ほどほど

中間試験前なので、本業はお休みの日曜。
朝から作問、と意気込んでいたのだが、途中で、資料となる書籍を学校に置き忘れた事に気づいて、出校。折角来たから、とコーヒーを淹れ、一息ついてから帰宅。
午後は妻が出かけるので、娘と留守番。久しぶりに、一緒に散歩も。

8月の研修会の講座内容を思案。どんな方たちに参加して頂けるのでしょうか。やるからには、私の話の何かに共鳴共感して欲しいとは思うのですが、「書くこと」について考え、悩み、藻掻き、足掻き、光を見いだし、喜びを共有する、というようなことを肯定的に捉えられる人じゃないと、私の話を聞くどころか、時間を共にしていても全く面白くないだろうとは思います。

英語の作文指導、ライティング指導を考える時、指導者の側が自分の指導の参考に、と読む本はどのようなものでしょうか?著者として、誰を思い浮かべますか?

  • ケリー・伊藤
  • 大井恭子
  • 金子稔
  • 倉谷直臣
  • 上田明子
  • 天満美智子
  • 杉山忠一
  • 最所フミ
  • 安井稔
  • 秋山敏
  • 長谷川潔
  • 中尾清秋
  • 出来成訓
  • 岩田一男
  • 升川潔
  • 矢吹勝二
  • 荒牧鉄雄
  • 戸川晴之
  • 松本亨
  • 岡地栄
  • 山田和男
  • 木曽栄作
  • 小沢準作
  • 佐々木高政
  • 木村忠雄

私が自分でお世話になった教材の著者、直接お世話になった方の名前を思いつくままあげましたが、かなりの数になります。流石に、辞書でしか接点のなかった増田綱氏あたりまでは遡れません。ただ、自分の英文修業に資する本は多いのに、指導の際に拠り所となる本、というとまだまだ少ないと感じます。

では、英語で書く前に、日本語での「書くこと」の指南書を考えた時には誰が著者として思い浮かぶでしょうか?
国語教育の世界での倉沢栄吉、青木幹勇、大村はまという三人は別格として、「日本語の文章を書く」といった時に私の頭に浮かぶのは、次の三人なのです。

  • 鶴見俊輔
  • 加藤典洋
  • 高橋源一郎

この三人のうち、少なくとも一人に関心がある方は、私の「書くこと」へのスタンスというかアプローチというか、こだわりにも、何か意義を見いだせるのではないかと思います。三人とも「?」という方のためにというわけではありませんが、今年の講座では、少し「日本語での書くこと」を眺めてみる時間も作って見ようと思っています。

進学クラスは、テスト前最後の授業。
高3ライティングは、予備校の夏期講習の教材や市販教材の不備を指摘し、どのように間違い、または不適切であるかを示し、代替案を。結局のところ、普段このクラスの授業で扱っている英語の内容、クオリティがいかに信頼に足るものであるかを実感する一時となります。あの「診断テスト100題」だって、日本全国、私の信頼する多くの英語教師の協力を経て使えるものになっている訳ですから。
残念なのは、改めて眺めてみたこの市販教材。依然として改訂はされていないまま市場に出回ったり、学校採択で使われたりしているのだろうなぁ、と憂鬱になります。さらには暗唱例文と称して、CDがついているあたりが何とも罪深い教材ではあります。「より良い英語で、よりよい教材を!」

高1はいよいよ「助動詞の番付表」導入。
週末の課題に、「大相撲の力士の番付を確認して、家族と話しをしてこよう。」と促していたこともあってか、スムーズに役職が出てきたのは結構なことなのですが、調べてきたメモ書きを見ながら発言できてもあんまり良いことはないのですよね。それでは「調べ学習もどき」です。まあ、おいおい洗礼を浴びることになるでしょうから。
肝心なのは、例文を生き直すこと、をどう志向し、実現していくか。
メイン教材の『レベルアップ英文法』 (NHK出版) からダイアログを再生し、ポイントの解説。そして再度聞き取り。

  • 触れば体温が感じられる、話している人の顔が見える、斬れば血が滲む

教材であることを確認してもらいます。
このような学びをひたすら繰り返し、中1から高3まで英語の言語材料のレベルを上げていけば、もう足場づくりとしては十分なのではないかと思っています。その意味では、この『レベルアップ英文法』は登場人物の設定、ストーリーの展開、英語の難易度の匙加減などなど、格好のスターターと言えるでしょう。現行講座の「基礎英語3」は、今年度も継続して阿野幸一先生の担当ですが、その過去の講座をまとめたものが出ています。ちょっと分厚くなりましたが、コラムもあり、自学自習でも使い勝手は向上したかも知れません。

  • 阿野幸一、アンソニー・アラン『NHK CD Book基礎英語3 ストーリーで学ぶ英文法の基礎』 (NHK出版、2011年)

高2は、「ライティング」のコマ。『コーパス口頭英作文』と『意味順』のコラボの持つ意味を確認。
特に、後置修飾で、吹き出しを使って二段目の活用が出来ているか。
残り時間は、「学級文庫」にある学習参考書や英語関連書籍を活用するための助言。高3のクラスで取り上げた、教材の写しを見せ、ロジックが欠落、または大きく崩れた英語を暗唱したり、問題演習したりするよりは、「適切に用いられている英語」を目の前にして自分が出来ること、のバリエーションを増やしましょう、と説いておきました。「四角化ドリル」と「番付表」が出来ていれば『意味順』での悩み所・迷い所もクリアーできるし、「例文を生き直す」姿勢さえあれば、『コーパス口頭英作文』の例文の短さが長所に変えられるでしょう。たぶん。
一つ試験を印刷して帰宅前に街まで。
腕時計の革ベルトが切れていたので、交換に。色目がだいたい同じ、カーフの型押しを探していたのですが、良いものがなく、最終的に黒の鰐皮になりました。
書店を覗いて、“小学校英語楽々教材シリーズ” と銘打った本を一冊購入してから帰路。

  • 高橋豊 『英単語がどんどん読めるつづり読みワーク43』 (明治図書、2012年)

あれだけ、文科省側では「外国語活動」という呼称を使っているのに、結局のところ、商業ベースでは、「小学校英語」になってしまうわけですね。英単語の読みができるようになるように綴り字のパターンを整理したていねいなスモールステップ、が売りの教材です。こういうものが求められているという現実があるのでしょう。週末の打ち合わせに向けて購入を決意。
ただ、会計で、この本の値段を聞いてびっくり、

  • 2268円也。

本当に?120ページの本で、ワークシートをまとめたものが?音声CDもなく、DLのサイトもないのに?と「?」のオンパレード。もう一冊別な英語教育関係の本も買おうと思っていたのですが、諦めました。諦めたのはこちら、

  • 『大修館英語授業ハンドブック 高校編』 (大修館書店、2012年)

新課程の「英語表現」に関しては、平原麻子先生が、「ライティング指導」の基礎的な理論や指導技術に関しては工藤洋路先生が書いていますので信頼に足る内容かと。今月の給料日を待ちたいと思います。

さて、書籍の続きで以下の告知。
昨年の慶應大・学習英文法シンポジウムの成果がいよいよ形になります。
大津由紀雄 編著『学習英文法を見直したい (仮題) 』 (研究社)

シンポジウムでは「指定討論者」だった私も著者の一人として「基礎編」で書いております。大津先生も、よく私に執筆を依頼されたと思いました。多分、他の人では書かないような内容で切り口でしょう。これでまた友だちを減らしたかも知れませんが…。シンポジウムの登壇者以外にも、英語教育、英語学など関連諸分野の錚々たる執筆陣で、私自身、他の方がどんなことを書いているのか、待ち遠しく思っています。8月の研修会の頃には市場に出回っていることと思いますので宜しくお願いします。

本日のBGM: smooth out the line (Jonathan Kingham)