♪ 明日が晴れますように ♪

先週末からの未曾有の大雨で、西日本では甚大な被害が出ている。
中国地方でも、広島、岡山、四国など平常に戻るのが大変な地域、人が多いことだろう。
私の住む山口県中部は比較的被害が少なかったが、それでも交通機関は止まり、一学期の期末試験を二日繰り下げ、高三の模擬試験を順延して、月曜日から期末試験再開。
成績処理や保護者を交えた三者懇談などの予定は決まっているので、学期末の喧騒に輪をかけた慌ただしさとなっている。本日、ようやく期末試験が終了した。
私は、高三の担任なので、「センター試験」の中国四国ブロック「説明協議会」に出張するため、明日は岡山へ。でも、岡山や広島、四国側など甚大な被害を受けた地域の先生方は説明会どころじゃないだろう。今月末に、再度説明協議会が開催されるとのこと。

説明協議会(近畿地区、中国・四国地区)の追加開催について
http://www.dnc.ac.jp/news/20180709-05.html

それまでにできる限りの復旧がなされるよう、お上には尽力していただきたい。

さて、
期末試験の採点をしていて、定着している事項とそうではない事項とを眺め、自分の指導の至らなさを振り返ったり、生徒の取り組みの不味さを思い起こしたりするわけです。
日本の英語教育の文脈でも、明示的な文法指導の有効性に疑問符がつけられて久しいけれど、私は「説明することばの精度を高める」ことに腐心しています。
「レファレンス」を整備して、自分が理解できない意味や構造を確認したり、自分が言いたくても言えなかった「意味」に適切な形を与えたりする「足場」を提供することに意味はあるだろうし、タスクや活動で、こちらの仕掛けに気づき損なった場合の「セーフティネット」を用意することにも大きな意味があるだろうと思っています。

因に、私の授業では高一の終わりから、高二の始めにかけて、授業中の活動やドリルや解説を聞く(読む)ことを通じて、次のような「知識」が授けられてい(ることになってい)ます。

・名詞の三分類は、人、もの、こと。ものとことの境界線は曖昧。(人とことの境界線も時に曖昧)
boys and girls / a husband and a wife / a couple / a lot of people / a lot of money / answer / choice
・前置詞は名詞の前に置く詞(ことば)。次に名詞が来ますよと前置きする詞(ことば)。
at school / on the desk / in the morning / around the corner / in the future
notebooks on the desk / a post office around the corner / a table for two

・ことがらはワニの口。ウ○コ漏らすな○ロ吐くな ( = どこからどこまでがワニなのかを見極めろ)。
sending an e-mail / singing in chorus / playing soccer after school / studying overseas in the near future / How about going shopping and seeing a movie?

・前置詞の後に動詞のままでは置けないので、 -ing形というワニ(=名詞句)にして形合わせをする。でも、to+原形の場合は前置詞の直後に置くことはできない。

to study overseas after finishing high school
a machine used for making water warmer

・形合わせをした -ing 形や to+原形は時制を放棄したため、基準時制を持つメインのとじカッコとの関係しか表せないので、基準時制より前のことを表し時制をさかのぼる場合には大関の助動詞 have の助けを借りる。
I’m sorry to have kept you waiting.
His father is proud of having played in the Koshien Stadium in his youth.

・横綱の助動詞には過去形はあるが過去完了形がない。なぜなら、横綱は大関よりもランクが上の助動詞だから大関の後ろには絶対に行かないから。
・横綱の過去形は、過去の内容を表すのではなく、話し手の気持ち/世界の見方が現実離れ(=タイプII)であることを示すのに使われることがあるので、タイプIIIで時制をさかのぼる場合には横綱の付き人に大関 have の助けを借りて、時制をさかのぼることになる。
You should have known better.
That accident could have been worse.


・意味順で、「私は→好きだ→その犬を」は 文 であって、英語では I like the dog. となるのに対して、「私の好きな犬」は大きな名詞のかたまりであって、四角+四角+とじかっこ+足跡で、the dog I like となる。とじカッコがあるので、「好き」なのはいつなのかが明示されている。これが、the dog I liked であれば、とじカッコのつくlikedが「過去形」なので、「私が好きだった犬」という名詞の大きなかたまりとなる。

・意味順で、「その鳥は → います → 屋根の上に」は、文であって、英語ではThe bird is on the roof. となるのに対して、「屋根の上のその鳥」は、名詞の大きなかたまりであり、the bird on the roofとなる。こちらにはとじカッコがないことに注意が必要。
一方、「その鳥は→です→死にかかっている→屋根の上で」は、文であって、The bird is dying on the roof. となるのに対して、「屋根の上で死にかかっている鳥」は、大きな名詞のかたまりであり、名詞the birdから下線延長でとじカッコを使わずに形合わせだけで the bird dying on the roofとなる。

・意味順で、「その本は→です→書かれている →英語で」は、文であって、英語ではThe book is written in English. となるのに対して、「英語で書かれているその本」は名詞の大きなかたまりであり、名詞 the book から下線延長でとじかっこを使わずに形合わせをして、the book written in Englishとなる。

というところがハイライトですかね。
一見、意味順と似ている、「スラッシュ読み」とか「スラッシュ訳」などという、便法が中高現場に入って来て久しいのですが、このような名詞句の限定表現と日本語表現の基礎基本、原理原則に無頓着な「シドウホウ」によって、知識の定着さえままならない学習者が増えているように感じています。私の授業のように、豊富な類例との出会いを重ねる中で、徐々に知識の輪郭を明瞭にすることを指向している場合でさえ、最初のターゲットの補足に失敗した者は、苦労し続けることになりますから。

たとえば、四角化ドリルの「その4」で「崖ポニョ」のシリーズを惰性でやっていてはダメなんですよ。四角化ドリルはそれ自体で完結する「閉じた学習材」ではありません。そこを手がかり足がかりにして虫の視座を広げ高めるためのものですから。

2018「名詞は四角化で視覚化」 ドリル_1-6.pdf 直

また、四角化ドリル「その13」の名詞の前や後ろにくる –ing形の意味と働き、「その14」で、名詞の前や後ろにくる –ed/en形の意味と働きをザーっと眺めたら、英文の実例にたくさん触れて、更なる出会いをセルフプロヂュースすることが大事。

2018「四角化ドリル」_7_15.pdf 直

教室の中にも、教室の外にも「英語による意味交渉を要求される切実な現実」は希薄ですから、自ら生き直す気構えやそのような体質改善こそが求められるのだと、最近では感じています。
でも、殆どの学習者は、誰かが更にお膳立てしてくれないとやらないんですよね。

教える方も学ぶ方もエネルギーを使いますけれど、そのことばの「生息域」を感じられるような「実例」を求め続けるか、そうでなければ、自分で言いたいこと、内容を「英語の流儀に合わせて」日本語でたくさん書きだしておくこと、「英語で考える」手前で、「英語流に考える」ことを勧めています。この「英語の流儀」こそが文法であり、語法とも言えるのですけれど。
今回の期末試験の問題から抜粋しておきます。

IV. 1 - 8 のそれぞれに続けるのに最も意味が整合する内容を a - h より選び英文を完成せよ。

1. Without your help, [ ].
2. With little more practice, [ ].
3. I might have read the book, [ ].
4. You must have had a hard life [ ].
5. She looks happy today. [ ].
6. I can’t find my glasses. [ ].
7. I don’t see their car. [ ].
8. We had a great time at the party last night. [ ].

a. when you were a child
b. you ought to have come
c. he would have succeeded
d. they must have gone home
e. but I don’t remember if I have
f. he would have failed in the test
g. I might have left them behind in the train
h. something good might have happened yesterday

V. 日本には、七夕に短冊に願いを書く風習があります。例にならって、あなたの願いをタイプIIとタイプIIIそれぞれで英語で書き、その願いが適うためのサポートも付け加えなさい。表面が願い、裏面がサポートだと想定します。

タイプIIの例

  • 願い: I wish I had another big typhoon.  
  • サポート: Then, the term end exams would be put off again.

タイプIII の例

  • 願い: I wish I had studied English harder in May and June.
  • サポート:Then, I would have been more prepared for the term end exam.

この「タイプII」の例で示した、「また大きな台風が来ればいいなぁ」「そうしたら試験がまた延期になるのに」という願望が、今回の未曾有の豪雨による被害に照らして「不謹慎だ!」という誹りを受けるやもしれません。ただ、もし生徒の中からそのような声が上がるようならば、自分の「現実」を踏まえて「タイプIIの願望」を表出し、そのこと自体を「後悔」していることを「タイプIII」でまた表出する機会を得たという見方もできるわけです。所謂「仮定法」という現実離れした項目を扱っているにも関わらずその「現実と願望」「してしまったことを後悔する気持ち」などを「リアルに」感じとれたということですから、学びの足場の確認にはなったのではないかと思っています。

私が授業中にそれこそ二万回くらい言っている、「ことばを生き直しなさい」ということばに込められた意味を反芻して欲しいと星に願いをかけています。

本日のBGM: All of Us (Glim Spanky)