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授業は、通院のために午後を空けてもらい、午前4連発。
高2の「強調構文」 (分裂文) では、『ランドマーク』 (啓林館) から用例と練習問題を抜粋して板書。
その後、テキストを読み込む。
高1は『ぜったい音読』の音読大会。入門編から標準編を一気に。自分のそれぞれの音読スピードを把握しておくことが狙い。当然、語彙、構文、テーマの難易度が上がれば、スピードは落ちるので。取り組みの不十分さ、個人個人の温度差も勘案して、冬期課題は『続・標準編』とした。3学期から新年度にかけて、高1レベルの素材に移行することとして、『続・挑戦編』と『挑戦編』という順序が取り組みやすいと思う。
高3は講話。
午後は通院。もう少し、経過観察ということで、切るかどうかは北海道から帰ってきてからの判断となりました。年明けにならないと、ガーゼはとれそうにありません。本当に全治1ヶ月以上になりましたね。低温やけど、恐るべし。
さて、
過去ログでは、http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20060112で言及したことがありますが、

  • Angela Goddard (2003), Writing For Assessment, Routledge

では、ライティング課題での指示の与え方に関して、日本で行われているテストや指導の再考を促すに十分な情報を提供してくれます。
例えば、Chapter 2 (pp.15-29) の “Understanding essay questions: trigger words” では、

  • describe / explain / account for / illustrate / evaluate / distinguish / contrast / justify / explore / imagine / indicate / consider / analyse / define / assess / compare / state / interpret / relate / write about / identify / demonstrate / comment on / give an account of / outline / discuss / investigate / summarise / review / judge / examine / show / criticize

など約30の動詞の比較考察を経て、“trigger” という概念を丁寧に説いていきます。
「あると思います!」の組み合わせ

  • outline and analyse
  • describe and assess
  • give an account and evaluate

「それなくない?」の組み合わせ

  • outline and describe
  • describe and give an account
  • give an account and outline
  • assess and evaluate
  • analyse and assess
  • evaluate and analyse

の例で「動詞」を示しています。一見して分かるように、組み合わせても一向に考察・陳述が深まらないものは組み合わせたところでダメというのは、何を今更と感じる人もいるでしょうが、まず、「動詞」から考えるというところが大切です。
次のステップで、具体化していきます。

  • with particular reference to …

などの限定をかけることで、“focus” や “scope” が定まります。これによって、採点者が求める解答の絞り込みができ、採点が容易になるわけです。ですから、指示文では単に、「分析しなさい」 “analyse” とするよりも、

  • Analyse the structure of your school or college day, with particular reference to the possibilities of online and offsite working by both students and staff. (p. 18)

のような、「何を」「どのように」という具体的な表現が一般的ということになります。
この後、同じ観点を別の表現で記述したり、別の観点から指示文を記述したり、と異なる要件・資質が吟味されていきます。例えば、「比較・対照」であれば、次のような記述となります。

  • Identify a neighbouring school/college. How does the structure of their institutional day compare and contrast with yours?

後半の章、Chapter 5 (pp.65-79) の”Arguing” では、いわゆる話し言葉での arguingとargument/argument(ative) essaysで用いられる「ことば」の違いに光を当てています。
一部を引くと、

Although there are connections between everyday forms of argument and academic argument essays, the language used to express ideas in those contexts is somewhat different. While all forms of argument make references to ‘evidentialily’ – presenting claims to truth and questioning others’ claims – there are many ways to handle evidence linguistically. For example, look at the terms below. These are all from spoken contexts where people are engaged in argument.

  • Can you add to this list any other words and phrases that are used in speech?
  • Explain what speakers are trying to do when they use terms such as these
  • How many of the terms could be used in written form of argument?
  • mark my words / mind you / and another thing / so what? / how come? / that’s rubbish / it stands to reason / I’m not being funny, but … / don’t get me wrong / to be fair / at the end of the day / it strikes me that / well, if you ask me / I’d just like to say / to my mind

100頁程度の薄い本ではありますが、ライティング指導に興味関心のある方は、一度手に取ってみてはいかがでしょうか。
久しぶりにこの本のことを思い出して書いてみました。
というのは、最近「発問」が英語教育で大きく取り上げられるようになってきたのは良いのですが、テクニック的な側面ばかりが強調され、その発問で用いられている英語の「ことば」そのものは軽んじられているのではないか、という気がしていたからです。杞憂であることを願うばかりです。

『英語教育』の1月号を入手。
特集に寄せられた記事には唸らされるものもあれば、そうでないものもあり。

  • もしも全授業がALTとのTTになったら (向後秀明、pp.16-17)

の冒頭数段落で嘆息。高校教師としてパーマー賞に輝き、今では指導主事を務める向後氏なのだが、この記述を見る限り、現場教員への不信が根強いのだろうか、という感じしか受けなかった。ALTがいない英語教室は「不透明」、高校の英語科というものは「英語教育の目的を共有しておらず」、「無風状態」、などといわれたのでは、現時点ですでに充分に機能している多くの高校英語教室を支える教師たちが黙っていないだろうと思うのだが。

  • もしも自分で自由に教科書を作れるなら (佐野正之、pp.28-29)

では、後半になって、「教師の質問力」や「PISAのreading literacy」などに言及があり、ちょっとげんなり。最終段落で繰り返される泣き言はいらなかったと思う。佐野氏の「英語劇」関係の著作にはどれだけ多くのことを学んだか、ここでは言い尽くせないものを感じている私であるが、このトーンはいただけない。掉尾は飾ってこそ、奮ってこそ掉尾であろう。
質問力がmain issueではないことは、その後を読めば分かるのだが、上述したように、今「質問」「発問」は英語教育界のbuzz wordにさえ感じられるので、一言。
デフォルトで読みが内在する英文教材では、その発問・質問の多くが、interactionを賑やかにする効果はあるでしょう。でも、内容を目標言語 (百歩譲って、中間言語) で深く掘り下げようという時には、語彙と文法力が欠かせないはず。さらに論理的思考力、critical thinking を育むためには、ことばそのものを鍛えることがまず大仕事です。佐野氏が指摘した 5項目のうち、
3.の指示には2つの活動が含まれている。

  • What is the appropriate title of the passage?
  • Summarize the passage in your English.

この2つの活動では、前者の「タイトル」をつける方が、語彙力、構文力ともに高度なものを要求される。時には「センス」が問われることにもなる。実際には、いくつかの選択肢を指導する側が与えて、それを選ばせることになるのだろうが、それにしたところで、それぞれの「表現の適否」の吟味をせまられることに変わりはない。そういうことは、本来「ライティング」の授業できちんと扱えばいいことであり、読みを志向する授業・活動においては、もっときちんと「ことば」を読むことにこだわり、そのこだわりを実現させることのできる教科書が市場を席巻するよう、広く、強く、心ある英語教師に呼びかけ続けて頂きたい。お願いします。
今回の特集では、田崎清忠氏の原稿 (pp. 34-35) が読めたことを素直に喜びたい。氏のブログでの今後の展開が楽しみではある。

せっかく、800円も出したのだから、と奇数月ではあったが「和文英訳演習室」 (pp. 83-85) を読んで見たのだが、「講評」を読み始めて愕然とした。

これは以下のような名詞にも当てはまる、汎用的な規則です。

  • the second table → Table 2 / *the table 2
  • the third example → Example 3 / *the example 3
  • the Second World War → World War II / *the World War II


『英語青年』がwebに移行し、現在この雑誌の毎月の連載が「和文英訳」を鍛える本部道場のような存在となっているというのに、この程度のことを講評で例示されるほどに、教師の英語力は衰えてしまったのだろうか?奇数月の課題文は、「英語教育」「言語教育」に関わるものが見られるのだが、投稿者のレベルがこれでは、「コミュニケーション」の指導どころではなくなってしまうのではないか。
そんな不安が頭から離れず、いつもの『相棒』も楽しめないままに、一日が終わろうとしている…。

本日のBGM: Little Triggers / Two's Company Version (Elvis Costello with Steve Neive)