落書きに名筆なし

目の奥の頭痛を気にしていたら、悪寒・吐き気・下痢・発熱と夏風邪の百貨店のごとき症状に。
オープンキャンパスを終えて帰宅してから二日ほど寝込んでいた。四捨五入して五十を数えるようになると、38度を超えるくらいで身体の節々が軋んでくるのがわかる。生姜たっぷりの饂飩にからだが内から反応したのか、微熱程度まで治まってきたので、回復を待ちつつ、布団に寝ころび大汗をかきながら読書。
白水社から新書で出ていたので、

  • 石田修大 『わが父 波郷』

を読む。涙ただ涙。秋桜子・波郷・湘子の系譜も今では書店の俳句の棚では見かけることが少なくなってきたように思う。時代という言葉で流してはいけないものもあるのだ。
最近は更新がないようだが、石田氏の運営するサイト「風鶴山房」 (http://www.ne.jp/asahi/i/hakyo/index.html)で、波郷の俳論に触れることができる。「書くこと」に関して興味関心のある方は必見であろう。

涙も落ち着いてきたところで、

  • 時田昌瑞 『岩波いろはカルタ辞典』(岩波書店、2004年)

をパラパラと。これは先日東京駅の古書店で買い求めたもの。なかなか通して読むチャンスがなかったのだが、全頁カラーで、実際のカルタの図柄が分かるため、どの項を読んでも頗る面白い。単著であることにも驚く。永久保存版決定!

さて、
ことわざで言えば、「毛を吹いて疵を求める」とか「針の穴から天覗く」行いとなろうが、『英語教育』9月号の特集に関して書き残しておく。
「小学校の外国語活動Q&A」というのだが、そもそも、この雑誌を読んでいる小学校の先生はどのくらいいるのだろうか?ネットでは埒があかないので、『出版月報』を注文しておいた。発行部数など、あとで細かく見ておこうと思う。
特集の内容はピンキリ。無責任きわまりない回答も多い。回答だけ並べてみるので、どんな質問に対するものなのか考えてみるのも外野にいる分には面白かろうが、今年の6年生は来年中学1年生、4年後には高校1年生なのだから、嗤ってはいられない。
兼重昇、鳴門教育大学准教授の回答から。

  • まず、小学校の先生の多くは英語教育のための特別の訓練を受けていないことを前提に、あたたかい目で見守っていただきたいと思います。(p.36)
  • 一方、中学校でも、小学校で扱われている内容を把握しておく必要があります。これから中学校へ進学してくる生徒は、小学校で何らかの外国語活動を経験していることになります。(中略) 中学校では、小学校段階でふれたことのある表現を引き合いにしながら文字言語との関連をはかるなど、中学校英語の目的を実現できるような活動を行っていく必要があります。(p.35)
  • 今後小学校外国語活動が成功と解釈されるかどうかは、中学校外国語の成果が担っていると言っても過言ではないでしょう。(p.35)

国立教育政策研究所の直山木綿子氏の回答から。

  • 『英語ノート』は教科書ではありませんから、せっかく作成した指導計画や教材を無駄にすることはありません。(中略) いずれにしても『英語ノート』をそのままやらねばならないとかたく考えず、先生方が工夫をして、アレンジし、目の前の児童に合うように作り変えることが大切です。(p.33)
  • 現段階では、外国語活動の評価に関して、文部科学省は明確な指針を出していませんが、今年度からの移行措置期間中に外国語活動に取り組む学校があることを踏まえ、『英語ノート』指導資料集に「評価基準例」として指導案に記載されている評価基準例を、外国語活動のこの3つの柱ごとに分けて記載しています。(p.12)

中学校の先生は小学校での指導内容を知らないとだめ、というのだけれど、その小学校でどういう指導・評価をしているかは『英語ノート』の「指導資料集」を見ないとわからなくて、さらには、その『英語ノート』も教科書じゃないから現場では使うことにこだわらなくて良い、のだそうです。じゃあ、どうやって指導内容や達成度・到達度を知るんですか?高校が中学から生徒を引き受ける際には、調査書なり入試の成績なり何かしら「ものさし」があるわけだが、小学校から児童を引き受ける際には、何で「測る」というのか?私が中学校の英語教師だったら怒るよ本当に。

次は、先の文科省教科調査官、現大阪樟蔭女子大教授の菅正隆氏の回答から。

  • 一方、中学年でも、低学年同様、学校裁量の時間で実施することになります。同じくこの時間は、目標も指導内容も学校が責任を持つことになりますので、当然、低学年から実施しているのであれば、第1〜4学年までの継続性を考慮したカリキュラムを作成しなければなりません。民間やネイティブ・スピーカーにお任せでは、保護者や地域への説明責任が果たせるかどうか不安です。しっかりと、目の前の児童に合わせた目標、そして指導内容を検討する必要があります。(p.10)
  • 英語の堪能な地域人材では、英語が担任より流暢というだけで、保護者の期待には答えられないのです。しかも、今回、導入された外国語活動は英語の運用力向上を第一義とはしていません。その意味では、教育委員会も、地域人材よりもネイティブ・スピーカーを雇用することを強く望んでいるのだと思われます。(p.21)

承伏できない点が2点。まず、ネイティブ・スピーカー任せではダメ、と一方では言いつつ、地域人材ではダメという。では、担任が率先してやれと、そういうわけなのだろうが、担任の負担をどう考えているのか?もう一つは、立場が変わったとはいえ、指導要領作成の当事者の口から一度ならず出てくる「保護者の期待に答える」ということば。国語、算数、理科、社会などなどの「教科」ではなく「活動」だからといって、「保護者の期待に答える」ことを第一義とする授業の目標などがありうるのだろうか?

大きめの書店に行って「小学校英語活動」や「児童英語」のコーナーをご覧なさい、「教科」ではなく「活動」であり、「教科書」がないからこそ、夥しい教材が棚を占めている。その多くは、この雑誌に原稿を書くような著名で小学校英語活動をリードしてきた方たちである。先ほど引いた菅氏しかり。

  • 詳しくは、近刊『成功する小学校英語シリーズ2』 (大牟田市立明治小学校: 明治図書出版) をご覧いただければと思います。(p.10)

というような発言をする人を「現場の英語教師の目線に立った文科省の教科調査官」などと見誤ってきたツケを今我々は払おうとしているのだろうと思う。

参考資料

  • 『英語ノート1』『英語ノート2』 (文部科学省、2009年、発行、教育出版)
  • 『小学校外国語活動研修ガイドブック』(文部科学省、2009年、発行、旺文社)


気持ちよく一日を終わりたいので、創刊40周年記念 『ミュージックマガジン増刊』 (2009年)

  • 「アルバムランキングベスト200: 1969-2008」

をつれづれなるままに。名盤にはその所以あり。

明日はまた湖へ行って参ります。
本日のBGM: Love & Hate (Keiichi Suzuki produced by Keiichi Sokabe)