♪Kiss, kiss for your love♪

夏風邪からなんとか復調。
フォーラムの後援依頼を作成。どうなりますか。
強化課外週間は、高1と高2の担当。1コマ90分なり。
高1は、キング牧師のスピーチ暗誦にむけて。まずは、読み込む作業から。恒例の四角化で視覚化などの記号付けによる構造化の作業から、意味を深く理解するところまで。
いつもの繰り返しだが、

  • 「1から10まで全てが分からなくとも、「メッセージ」や「テーマ」など重要なところが掴めればいい」というまやかしに耳を貸さないこと。中国語でもロシア語でもいいので、慣れない言語のラジオの講座を聴いて、試してみると良い。部分の記述から手がかりを作るから話題が分かり、その話題に照らして、部分をさらに正確に理解するから全体を貫く主題を仮にではあれ構築することができるのであって、部分の理解の精度を高めていくことでしか、全体を鷲づかみにすることができるようにはならないのです。

と釘を刺しておく。

高2は、中学3年レベルの英語で音読の徹底からどのように高2レベルの英語に移行するのか、という英文の発達段階の疑似体験。『ぜったい音読』の標準編の「説明文」を素材として、まずは音読。チャンク、リズム、一つ一つの音にいたるまで、一人ずつ、1段落ずつダメ出しをしながら繰り返す。
次に、全く同じ文章を高2レベルの構文となるように、私が書き換えた英文を読み込み、どこがどう変わったか、どのような違いがあるかを考える課題。普通の高校の授業だと、高2レベルの英語を中3レベルの英語にかみ砕いてオーラルイントロダクションなどをしていると思うのだが、それの逆をしていると思えばわかりやすいかも。
一番時間をかけたのは、前置詞のinの扱い。

  • So fishermen in Erimo-Misaki began to plant trees in 1954.

という文での「岬」をheadlandと考えた場合に ”in” というコロケーションがちょっとなぁ…、という感じだったので、『ユースプログレッシブ英和』で ”corner” を引かせて、「角」と「隅」の違いを確認。では、より適切な言葉の選択は?ということで『前置詞のハンドブック』を読み込む宿題を課す。
一番時間がかかったのは、所有格の扱い。

  • They brought their large flags with them.

という原文の所有格が曖昧すぎたので、

  • They brought with them the large flags they fly when the catches of seafood are big enough.

というパラフレーズ (というより註釈だね) で考えさせる。
最終パートで、effective にパラフレーズしたのはいいのだけれど、前置詞のコロケーションで自分自身悩んだので、答え合わせの代わりに、ここで補講の補講。

  • Why is foresting so effective for fishing [increased catches]?

は英文として適切か、さらに、ここでのfor は「目的」とか「用途」といった意味となるのかどうか。辞書の用例で見ると、

  • This facial massage is effective for headaches or mental stress. (『ジーニアス英和大』大修館)
  • A morning bath is effective for low blood pressure. (『和英大辞典』研究社)

のように、for に続く名詞が「好もしくない」症状や特性を備えていて、その治癒・寛解・緩和・解消に効果がある、という文脈となることが多いようである。
COCAの用例で見ると、

  • It's effective for both lowering blood sugar and reducing heart-disease risk.
  • Resistance training or strength training is effective for cardiovascular conditioning.

のように、動名詞を取ることで、「用途」「効能」「成果」を表すことが多い。
前置詞の扱いは名詞句の扱いでもある。明日は、更なる実例をもとに、文脈と意味と形といった多方面から考えを深めてみたい。

午前中3時間の講義を終え、午後からは寮の当番。今日は女子寮。
夏休み中で帰省している者もいるようだが、部活動は行われているので、午後になると動きも出てくる。
模擬試験の成績データが返ってきていたので、一人一人数字を確認。どんなに正確なデータであれ、すでに1ヶ月以上前の過去の自分の反映であることを忘れず精進して欲しい。
今週前半で橋本治を読み、洞察を得る。昨日から、大村はまと鶴見俊輔を読み、作文での名詞の扱いを再考。
鶴見の『文章心得帖』 (潮文庫、1985年) から、

  • 形容詞をたくさん使うと、その形容詞が紋切り型になりやすい。(中略) 紋切り型から離れるためには形容詞を惜しんで、数少なく使う。動詞を主に使って書く。動詞を重んじるやり方が健全なんです。/ ヨーロッパ語の場合だと、動詞と名詞を主に使い、動詞の受身の形を使わない、ということが文章を書くときの最も初歩的なやり方です。日本の現代語の場合は、名詞というのはくせものなんです。名詞のなかにたくさんの抽象名詞がある。ヨーロッパ語から漢語を使って置きかえたものでしょう。そのため、名詞がなじんでなくて、名詞を使うことで、われわれの日常の感覚から別のところへいってしまう。それがこわい。(p.90)

大村はま、『国語教室通信』 (共文社、1980年) のなかに、ヒントがキラリ。

  • 「文集」というのは、文集を読み、目次を作ったり、あとがきを書いたり、題材とか、題のつけ方とか、書き出し方とか、いろいろ研究することになっていましたね。あれをするのです。文集の名前も考えなければなりませんね。/ 文集の名まえ、次のようなのはやめなさい。(わるいのではありませんが、同じ名まえの文集がたくさんあるからです。) / 道、小道、竹、竹の子、歩み、足あと、仲よし、友だち、仲間、光、心、希望/ 動詞から選んでみませんか。 (p. 59、IV 第25号、47. 11. 25)


この夏は鶴見を何度も読み返している。

  • 言葉をもつということは、外側の社会がわれわれのなかに入りこんできたことで、内面化された会話です。他人とのやりとりが内面化されて、自分一人でそれをもういっぺん演じている。ですから、思いつきそのもののなかに、すでに社会というものがある。
  • 文章を書くことは他人に対して自分が何かを言うという、ここで始まるものではない。実は自分自身が何事かを思いつき、考える、その支えになるものが文章であって、文章が自分の考えをつくる。自分の考えを可能にする。だから、自分にはずみをつけてよく考えさせる文章を書くとすれば、それがいい文章です。/ 自分の文章は、自分の思いつきを可能にする。それは自分の文章でなくても、人の書いた文章でも、それを読んでいると思いつき、はずみがついてくるというのはいい文章でしょう。自分の思いつきのもとになる、それが文章の役割だと思います。(以上、上掲書、pp.23-24)

「コミュニケーション英語」の前にクリアーしておかなければならないハードルはまだまだあるようだ。

・定期試験問題を送ったお礼にいただいたメールを読み直す。私もよく知っている先生方と開いている勉強会で俎上に乗せてくれたそうな。フィードバックよろしくね。
・マニックスのファンの先生から、新譜 (?) のレビュー。神戸の話題も。
・新譜といえば、「アニキ」のブログでPrefab Sproutの新作を知る。青春時代のテーマ曲は簡単には色褪せないのだ。

本日のBGM: 恋のTKO (すかんち)