「キオスクにランボォ 手にはマニラ」

久々の何もないオフ。妻が帰省しているので暫し独身貴族。
(ほぼ)地元の湯田温泉にある中原中也記念館へ。
特別企画展「小林秀雄と中原中也」がお目当て。
学生時代からダダイスト高橋新吉は大好きだったのだが、中也の詩がなかなか好きになれない。富永太郎の方が自分の耳にはしっくりくる。中也がチェーホフのベクトルにもっと突き抜けていたら…などと思うのは、ファンでないからこその思いか。どんなに傑出した人物であれ、伝説化・神格化されていくのは見ていて切なくなる。
ただ、中也の詩集の装幀を高村光太郎がしていたとか、「へぇー」のカウントが増えたことは確か。
『感想』の直筆原稿はなし。代わりにというわけではないが、『本居宣長』の直筆原稿が圧巻。積み上げられた枚数以上に、こんなに推敲・添削したら、1枚で200字も残らないだろう、というくらいインクが走る走る。やや太めの万年筆での著者校。文字の力。
高橋英夫『友情の文学誌』(岩波新書)の「フィナーレ」に、「白洲正子、そして吉田健一」と題する小論があるのだが、そこで若き白洲が小林の『本居宣長』に対して批評を加えるエピソードが引かれているのを思い出した。今回の企画展にも青山二郎はでてきていたが、さすがに白洲までは辿れていない。中也を語るにはその必要もなかっただろうから。それでも、白洲が小林に見ていたものはどのようなものだったのだろうか、ということは気になるものだ。『十一面観音巡礼』のハードカバーをI先生に貸したままお別れしてきてしまったなぁ…、などと記憶の糸が解れ出す。
企画展は9月24日(月)まで。
9月8日(土)の午後からは、

  • 第12回中原中也の会大会:中原中也と小林秀雄(会場:ホテルニュータナカ)

で、「批評の楕円 小林秀雄と戦後、他」と題する加藤典洋氏の講演があるとのこと。
詳しくは中原中也記念館へお問い合わせを。
午後は、It’s a beautiful day でAnn Sally の新譜『こころうた』を遅ればせながら入手。このアルバムを買うつもりで入店したら、かかっていた曲が『のびろのびろだいすきな木』だった。
Steel panで夏らしい印象の “Over the rainbow”に始まり、島崎藤村・山田耕作の『椰子の実』などのカバーに加え、オリジナル数曲。最後はミルトン・ナシメントの “Travessia”。アコギの笹子重治が3曲で参加。この3曲は笹子氏のギターのみの伴奏。いい世界を見せてくれます。その他パンケーキ、三日月楽団のメンバーが主としてサポート。
帰宅後、Ann Sallyの歌声に抱かれて午睡。
夕飯は、残り物の烏賊の一夜干しと軽く湯がいたオクラ、インゲンを炒めたパスタ、柚子胡椒風味。アイデアだけでの勝負だったが、正解。日本酒にピッタリ。これは、柚子胡椒が旨いからとも言える。パスタをゆでるお湯で予め出汁をとっておきそこで最初に野菜を湯がいておくのも大事なポイント。

さて、酔いが覚めた頃を見計らって、今夜は『英語教育』(11月号)掲載予定の「授業のここにフォーカス」の原稿に着手の予定。今回はいわゆる授業の講評/コメントを書く側。学会の身内によるお手盛り原稿にならないよう、厳しく鋭く迫りたいと思う。授業者など大まかな内容は来月くらいになれば告知できようか?
その他、この夏はまだまだ、大学入試用単語集の原稿執筆とか、発音・リスニング指導の原稿執筆とか、専門のライティング以外にも書いておかなければならないことが山積みなのだが、なるようになるだろう。

本日のBGM: トラベシア(訳詞:かしぶち哲郎/演奏:ムーンライダーズ)
本日の晩酌:貴・備前雄町・純米吟醸・火入れ/冷蔵庫から出して室温にて