月はドッヂボールに似ている

週末の高2の授業はそこそこ無難に。
『新クラウン英文解釈』のPart Oneから、that節の例文・和訳を適宜用いて解説しているのだが、改めて、この学参の完成度の高さを実感する。Part Oneは和文英訳の基礎としても使えるように、対訳ではこなれた和訳、文構造の解説、脚注で文字通りの意味を補足というのが秀逸。註釈と用例の補充を施しつつ、この見開き2ページで収めるのは至難の業だろう。しかも、最近の有象無象とは違って「さくいん」も完備といえるレベル。Part Twoも下手な設問を入試問題から取ってきたりしないで、「ここ読めていますか?」というチェックポイントだけを設定して、ひたすら「直読直解」へと歩みを進めていくのが潔い。
次回は、doubtに見る英語の発想と語法詳解の予定。

対して高1の授業は低調。
SVOCに絡めて、「今月の歌」。”Have you ever seen the rain?” (邦題『雨を見たかい』) を用いたのだが、何故、この曲が「今月の歌」なのか、を考えて空所補充のヒントを得るなどという方向では、頭が働かない模様。サビで繰り返される、

  • Have you ever seen the rain coming down on a sunny day?

で、タイトルのその先にある現在分詞をしっかりと捕まえられたかが鍵。そうして初めてmission complete、補語の捕獲となる。
リスニングテストはリスニングテストで、歌の書き取りは歌の書き取り、という具合に、活動と学習とが有機的に結びつかないままだと、その後の伸びはあまり期待できない。
高1も、『新クラウン英文解釈』から第5文型的な用例を選んで解説しているのだが、その中のひとつ、

  • No one can feel the earth move.  だれも地球が動くのを感ずることはできない。

で、「『地震』の話しだと思う人が時々いるけど、ここでは「自転」「公転」の話しだからね」、と念押しした上で、

  • じゃあ、地球の自転に伴い地表は動いていても人間は気持ち悪くなったりすることないのだけれど、24時間で地球一周ってことは、時速にすると何キロくらいで動いていることになるの?

と振ってみても答えが出てこなかったので、

  • そもそも、地球の円周は?

という問いに変更。英語どころではないよなぁ。こういう、本来は小学生くらいの「好奇心の塊」の頃に身に着けておくであろう知識がない者が多いような気がする。「今更」などと高をくくる事なかれ。学級文庫に中学校までの理科や数学をまとめたブルーバックスなどの新書があるので、今一度振り返るべし。教師の側も、コミュニケーションの素地の前に、生徒の「好奇心の種」とか「好奇心の芽」が今どういう状況にあるのか見極めないと…。

夜は夕飯を早めに済ませ、某局でバービーボーイズを見る。20年ぶりの出演とか。私以上に、妻が興奮して見ていた。このあたりが青春時代なのだろう。

明けて土曜は、午前中に皮膚科に行って、午後は本業で乗艇。大学チームはイベントとかで、コースは貸し切り状態となることがわかったので、アップの3kmに続いて1500mを8発。風もほとんどなく、水面に漕姿が綺麗に映る。
今日はセッティングもバッチリ決まって、6km TTのシミュレーションとしてもそれなりに収穫あり。
こちらの湖では片道1500mでターンなので、中盤で加速を緩めたり、レートが落ちたりして、実質「休み」を入れがちだが、そこを踏ん張らせてターンまで引っ張っておけば、本番では、1000mでターンが来るわけだから、スピードに乗ったまま漕ぎ終わることができ、しかもターンの回数が多いので、休みも充分取れることになる。
メニューの後半で、目に見えて艇速が伸び、安定したので、ターンの時に、

  • 今、この片道の後半で凄く良くなって艇速も伸びたよね。何に気をつけたから良くなったかわかる?

と問うたところ、

  • エントリーでしっかり脚を畳みました。

という思いも寄らぬ答え。カタマランからの観察では、フィニッシュで踵からハムストがしっかりと繋がるようになったことが原因だと思って訊いたのだが、本人的には、「エントリー時のたたみ方 = 踏ん張り感」がしっくり来るまでにいろいろ回り道があったということなのだろう。「見ること」の難しさを教えてもらったモーションだった。

帰宅後は、締め切りのある原稿書きに着手。
T先生からは「愉しい記事にしてね」といわれているのだが、大変です。大まかな構想は見えて来たので、実例の収拾精査に励むことから。

本日の学び始めと学び直し。まずは学び始め。
・ 小倉弘 『英文表現力を豊かにする 例解和文英訳教本』 (プレイス、2010年)
・ 小林敏彦 『英語リスニング教材開発の理論と実践』 (小樽商科大学出版会、2008年)
前者は、ohapuruさんの紹介。長文というかまとまった長さの和文英訳を対象とした教材は多くないので少し詳しく検討しようと思う。
後者は、現任校で入試のリスニングテストを作っていて、勘が鈍ってきたなぁと感じていたので、初心に返ろうと。小林氏の教材はよく使っているのだが、多作でありながら一定以上のクオリティを維持し続けているのは驚異的であると常々感じていた。
学び直しの方はというと、
・ 石山宏一 『日本的英語の誤典』 (自由国民社、1982年)
・ 松本道弘 『読んで身につける スピーキング英語辞典』 (ワニ文庫、1997年)
・ 山岸勝榮 『英語になりにくい日本語をこう訳す』 (研究社出版、1998年)
・ 小松達也 『訳せそうで訳せない日本語』 (ジャパンタイムズ、2000年)
・ 大木崇 『「英語で書く」基本が身につく本』 (研究社、2002年)
・ 佐藤洋一編著 『詳解技術英文大全 第4巻 長文の文章表現』 (オーム社、2005年)
あたりを繙く。この一冊をやれば「英作文」は大丈夫というわけにはいかないが、一冊やればやっただけのことはあるものばかり。どれも情報量はそれなりに多いので、根を詰めてやり直すのは正直しんどいのだが、生徒には「達成度」にこだわることを要求している以上、自らも襟を正してこの身を研ぎ直すまで。いつかはわからないけれど、そのうちきっと実作にも生きることでしょう。

今夜は満月。元旦の満月は見逃したので、今宵はお月見といきたかったのだが、夜になっていきなりの大雨。星も月もお預けで、残念。
早起きでもしますか。

本日のBGM: 氷雨月のスケッチ (小坂忠)