類友

Ant Concがニューバージョンリリースということで早速試してみた。
進学クラス高2の授業に持ち込み、デモ。超少人数クラスならではの小回り。
Mini-DVIでモニターに繋いでコンコーダンスラインを見せ、頻度の高いコロケーションを示す。ワードリストを作成し、toやthatなど、頻度が高くなって当然の語を指摘する。
結論。職場のVAIOの方では快適に動くのだが、愛機PBG4のスペックでは処理が追いつかない…。いい加減に買い換えろということか。最近は、インテルマックじゃないと動かないソフトが増えてきたので、悩ましいところ。
授業では、ついでに、ネットに接続して、オンライン辞書サイトを提示。発音も米音・英音が聞けることを確認してもらった。
教科書の内容では、「表現と論理」のセクションで、as …as のポイントを解説。比較級の論理で、数直線の○、●と領域を図示し、それとの対比で。詳細は「学級文庫」の書籍を読め、という指示。
語彙では、名詞 "mind" の語義。
MEDでは、

  • your intelligence and ability to understand things

と簡潔な定義を示している。
杉山忠一『英類語の考え方』 (三省堂、1977年) では、"mind, heart, soul, spirit" の4語を取り上げ (pp. 104-105)、

  • mindは、理解・思考・記憶など、理性的な頭脳の働きを意味し、情緒・感情を含まない点で、他の三つの語とはっきりと区別される。

と冒頭で注意を喚起している。
heartとの対比では、最所フミ 『英語類義語活用辞典』 (ちくま学芸文庫) に詳しいので、「学級文庫」に一冊寄贈。授業で扱うべきは派生語。名詞mindの語義で、「思考力」とか「知性」の部分に焦点を当てるというのは容易いのだが、その語義で派生する形容詞として、mindfulを捉えることには無理がある。mindfulの場合は、形容詞ならawareとかcareful、動詞ならconsiderとかtake into accountなどと同じ匂いを感じておくべき語であろう。では、「知」の側面に焦点をあてた形容詞は?と問うて、生徒には『グラセン和英』で「暗算」を引かせる。

  • mental arithmetic [calculation]

ということで、形容詞mentalに不時着。進学校といわれるような高校では授業で扱った語から「派生語」を導くことに熱心な教師が多いような印象を受けるが、語源・語根などの知識を援用する前に、基本的な語義の部分が必ずしも品詞間で綺麗に対応している訳ではないことに自覚的であって欲しいと思う。たとえば、mindから派生する、否定の接尾辞を持つ mindlessになるとさらに話しはややこしくなることを考えると、私の意図も少しは理解してもらえるだろう。mindlessをWorld Book Dictionaryでは次のように定義している。 (p. 1322)

1. without mind or intelligence
2. not taking thought; forgetful; careless

指導に当たっては、接頭辞や接尾辞を示し、「派生語」とか「反意語」と乱暴に括ってしまうことがないように心がけているし、生徒にもそのように教えている。品詞間を行ったり来たりすることで初めて分かることも多いので、「はずれくじ10枚理論」が生きるところ。
もう既に一定の英語力のある人にとっての「使い分け」ということでは、

  • 『英語類義語使い分け辞典』 (研究社、2006年)

とか、

  • Longman Pocket Activator (Longman、2001年)

あたりで充分なのかも知れないが、現在進行形で英語を学び、語彙を自分のものにしていこうという高校生にとっては、ちょっと使い勝手が悪い。「語義」にまつわる隔靴掻痒である。
語義を英語と日本語でどのように表しているのか、に関しては、翻訳家でもある中村保男氏が著した、

  • 『日英類義語表現辞典』 (三省堂、1998年)

が参考になるだろうか。pp. 109-116までで mindという語をheartやsoulと対比して詳しく述べている。
というわけで、最所フミ氏の書籍・辞典から、私がいかに多くを学んだか、の雑談から脱線し、高1の学級文庫日本語書籍棚にあった仙人のようになってからの加島祥造の本に言及し、現在高2の学級文庫にある「名言・引用句」を扱った本のいくつかを指摘して本日は終了。
高3のライティングは、診断テストを淡々と。解答解説のハンドアウトを配布。採点は緩く、解説は厳しく。ノートに、切り貼りしていてはダメ。書いてあることを写すのが学習ではありませんよ。目の前に、正しく、適切に用いられた英語がある、というところから自分で何が出来るか、それこそを問うて下さい。
身体測定や健康診断の関係で、短縮授業になったので、物足りない気持ちを残したまま、7限終了。定時で帰宅。
James Ihaのソロ第二弾発売に合わせて、ファーストソロアルバムの “Let it come down” のリマスター盤が出ていたということで購入。これは本当に名盤。スマパンとつじあやのだと重なるところが全くないような気がするけれど、James Ihaとなら共鳴する何かがあり、相性が良いのは理解できる。
人が繋がるんだし、人が人を繋げるんだよなぁ、と実感したのが、

  • 『ナイアガラトライアングル vol. 2  30周年記念盤』

青春の1枚です。
妻がアースデイ関連のイベントで出かけているので、夕食は自分で。今年のイベントでは、ミュージシャンのUAが来山。湯田温泉のDADAでも2-Dayライブ。妻はチームUAに食事を提供するとのことで、連日作戦会議をし、入念な準備をして臨んだ模様。帰宅後、疲れているだろうに「一緒に写真取ってくれば良かった」、などと呑気なことを言っていました。あの、DADAに100人近くが入ったとは驚きです。多くの人に想いが伝わり、繋がっていくことを願っています。

本日のBGM: Be Strong Now (James Iha)

2012/04/17 追記:
Adiran Room の Room’s Dictionary of Distinguishables, RKP, 1981, では、p. 77 で、

  • mind / intellect / brain / brains (mental faculties) 

という類語間での整理がなされていますが、そのうちmindに該当する部分のみ引いておきます。

‘Mind’ is that which thinks, feels and wills, and is usually contrasted with ‘body’ and occasionally with ‘soul’ or ‘spirit’. Part of one’s ‘mind’ is the ‘intellect’, which thinks or reasons, as distinct from feeling or willing. It is often contrasted with emotions, ‘head not heart’.

新しいものでは、Oxford の『英語類語活用辞典』(2008年)が intellectualというキーワードのもとに、mentalなどを、intelligence のもとに mind を整理しています。(pp. 397-398)
mind は "your ability to think about things in a logical way; the particular way that sb thinks " と完結に定義されていますが、用例の、

  • He has the body of a man but the mind of a child.

は、まさに、このmindを適切に理解しているかが問われるものであり、効き目のある用例だと思います。小学館から翻訳版が出ている辞書ですが、どのように扱われているのか、興味があります。
この辞書では「暗算」も用例で取り上げられています。

  • Are you any good at mental arithmetic (= mathematical calculation that you do in your mind rather than on paper) ?

Oxford系の学習辞書の元祖というか、本家というか、ISEDでは、mentalの定義で、"of the mind" に加えて "done by the mind" という効き目のある定義が出ています。用例では、

  • mental arithmetic (done without using an abacus or paper and pencil)

とあり、この「時代がかった」辞書の持つ他のものでは代えがたい良さを実感できます。