... because I have played them too

今年も残すところあと3日。
昨日までは課外講座。
本日は外部講師を招いて、進学クラスの3年生から1年生まで全員を対象とした講演会でした。
これにてご用納め。
年が明けると、2週間で「『大学入試センター』試験」です。一般には「センター試験」と略していますけど。
受験生やその指導者の方たちは対策に余念がないことでしょう。
この過去ログの中から、「センター試験」の出題の講評、センター試験そのもの問題点の指摘にあたるエントリーをまとめてみました。
例によって、「解法指南」ではありませんので、そのつもりでお読み下さい。センター試験の得点アップにはすぐにはつながりませんが、テストが問うているはずの「英語力」「スキル」そのものを考えるには役立つのではないかと、私は思っているのですが、私の「目利き」が信頼できない、という方は読まれない方が賢明でしょう。

もうずーっと言ってますけど、『英語教育』(大修館書店)が「増刊号』を出してでも組むべき特集は、「総力特集『センター試験』とはなんだったのか?」ですよ。共通一次試験を経て私立大も参入し、国内最大の「英語のテスト」として毎年実施されてきたこのテストを数年後に葬るわけですから。きちんと悼まないと。

年度の新しいものから再録していますので、一番下からお読みなるのがわかりやすいかと。

2016年

”What’s wrong with this picture?”
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20160211
2016年の「センター試験」に関して、高2の「センター試験を覗いてみる」という授業日誌。
「ディスカッションもどき」の出題を再考し、第6問を扱っています。

What’s the story?
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20160131
2016年「センター試験」のリスニング問題、第2問以降を扱っています。一番大事な指摘は、これかしら?
ということで、当事者の前提条件が明らかでない状況で、やりとりを重ね、自分の発言を組み立てるのは結構難儀することがよく分かる対話でした。正答は得られたけど、話の細かな内容はよく分かっていない、という人も多かっただろうと思います。でも、センター試験ってその程度でいいということなのでしょう。私たちが生きている現実世界の方が、もっと複雑な前提をもとに、もっと多様な選択肢を想定しているわけですから、日常をきちんと生きている人にとって、テストで問われる世界は狭いものになっているはずです。裏返せば、そのような日常でことばを使いこなせていない人が、会話文頻出表現とか日常会話の決まり文句などをいくら覚えても、あまり御利益はないのだと思います。「空気を読む」とか「気を使う」ということではなく、私たちの現実の、日常での言語使用を「きちんと」行うことが何よりのテスト対策といえるのではないでしょうか。

No pain, no gain.
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20160130
2016年「センター試験」リスニング問題。高1、高2で「スクリプトを読む」という授業をしています。先取りするよりは、このような「つながり」「まとまり」をしっかりと確認することが必要だと思っています。

細部に宿る神
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20160117
2016年。理数科目の先取りを除けば、「新課程」で学んだ生徒が受験する最初の本格的な「センター試験」です。
今回は、大問の5が「物語文」になった、ということが予備校などの「講評」で取り上げられていますが出題の予想が的中したか、ということよりも、「ナラティブ」の基本が身についているか、本当に読めているか、の方が余程大事です。
ということで、2016年の問題ではなく、2015年の追試の「物語文」の出題の問題点を指摘しています。


2015年

ODA?
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20150120
2015年の大学入試センター試験、外国語(英語)の筆記試験、第6問を取り上げて、コメント。
初めは、「近隣の予備校で『なんたらチャレンジ』を受けてきた高2生に、真っ当な解説を聞くチャンスを与えたい」、と思ってまとめていたのですが、なんとインフルエンザ大流行で、学年閉鎖となり、今週の授業がなくなってしまったので、授業での解説以上に、詳しく書きました。

Private Unplugged
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20150118
2015年センター試験の、外国語(英語)の「筆記」の第2問から第5問までを取り上げて、コメントしています。


2014年

”Sometimes it’s rough to stay tough.”
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20141226
この年までの「センター試験批評」の中間まとめのようなエントリーです。
「過去問演習の悲哀」とも言えるでしょう。
冬期課外講座を1年から3年まで担当しています。時期的に3年の比重が高いのですが、「センター試験」の過去問・予想問題演習がつらい。何がつらいって、「予想問題」「類題」として示される素材文の英語が…。

悲劇、それとも喜劇?
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20140206
史上最悪ではないかと思う、2014年センター試験「大問6」。高2生向けに解説しました。
ライターの個性や文体、そして力量も様々。「ライティング」の観点からのツッコミどころは多々あるので、授業ではそこを考えながら進められるけれど、「テスト」を考えると悩みは尽きない。一度手書きで本文を全部書いたあとで、授業での解説のために再読し、メモを書き込んだノートの写しを貼っておきました。

より良い英語で、より良い教材、そして…。
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20140126
メディアで「センター試験」が取りざたされる時というのは、大きく分けて
受験生に向けた「対策」「解法」
前年度までとの「平均点」の比較
くらいなのですね。現に、試験から一週間経った今、センター試験の「中身」について何か建設的な批評や提言をしている人の声はネット上ではほとんど聞かれません。

Odd Ones Out あるいは The best is yet to come.
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20140119
2014年の筆記試験を概観して、気になる出題にコメントをつけています。
もっとも、一番心配なのは、来年度からの「模試」なんですけれど…。
現場の高校英語教師、そして高1の担任として危惧するのは、来年度以降の模試と教材で、このような「新傾向」問題の劣化コピーのような設問に曝されることです。被害を未然に防ぐには近寄らないのがいいのですが、そういうわけにも行きません。お願いするか、祈るか以外にできることは、「英語力」をつけることですね。


2013年

”O Captain! My Captain!”
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20130122
2013年のセンター試験の概評。こんな喩えを持ち出して批評していました。
松田聖子に『小麦色のマーメイド』という松本隆さんが歌詞を書いたヒット曲があります。そのサビの部分で、「私、裸足のマーメイド」という一節があり(ワタシとハダシで韻を踏んでいる)、この曲を初めて聴いた時に、「『人魚』って下半身は魚のはずなのに、足はあるのか?」という違和感を覚えたのですが、そのくらいの違和感ということです。
「ディスカッションもどき」問題での「図書館」の設定がいかに凄かったか、過去問演習している人は気づきましたよね?


2012年

『ゲレンデがとけるほど恋したい』 -
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20120116
英語の試験問題の「批評」に関して、あれこれとネット上でコメントが飛び交っているけれど、センター試験って、「学力試験」なのだ、という本質的なことを踏まえた指摘をする人は多くないようです。
試験に出てくる英文、英語表現が次から次へと、自分にとって「リアリティ」に溢れていて、解いていてワクワク、ドキドキする、なんてことはないでしょう。
英語の200点は数学を2科目合わせた200点と同じ重み付けなのですよね。
その部分は納得した上で、個々の設問や「英語そのもの」に関して、気になったところを。
この時のエントリーでは2012年のセンター試験を題材に、高2生への「対策」で何をしているかを書いていました。


2011年

寒中お見舞い申し上げます
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20110116
2011年のセンター試験の出題・作問を取り上げた記事。
新課程を見据えてそろそろ現行の出題形式ともお別れになるのでしょうから、この手の試験で英語力を図れていたのかどうか検討する部署が出てきて良いように思います。公的な機関や部署がないのであれば、テスティングが専門の大学の英語教育学者の方たちに、利害抜き、ルサンチマン抜きでセンター試験の英語のテストの分析講評を宜しくお願いしたいと思います。全国の現場の英語教師も、これまでの変遷を実際に見てきた年配の先生方が声を上げることが大切だと思います。


2010年

酸いも甘いも
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20100117
センター試験の出題・作問に関する寸評では、「辛い」とか「甘い」とか下らない評価はしておりません。
(センター試験では)その問題を解いた受験生の英語力がいったいどのようなプロファイルなのかは全く問われません。例えば、123点は123点という意味しか持ちませんから、第2問で得た30点と、第5問で得た30点と第6問で得た30点は同じ重さです。でも、英語力のプロファイルは全く異なるはず。そう考えると、志ある優秀な英語教師の作成する定期試験の出題とフィードバックの方が受験者に親切です。受験産業の行っている「模試」でもクロス集計をかけて、弁別力などが推測できる程度には分析できます。それと比較した場合に、センター試験は「入学試験の合否」を左右する high-stakes testであり、毎年50万人以上のほぼ同世代の日本の学習者の英語力を分析できる「基礎データ」が得られるのですから、もっと有効利用してもらいたいものです。


2009年

マニア vs. オタク
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20090123
2009年のセンター試験。第6問が、「日本(人)の大学生が書いたコラム」という設定で驚きました。よくまあ、そんな論理の隙だらけの文章を素材文に使おうと思ったものです。ここではcrucialにまつわる「語義」をしつこく扱っています。この日の前後のエントリーも併せてお読みいただけると幸せます。


2008年

One after another or replaced by another?
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20080121
2008年の筆記を中心に。今読み返したら、こんなことを言っていました。今や「外部試験特需」ですからね…。
今回の出題で調べたい英語力が「大学生としてふさわしい英語力」なのだとしたら、センター試験でわざわざ調べるのではなくて、TOEIC Bridgeでも、GTECでも代替手段となる資格試験・技能試験にその役目を譲り渡していいのではないか。センター試験の英語の出題を改善するのではなく、英語については、センター試験での出題そのものを止めてしまうのである。その分、高校の授業は英語力を付けることに専念する、というわけである。実現不可能ではないだろう。もっとも実現するのは何年後かね…。


2007年

You should know better than to say so.
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20070122
2007年の出題。
易化だの難化だのと言うよりは、作問のセンスがないことをこそ問題とするべきではないのか。正答がわかる知識のある生徒には現行のセンター試験の持つ欠陥はあまり大きな意味を持たないだろう。錯乱肢は無視できるから。ただ、これから英語力をつけようという学習者にとっては大いに問題である。このような出題例がデータベースとして教材が作られ、問題演習を通して学習することになる。赤いフィルターなどでの無味乾燥な反復練習の過程では、やはり「なぜ、その答えではダメなのか?」を考えざるを得ない時が来る。ところが、センター試験の錯乱肢の作り方があまりにもお粗末で、明らかに英語として誤っている語法が選択肢に使われていたりして、「頭を使う甲斐がない」のである。この被害が広がらないか心配である。


2006年

リスニング試験は英語の試験
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20060121
2006年は「リスニングテスト元年」。
リスニングテスト元年の今年、終わってみれば案の定「トラブル続出」などの見出しがメディアを賑わすこととなった。相変わらず、リスクマネジメントという発想の希薄な我が国。49万2586人の受験者に対して、425人の再試験者ということは、初期不良の割合が約0.086%ということである。これなら家電の出来としてはまだいい方なのではないのか?ソニーのPS2などは0.1%どころか、数%にも上る初期不良であったと聞く。
ちなみに受験生一人一人が使うメモリー型ICプレイヤーの単価が約2000円。おおよそ1億円が使い捨てである。


2005年

センター試験の外国語
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20050116
記念すべき、このブログでの最初の「センター試験」批評。にもかかわらず英語の設問に関しては殆ど言及せず。
外国語は英語以外にも独仏中韓があり、この出題に関してはあまり話題にならない。来年度からは新課程対応となるので、現行の出題形式は最後になるというのに、この形式に関して何が良くて何が要改善なのか、という建設的な批評を一般の人は目にする機会がないままである。(大学入試センターから発行されている冊子を読んだことのある一般人はほとんどいないだろう)


以上、2005年から、2016年までのタイトルとリンク、そして概要などを記しました。

ご興味ご関心のある方もない方も、是非、一度、リンクをクリックして、それぞれのエントリーをお読み下さい。巷の「解法指南」とは多少なりとも異なる視点が得られることでしょう。

もし、これを読んでいる私のクラスの生徒で不明な点がある場合には、私にお尋ね下さい。もし、他の受験生がこれをお読みになって、ここに書かれた内容に不明な点がある場合は、私ではなく自分が教わっている、信頼の置ける英語の先生にお尋ね下さい。信頼関係を深める良い機会となるでしょう。

本日のBGM: Faith (George Michael)