嬉しいお便り2つ。
一つは、旧友、開成中高の青柳先生から、献本に寄せて真摯なお便り。三部作も完成のようですね。英語教育に関して、世論、世評はとかく移り気なものですが、流行に惑わされず、基礎基本がぶれないところが青柳先生の素晴らしいところ。実るほど頭を垂れるとはよく言ったものです。見習わなくては。9月の慶應シンポでお会いできるのを楽しみにしています。
もう一つは、練習中のカタマランの上に転送されてきた嬉しいお便り。こちらはかつての教え子から。
遠い昔のことのようにも感じるがつい昨日のようでもある。個人情報に関わる部分は伏せて紹介。
突然のメール失礼いたします。
@@高で英語を教わっておりました、XX年卒業の○○と申します。
担任をしていただいたことはないので、御記憶にはないかと思いますが、先日、先生のブログを見つけ、どうしてもお礼を申し上げたくてメールいたしました。
高校時代、私は先生のライティングの授業が大好きで、先生の授業をきっかけに語学に興味をもつようになりました。
大学は上智の□□語学科に進み、語学を仕事にしたいという思いから外務省に語学職で入省し、働いています。
役所では△△語担当になっているので、昨年から△△に留学中です。
後一年ここで勉強したら、△△の大使館で勤務する予定です。
△△語を学ぶ上でも、先生に教えていただいた「外国語の学び方」に本当に助けられています。
もちろん外交官として、英語力もまだまだ足りないのでこちらも苦労しながら引き続き勉強中です。
授業で使用していた「ピーナッツ」も△△に一緒に持ってきているんですよ。
先生に英語を習うまでは、英語が大嫌いということもなかったですが、特に興味もなく勉強も苦痛でした。
でも、あの授業をきっかけに「面白いもの」に変わり、私の仕事や人生も大きく変わったと思います。
東京で働いていた時も、留学中の今も思うことですが、この職業を選んでよかったと本当に思います。
それも、先生のあの授業のおかげと思っております。
本当にありがとうございました。
@@高 XX年卒業
○○
在△△日本国大使館
外交官補(△△語研修)
では、充実した日々を送っている旧友やかつての教え子にも胸を張って報告できる今の授業の様子を。
進学クラス高1は、副詞節の続き、学級文庫の十数種類の辞書を総動員して準備したはずのby the timeとtill (until) の珠玉の用例をチームに分かれてホワイトボードでプレゼン。主節と従節とを比較検討し、「肝」を取り出すのが狙い。
まずは、by the timeの「締め切り感覚」。「すっかり」とか「必ず」といった感じをリアルに表す用例となっているかをあらためて問う。「フル」になったり、「ゼロ」になったりしているのはどこかという感覚で再度例文を生き直す。『ジーニアス』系の学習用英和から転記された用例で、英語としては適切なのに、訳文が首を傾げるものが見られた。どうも私と相性が悪いようだ。
続いて、till (until) チーム。こちらは「線と点」の感覚。何が持続継続 (=線) して、いつそれが終わる (=点) のかを的確に捉えること。その意味では、転記してある用例の多くは今ひとつ。たとえば、
- He ran until he was out of breath.
では、「息が切れる」のは「点」として認識しやすいが、He ran. というS+Vだけで具体的な現実味のある意味が完結することは稀なので、このranという過去時制だけで「線」にリアリティを感じるのは初学者には難しい。これを “He ran and ran ….” などと「解釈する」工夫が必要。ホワイトボードに並んだ用例を横断・縦断して、どこが「線」になっている「時間の幅の感じられる動詞」で、どこがその「終点」を表す目印となっているかを確認。
- We will not depart until he arrives.
では、“depart” という本来「点」である動詞が使われていることを指摘して、では「何が線として認識されているの?」「続いているのはいったい何?」と問い、
- 「出発しない」のが、つづいている。
という素晴らしい回答を得る。良いセンスです。「未遂」感覚とでも言えばいいでしょうか。この感覚があって初めて、この否定の文脈でのuntilは正しく理解できると考えています。 not untilで公式のように覚えることの愚を説いておきました。いったん「目のつけどころ」が分かれば、同じ例文が違って見えてくるものです。生き直すたびに、活き活きと感じられることを期待します。
普通科高3再入門講座は英語学習図書の紹介から。大津先生、田地野先生、浦島先生、太田先生の本を教室に持って行き簡単に説明。これらの本が自分で読み進められる、活用できるだけの英語の基礎力を高校卒業までに身につけるべし、という趣旨。
残り時間で練習問題。前回と同様、適切な箇所を確認し、口頭で英文を再生し、私の範読に続いて斉読で口慣らし耳慣らし、適宜チャンクの切り出しや糊代を作りながら、Read & Look-upまでやってから、対面リピート。センサーの感度を上げて再度、斉読でリピート。いい音が増えていますのでプラスのフィードバック。再度個人でRead & Look-upをしてから、筆写でまとめ。書く時には、まとまりをまとまりで一気に。片方のクラスはこの書く活動の途中でチャイムが鳴ってしまったのですが、ほとんどの生徒がそのまま書き続けていました。
- 申し訳ないが、今日は時間切れ。今、チャイムが鳴ってしばらくしてからも書き続けていたので分かると思うが、「自分がきちんとやって出来るようになったものは、最後までやりきりたい」と思うもの。それが大事。その感覚を忘れずに。
と伝えて終了。
生徒には普段から、「今いる場所でベストを尽くす」「ひたむきに全力で」と説いています。片方のクラスでは導入提示済みだった<how to 原形>の用例が、もう一つのクラスでは未遂だったので、生徒からの「全力で歌って下さい」という要求を受け、自ら実践というわけで、セサミストリートのテーマ曲のサビの部分を高らかに歌って、模範例文としておきました。生徒には、その後に見せたクッキーモンスターの真似の方が面白かったようですが…。
まあ、今の授業はこんな感じです。
放課後は本業で湖へ。
平日はほとんど時間が取れませんが、ある程度の強度は与えておきたいということで、アップ4km、レースペース1000mトライアル、ダウン2kmのメニューを指示。アップでのSR22のキレが今ひとつだったので、スタ練をさせることで、その「しょぼい加速」を自覚してもらいました。コースブイが撤去されているので、キレを確認してから、1000mの代わりに、4分漕。当然、カタマランのベタ付けです。途中で加速が鈍り、SRが35を割り34台まで落ちたところで檄を飛ばし、最後はSR38まで。4分漕いだところで「あと5本マックス!」。出し切ってもらいました。ダウンに繋がるイージーワークでダムの方まで。本当に必死にスピードを出した後は、センサーの感度が上がっているので、リラックスした姿勢、エントリーからドライブで艇を掴む感覚、リリースからランでの艇の立ち具合など格好良く漕げるものです。ようやくボート選手らしくなってきました。one by one でフィニッシュの丸い軌道を徹底しながらダウンして揚艇。ジョグと股関節スイング、肩胛骨周りのコンディショニングエクササイズ、股関節周りのコンディショニングエクササイズ、ストレッチで撤収。車中でサプリメントを摂らせて帰宅。
夕飯はO農園の野菜と卵。
茄子が美味しい。「端正な」という形容は変だけれど、妻が言うには「隅々まで気が通っている」茄子。私の使った譬えは「ピラティスとかやってそうな」茄子。
卵はそのものの旨みを味わいたいとのことで、出汁ではなく豆乳だけ少し加えて、グリーンピースを添えての卵焼き。美味。
早めの就寝。
本日のBGM: Other World (Glenn Tilbrook)