Not just school-wise, but ....

先日、職場に電話があり、本業以外で私に電話なんて珍しいこともあるものだ、と思って出てみると、指導主事の方から、中高教員有志での勉強会へのお誘いだった。田邉先生に紹介して頂いて、連絡先を伝えてはあったのだが、夏はなかなか参加する機会がないまま2学期になってしまっていた。今回は、「ライティング指導」に関して、講師として参加してもらえないか、ということだったのだが、生憎その日は文化祭があり、抜けられないのであった。また来月以降で勉強会が開かれるときに声を掛けてもらえるようなので、少し整理をしておこうと思う。どの地域にも、切磋琢磨しながら研鑽に励む教師はいるのだ、ということが励みになる。
しかしながら、盛り上がる意気とは対照的に、授業は低調。高3センター対策は、「却下系」のつなぎ語に関する注意点を解説。今使っているセンター試験対策のテキストは、ベネッセが学校採択用に作っているもの。このセクションは出来が悪すぎる。短い文章の方がスタッフライター、ピース集めのスタッフの力量が大きく反映するのはもちろんなのだが、いかんせん解説が貧弱。1学期に、営業の方には強く訴えたのだが、このセクションは来年度用にはそっくり入れ替えるしかないだろう。空所を補充した形で文章を引用しておく。

  • On a clear night you can see about 3,000 stars. Of course, there are many more stars than this. For example, you can see the Milky Way, which is made up of billions of stars. However, those stars are too far away to be seen and counted as separate stars.

このパラグラフで確実に解説しておかなければならないのは、

  • 具体例は何をサポートするために用いられているのか?→主題の把握
  • you can see での「可能性」とthere are … / those stars are … での「事実」との対比→焦点

の二点だろうと思うのだが、その二つとも解説では触れられていないのだ。つなぎ語だけ申し訳程度の解説を加えても骨太の英語力には繋がらないという典型的な教材例である。仕方がないので次回は、On the contrary/ instead of/ rather than/ unlike/ as opposed to / far from などを『東大特講リスニング』を作る際に用いた入試長文の実例をもとに学習の予定。
高1は教科書のサマリーのディクテーション。ペンを置いて全体を通して、ペンを置いて1文を聞いて、ペンを置いて全体を通して、という手順で書き取らせた後で、sentence repetition。音読が単なる呪文にならないように手を変え品を変え。書き取る際に異様に遅い生徒がいて、案の定、シャープペンシルで硬い(=濃さの薄い)芯を使っていた。消しゴム&シャーペン禁止令!エンピツかペンを使うよう指示。
夏のELEC協議会の研修会でも筆記用具の話はしたのだが、日本の英語教室では入門期しか書き方指導が行われていないのではないか?学年が上がれば新出語が難しいものになるだけでなく、センスグループが成熟していく中で、長さも長くなるので、単純に書き写すだけでも負荷は高くなるのである。正しいペンの持ち方・書き方はできれば高校1年生くらいまではきちんと「身につけさせ」ないといけない。私自身、極めて悪筆なので、努めてペリカンの子供用万年筆(ペリカーノ・ジュニア)を使うようにしている。首軸のゴム部分が指三本で正しい持ち方になるよう三角形を形作ってデザインされており、書き味も抜群。1本1200円から1500円程度。前任校でも、クラスで一番の悪筆の生徒には自分の使っていたものをプレゼントした。署名用には別にWatermanのリエゾン・エボナイトを2本持っているのだが、最近はとんと出番がないのが残念…。
他には辞書の活用法の話。語法に詳しい単語集・熟語集といったって、辞書の方が収録例文が充実している。入試に出る単語を集めてデータベースを作ってコーパスを整備してみたところで、英語の根幹を成す必修語、基本語というのは5年、10年で変わるものではないのだから最新の辞書のみを有り難がるのは賢明ではない。私が高校の合格祝いに買ってもらった研究社の『英和大辞典(第4版)』がいかに自分の力となったか、三省堂の『コンサイス英英辞典』が英英和としていかに有効だったか、そして初版のLDCEがどれだけ骨太の英語力を養うのに貢献したかを語る。高3は『新グローバル』を使っているので、『ウィズダム』との違いの説明から、監修の木原研三氏の逸話などを高1の生徒に。そこから更に、田邊先生に以前聞いた、山口県の英語達人の話。この話は田邊先生が最近出した本にも載っているので、是非ご一読を!田邊先生といえば、『英語青年』の今月号の特集が「英作文」だった。この雑誌は地元の書店には全く並ばないので、届くまで今しばらくの辛抱。
高2はフォニクス徹底復習シリーズから。foundの語義と発音から、「女性の化粧下地は?」とカタカナ語での定着度合いを確認し、「化粧」のmake-upから句動詞のmake up forを図解。「メーキャップって一体何を埋め合わせて元通りにしているのか?」と問う。肝心の発音では、等時性リズムを強要するのは嫌いなのだが、子音連続の部分に余計な母音を割りこませたり、弱・強の音節の最初でもたついたりするのをどうにかしたい。個々の単語で練習しているときにはできていても、個別に熟達度チェックでビデオ収録をする際には「文」を言わなければならないので、息が貧弱な生徒は完全に文の後半で失速する。自分の身体をアコーディオンのように使う基礎トレーニングを工夫しなければ。竹内メソッドか?調音点のトレーニングが必要なのはもちろんだが、音源となる出力そのものもトレーニングが欠かせない。こういうところをどう扱っているのか、地元の中学校の先生方や教育困難校の高校の先生方ともっと情報交換したいものだ。進学校の生徒でレディネスが備わっているにもかかわらずこういうことができていないとしたら、それは教員の怠慢以外の何物でもないのは言うまでもない。
某社編集部から原稿の催促メール。資料のチェックは一通り済んだので、あとは適切な例文を作るだけなのだが、これが難儀。この週末も本業があるのでしんどいなぁ。明日は一人、新たに見学希望者がくるようなので、どんなものか、こちらも見学させてもらいましょう。

本日のBGM: 隠せない明日をつれて(Tokyo No.1 Soul Set)