fuzzy or crisp?

夏休み最後の二日間の練習も、遠い方の湖へ。
気象庁発表の雨雲レーダー、短期降雨予測とにらめっこして、最も降雨の程度が少なそうな時間帯を推測してモーション。近い方の湖だと自宅から車で40分程度なのですが、こちらの湖だと片道約1時間20分かかるので、ときどき高速に乗っていきます。
昨日は雨足の落ちる朝8:30から、ひたすらキャッチ練。雨は止みませんでしたが、構わず。もう、ひたすらです。びしょびしょです。
今朝は7:00から。今日は、バッチリ、凪のコンディション。強弱14kmメニュー。序盤は延々とダメ出しを続ける。ダメな時は、姿形からしてダメ。「フォーム」の問題ではなく、輪郭線に力が感じられない。で、出力を高めようとすると、力みになるだけで、艇速に結びつかない。自分が本当に力を出せている、リラックスした状態を自分の身体に記憶させておかないと。
SR32、SR36での短漕を経ての、SR24でようやく精度の高いストロークが練れてきた感じがしたモーションの終わり頃には他校が練習に来てコースも大賑わい。最後の1周2kmのSR20でfinishing touchと行きたかったのだが、私がカタマランを上げた後、他チームの1Xでアップで漕ぎ始めた漕手と何か言葉を交わし併漕しようと加速を緩めていたので、喝!

  • 今日自分がやってきた1時間半のトレーニングを振り出しに戻す気か!

リラックスと生ぬるいのとは全く別物。揚艇時に釘を刺す。スキップシリーズから、股関節スイング、肩胛骨周り、ネコまでやって、オールを車に積み撤収。選手は自宅近くで降ろし、私は出校して昼からは職員会議。
国体対応で、夏休みが1週間短くなり、明日が始業式。2学期の行事予定はなかなか対応が大変です。

今日の英文法学習書の読み直しは、「コア」。もっと広く捉えると、「レキシカルグラマー」というような領域へと足を踏み入れるのだろうと思う。

  • 田中茂範 & COCONE 『英語の発想と基本語力をイメージで身につける本』 (コスモピア、2011年)

が今のところ最新刊か。個人的には教員になりたての頃に、

  • 田中茂範 『基本動詞の意味論:コアとプロトタイプ』 (三友社、1987年)

をよく参考にしていたので馴染みもあり、近年の著作『絵で英単語』 (ワニブックス) や、検定教科書の『PRO-VISION ENGLISH COURSE』 (桐原書店) を見るに、その理論も洗練されてきたのだろうと思う。しかしながら、今回取り上げる、『…イメージで身につける本』の内容は諸手をあげて賞賛というわけにはいかない。
まず、動詞による世界の構築ということで「存在」に関わる、beから始まるわけだが、そのbeの「コア」が、p.14の映像だけで理解・体得できるわけではない。p.15にある、

  • 意味のコア 何かがどこかにある

というタイトルに始まり、「我思う、故に我在り」での解説が続く。その中での、一節。

左の写真のThe glasses are in the case. では、まさに「メガネがケースの中にある」ということです。また、John is a student. (ジョンは学生です) は「ジョンが学生という範疇に1メンバーとしてある」ということです。(p.15)

のJohn is a student. の説明は、説明として学習者の疑問に答えていて「わかりやすく」、beという動詞の「体系化」の役に立っているだろうか。
続いて、

  • 「場所」から「状態」へシフト
  • 「状態」から「なされた状態」へ

という解説と用例を踏まえて、このbeの項は完成するというのだが、結局、「イメージ」として描かれたものが有効なのは、最初の例だけで、その他の発展的な事例が学習者の中に整理できるかどうかは、「言葉による解説が巧みであるか否か」にかかっている。

「場所」から「状態」にシフトすればJohn is happy. (ジョンは幸せだ) になり、これは「ジョンはハッピーな状態にある」ということ。「状態」から「連続的な状態」に展開したのが進行形です。John is singing in the rain. (ジョンは雨の中で歌っている) は「ジョンは雨の中で歌っている状態にある」ということ。
歴史的に、John is singing. は John is at singing. そして、John is a-singing. を経た表現で、a-は「〜の状態に」の副詞です。(p.15)

今まで英語という言葉がよくわかっていなくて、再入門に、と意を決してこの教材を手に取る人は多いと思うのだが、このような説明をされて、「シフト」とか「展開」という「ことば」に何のひっかかりも持たない人ばかりなのだろうか?
pp. 70-71では、英語の「基本動詞」の中でも極めて英語らしいと私が感じている putが扱われている。

  • 意味のコア 何かをどこかに位置させる

「位置させる」という日本語の「すわりの悪さ」は「置いておく」として、ここでこそ、beとの関連づけをして、動詞世界の構築に役立てるべきではないのか。最後に、 “Stay put.” を解説しているのだが、ここでのputは学校文法で言う「過去分詞」ではないのか、という疑問が拭えない。

  • 写真を撮る場面で、「はい、そこでポーズ!」に近い表現にStay put. があります。この場合は「(偶然に) 位置した状態のままでいて」といった感じです。

肝心なところに「ことば」が足りないように「感じる」。
似たような「言葉足らず」は、前置詞・不変化詞でも見られる。
pp.124-125ではinが取り上げられる。

  • 意味のコア 空間内に

はいいでしょう。図解は三次元、立体的な「空間」を表しています。でも、それに続く解説の、

  • 平面に広がった空間でもinを使い、「東に」の in the east、「角に」のin the cornerがその例です。

はいただけない。「平面に広がった空間」が矛盾していませんか?続いては、

  • 物理的な空間が比喩的に展開

ここでどのように比喩が働くのか、というイメージ・図解はなし。

  • 経過する時間の長さを表すin

では、

時間を表すin は「〜したら」の意味にもなります。I’ll be back in a week. だと「1週間したら戻ってくる」という意味になる。in a week にはfrom now onが前提としてはたらき、発話の時点から1週間が経過し、その経過する時間 (所要時間) の長さをin で表現しています。

というのだが、p.125に描かれている図解では、この「経過時間」をイメージすることは不可能。
inは「空間」だったのに、「時間」にもなぜ使えるのか、「長さ」は立体ではないのになぜ、「空間」からの比喩の展開で表現できるのか、という疑問に答える部分こそ、学者・研究者の腕の見せ所でしょう。inの基本義では、この「経過時間」をどう扱うかが教室でも難しい。私のように、conduit metaphorとか専門的な用語を出して学習者を煙に巻くのもどうかと思いますが、「実は、動詞も前置詞も『コア』は一つではなく、二つ、時にはそれ以上あって、明確な輪郭線で切り離せないようになっているので、その『感じ』を掴むために、イメージだけではなく、言葉による解説と用例、そしてその場面設定と話し手・聞き手の意図・目的・心理が重要になってくるのです」、くらい言ったって、学習者は文句を言わないと思うのですが…。
「コア」と「レキシカルグラマー」については、「シンポジウム」までに、引き続き取り上げる積もりです。
本日はこの辺で。

本日のBGM: My Imaginary Friend (The Divine Comedy)