「使用の備えができている」わけです。このような因果関係を含む and の使い方に注意して下さい。

“(well) ordered” の意味がすぐに実感できる高校生はあまり多くない(←これが「存在文での数量表現」ですよ)かもしれません。この語のもとになっている、基本語であり、多義でもあるorderの実感がつかめていないことが多いのかな、と思います。

類義語でのneatなどを確認してneat = tidy; with everything in its place (Cambridge)で分かる人は、もう既にかなり英語ができる人でしょう。
私の授業ではよく「反意語を援用した語義の理解」といいますが、

  • untidy = messy

ですから、not messy ≒ tidy ≒ orderedというように反意語・対義語を考えてみて、それをひっくり返して戻ってくると、もとのことばの立ち位置が少し見えてくる、という頭の働かせ方も語彙を定着させるための一手として覚えておいて欲しいと思っています。

ready for use での形容詞readyは物理的・心理的に準備ができている様子を表します。前置詞for は何に備えるのか?という目的です。ここでは文字通りの「用途・使途」である、 use という名詞が来ています。名詞のuseのs は濁点(゛)のつかない子音ですので間違えないように。

こうして読んでくると、comfortはそんなに大層なプラスの意味とも言えないな、という感じがしてきます。話題と主題を整理すると、「物を捨てるのが嫌だという人も実際にいる。捨てたくないから、きちんと整理してとっておいて、後々使えるようにしておくのだ、と『気休め』を得ているのかもしれない」とでもなるでしょうか。

ようやく第2文です。

  • When Kenta’s grandmother asked him to help clean her house before New Year’s Day, he found a lot of old stuff of no value to anyone else.

第1文の一般論に続いて、第2文では、個別のエピソードが出てきました。
筆者の用意した「主題」に照らして読み進めます。その主題を、このエピソードでどう示して、理解してもらおうとしているのかを理解できれば、この続きが読めたことになるでしょう。

「ケンタのおばあさんが物を捨てられない人で、その捨てられないのは、きちんと整理して、使用に備えることで気休めを得ているからかも」というような展開が予想されます。

A ask B to C(=原形) で「AがBに頼んでCしてもらう」ですから、「おばあちゃん(= A)がケンタ(= B)に手伝って(= C)くれと頼んだ」ことがわかります。では、to原形になっているCのhelp の語法で、目的語の部分に、動詞の原形(= clean) が来ているところに注意して下さい。helpの意味がまさに「助ける」なので、助動詞と同じように、原形をとることができます。英語があまり得意でない人にとっては、見慣れない、気持ち悪い単語の並び方だと思いますが、helpという動詞は特別なのだ、と思っておいて下さい。「家を掃除するのを手伝う;手伝って一緒に家の掃除をする」ということです。

D before E で、過去から現在、そして未来へと流れる時間の中で、どちらがより上流で、どちらがより下流に位置しているのか、日本語訳だけでなく、図示するなどして明確にしておきましょう。New Year’s Day は新年の日、つまり元日ですから、その前というと、大晦日以前になります。ですから、ここでのbefore New Year’s Day は「年末に;年の瀬に」ということになります。日本の大掃除は元日の前、大晦日までに終わらせますね?

大掃除の結果、he found 「ケンタは見つけた」とあります。a lot of old stuff of no value の、of …value は<前置詞+(抽象度の高い)名詞>で、形容詞の働きをするものです。四角化ドリル (その21) では集中的に扱っていましたね?

四角化ドリル 21
前置詞+名詞=形容詞.png 直

of value で「価値がある」。ここでは、no がついていますからで「ゼロの価値がある」、つまり「価値がない」ということです。形容詞のvaluelessとほぼ同じ意味ですが、名詞に対して後置修飾ができる、という利点があります。
誰にとっての価値か?というところが重要です。
“anyone else” と、“else” がついています。誰を基準に「他の誰にも価値がない」と言っているのでしょうか?そう、ケンタのおばあちゃんですね。


下線部1を読んでみましょう。

  • (1) She had kept all of the wrapping paper she had received, which was neatly folded, along with nice ribbons.

Sheは当然、ケンタのおばあちゃんです。大関の過去形のhad と-ed/en形の付き人でkeptと過去完了になっています。このエピソードの基準時は、「年末(たぶん大晦日)の大掃除」で過去形ですから、それ以前。過去の基準から更に上流へとさかのぼるので過去完了です。
“all of the wrapping paper” のallに意味があります。「例外なく全部」ということです。どのような「包装紙」かというと、the (wrapping) paper she had receivedの部分が、<名詞1(=paper)+名詞2(=she)+とじかっこ(=had received)+足跡>の名詞のかたまり(=接触節)で、「おばあちゃんがそれまでにもらっていた紙」となります。ここでのwrapping は動名詞で「用途・目的・機能」などを表すものであって、所謂「現在分詞」ではありません。日本語でも既にカタカナ語で「ラッピングペーパー」として使われているでしょう。
was folded だけでなく、neatlyというどどいつ(=副詞)が使われていることが重要です。このneatlyがあることで、「雑な保存の仕方ではなく、きちんときれいに折りたたまれて保存されていた」という、おばあちゃんの “well ordered” 具合の支持がなされているわけです。
文型至上主義の指導者に「副詞は取り除いて骨組みをつかまえろ」と教わった人がいるかもしれませんが、副詞は文の福祉係でもあるのです。きめ細かく、きちんと世話を焼いてくれていたりするので、副詞の存在と役割に感謝こそすれ、乱暴に扱うのはオススメしません。

, which は関係代名詞で「継続用法」とか「非制限用法」などと呼ばれることがありますが、その前の四角化された名詞を代入して右へと引っ張っていく、というのが普段の授業で教えている手順です。悩みどころとしては、その四角化され、代入すべき名詞が、「人」か「もの」か「ことがら」か?というのは意味がよりよく整合するかどうかで決まるということです。

この文の最後は、, に続く、“along with nice ribbons” です。along with …は「…と一緒に」という意味で、2語合わせて前置詞の働きをしている、と考えていいでしょう。問題は、「何とnice ribbonsが一緒なのか?」がすぐにつかめたか、です。niceというプラス評価の形容詞と相性のいい「プラス評価のことば」、ribbon(s)という名詞と相性のいい「もの」を探せば、「きれいに折り畳まれた包装紙」であることがわかりますね。なぜ、包装紙だけでなく、リボンと一緒にとってあるのでしょう? もう一つのキーワード、ready for use「用途」を考えてみて下さい。リボンはどういうときに使いますか?そう、「貰い物」を裏返せば、「贈り物」ですから、「すぐ使えるように取っておく」という主題に合致していますね。

この文の過去完了形は、進行形との合体ではなく、大関単独での単純な完了形でした。単純形は、基本が「成果・積み重ね・繰り返し」の「ドヤ顔」ですから、おばあちゃん本人から見れば、「ドヤっ!こんなにきれいに、きちんと折りたたんで、全部とってあるよ!包装紙だけじゃなく、その包みにかけてあったリボンもあるんだよ!」というところ。「ドヤ顔」はしている者本人には快感なのでしょう?sense of comfort のバリエーションの表現と考えられなくもないですね。

下線部2へ進みます。

  • (2) There were pill containers stuffed with spare buttons as well as small pieces of thread and string wrapped around strips of paper.

ここでは、A as well as Bの添加を読み取れたか、が重要です。
There were と始まったので、複数の名詞が続くことはわかるでしょう。まずは、pill containers 「薬の錠剤入れ;容器」が無冠詞複数形で。A contain B で「AはBを含む」という意味となるcontainに-erをつけて名詞化したものです。日本語のカタカナ語の「コンテナー」とは発音も強勢の位置も違うので気をつけて下さい。
containersに続く、stuffed はstuffという動詞の-ed/ed形です。containersから下線延長の後置修飾の目印で「詰め込まれた容器」となります。では、何が詰められているのか?素材・材料を表す前置詞のwithの後には、spare buttons (=予備のボタン)とあります。
次のas well as が考えどころです。“small pieces of thread and string” を、「錠剤入れ」に入れてしまって、(X)「糸や紐と同様に予備のボタンも詰められた錠剤入れ」と読むのは完全な誤読、間違った読みです。そういう読みをしてしまう人は、stuffedを完全に無視しています。

  • stuff = fill something until it is full

ですから、pill containersは予備ボタンで既にfullな状態になっていて、他のものを入れる余地はありません。
ここでのA as well as B の添加は、

  • A= 錠剤入れ(複数形)
  • B= 糸と紐の束(複数形)

となります。
後半のBを詳しく見ておきましょう。small pieces of thread and string では、threadもstring も不可算名詞扱いで、「素材」として捉えていることがわかります。計量化の単位とでもいう数量詞が、pieceです。とはいえ、形状は細長いものですから、small は「短い」という日本語の方がわかりやすいでしょう。
thread and string という名詞から、下線延長での後置修飾でwrapped という-ed/en形が続いています。保存のために、後々に使うために「…に巻きつけられた」ということですから、strips of paper というのは、「巻き付けやすくて、使うときに取り外しやすい」形状をしていると考えられます。正方形よりは長方形に近いもので、肉や野菜の「千切り」までいかなくてもいいのですが、「短冊」のようなイメージでしょうか。ここでも、おばあちゃんの “well ordered” な様子が見て取れます。

下線部3を見てみましょう。

  • (3) There were rare collector’s items that she was going to sell to make money for charity.

下線部2と同様に、There were で始まる文です。しかしながら、情報の添加を示す tooとかalsoとかの表現はありません。単純な並列とするには、今度は「レア物」があったというのですが、

  • rare = not seen or found very often ( LDOCE)

ですから、これまでに述べられた、包装紙やリボン、ボタンや糸や紐などの日用品とのギャップを示す表現が何かほしいところです。collector’s items「コレクターズアイテム」はもう、カタカナ語でかなり使われていますね。「(そのジャンルの収集家が)収集する価値のある高価な品物」です。このcollector’s items という名詞の意味に既に「高価な」という意味が含まれていることに注意して下さい。TV番組の『…鑑定団』を見たことのある人は、少し実感が増すかもしれません。
thatは関係代名詞で、後置修飾。items that she was going to sellで、「おばあちゃんが売ろうと思っていた品物」。原形のsellの直後が足跡です。
最後のto make money for charity のto make(= 原形) は、「『どうして』売ろうと思っていたのか?」「売って『どうしよう』と思っていたのか?」という「どどいつ」で、理由や目的を表すと考えればいいでしょう。
make moneyは「お金を作る;お金を稼ぐ」という意味です。造幣局で仕事をしたり、偽造したりするわけではないので注意して下さい。
ということで、この文の意味は、「おばあちゃんが慈善のために使うお金を稼ぐために後々は売ろうと思っていたレア物の高価な収集品もありました」となります。

では、この文の主題との合致はどうでしょうか?
「お宝」は、他のものとは場所を分けてとっておくものでしょうから、ある意味、おばあちゃんの “well ordered” さの一端と言えるかもしれませんが、「慈善のためにお金を出す」ために、「レアで高価な収集品を売りに出す」という行為に備えることが “ready for use” に当たるか、というと微妙でしょう。限りなく黒に近いです。そもそも、「出品して売れるお宝」であるなら、冒頭の "old stuff of no value to anyone else" という記述に矛盾します。


最後の下線部4で確認です。下線部3が微妙だとすると、この下線部4は、下線部2と密接につながり、さらに、この次の文とつながることになります。

  • (4) All these things were well organized and made ready for use whenever she might need them.

「これらのものはすべてきちんと整理されおばあちゃんがそれらを必要とするかも知れいときにはいつでも使えるように用意されていた」

この文章(段落)の冒頭にあった、

  • keeping them well ordered and ready for use

という表現の、orderedがorganizedに代わり、wheneverで「使途」が明確に述べられているという違いがありますが、主題の個別化という点では合致しているようにも思えます。基準時は大掃除にとりかかった過去の時点ですから、この文の時制の過去形も問題ありません。でも、何かひっかかりますね。


この下線部4に続く文の内容とのつながりです。ここから先の記述は、全て正しい、主題を支持するのに必要不可欠な情報です。

  • However, she realized no one would use them, not even herself.

Howeverの譲歩・対照で、その前とのコントラストを示すわけですが、
“she realized” 「おばあちゃんは気がついた」と、「ワニ使い動詞」のrealizeが使われていますから、この後、「大掃除を終えてのおばあちゃんの気付き」の内容が「文」の形で述べられます。

“no one would use them” 「誰もそれらを使わないだろう」という表現は、第2文にあった、

  • a lot of old stuff of no value to anyone else

に対応しているように思えますが、先程の文の続きにある、“not even herself” 「お婆ちゃん自身でさえ(使わ)ない」という部分に注意して下さい。

とすると、「おばあちゃん自身が、流石に自分でも使わないだろう」といっているのですから、下線部4の記述で、“were made ready for use whenever she might need them” という部分と矛盾しないのでしょうか?

下線部4では、助動詞のmight が使われていたことを確認して下さい。
そうです。mayであっても、mightであっても、might or might not の表裏一体は同じです。「(必要ないかも知れないけど)必要になるかも知れないから」という気持ちの表れです。

そうすると、先程の文の、Howeverは何と何のコントラストなのでしょう?
“might vs. would” で、可能性に対しての断定です。“However, she realized no one would use them, not even herself.” での、realizedの過去形は「分かっている」という状態ではなく、「分かった」という「変化」を表すものと読むべきだったことになります。

「使うかも知れないと思っていたけど、あらためて見てみると、ぜったい使わないだろう(と気付いた)」ということで、より正確に言えば、

  • However, she came to realize (that) no one would

とでもなるでしょう。

このようにして読めば、下線部4が残り、下線部3は消えることになります。

最後の文で締めくくりです。

  • So, Kenta and his grandmother decided to throw them all away.

「それで、ケンタとおばあちゃんは、それらを全部/すっかり捨ててしまうことにした」

“decide to 原形” は、自分に選択・判断・決定できる内容に使うので気をつけて下さい。「その気になればできること」とでも覚えておくといいでしょう。
でも、ケンタのおばあちゃんの場合は、一大決心ですね。

throw them all away のall は悩ましい語です。
代名詞で目的語のthemと同格と考えるか、副詞でawayの強調と考えるか。
「駅で南口の改札から出ても、東口の改札から出ても、国道に面した大通りに出られるので、結果オーライ」ということもありますが、全く反対側の出口にでることもありますので。

でも、

  • 「いつ悩むの?後でしょ!」

で、あとで辞書を引いて確認しておくことにしましょう。

さあ、これで、下線部3を除いた英文が完成したことになります。

段落形式で、全文通しての読み直しです。

Some people do not like to throw things away and may feel a sense of comfort by keeping them well ordered and ready for use. When Kenta’s grandmother asked him to help clean her house before New Year’s Day, he found a lot of old stuff of no value to anyone else. She had kept all of the wrapping paper she had received, which was neatly folded, along with nice ribbons. There were pill containers stuffed with spare buttons as well as small pieces of thread and string wrapped around strips of paper. All these things were well organized and made ready for use whenever she might need them. However, she realized no one would use them, not even herself. So, Kenta and his grandmother decided to throw them all away. (131 words)

私の授業用のノートには、各種記号がそれぞれの文の、あれにもこれにも、「これでもか!」というくらいについています。当然、私が自分で英文を読むときには、記号づけはしていません。授業の準備のために書き込むわけですが、記号づけの前の段階で、手書きで本文を写しています。

学習者が、この英文を読むときに、どこでわからなくなっているのか?どこを読み落とすのか?読み飛ばすのか?どこを読み間違えるのか?また、どの部分の読みを間違っていないと思い続けてどんどん、違う道を進んでしまうのか?

最初は、そういうことを想定し、手がかり足がかりを残しておいたほうがいい場所はどこかな?という「アタリをつける」ために手書きしています。


2017-sp-3B3-org.jpg 直

その後で、再度、道路そのものをチェックし、通るべき道筋を示す標識や地図、案内板などを整備するために、記号を付け、語義を書き込んでいきます。このような教師からの補助がなくてもスラスラ読める人は、記号に頼らずともいいでしょう。でも、そういう人であっても、悩みどころ、躓きどころは時々(しばしば?)訪れます。そのときに、自力で手がかりを作れるか?そういう観点で、簡単に思える英文であっても、メンテナンスをしておくことに意味はあります。四角化も、番付表も、いつの日か使わなくて済む日が来ることでしょう。でも、それは、英語の基礎力がついて、独り立ちできるようになった、ということであって、それまでに使ってきた記号の類が「誰にとっても価値のない古臭いガラクタ」ということではありません。

  • 基礎とは、あなたがどこにいても、どこに行っても、あなたの足元であなたを支えてくれる何かのことです。

本日はこの辺で。

本日のBGM: アイスタンドアローン(GLIM SPANKY)

書き手の筆、書き手の声

高3の進学クラスは流石に夏期課外講座から引き続き、「センター試験」の過去問を扱っています。とはいえ、私の授業なので、解法を伝授する、というよりは「ここまで読めるから答えが一つに決まる」というアプローチです。

訳読を忌避する人たちは昔も今も数多いますが、その人たちが訳読に代わるどのような細部の正確な読みを伝授してくれたかというと、甚だ心もとない「スキミング」だの「スキャニング」だのという、上滑りの top-topでいつまでも、bottomに辿り着かない、腑に落ちない、落ち着かない作業だったりします。

私の教室では、「速読」が求められるとか、「情報処理としての読解」が必要とかいうノイズには耳を貸さず、地道にはじめから順番に読んでいき、読めたところから全体像を構築し、更に読み進めて、自分がそこまでに描いた全体像を加筆修正していく、というようなまどろっこしい営みを求めています。わかるようになるまでは、かなり面倒で退屈です。自分で読めるようになるまでは、かなりつ(ま)ら(な)いです。

今週は、現在の第3問のBで出題されている、「不要文選択」問題。正確には、不要文を除くことで、パラグラフ内の文と文の「つながり」を強め、それぞれの文が主題の成立に貢献し収束する「まとまり」をより高める、ことを求める出題です。
私は、この「不要文選択」問題を、単なる「読解問題」とは捉えず、センター試験型の「多肢選択」による解答を求める試験における「ライティングの代替」問題として捉えて、授業準備をしていますが、それでも、多くの高校生にとっては、まず「読むこと」に困難を多く抱えることでしょうから、授業で扱った英文をもとに、問題の解法というよりも、「読むこと」を基盤とした英語学習、英語力の向上のための取り組みとして、ブログで再現、解説したいと思います。

ツイッターで一部、私の手書きノートの写真がアップされていたかと思いますが、当該の英文に対応して、そちらも再録しますので、併せてご覧下さい。

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17R-3B-1.jpg 直

では、まずこちらから。

2017年本試験3B-1

Wearing proper shoes can reduce problems with your feet.
Here are some important points to think about in order to choose the right shoes.

  • (1) Make sure the insole, the inner bottom part of the shoe, is made of material which absorbs the impact on your foot when walking.
  • (2) The upper part of the shoe should be made of breathable material such as leather or cloth.
  • (3) Some brand-name leather shoes are famous because of their fashionable designs.
  • (4) When you try on shoes, pay attention not only to their length but also to their depth and width.

Wearing the right shoes lets you enjoy walking with fewer problems.

まず、段落冒頭の下線部に移るまでの英文で「話題」と「主題」を掴むことが必要です。大事じゃなくて「必要」。英語が苦手な人の多くが、分かるところだけを摘み食いして、「話題」だけで引っ張っていき頓挫しています。

それでは、第1文。

  • Wearing proper shoes can reduce problems with your feet.

「適切な靴を履くことが足の問題を減らすことを可能にする。」

まずここで「話題」が提示されています。キーワードとなる、「靴」「問題」「足」がみな複数形であり、theがついていないことに注意して下さい。「無冠詞・複数・一般論」です。ここでの your は目の前のあなた、ではなく、誰にでも当てはまる一般論として使われています。(ここで、「読者」に向けられたyourとして意味を読んで「あなたの足」と理解しても、致命傷にはならないでしょうが、それが致命傷にならないとわかるのは、この英文が読めている人の判断です。)

ここでの主語は、wearingから始まる動名詞、つまり「ことがら」であって、shoesという「もの」ではない、ということがわかるかどうかは、結構大きな英語力ですが、そこで躓く人も、動名詞がわからないというよりは、ここで出てくる “proper” という形容詞を知らない、自分の守備範囲にない、というケースが多いように思います。文法がわからないまま読むのは交通ルールを知らずに車を走らせるようなものですが、語彙がない状態ではまず車が走ってくれません。どちらもきちんと学ぶ必要があります。文法については後でまた詳しく述べますが、ここでは語彙を。

properは「適切な、ふさわしい」という意味の形容詞です。『エースクラウン英和』では、CEFR-Jのランクで、A2という必修語扱いですが、CEFR本家とも言えるCambridge系の辞書ではB1表示なのです。

  • real, satisfactory, suitable, or correct

と定義されています。
World Book Dictionaryでは、

  • right for the occasion; fitting

という定義がなされています。英語が分かる人は、この段階で、「正しい」「ぴったり」という実感をもって読み進めることになります。

続いて、第2文。

  • Here are some important points to think about in order to choose the right shoes.

「正しい靴を選ぶために、考えるべき重要な点がいくつかある。」

ここで「主題」が提示されています。「重要な点」「考える」「選ぶ」「正しい靴」というキーワードを並べ、それを結びつけて日本語で、今の和訳のような理解ができる人は、もう既に英語が得意な人でしょう。

some important pointsの核になるpointsを四角化し、その右のto thinkを見たときに、そこから下線を延長してto原形で形合わせをする後置修飾だと分かるかどうか。
前置詞のaboutのあとに、前置詞のinが続いていて、気持ち悪い人がいるかもしれませんが、in は、"in order to 原形" のinで、aboutの直後が足跡です。そこには本来、四角化したpointsがいた跡なので、ルール違反にはなりません。このような大きな名詞のかたまりをつかめるかが重要です。
in order to 原形と単純なto原形との違いは「名詞でも形容詞でもなく、どどいつ(=副詞)ですよ」という目印、「結果ではなく目的ですよ」という目印です。

第1文の、properを受けて、ここでは、 the right shoes という表現を使っています。「履く前には選ぶ」ことが必要なので、「正しい靴を選ぶために」、いくつかのポイントを押さえるわけです。ここで「話題」が靴だからといって、rightが靴の右足の方だと勘違いしている人はいませんか?shoesと複数形であることも確認して下さい。ここは誤解を与えないためには、“the right pair of shoes” とでも書くべきところですね。

  • right = suitable or appropriate for a particular purpose, situation, or person (MW’s Learners)

という定義を見ると、英語のわかっている人は、「その靴を履く人にとってぴったりの;ふさわしい」という理解でこの先へと進むことがわかってもらえると思います。

ということで、ここから下線部祭りになりますが、この先の記述は、ここまでで明らかになった主題、

  • 選択するためのいくつかの要点を押さえ適切な靴を履くことが足に付随する問題を減らすことを可能にする。

を支持する、貢献する内容である必要があります。「不要文選択」という設問にはなっていますが、「足の問題に関連している?」「適切さに言及している?」「靴を選ぶ際の選択肢になっている?」などという判断のものさしを手元において、読み進めて下さい。

下線部の1,

  • (1) Make sure the insole, the inner bottom part of the shoe, is made of material which absorbs the impact on your foot when walking.

make sure は、英語が得意ではない人には酷な表現です。ここでは、thatの省略された節(私の授業では、その中にとじカッコのある「ワニ」)が来ています。
(?)「確かめる」というような日本語で覚えていると、後ろにthat節が続いているのに、あたかもwh-節や、if節であるかのように読んでしまい、多くの場面で誤読に繋がります。make sureの場合は、「確かめ」てもいいんですが、最終的に「そうなっていないとだめ」です。「確実に、ちゃんと…であるようにする」ということです。この文では、「the insole (靴の中敷き)がちゃんとした素材でできている」ものを「選んで履け」ということで主題に貢献します。

今、私が使った「ちゃんとしている」という表現は、主題のキーワードである proper, rightに合致するものですが、「どのようにちゃんとしているか?」が本文で適切に書かれているかを読み取ることが求められています。当然、主題のキーワード「足の問題(になりそうなこと)が軽減される」ような記述が予想されます。

“the insole(=中敷き)の直後に ,(=カマ) が来て、the inner bottom part of the shoe(=靴の底の内側の部分) という同格での言い換え(注釈)が来ていることに気づかないと、「ちゃんとした」に関わる要素が複数あると思ってしまいますが、2つ目の カマ の後の be動詞が、is ですから、主語は単数でないとおかしい、という抑止弁が働きます。
ただ、ここでは、同格の言い換え(注釈)がわかりにくいので、我慢のしどころでしょうか。
“is made of material which absorbs the impact …” は手がかりを作りながら順番に進んだほうがいいかもしれません。
まずは、小結の助動詞isでの受け身で、付き人の-ed/en形が、 made 。 A is made of B で、「AはBで作られている」という意味ですから、B = materialで中敷きの素材を例にとっています。では、どのような素材なのか?で「ちゃんと足の問題を軽減する」という記述になるはずですから(もしならなければ、この文は不適切ということです)、“material which absorbs the impact on your foot” の関係代名詞whichでの下線延長(=後置修飾)を辿って、absorb(=吸収する)という動詞を見たときに、「…を吸収する素材」という「もの」の確認をすることが大事です。そこから、absorb の目的語に来ている the impact on your foot の名詞+前置詞+名詞のひとかたまりが、「あなたの足への衝撃」=「足に付随する問題」の例だという理解ができることが望まれます。「四角化ドリル」の生きるところです。では、その「衝撃」はいつ起こるのか?当然、靴を履く場面なのですから、ここでのwhen walking は「歩く時」という理解でいいでしょう。whenが接続詞で、主語+be動詞となる “you are” の省略、と考えてもいいと思います。この場合は実際に歩く際の衝撃ですから。

  • 「衝撃を吸収する素材でできた中敷き」のある靴を選んで履くことで「(歩行時の足への衝撃という)足に付随する問題」を軽減できる。」

という内容で、主題に合致しています。

ここまでの名詞が単数形であることが気になる人がいるかも知れません。基本的に市販の靴では、右足と左足の構造や機能に差はないと考えれば、わざわざ複数形で「一揃い」にするまでもないことがわかるだろうと思います。

次に、下線部2です。

  • (2) The upper part of the shoe should be made of breathable material such as leather or cloth.

「靴のアッパーの部分は、天然皮革やキャンバスなどの通気性のある素材でできている方がいい」

ここでも「素材」の話ですが、部位・場所が違います。
the upper part of the shoe (靴底に対する、靴の上の部分。足のつま先から甲にかけての部分)の素材を取り上げています。第1文がmake sureだったのに対して、ここでは、
“should be made of …” と主張を表す横綱の助動詞 should が来ています。第1文と同様、この文も主題に合致するとすれば、「足に付随する問題とその軽減」に関わる記述となるはずです。
“breathable material” 「呼吸可能な素材」って何でしょう?裏返して、「呼吸不能な素材」とは?ここでは、靴の素材ですから、「通気性のある素材かどうか?」を取り上げています。「通気性がない」ことによって「足に生じる問題」って何でしょうか?
そう、「ムレ」ですね。「水虫」などの菌の増殖がすぐに思いつくでしょうが、これは本文には直接書いてありませんので、悩んだ人もいるかも知れません。
具体例としては、 “such as leather or cloth” 「天然皮革や生地(布地)」とあります。「革」や「キャンバス」ということですね。

続いて、下線部3。

  • (3) Some brand-name leather shoes are famous because of their fashionable designs.

今、下線部の2で「革靴」の話が出てきましたが、ここでは「革靴の中にはおしゃれなデザインで有名になっているものもある」と言っています。「名声とその理由」です。
主題は何だったか、を忘れないでください。「適切な靴の選択着用による足に付随する問題の軽減」だったはずですから、この下線部3は「不適切」な内容となります。
この下線部の記述が、もし主題に貢献するとすれば、この後に「名声」「ファッション性」によって起因する「足に生じる何らかの問題」が述べられなければだめです。例えば「靴の中にはデザインやファッション性を重視しているが、耐久性のない素材で作られているものがあり、そういう靴を長く着用すると、より早く足が疲労し障害を生む可能性がある」などという内容が続かなければならないでしょう。では、続きを読んでみましょう。

選択肢では最後となる下線部の4です。

  • (4) When you try on shoes, pay attention not only to their length but also to their depth and width.

「あなたが靴の試し履きをするときは、長さだけではなく、深さや幅にも注意しなさい」
“try on A” は、「Aを試しに着用してみる;試着する」。この場合は靴ですから「試しに履いてみる;試し履きする」ということです。下線部3を支持する内容にはなっていませんね。
“pay attention to …” で「…に注意する;気をつける」は大丈夫でしょうか?ここでは、私の授業でよく言う「だけじゃないTEIJIN」の、“not only B but also C and D” で、「BだけでなくCやDも」という情報の足し算がありますので、

  • their length は、既に筆者と読者で共有していることや一般常識、前提
  • their depth とwidthは、筆者が強調したいこと

を踏まえた上で、主題との合致を確認して下さい。靴を選ぶ際の sizeの一般常識は「長さ(=length)」ですね。

主題は「足に付随する問題」と「正しい靴の選択・着用」ですから、

  • length
  • depth
  • width

がそれぞれ、どのように「問題」になり、靴の選択によってそれが解消するのかを考えておきましょう。
それぞれの名詞の元になる形容詞はわかりますか?

  • long 長い
  • deep 深い
  • wide 広い

では、その対義語・反意語は?

  • short 短い
  • shallow 浅い
  • narrow 狭い

です。deep / shallowの対比は、日本語であれば、「甲が高いか低いか」ということになるでしょう。
ここで筆者が「問題視」しているのは、

  • あなたの足にとって、靴が too long or too short; too deep or too shallow; too wide or too narrowであることです。最大で、2x2x2で8パターンの「問題」が生じますが、これらの形容詞をまとめて、それらに、より上位の概念でラベルを貼るとすれば、
  • too tight or too loose

ということです。靴は「きつ過ぎても、ゆる過ぎてもだめ」という筆者の声が聞こえるでしょうか?では、「きつ過ぎもせず、ゆる過ぎもしない靴」とは?

最終の1文、

  • Wearing the right shoes lets you enjoy walking with fewer problems.

「正しい靴を履くことが、あなたに、より少ない問題で、歩くことを楽しませる」

という日本語で、なんだかわかったようなわからないような、ということはもうないでしょう?
キーワードの “the right shoes” も、下線部4で見たように、「あなたの足にきつ過ぎずゆる過ぎないピッタリ合った靴」という実感が湧きませんか?英英辞典の定義を確認したところを思い出してください。

  • right = suitable or appropriate for a particular purpose, situation, or person (MW’s Learners)

英語がわかっている人は、もう既に、この意味を頭の中に持って、ここまで読み進めてきたわけです。

ここでも、主語は、靴ではなく、wearing = (靴を)履くこと、と「ことがら」であることに注意して下さい。
“enjoy –ing” で、「歩行、ウォーキングを楽しめる」「楽しんでウォーキングできる」という意味がわかるのは、“let +人・もの+原形” での、使役動詞let の理解が前提です。映画『アナ雪』のテーマ曲での “let it go” ですっかりお馴染みでしょう。『アナ雪』であれば、「人・ものの意向・成り行きに任せる」「したいことをさせる;能力を開放させる」という場面がイメージできるかと。

ここでは、「ウォーキングを楽しみたいと思っているものの、足に問題を抱えていて楽しめない人も、正しい靴を履くことで、その問題は軽減して、楽しみたいという気持ちに任せられますよ」という締めくくりとなっています。

最後の “with fewer problems” という表現の「比較級」fewer を見落とさないで下さい。「より少ない問題」、つまり「軽減された問題」ということで、主題を提示した文章の冒頭の、

  • Wearing proper shoes can reduce problems with your feet.

の “reduce” に対応しています。

ここで、冒頭の文は can と助動詞だったのに、最終文は、 “Wearing the right shoes lets you enjoy walking with fewer problems.” と現在形が使われていることに納得がいかない人がいるかも知れません。この最終文での現在形となっている動詞はletです。使役動詞として使うletは「(結果として)可能にする」という意味を含んでいますから、意味の上でもきちんと冒頭の文に対応しているのです。

ということで、まどろっこしく、一つ一つ読んではちょっと戻り、また全体を見渡して、最後まで読み進めてきました。ここで、この完成した文章(段落)全体をもう一度通して読み直して下さい。

Wearing proper shoes can reduce problems with your feet. Here are some important points to think about in order to choose the right shoes. Make sure the insole, the inner bottom part of the shoe, is made of material which absorbs the impact on your foot when walking. The upper part of the shoe should be made of breathable material such as leather or cloth. When you try on shoes, pay attention not only to their length but also to their depth and width. Wearing the right shoes lets you enjoy walking with fewer problems. (95 words)

TTSによる音源はこちら
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遅めのTTS音源がこちら
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英文を読み解く際の問題が少し軽減された感じがしませんか?まだ難しく感じますか?「こんなやさしい英文で、わかりきったことをクドクドモッタイつけて話していないで、ズバリ本質を解説してくれ!」と感じますか?

あなたにぴったりの教材、学習材を選んで学ぶことも、靴選びと同様、またはそれ以上に、あなたの「学び」に付随する問題を軽減するのではないでしょうか、と述べて本日は終わりにしたいと思います。ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

本日のBGM: 耳をすまして(冬にわかれて)

試行錯誤

些か旧聞にはなりますが、今年(2018年)の2月に広島大学で開催された、

全国英語教育学会・小学校英語教育学会 2017年度第3回英語教育セミナー
2018年2月11日(日・祝)15:40-16:40
於:広島大学 教育学部(東広島キャンパス)K104講義室

セミナー② 
「体を表わし得る名とは?:
ライティング課題における「お題」と「テクスト」を見直したい」

での発表資料をこちらで公開します。

セミナーの翌週での振り返りは既に記事にしていましたので、そちらも併せてご覧下さい。

http://tmrowing.hatenablog.com/entry/2018/02/16/071840

一部、公益財団法人である「英検協会」の出題での著作権に関わる資料がこちらでは示せませんが、資料に表示されているリンク先を見ていただければ分かる範囲だろうと思います。

20180211広島レジュメ公開可能版.pdf 直
広大セミナースライドのコピー.pdf 直

  • 国産の「ヨンギノー」試験の「ライティング」では、とかく「お題作文」で「意見文」を書かせようとしすぎなのではないか?
  • さらには、お題の設定がお粗末なために、受験者の答案が一定のベクトルに収まらずに、適切な評価ができていないのではないか?

などなど、指導者も受験者も「腑に落ちない」ことがあるのではないかと、常日頃感じているのですが、そういった議論の端緒となれば、と思っています。

資料の中で、ケンブリッジのWrite & Improve の活用例も示していますので、ケンブリッジ英検の受検予定があるなしに関わらず、この機会に試してみて下さい。高額な受験料を払わなくても、かなり有益なフィードバックを得ることができます。指導者が使うだけでも、指導への「気付き」をもらえるのではないでしょうか?

本日のBGM: アイデア(星野 源)

「はてなダイアリー」終了の予告

突然ですが、「はてなダイアリー」が近々終了します。
いや、私の都合ではなく、「はてな」側の都合です。

「はてなからのお知らせ」がこちら

2019年春「はてなダイアリー」終了のお知らせと「はてなブログ」への移行のお願い
http://d.hatena.ne.jp/hatenadiary/20180830/blog_unify

どんなファイルでもアーカイブが手軽に作れることで、はてなダイアリーを続けてきました。現在も、「はてなダイアリー」の方で記事を書いて tmrowing at best にアップし、同じものを「はてなブログ」の “tmrowing at second best” に転載しています。しかしながら、「はてなブログ」の設定では、画像・動画ファイルには柔軟に対応していて、機能も充実しているのですが、ワークシートやハンドアウトのワードファイルやpdf、PowerPointのスライドなど、画像・動画以外のファイルをアップロードすることができませんので、アーカイブとして使う場合にも、「はてなダイアリー」でファイルアップロードをして、そこから「はてなブログ」にリンクが張られるという運用です。

そのため、「ダイアリー」終了後は、新規のファイルアップロードができなくなります。このブログを始めた目的が、そもそも授業日誌、実践記録であることを考えると、ファイルが手軽にアップロードできないというのは、大きなハンデ、デメリットとなります。ということで、「はてなダイアリー」終了後に、「はてなブログ」だけで継続していくかは現時点では未定です。

「はてなダイアリー」で研究部会用アーカイブと授業日誌を兼ねて始めた2004年から足かけ14年。総エントリーが1800日強、ダウンロード可能なファイルは1100強あります。とりわけ、2005年度〜2006年度の授業実践記録は資料的価値の高いものになるかと思います。

「終了までまだ半年ある」などと思っていると、ファイルのダウンロードなど、巡回ソフトで一括処理できないものが多々あると思いますので、今のうちから、目ぼしいものを拾い集めていただけると慌てずに済むと思います。

「英語教育」や「英語学習」でこれだけ広範囲のテーマを扱って現職高校教員が(しかも実名で)書いているブログは、他にはないと思いますので、DLだけではなく、過去ログも、今のうちの読める間に読んでおいて下さい。

本日のBGM: Ochansensu-Su (Audiotree Live Vwesion)/ tricot

「忘れられたものたちのダンスは続いてる」

呟きの方で再び話題に上った、2012年のELEC協議会での発表資料を小分けにしてファイルサイズを落として、再度公開します。
伝統的な指導法では、所謂「英作文」とか「自由英作文」などと称される英文ライティングのための「教材」「教本」にあたります。「基本例文集・暗唱例文集」から「日本文学の翻訳」まで、伝統的な指導法を知る機会自体が今後は失われていくのだろう、という思いから、再度アップする次第です。

通し番号は、表紙にあるもので確認して下さい。

セミナーそのもののレジュメはこちらです。

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/files/2012_ELEC_summer_matsui_downsized_public.pdf?d=y

以下、画像ファイルの貼り付けで、若干重いものもあるので、スマホ等でのダウンロードにはご注意下さい。

① ~ ③
ELEC 2012夏期資料1.pdf 直

④ ~ ⑥
ELEC 2012 夏期資料2.pdf 直

⑦ & ⑧
ELEC 2012 夏期資料3.pdf 直

⑨ & ⑩
ELEC 2012 夏期資料4.pdf 直


ELEC 2012 夏期資料5.pdf 直

⑫ ~ ⑭
ELEC 2012 夏期資料6.pdf 直


ELEC 2012 夏期資料7.pdf 直

⑯ & ⑰
ELEC 2012夏期資料8.pdf 直

本日のBGM: たよりないもののために(寺尾紗穂)

残暑というには暑すぎるけれど…。

6月上旬、とても悲しい出来事があり、妻も私も失意の中、日々の小さな出来事に喜びを見いだし、幸せを感じるようにしてきたのですが、西日本豪雨での甚大な被害、敬愛するフィギュアスケーターのデニス・テン氏の訃報、そして、とてもとても、という酷暑の続く夏に、心身ともにかなり疲れています。皆様におかれましてはいかがお過ごしですか?

私の最近のupsとしては、昭和の香り漂う「俵山温泉」に久しぶりに妻と出かけたことと、台風が気になる中、The Ice 大阪公演に妻と出かけてきて、しばし高揚感を得たことでしょうか。The Iceでは、第1部の最後には、デニス追悼の群舞、そして、ロシアのセルゲイ・ヴォロノフ選手は今季のフリープログラムのお披露目をしてくれました。このプログラムの振り付けがデニスだったのでした。

本業では国体の中国地区ブロック予選が地元の山口開催で、配艇委員長を仰せつかり、テントの中だからと油断していて、前腕部が大日焼けで大変な思いをしましたが、無事終了。その後、今季は基本、開店休業です。

一方生業の「英語教育」では、今季唯一のお座敷というのでしょうか、この企画で登壇します。

LET2018大阪大会
2018年8月7日 - 9日
千里ライフサイエンスセンター

http://www.j-let.org/let2018/page_20171216120034

私の出番は、最終日の9日の最後にある「パネルディスカッション」です。
司会は広島大学の柳瀬陽介氏、パネリストは静岡大学の亘理陽一氏、関西学院大学の寺沢拓敬氏、そして私。そうです、このパネリストは「第8回山口県英語教育フォーラム」の講師と全く同じなんですね。

早速、柳瀬氏からはブログでスライドが公開されていました (https://yanaseyosuke.blogspot.com/2018/08/let.html) ので、私も暫定版のスライドがダウンロードできるようにこちらにリンクをお知らせしておきます。pdfに圧縮していますので、多少読みづらいところがあるやも知れませんが、ご容赦を。

「統合はいいことか?2015年の『高3英語力調査を振り返る』」(暫定版)
LET2018 大阪 松井 鍵版.pdf 直

当日配布資料はありませんので、当日、フロアから奮って「参戦」したい方や、遠方で参加できない方などは、こちらからダウンロードして下さい。暫定版ですので、直前まで若干の変更があることをご了承願います。
大会終了後、こちらでまた詳細を報告し、資料を公開したいと思います。

大会の盛会を祈念して。

本日のBGM: 輝きだして走ってく(サンボマスター)

※2018年8月12日追記:

LETでの松井発表スライドの引用&参照資料をこちらに示しておきます。全て2018年8月12日現在。

「平成26年度 英語力調査結果(高校3年生)の速報(概要)」(2015年3月)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/106/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2015/03/26/1356067_03_1.pdf

「平成26年度 英語教育改善のための英語力調査事業報告」(2015年5月)http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaikokugo/1358258.htm

「生徒の英語力向上推進プラン」について(2015年12月)
http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaikokugo/1358906.htm

「平成27年度 英語力調査結果(高校3年生)の速報(概要)」(2016年3月)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/058/siryo/__icsFiles/afieldfile/2016/03/23/1367581_2.pdf

平成27年度英語教育改善のための英語力調査事業報告 (2016年12月)
http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaikokugo/1377767.htm

平成28年度英語教育改善のための英語力調査 報告書 (中学3年のみ;速報版は2017年3月。報告書は2017年7月)
http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaikokugo/1382899.htm

平成29年度英語教育改善のための英語力調査 事業報告(中3&高3;速報版・概要は2018年4月。報告書は8月12日現在で未だ掲載されず。)
http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaikokugo/1403470.htm

CEFRとのヒモ付け等のための詳細なマニュアル (2009年)
Relating Language Examinations to the Common European Framework of
Reference for Languages: Learning, Teaching, Assessment (CEFR): A Manual
http://rm.coe.int/CoERMPublicCommonSearchServices/DisplayDCTMContent?documentId=0900001680667a2d

上記マニュアルのテスト開発者・実施者向けガイドブック (2011年)
Manual for Language Test Development and Examining for use with the CEFR
https://rm.coe.int/manual-for-language-test-development-and-examining-for-use-with-the-ce/1680667a2b

David Little, Leni Dam, Lienhard Legenhausen. 2017. Language Learner Autonomy: Theory, Practice and Research (Second Language Acquisition)

安井稔『英語教育の中の英語学』(大修館書店、1973年)

このブログの過去のエントリーでは、こちらにその時々の暫定的なまとめがあります。

平成26年度版(初年度調査)に関して
「ゆう」に「こ」とかいてYOU子?
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20150620

平成27年度版に関して
「空の上はいつも青空」
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20160325

♪ 明日が晴れますように ♪

先週末からの未曾有の大雨で、西日本では甚大な被害が出ている。
中国地方でも、広島、岡山、四国など平常に戻るのが大変な地域、人が多いことだろう。
私の住む山口県中部は比較的被害が少なかったが、それでも交通機関は止まり、一学期の期末試験を二日繰り下げ、高三の模擬試験を順延して、月曜日から期末試験再開。
成績処理や保護者を交えた三者懇談などの予定は決まっているので、学期末の喧騒に輪をかけた慌ただしさとなっている。本日、ようやく期末試験が終了した。
私は、高三の担任なので、「センター試験」の中国四国ブロック「説明協議会」に出張するため、明日は岡山へ。でも、岡山や広島、四国側など甚大な被害を受けた地域の先生方は説明会どころじゃないだろう。今月末に、再度説明協議会が開催されるとのこと。

説明協議会(近畿地区、中国・四国地区)の追加開催について
http://www.dnc.ac.jp/news/20180709-05.html

それまでにできる限りの復旧がなされるよう、お上には尽力していただきたい。

さて、
期末試験の採点をしていて、定着している事項とそうではない事項とを眺め、自分の指導の至らなさを振り返ったり、生徒の取り組みの不味さを思い起こしたりするわけです。
日本の英語教育の文脈でも、明示的な文法指導の有効性に疑問符がつけられて久しいけれど、私は「説明することばの精度を高める」ことに腐心しています。
「レファレンス」を整備して、自分が理解できない意味や構造を確認したり、自分が言いたくても言えなかった「意味」に適切な形を与えたりする「足場」を提供することに意味はあるだろうし、タスクや活動で、こちらの仕掛けに気づき損なった場合の「セーフティネット」を用意することにも大きな意味があるだろうと思っています。

因に、私の授業では高一の終わりから、高二の始めにかけて、授業中の活動やドリルや解説を聞く(読む)ことを通じて、次のような「知識」が授けられてい(ることになってい)ます。

・名詞の三分類は、人、もの、こと。ものとことの境界線は曖昧。(人とことの境界線も時に曖昧)
boys and girls / a husband and a wife / a couple / a lot of people / a lot of money / answer / choice
・前置詞は名詞の前に置く詞(ことば)。次に名詞が来ますよと前置きする詞(ことば)。
at school / on the desk / in the morning / around the corner / in the future
notebooks on the desk / a post office around the corner / a table for two

・ことがらはワニの口。ウ○コ漏らすな○ロ吐くな ( = どこからどこまでがワニなのかを見極めろ)。
sending an e-mail / singing in chorus / playing soccer after school / studying overseas in the near future / How about going shopping and seeing a movie?

・前置詞の後に動詞のままでは置けないので、 -ing形というワニ(=名詞句)にして形合わせをする。でも、to+原形の場合は前置詞の直後に置くことはできない。

to study overseas after finishing high school
a machine used for making water warmer

・形合わせをした -ing 形や to+原形は時制を放棄したため、基準時制を持つメインのとじカッコとの関係しか表せないので、基準時制より前のことを表し時制をさかのぼる場合には大関の助動詞 have の助けを借りる。
I’m sorry to have kept you waiting.
His father is proud of having played in the Koshien Stadium in his youth.

・横綱の助動詞には過去形はあるが過去完了形がない。なぜなら、横綱は大関よりもランクが上の助動詞だから大関の後ろには絶対に行かないから。
・横綱の過去形は、過去の内容を表すのではなく、話し手の気持ち/世界の見方が現実離れ(=タイプII)であることを示すのに使われることがあるので、タイプIIIで時制をさかのぼる場合には横綱の付き人に大関 have の助けを借りて、時制をさかのぼることになる。
You should have known better.
That accident could have been worse.


・意味順で、「私は→好きだ→その犬を」は 文 であって、英語では I like the dog. となるのに対して、「私の好きな犬」は大きな名詞のかたまりであって、四角+四角+とじかっこ+足跡で、the dog I like となる。とじカッコがあるので、「好き」なのはいつなのかが明示されている。これが、the dog I liked であれば、とじカッコのつくlikedが「過去形」なので、「私が好きだった犬」という名詞の大きなかたまりとなる。

・意味順で、「その鳥は → います → 屋根の上に」は、文であって、英語ではThe bird is on the roof. となるのに対して、「屋根の上のその鳥」は、名詞の大きなかたまりであり、the bird on the roofとなる。こちらにはとじカッコがないことに注意が必要。
一方、「その鳥は→です→死にかかっている→屋根の上で」は、文であって、The bird is dying on the roof. となるのに対して、「屋根の上で死にかかっている鳥」は、大きな名詞のかたまりであり、名詞the birdから下線延長でとじカッコを使わずに形合わせだけで the bird dying on the roofとなる。

・意味順で、「その本は→です→書かれている →英語で」は、文であって、英語ではThe book is written in English. となるのに対して、「英語で書かれているその本」は名詞の大きなかたまりであり、名詞 the book から下線延長でとじかっこを使わずに形合わせをして、the book written in Englishとなる。

というところがハイライトですかね。
一見、意味順と似ている、「スラッシュ読み」とか「スラッシュ訳」などという、便法が中高現場に入って来て久しいのですが、このような名詞句の限定表現と日本語表現の基礎基本、原理原則に無頓着な「シドウホウ」によって、知識の定着さえままならない学習者が増えているように感じています。私の授業のように、豊富な類例との出会いを重ねる中で、徐々に知識の輪郭を明瞭にすることを指向している場合でさえ、最初のターゲットの補足に失敗した者は、苦労し続けることになりますから。

たとえば、四角化ドリルの「その4」で「崖ポニョ」のシリーズを惰性でやっていてはダメなんですよ。四角化ドリルはそれ自体で完結する「閉じた学習材」ではありません。そこを手がかり足がかりにして虫の視座を広げ高めるためのものですから。

2018「名詞は四角化で視覚化」 ドリル_1-6.pdf 直

また、四角化ドリル「その13」の名詞の前や後ろにくる –ing形の意味と働き、「その14」で、名詞の前や後ろにくる –ed/en形の意味と働きをザーっと眺めたら、英文の実例にたくさん触れて、更なる出会いをセルフプロヂュースすることが大事。

2018「四角化ドリル」_7_15.pdf 直

教室の中にも、教室の外にも「英語による意味交渉を要求される切実な現実」は希薄ですから、自ら生き直す気構えやそのような体質改善こそが求められるのだと、最近では感じています。
でも、殆どの学習者は、誰かが更にお膳立てしてくれないとやらないんですよね。

教える方も学ぶ方もエネルギーを使いますけれど、そのことばの「生息域」を感じられるような「実例」を求め続けるか、そうでなければ、自分で言いたいこと、内容を「英語の流儀に合わせて」日本語でたくさん書きだしておくこと、「英語で考える」手前で、「英語流に考える」ことを勧めています。この「英語の流儀」こそが文法であり、語法とも言えるのですけれど。
今回の期末試験の問題から抜粋しておきます。

IV. 1 - 8 のそれぞれに続けるのに最も意味が整合する内容を a - h より選び英文を完成せよ。

1. Without your help, [ ].
2. With little more practice, [ ].
3. I might have read the book, [ ].
4. You must have had a hard life [ ].
5. She looks happy today. [ ].
6. I can’t find my glasses. [ ].
7. I don’t see their car. [ ].
8. We had a great time at the party last night. [ ].

a. when you were a child
b. you ought to have come
c. he would have succeeded
d. they must have gone home
e. but I don’t remember if I have
f. he would have failed in the test
g. I might have left them behind in the train
h. something good might have happened yesterday

V. 日本には、七夕に短冊に願いを書く風習があります。例にならって、あなたの願いをタイプIIとタイプIIIそれぞれで英語で書き、その願いが適うためのサポートも付け加えなさい。表面が願い、裏面がサポートだと想定します。

タイプIIの例

  • 願い: I wish I had another big typhoon.  
  • サポート: Then, the term end exams would be put off again.

タイプIII の例

  • 願い: I wish I had studied English harder in May and June.
  • サポート:Then, I would have been more prepared for the term end exam.

この「タイプII」の例で示した、「また大きな台風が来ればいいなぁ」「そうしたら試験がまた延期になるのに」という願望が、今回の未曾有の豪雨による被害に照らして「不謹慎だ!」という誹りを受けるやもしれません。ただ、もし生徒の中からそのような声が上がるようならば、自分の「現実」を踏まえて「タイプIIの願望」を表出し、そのこと自体を「後悔」していることを「タイプIII」でまた表出する機会を得たという見方もできるわけです。所謂「仮定法」という現実離れした項目を扱っているにも関わらずその「現実と願望」「してしまったことを後悔する気持ち」などを「リアルに」感じとれたということですから、学びの足場の確認にはなったのではないかと思っています。

私が授業中にそれこそ二万回くらい言っている、「ことばを生き直しなさい」ということばに込められた意味を反芻して欲しいと星に願いをかけています。

本日のBGM: All of Us (Glim Spanky)

『悲しいほどお天気』

あっという間に6月も下旬。前回のエントリーから一月経ちました。
梅雨5号も去り、今6号が近づいているという感じでしょうか?

現任校には「進学に特化したクラス」が学年に一つ設置され、今年はその高3年の担任なので、大学の入試結果の業者によるデータ分析や各大学の入試要項が確定するこの時期は「入試説明会」での出張が増えてきます。6月だけで大学と業者と合わせて8回あります。うち一つは県外へ。

授業を午前中に繰り上げて、午後に出るわけですが、週に2回とか午前を4コマ連続で詰めて午後出張とかになると、結局、多読のノートチェックとか、ワークシートのカスタマイズや印刷などをする時間がなく、翌朝勤務時間よりかなり早く出校しなければならなくなります。ダメージがボディブローのように蓄積されてきます。行き先では、ホテルの会場などが多いので、2時間座りっぱなしで、エアコンの冷気で頭からやられたりもします。当然、そのダメージの影響は、日々の授業にしみ出てきます。私が一番嫌いな授業の精度の劣化です。土曜日には午前中に課外講座が入っていますが、そこでは本来課外の狙いである、「更なる高みへ」「更なる豊かさを」という講座よりは、平常の授業のひび割れ、水漏れの修繕補修に近い内容になります。本末転倒ですね。

来週は期末テストで、その作問もありますが、今年は、英語の授業(と総合的学習の時間)が3学年にまたがり8種類18時間を担当しているので、まさに「祭り」となります。で、その期末テスト中に2つの大学の入試説明会があり、一つは県外へ。午前中に試験監督、昼前には出発という感じでしょうか。テスト週の週末土曜日には私学協会主催の民間英語試験勢揃いのデモで大阪へ日帰りで、翌日曜は終日で模擬試験監督。翌週には、センター試験のブロック説明会が岡山でありますから、それにも行くことになります。こんな環境で働きたいという奇特な方、どこかにいらっしゃいますか?

このブログも含めて、SNSでも英語学習や授業に関わる「教材」「学習材」を貼り付けて公開したり、英語ということばの「生息域」や「スキル」に関わる情報や指導法を発信していますが、そろそろ私の心身も限界に近いので、今のうちに、ダウンロードできるものはダウンロードしておいた方がいいですよ。いつなくなるかわかりませんから。

ということで実作の記録をば。
今年の高1再入門での「不規則動詞活用表」です。

不規則動詞活用2018.pdf 直
不規則動詞活用2018.ABB_bxls.pdf 直

不規則とは言え、規則変化に似た活用となる ABB型です。
昨年度のものから、配列を少しだけ変えました。
所謂「現在完了」、私の授業では助動詞の番付表の「大関」の用法で個々の用例、動詞を扱ったあとで、この表を提示しています。

現在完了の単元での印象的なエピソードから。

「期間」や「起源・起点」のない、大関単独の場合は、その付き人になってる動詞と、その次に続く「どどいつ」の要素との組み合わせで、「成果・達成感」を表すことが多い。

として示した用例で、

  • Mr. Matsui has live in Yamaguchi since 2007.
  • Mr. Matsui has lived in Yamaguchi.

では、後者は「成果・達成感」の読みをしようにも、「山口に」という副詞句が不自然で、「山口に暮らすことが普通の人には高いハードルである」かのような印象を与える、という補足をしています。この段階ではまだ、関脇との合体ロボ、所謂「現在完了進行形」は取り上げていません。

そこから、

  • I have learned 1000 English words. 英単語を千語覚えました。

という例を示したところ、「英単語1000語覚えたくらいで何をドヤ顔してるのかしら」というような顔で私を見た生徒がいたのが意外でした。その生徒にとっては何千語レベルが「ドヤ顔」対象なのか、聞いておけばよかった。

もう一つのエピソードは、発音と綴り字。
往々にして「ドヤ顔」を示すような場面、

  • I have lost my smartphone.

のように、「成果」「達成感」の逆で、「失敗」「喪失感」を表すにも使えますからね、と確認したあと、「lostは-ed/en形で形合わせ、では元の形は?」という問いに "lose" はだいたい皆言えるんです。口頭でなら。
で「loseの綴り字は?」となると怪しい者がチラホラ。
その場で取り繕うことができるのは、せいぜい、

chooseはooと二つ並んでたけど、loseは o が一つ。あれ?oを一つ失っちゃたのかな?

ということくらいでした。このloseの -o- の類例で直ぐ思いつくのは do / move / twoくらいですからね。(cf. 成田圭市『英語の綴りと発音』)

綴り字と発音に関しては、入門期に限らず、何処かの段階で「きちんと」学習しなければならないだろうと思っています。「それぞれ・それなり」を受け入れられれば、あまり悩まなくても「そのうち」なんとかなりますが、「どのうち」にも「お家事情」があり、単純に急いだり、他に先んじようとしたりすることから不幸が始まります。小学校くらいで所謂「フォニックス」を教わっているからといって、本当に身に付いているかどうかは一人一人確かめてみないとわからないもの。本当ですよ。「礼儀正しい母音」とか覚えてきちゃったりしますから。

高2は、所謂「仮定法」を学んでいます。
かつての名プログラムだった大田洋先生の『レベルアップ英文法』の2007年3月号から、スキットを取り上げて導入しています。
そこからの流れで、今週はI wish を。
私の授業では、

仮定法過去
仮定法過去完了

という用語ではなく、それぞれ

タイプ 2
タイプ 3

と、その「ラベル」自体に意味を持たせない分類をしているが助動詞の過去形の用法→助動詞+完了形を十分に扱ってから指導するようにシラバスを組んでいます。
私自身が高校1年生のときに長崎玄弥氏の本で行った練習方法を高2の生徒相手に再現しています。
教材にありがちな、

  • I wish I knew her address.

の文で願望や妄想を確認し
で、「そのココロは?」と自問して、

  • Then, I could send her a gift on her birthday.

とでもいうような、オチをつける所から。

願望や妄想はいろいろあるだろうから、それを日本語でいいから20個くらい吐き出して、I wish に続けて、それに対応したThen, ....の結びも、日本語でいいから書き出して見る。まずは、タイプ2から。

と指示して、個人で吐き出し→少人数でのシェアリングへという流れで。
この作業を観察して分かるのは、母語である日本語で考え、書き出しているのに、タイプ2ではなくタイプ3の内容を願望・妄想し、結びに四苦八苦している者がいることです。
「高所恐怖症じゃなかったらなぁ…」と「あのハンドがなかったらなぁ…」の「なかったらなぁ」の違いに無自覚ということでもあります。

こういうことを言うと、「だから日本語を介在させないで『英語は英語で』!」というXXXな人もいるかもしれませんが、そもそも、その英文を見聞きしたり口にしたり書いたりしている者の頭の中、心の中に、本当に「そういう意味」がある保証は?という「?」が教える者の側にあることこそが大事だという話をしているんですよ。
指導手順としては、

  • I wish [A=タイプ2]. Then, [B=タイプ2]. の日本語版20セットが出来たら、その中から1つでも、2つでも、英語でも言えそうとか、言いたいというものを選んで英語にする。
  • 次に、そのA, B を、If A, B.の型に移し替え、所謂「仮定法過去」の文例にする。

というのが長崎氏の教えの私流味付けです。これで、だいたいの生徒が「発想」に馴染んで、では英語という「言語」の問題へ、と順調に進めていたのは数年前まで。最近は、なかなかうまく行きません。白板に各自のベスト願望・妄想のセットを日本語のまま転記させると先程のAとBを全く逆に書く者が出てきます。
また、当然、タイプ3では、過去の出来事や行為の「やってまった」後悔、または、できなかった、しなかったことの卓袱台返しを扱うのですが、タイプ2の例を日本語で考える段階で、それがタイプ2ではなくタイプ3だ、ということが分からないものも出てきます。
自分の願望・妄想ランキングの上位というかワースト例は、できれば人に言いたくないなぁ、とは思っても、20セットも作れば一つくらいは他人に言えるものが残るものです。そもそも、教科書や市販の教材、模試での出題例などで扱われる例文の無味乾燥さ、リアリティのなさ(単元が「仮定法」ということを抜きにしてもの話です)を克服し、英語の世界を「生き直す」ことを狙いとして始めた活動・作業ですが、総じて、当たり障りのない、「…ならなぁ」が白版に並ぶことになると、「今、リセットしてやり直せたらなぁ」とか「…嗚呼、こんな課題与えるんじゃなかった」ということになってしまいます。

これは本当に英語以前&興味関心以前の問題で、「どうすりゃいいぜ」案件です。

ちなみに、「仮定法」の導入に際して、ピックアップした例文は、

  • If I were you, I would ….

ですが、これをFree substitutionのドリルにしていました。

このときにも、市販教材にありがちな、

  • If I were you, I wouldn’t do such a thing.

などという用例で「そんなことって、どんなこと?」という問いからスタートです。

道路交通法で示されている、自転車の運転に関する「違反」をプリントアウトしたものを見せたり、国会で話題の公文書の改竄や、国会での虚偽答弁などを取り上げ、「日本語」でなら想起できる、実感できるものを取り上げています。

それにしても、日本のものに限らず、重要例文、基本例文として用いる語句として、”such a thing” などを入れても平気な神経が私には理解しがたいです。少なくとも、その前の一文が場面や対人関係をより明らかにし、意味を一定の枠に収めるような配慮がなければダメでしょう。教材作成者や編集者には猛省を促したいと思います。

高3では、折りに触れ「覚えるべきことは覚えなければダメですよ」と言っています。
いくら、四角化ドリルやP単のフレーズなど、チャンクごとに「プレハブ」を作って仕込んでも、それを組み立てる基準となる設計図や現場監督は必要となるもの。でも、そこは気にしないで、自分の慣れ親しんだ味だけつまみ食いしてきて学年が進むと悲劇しかないです。いや、ホントに笑えないですから。

15年程前の中学校の検定教科書数社から選んで編んだ『ぜったい音読』(講談社)を高1の再入門教材として、意味順英作文をテキストとし、私の授業の定番でもある「名詞は四角化で視覚化」のドリルと助動詞の番付表というメニューをもってしても救えない段階まできてしまったなぁ、という今日此の頃です。
語彙にしろ、文法にしろ、用法にしろ、「もの」として保持しようとしたり、貯めようとしたりするから、肝心な「こと」が逃げていくんだと思います。
光岡導師のおっしゃることと重なります。次のリンク先のスレッドを最後までお読み下さい。

心にせよ、身体にせよ、それは“こと”であり「もの」ではない。
https://twitter.com/McLaird44/status/1009276125229432832

本日はこの辺で。

本日のBGM: Destiny (松任谷由実)