辞書

週明け0限は高2。
『P単』100個一気食い。毛利元就を引いて、個々の単語に対する取り組みを経た上でのコロケーション学習の強みを説く。これだけ学習用の辞書が整備された今、語彙学習の方法を精緻化することが大切なのであって、単語集に新機軸は必要ないだろう。今、私が気になっているのは『赤尾の英総』(旺文社)を現代のコーパスをベースにリメイクしてみたら?というアイデア。学研でも以前『Voca 10000』っていう1万語レベルまでの単語集があった。JACET8000の関連商品が既に単語集になっているのだけれど、日々の学習やドリルには使い勝手が悪いのが残念。
高3は新しい範囲には踏み込まず、復習シリーズ。
先週用意した「動詞で-ateは二つ前」のコロケーションのリストを用いて、ペアでミニクイズ。「醜い図」にならないように、続いて久々の対面リピート。高3くらいの素材・言語材料でこの活動がスラスラできると充実感があるものだ。残り時間で、「ポイント特講」の音源を聞き、さらなるポイントの確認。
高1は午後の授業で教室にお弁当の臭いが充満していたので、smellのスモールトークから辞書指導。辞書でsmellを引き、SVCの文型で使われる動詞を田尻式『語順下敷き』で確認。形容詞が補語に来ることは容易に理解できるのだが、臭いに関して実際問題として、どんな会話をするか、『ユースプログレッシブ英和』の用例を眺めさせる。
その後、個々の生徒にどんな臭いが気になるか、『グラセン和英』で英語を引き寄せる。

  • 生ゴミ
  • ガソリンや灯油

などに交じって

  • 薔薇

という女子生徒が!
私からは、「お父さんの使っている枕」という生々しい例を提供しておいた。これで、「どんな臭いかひと言で言い表せないような臭い」は <臭いの元+smell like +名詞>のパターンを活用できることは理解できたことと思います。使いこなせるようになるには、使い続けることです。
辞書には、他動詞の項目で、

  • I can smell gas.

が出てきたので、疑問文に転換させ、

  • Can you smell gas?

から、

  • I don’t smell anything.

までを繰り返す。「嗅覚がない」という意味にとられないように、文脈と助動詞の使用にコメントを加える。
という流れで、SVCの文型からSVOの文型までの確認を終え、残り時間でスピーチのスクリプト添削道場。

模試結果もそろそろ返却。1年生の分はもう返ってきていた。英語が伸びた模様。そりゃそうだろう。単語も読解もリスニングも音読も中学の復習を徹底しているのだから。担任によれば、十分、地元の国公立大学合格圏内の数字だそうです。今まで、「英語が足を引っ張っている」、と散々いわれてましたから、教科(強化?)担当者として安堵感はあります。でも、問題は、この先の「英語力」の伸張ですから。冬期課外は、1年生2年生込みで出直し英文法塾でもやりますかね。
三者懇談の案内と学級通信を配布し校務終了。
辞書関連でいろいろネット検索をしている途中で、鶴見大学の木原文庫の所蔵図書に見入っていたのだが、携帯の着信で、木原研三氏の訃報を知る。黙祷。
例によって、土壇場でテスト作問に難儀。締め切りよ、私を早く追い越していっておくれ!
帰宅後に、いくつか調べもの。
「副詞の位置」に関わって、only の語法。金子稔『現代英語・語法ノート』(教育出版、1991年)。コーパス以前の地道な「英作文的読書」の賜。
発音記号に関して、『世界音声記号辞典』(三省堂、2003年)を繙く。
いわゆるIPA表記で用いる記号のそれぞれを名前を付けて分類整理するという大変な労作。Univ. Chicago Press から1986年に出たものの改訂二版の邦訳である。フォニクス提唱者で日本における学習用英語辞書の発音記号を批判する人も、この位は読んでおいて欲しい気がする。辞書や教材での記号の使用(仕様?)はIPAであれ、カナ表記であれ、そもそも、英語に限らず外国語として発音を身につけること自体が難しいので、それらの母語話者の発音をどのように自分に知覚可能な状態に落とし込むのか、という工夫をしているわけである。私が気になるのは、表記よりも音そのものの習得・聴き取りの難しさの方である。例えば最近の米音・加音を聞いていると、thought / caughtだけでなく warningまで完全に音そのものが変わってきているように思うし、男性でもaction の子音連続のようにactuallyを発音している人が増えているように感じる。フレーズや文の中での音変化やリズムももちろんだが、音そのものの記述に関して、例えば牧野武彦氏のように、日英の比較で整備を続けていく学者・研究者が増えることを望む。
5日の金曜日に、『エースクラウン英和』(三省堂)の刊行に合わせた辞書の研究会が広島であり、投野先生が講演をします。その会に私も出席を依頼されたので足を運び、執筆者の一人として何か貢献してきます。
大仕事は出来なくても、自分に出来ることを繰り返し、積み重ねることはできるでしょうから。

本日のBGM: Jargon (pupa)