「私が、もし目が見えなくても、この人を好きになっただろうか」

修正原稿1本提出。大会要項と活動報告入稿。とりあえず、今週のノルマ達成。
夕べは高2今月の歌を決めあぐねて、ワークシートの作成が1時過ぎになってしまったので今日はやや睡眠不足。
高2の授業の開始10分程度で前回のタスク、What are the best thing and the worst thing about aging? の続きから。ペアで情報交換を2分間。その後、新たなペアを組み、リポーティングの活動。引用の定型表現、同意・不同意の定型表現と慣用表現を導入。

  • I don’t think so. / I think otherwise.
  • That’s just what I think. / I like the way you think.
  • That’s where you and I disagree. / That’s what we disagree with.
  • I couldn’t agree with you more. / You can say that again. / Now you are talking.

などを使いながら対話をするもの。さらに新たなペアでリポーティングをさせた後で、1組無作為抽出でデモンストレーション。たまたま男子のペアになりしどろもどろ。次回以降も引き続きこの形式で行うことを伝えて新曲へ。
今回は、作業手順や内容自体は同じなのに、ワークシートのdirectionを英語のみにしただけで活動が滞る。作業の指示を教師が英語でしていても、彼らの内心で英語のみで処理されているわけではないことがよく分かる。英語によるGuiding questionsの体裁になっているので、ペアで質問をしながら進めていき、最後に個人で感想を書く。しばらくはこの手順、このスタイルでやってみようと思う。
高3ライティングは遅れていたクラスでのCUBING導入。「七五三」を定義・説明する英文を分析し、その後ペアで暗誦。さらに質問での応答を経て、自分自身の思い出を語るというもの。1学期の主目標「物語」と今学期前半の主目標「定義」のコラボというかハイブリッドなタスクである。これは生徒には達成感があったようで歓声があがっていた。いよいよ2クラスとも今週で「福袋」ドラフト書きである。
今日は午前で授業が終わるのだが、高3の生徒が休み時間に相談に来た。
一人はTOEIC対策。書店で「売り上げ第一位!」という文句に乗せられて、教材を購入したのは良いが今ひとつなのだそうだ。リーディングセクションで悩んでいる模様。教材をこなさないうちにハシゴするのはあまり感心しないので、新たな教材購入には慎重に、今使っているものの書名・著者・出版社をメールするように指示しておいた。
もう一人は、嬉しい悲鳴。「(英語の)演劇・ドラマを見て分かるようになるにはどうすればよいか?」という相談。「たくさん見て慣れるしかないのかな?」という風に思っているようだ。演劇そのものへの興味関心は高いようなので、まずは勤務校近くで近々行われる平田オリザのワークショップ(http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/ev_061123.html)に参加してみては?と意識付け。自分自身が女優になって英語で演じたりすればまた違った解決策も出てこようと思うのだが…。文学作品の読書経験や映画DVDの活用状況などもう少しプロフィールを確認して助言しようと思う。

『英語青年』11月号(研究社出版)を読む。
「リノベーションブルース」(佐藤良明)がすごいことになっている。今後が楽しみだが、この雑誌の存在意義ごと揺すぶられてしまうのではないだろうかと心配になる。
特集は「日本の英文学:逸脱の正統」。中野好夫と吉田健一のものに自然と目がいく。吉田健一の『英語と英国と英国人』からの引用から始まる小山太一氏の「言葉に一人で向き合うこと」は良かった。英文学の世界だけでなく、今風の高校の英語授業(ひいては多くの大学での英語授業)での「読み」について内省を求める内容としても読めると思う。
「読み」と「内容理解」について、高校英語教師必読とも言える考察が、「地道にマジメに英語教育」の山岡大基先生のサイトで展開されている。私も『英語青年』10月号では借り物ではない自前で考えた内容を書かせてもらったが、山岡先生の考察は地に足がついた優れたものである。多くの英語教育関係者に目を通して欲しい。(http://hb8.seikyou.ne.jp/home/amtrs/eigokyouikuron.htm
『新英語教育』11月号(三友社出版)の中から、1点、異議を唱えておきたい。
上田恭子「英語で日記を書こう」(pp.26-27)で引用される言語活動のマトリクスである。ある大学教授の研修での話を引いて、 recognitionとproductionを横軸(x軸)に、creativityとimitationを縦軸(y軸)にとって、象限をABCDと分けている。Creativityが高く、productionが高い活動が象限A、対極のrecognitionが高くimitationが高い活動はCというように考えるのだろう。そこまではいい。意図がわからないではない。ただ、次がいただけない。
「よい授業、コミュニカティブな授業というのはAのゾーンが多い授業です」
というのはミスリーディングどころか、誤謬であろう。大学の先生は、こういうことを現場の教員に吹き込んで煙に巻いてはいけない。
グラフとして丁寧にも目盛りが付けてあるのだが、

  • Creativity = 4
  • Production = 4

という座標によって出来る塗り面積が4x4=16のスピーチ活動の方が、

  • Creativity = 2
  • Production =2

で 2x2 = 4の自己紹介活動よりも「よい授業」だといいたいのであろうか?
その論理でいくなら、

  • Production = 4
  • Imitation = - 4

で、4 x - 4 = -16のパターンプラクティス活動は、相当にダメな活動ということになる。
そんなことをいったら、x軸y軸の交差する原点にあたる活動とはいったいどんな活動なのだ?
また、recognitionを大々的に行い、imitationしか要求しない活動、つまり教科書本文の丸暗記の活動は、

  • Recognition = - 4
  • Imitation = - 4

すなわち、 - 4 x - 4 = 16 となって、活動そのものの意義はスピーチ活動と同等になるのではないか。
百歩譲って、「コミュニカティブな授業」のプロファイリングなのだ、ということで許容したとしても、それに「よい授業」と無条件にラベルを貼るのは勘弁して欲しい。
新英研の伝統である、「英詩の発表活動」はABCDのいったいどの象限に入れるつもりなのだろうか?
第五回小林秀雄賞に荒川洋治『文芸時評という感想』(2005年、四月社)が選ばれた。今季の『考える人』(新潮社)に選評とインタビューが掲載されている。引用はしない。中高の英語教師にも一読を勧めたい。

本日のBGM: 「突然の贈りもの」(大貫妙子;LIVE Beautiful Songs(2000年)より)