虚々実々

課外は、前時の課題の確認から。
『ぜったい音読』をやった、終えた、身につけたということは、自分が読んだ英文素材で、『ぜったい音読』と同様の準備ができるということを意味しているのだ、という話し。

  • 高1レベルの英文素材で、読んだ分を同様にスラスラ感が得られるまで、高2レベルの英文素材で、同様に、高3レベルで、センター試験、入試レベルの英文素材で、と徹底していけば、あとは、過去問演習をしようが、過去問がなくなろうが、読解力だけではなく、英語の底力がついているはず。よく『ぜったい音読』の高1レベルを全部やったのに、TOEICで700行きませんでした、などという人がいるのだが、それは、その人の学習がそこで止まっているから。閉じた学習しかしていないから。本当に『ぜったい音読』が身についた、というのは、どの素材でも同様に自分のものにしていくという姿勢ができたということ。それができていないのなら、残念だが、それはまだ『ぜったい音読』をやったことにはならない。

逆に言えば、『ぜったい音読』をやらなくても、その姿勢が身について、第二の天性になっていればいいのだ。ただ、英文素材のレベルをコントロールするのに、あれほどよい目安はないだろう、というだけの話し。
問題集なんかは別に何でもいいんですよ、良い教科書があれば。今は、良い教科書がないから、問題集がでかい顔をしているのでしょう。(てなことを考えていたら、教育再生懇談会が「教科書を2倍の分量にする」という歌舞伎者振り。誰か、この人たちに鈴つけてくださいな。)
授業の残りで、私の前任校までの授業実践と現任校の授業との違いを大まかに説明。成句、対句の用例集を作る課題を例に取る。

  • 自分のことばを豊にする、自分がことばを育てる主体であり、教わるのではなく、自分の経験を通して学び、自他の成長を喜ぶ。

という大きな柱で、グループ課題をどのように設定し、個々の生徒はどのように取り組んでいたか、クラスという学びの共同体はどう機能していたかを話す。

  • 自分が毎回の課題に精一杯取り組んで、自分の英語がどう成長したか、その手応えを得ているから、誰も「偏差値が上がった、下がった」などという話をしないし、成績のことで一喜一憂したりしない。

もっとも、授業中はみんな必死だから、笑ってなんかいられないけど…。
高3の生徒には、奈良女子大の過去問をコピー。上位校を目指す者は、お受験の流れに乗っているのか、女子大の過去問にほとんど関心がない。
ライティングというか英作文の問題への対応を考えると、和文英訳だと、御三家の奈良女・阪大・京大(間に神戸大も入るかな?)あたりで自分の取り組みの力試しをすればいいのであって、その問題を解くことを授業やシラバスのゴールとするのはどうにも抵抗がある。力をつければ、その問題にも対応できる、でいいでしょうに。
一方で、世間一般の人が考える「自由英作文」や「エッセー」(もっとも、60語でessayは書けないと思いますが…)の出題なら何でも良いのか?というと、テクストタイプが明らかな英文を、バランス良く要求している大学というと、国立では千葉大の教育・中学英語のライティングだけといっていい状況ではないか。(他にあったらご教示願います)
大手予備校の過去問アーカイブでは、このような募集区分ごとには過去問が見られないでしょう。良い出題をしているのにもったいないよね。良心的という意味では、お茶大の和文英訳と広島大のグラフ問題は続けて欲しい良問です。この広島大の出題とお茶大の和文英訳の両方ができれば、expositionの基礎は確かめられるでしょう。中途半端な東大の出題に躍起になることもない。
06年の東北大と九州大はどちらも英語での要約を求めていて、summary writingの力を見るという、時代の流れ、しかも最先端に乗ったかに見えていたけれど、07,08年は和文英訳に逆戻り。覚悟が足りないやね。地元の山口大学も、手紙とか、メールとか妙にコミュニカティブな「伝達形式」を意識しすぎていて、ライティングの出題として見ると「?」が多い。所詮、入学試験のライティングでの読み手は「採点官」なのだから、擬似的にしか成り得ないのである。奈良女も、07年の和文英訳は「お茶大」型と言える良問だったのだが、08年では、「広告文」になった。
他大学の動向を気にするのではなく、入学する学生にどんな英語力を求めるのか、もっとハッキリ打ち出して欲しいものだ。
riversonさんから、書籍が届く。一介の英語教師にはなかなかお目にかかれるものではないだろう。感謝の言葉もない。しばし感激で震えた。流麗な handwriting の小文字の t のストロークに、時代を感じた。英文法の参考書も、何らかの形で自分の実践に役立てたい。
サティシュ・クマール『もう殺さない ブッダとテロリスト』(バジリコ、2008年)読了。翻訳は加島牧史。妻に見せたら、複雑な表情をしていた。人の世は難しいことだらけ。
悟りは遠い橋のようなものか。

本日のBGM: Vanity Factory (佐野元春 & the HKB)