整調・参番・弐番・舳手って、壱番はいないのね…。

本業の高校県予選から帰ってきました。
今回は、男子も女子も、1Xで1000mでのランキング決め。無事、6月初旬に広島で行われる中国大会に駒を進めましたが、結果は2位で、負けは負けです。私は、選手共々、事前合宿で金曜の夕方から現地入りしていたのですが、レース当日の日曜日には、部長をしていただいているF先生が新入部員3名を連れてきて応援・観戦をしてくれました。本当に有り難うございました。
前日、前々日とは打って変わって、絶好のレース日和。男子のレース中は凪といっていいくらいのレーンコンディションでした。初めて見るレースが想い出に残るものとなってくれたことを期待します。
来週末から始まる熊本での練習会参加が県の強化合宿に指定されているので、その県選抜メンバーにも選ばれ、4X+に乗る機会も与えられそうです。西日本を中心に全国各地から、計200クルーが集うと聞いていますので、否が応でも厳しいレースを経験できることでしょう。今回は2位という結果でしたが、各校とも、新入生がたくさん入ってきたので、1年後、同様にシートがもらえる保証はありません。日々、精一杯漕ぐまでです。
午後は、熊本に行く上位5クルーで、500m RP↑の並べを4発。こちらの言葉で言えば「4本 (よんぼん)」。4X+編成を睨み、高レートでの対応を見る狙いです。3発目の逆風でパワー不足が露呈しましたが、その他の3発は中盤で先頭に立つ瞬間もあり、頑張りを見せました。
インターハイ予選まであとひと月。パワーとテクニックの両方をさらにレベルアップして臨みます。

帰宅後は流石に、何もしたくないくらい疲れていたのですが、GTEC for Studentsの公開会場受験者のライティング答案を吟味。率直な感想は、

  • 惜しい。

この書き出しができるなら、もっと良い英文が書けるだろうに…。という答案がチラホラ。前任校で「ライティング」を教えた最初の年の生徒とのやりとりを思い出しました。(興味のある方は、過去ログの2005年度の実践、または『パラグラフ・ライティング指導入門』 (大修館書店) の高校編を参照されたし。「面倒くさくて、いちいち、日々の記事からライティングに関わるところだけ読んでいられません」、という方は、生徒の総括となる、http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20040902 での掻い摘みをご笑覧下さい。ただし、アンケートや総括は常に後出しじゃんけんであることをお忘れなく。)

スコアに現れない作品の良さを見いだす、というのが趣旨なので、まずは学年やスコアを見ずに、一つひとつ作文を読み、その中のいいところを拾って評価していく地道な仕事です。全国的に著名な進学校といわれる高校に在籍している受験者も多いようなのですが、受験対策や過去問指導は充実していても、英語の授業で適切な「ライティング」指導がなされていないのか、指導は行われているが、まだその指導が効果を生むまでには至っていないのか、それとも、身も蓋もない見方になりますが、受験者である生徒が教室での指導を活かすべく努力をしていないのか。背景が分からないために、ため息が出ることもしばしば。
私の「ライティング」を見る目が曇っているという可能性をひとまず脇に置いておいて、今回の答案を見るに、高校の指導要領を変えて、「英語表現」を志向し、ハイブリッド化、技能統合をしたからといって直ぐに改善するものではないように思います。これはあくまでも、現時点で「ライティング」というものが高校の英語授業に根付いていないことのあらわれではないのか、という思いが募るのです。であれば、まずは、「ライティング」をきちんと教えること、「ライティング指導」を徹底するのが先ではないかと。
5月中には、詳細が明らかになると思いますが、今回の「ライティング優秀答案」の表彰やコメントを契機として、「ライティング」に関する様々な議論が高校現場で生まれるように、吟味に吟味を重ねたいと思います。

古い『高校英語研究』 (研究社) を入手したので、印象批評。1959年3月号というから、50年以上前の入試の状況と対策を窺い知ることのできる材料にもなるだろうか。
まず、「入試を目前にして」という座談会を読む。
出席者は、

  • 一橋大学助教授・岩田一男、静岡大学助教授・小野達、都立新宿高校三年・野口雅昭 (東大志望)、都立九段高校三年・延原臣二 (東大志望)、東京外国語大学英米科1年・浜秀昭、都立西高卒・松坂健司 (東外大志望)

印象に残ったのは、入試対策の4技能各論ではなく、次のようなやりとり。

  • 岩田: もう一つ、笑い話。幼稚園でも入園テストがありますが、その時に顔の絵が描いてあるが、眼だけ入れて口がないのです。この絵に何か足りないものがありませんかと先生がきくのです。或る子どもが入って来て、じっとその絵を見ていましたが、ややあって、こう答えたのだそうです---「体がない」と。 (p.12)

第一特集は、「出題者のネライを掴め」と題する、各大学試験官からの「受験英語の勘所」の披露 (pp. 14-25)。執筆者は実名で所属入り。

  • 大阪大学助教授・梶原秀男、慶應義塾大学教授・岩崎良三、早稲田大学教授・西尾孝、東京都立大学助教授・林信行、北海道大学教授・鈴木重吉

この第一特集に続いて、編集部から依頼されたと思しき、「アンケート」 (pp.26-31) が、受験生へのメッセージとして掲載されている。お題は、「careless mistakes のいろいろ」。回答者は、

  • 都立日比谷高校教諭・池谷敏雄、東京外国語大学教授・海江田進、大阪大学助教授・柴田徹士、東京大学助教授・北川悌二、都立西高校教諭・石井学、慶應大学教授・岩崎良三、九州大学助教授・毛利可信、千葉大学助教授・小松光、東京大学助教授・中村徳三郎、早稲田大学教授・山県三千雄、一橋大学講師・宮下忠二、金沢大学助教授・大久保純一郎、北海道大学助教授・鈴木重吉、都立白鴎高校教諭・犬飼基義、大阪大学教授・吉田安雄、大阪女子大学教授・梅原義一、都立九段高校教諭・大里忠、立教大学教授・酒向誠、東京都立大講師・板津由基郷、東京工業大学講師・安倍勇

第二特集は、「東大・一橋大・東京外語大 一次試験予想問題の検討」 (pp. 32-39)。語彙・語法・発音・口語表現など、いわゆる「客観式」設問がほとんど。語義を与えられた定義から選ぶ問題や、与えられた定義に当てはまる語を答えるもの、中程度の英文中で用いられた語の同意語での言い換えなど、今でも通用する内容。諺の空所補充や、世界地誌的知識など教養や常識を見る設問が英語の試験として普通になされているのは今風の出題とは異なる印象を受けたが、総じて、この問題に答えられれば英語ができると思えるだろうなぁ、という感想を持った。
連載記事の中には、「自由英作文」 (担当者: お茶の水女子大学講師・西崎一郎)、現在の模擬試験よりも詳細な解答・解説・講評がなされる、添削返送実力テストなどもある。50年前の受験英語の全てがここに集約されているわけではないが、このような例を見ると、受験英語が日本の英語教育を歪めたなどとはとても思えないのだなぁ。文科省主導では決して研究対象とはならないであろう分野・領域だけれども、進学校の教師や予備校講師ではなく、大学人の手できちんと考察・総括・必要に応じての評価がなされることを期待します。和歌山大の江利川先生の学参の再評価などは、それに繋がる画期的な試みと言えるのではないかと思います。
もう一冊、1958年5月号、特集「受験生の答案の検討」に関しては明日以降にでも。

週明け月曜日は、0限から。高2の暗誦でダメ出しを受けた者だけを呼び出しての再チェック。週末もたっぷり与えてあるのだから、この再チェックで合格するのは当たり前。そろそろ、新たな範囲も普通に授業内で合格してもらわないとね。
本日のBGM: Second hand news (Matthew Sweet & Suzanna Hoffs)