2012年最後のエントリー。
週末は博多で日ローのオフミに参加していました。
インターネット黎明期にオンラインで繋がった本業の関係者が、顔を合わせる場としてスタートして早15年。何の柵もなく、ただRowingで繋がっているところが、長続きしている要因ですかね。久々に日付が変わるくらいまで呑んでいました。FBでも写真にタグが付いて出回っていましたね。
年が明けると、第2週ですぐに勤務校の推薦入試。
そして、その週末は慶應義塾大の大津由紀雄先生の「中締め講義」に討論者で参加です。
2013年1月12日土曜日 北館ホール
「大津言語教育論を聞き、そして、斬る」10:00-12:00 第一部 大津言語教育論の認知科学的基礎(ここは入門編)
13:00-15:00 第二部 大津言語教育論のいま
15:30-16:30 第三部 大津言語教育論を斬る
16:30-18:00 第四部 大津言語教育論のこれから第三部は指定討論者(柳瀬陽介さん、松井孝志さん、亘理陽一さん)による批判、第四部はシンポジウムを考えています。
年末は今日でお終いですが、年始は、この討論者としての準備に明け暮れる感じですかね。
今読み直している本は、
- 大津由紀雄 『探検!ことばの世界』 (ひつじ書房、2004年)
- 大津由紀雄・窪薗晴夫 『ことばの力をはぐくむ』 (慶應義塾大学出版会、2008年)
- 大津由紀雄 編著 『危機に立つ日本の英語教育』 (慶應義塾大学出版会、2009年)
- 大津由紀雄 編 『ことばの宇宙への旅立ち 2』 (ひつじ書房、2009年)
- 田尻英三・大津由紀雄 編 『言語政策を問う!』 (ひつじ書房、2010年)
- 大津由紀雄 編 『ことばワークショップ 言語を再発見する』 (開拓社、2011年)
あたりでしょうか。まだ、「学級文庫」にもいくつかあったと思うのですが、「政策論」的な切り口での議論にはそれほど魅力を感じないので、やはり「ことば」の表玄関から堂々と入っていきたいなという気がしています。
他には、
- 鶴見俊輔 『言葉はひろがる たくさんのふしぎ傑作集』 (福音館、1991年)
といった、「ことば」の入門書や、
- 鈴木忠夫 『英語教育---素人と玄人』 (清水書院、1983年)
- 鈴木忠夫 『学校英語はなぜ悩迷するか』 (リーベル出版、2000年)
といった英語教育界の内情を知り尽くした方の声に耳を傾け、
- ビレーム・マテジウス 『マテジウスの英語入門 対照言語学の方法』 (千野栄一・山本富啓訳、三省堂、1986年)
での卓越した観察力を前に脱帽する日々を過ごしておりました。マテジウスの後はまた林語堂とか、奥伝、いやOgdenとかに戻りそうだけれども…。
で、ここ二三日で読んでいるのが、
- 佐伯胖 『コンピュータと教育』 (岩波新書、1986年)
の「第5章 わかることの原点にかえる」 (pp.117-173)。この本を読み返していくと、いつもここで立ち止まっていることに気づかされます。再読の価値が高いというか、事実上、一番頻繁に繰り返して読んでいる章になると思います。
p.140からの「シンボルの根源的表象性」の考察で、思い出したことがいくつかあり、Alan Maleyが著者として関わっていた1980年代の教材で、写真、絵などの効果的活用を考える
- The Mind’s Eye: Using Pictures Creatively in Language Learning, Cambridge University Press
を探したのだけれど、Teacher’s Bookしか見つからず。その解説をパラパラと眺めて、しばらくジタバタする予定。
今年もいろんな人との出会いがあり、今までなら出向かないところへも顔を出したりしてみました。
本業が不振な年であった一方で、正業の英語教育はいろいろ動きの多い一年でした。
- ELEC協議会での夏期研修会
- 某県高校での、ライティング指導のワークショップ
- 福岡県私学教育振興会主催の教員研修
では「ライティング」指導、「書くこと」の指導に関わる内容で、講師を務め、学習指導要領では消滅する運命となった「ライティング」指導の灯を志ある英語教師の手に繋ぐくらいのことはできたのだろうと思っています。
秋には恒例の「山口県英語教育フォーラム」を開催。今年で第五回を数えました。来年もまた、秋に開催したいと思っています。
年末には、有嶋宏一先生に会いに「達セミ」にも参加し、谷口先生とも再会を果たしました。
著書としても、
- 『学習英文法を見直したい』 (研究社)
に関われたことに感謝します。この前年の「慶應シンポ」に呼ばれたことがことの発端でしたが、自分の教師としての視座を確かめることができました。
その一方で、書籍の紹介で特集が組まれた『英語教育』の一月号を読む中で、今風の英語教育でのhot issueや理論的・精神的基盤となる専門書籍と、私の興味関心の在処とはほとんど重なりがないことを実感した年末でもありました。
『飛ぶ教室』(光村図書) の秋号に当たる第31号にも、似たような特集を見つけました。
- 44人の私の一冊
いわゆる児童文学の「この1冊」を著名人が紹介・推薦するもの。
44名に均等に1頁が与えられていますが、長さはそれぞれ。
私のつけた犬耳は、
- 角野栄子 「見えない世界からの贈り物」、p.21
- 川島誠 「たちの悪い上段・ひきつった笑い」、p.22
と奇しくも表裏の頁になりました。角野さんが紹介するのは『ひとまねこざる』。川島さんの紹介するのは『クール・ミリオン』です。引用はしませんので、できれば、是非、お手にとってお読み下さい。
その代わりに、同号の特集以外の連載から、印象的だった部分を引いて、本年最後のエントリーを締めたいと思います。
たしかに遠くから見れば、「子どもの読者を大いに意識して書かれた本」の森は見える。こんもりと豊かに木々が茂っている。けれど近づいていくにしたがって、いったいどのあたりからその森なのかはわからなくなる。さらに森の中を歩いてゆくと、さまざまな種類の木々が立っていることがわかってくる。大きく枝葉を繁らせている木もあれば、残念ながら枯れかけている木もある。でも、どの木こそがこの森の木らしい木なのかは、ぜんぜんわからない。なぜなら豊かな森とはそういうものだからだ。 (「本を読む 第6回 笑いながらバクハツする知性」 岩瀬成子、p.121)
本日のBGM: 無計画とゆう壮大な計画 (TOMOVSKY)