「文学よりも広いもの」

ようやく今週の授業も終了。
木曜日はライティングの日。熊本の前田先生のブログから小学校4年生での実践を高三生に紹介。「気づき」があるかどうかが鍵。授業に出て、活動にしっかり取り組めれば、かなりの飛躍・成長につながるのだが、高3のこの時期はそこが最大の課題。
午後は別件で仕事をした後、某社で充実した会議。その後、さらに今回のスタッフで焼鳥屋で軽く宴。良いものが出来そうな予感はあるのだが、私にその余裕があるかどうか…。
今日は、高3ライティングのもう片方のクラスでピアレスに基づきリライト。疲弊。
英語のライティングで「フィードバック」に興味のある方は、以下の本をお薦めしておきます。私も最近読んだばかりのものです。

  • 青木信之(2006)『英作文推敲活動を促すフィードバックに関する研究 推敲課程認知処理モデルからの有効性の検証』渓水社(¥6,000)

青木氏の博士論文が刊行されたもの。大学生を対象としているものの、日本国内でのリサーチなので、参考になることが多い。価格も価格なので、個人で買うのが憚られる場合には「英語科」などでの研究図書費でなんとかして下さい。渓水社が良い本を出しているのか、広大系で優れた研究者がいるということか、ともあれ、国内での良質の研究が広く世に出るのは好ましいことである。国内の高校・高専などの研究紀要に収録されている論文では「外国の論文の引用・参照」には事欠かないが、「国内の先行事例の精査」という点でお粗末なものが多い。これからEFLのフィードバックを研究する人は、国内の先行研究としてこの本をまずは押さえることになるだろう。SELHiで人と予算を動員して研究を行うのであれば、高校でこのレベルの研究を行って欲しいものである。
高2の授業は視聴覚室。11月の歌はBilly Bragg。コックニー訛りがやはり聞きにくいようだが、楽曲の良さには気付いたようだ。今回の一連のタスクで変更したのが、以下の語については、辞書で意味の幅・拡がり、比喩・象徴など裏の意味を確認させたこと。

  • salt/ jam/ litany/ sentence/ (the) meek 

類義語をどのように授業の中で扱い定着させるか、と考えて池上嘉彦『英語の感覚・日本語の感覚』(NHKブックス)の第2章「語彙の中の意味関係」を読んでいたのだが、自分の持っている多義性の理解は再考すべきだな、と感じたためである。たった5語だが、この5語の理解で曲の内容理解が深まるだろうというねらい。前回の曲よりも、感想の英語の量が確実に増えた。読解のテストやタスクで、このような未習の難語にはあらかじめ「注」をつけておくことが多いと思うのだが、辞書を引いて、語義を吟味しワークシートに記入することで、実は最終的な理解や定着に差がつくかもしれないと考えてみたらどうだろう。PISA型などと称して「内容理解は前提であり、理解したことを英語で表現できなければ、読解できたことにならない」というリーディング観はあくまでも真理の一面を表しているにすぎない。当然のことながら、「予習」と称して、未習語・未習得語の全てを逐一辞書で調べて単語帳を作るのが優れた学習法かどうかも、疑ってかかるべきだが…。
『英語青年』12月号(研究社出版)を購入。特集はカポーティ。旬。新連載「英文学界オーラル・ヒストリー」は米須興文氏。これは面白く読めた。第一回に相応しい内容。リレー連載「授業で活用するこの映画」は、高校の英語の先生方、高校の英語の教科書を執筆する方々に是非目を通して欲しい。フィクションとノンフィクションの鬩ぎ合いというか食物連鎖というか、「(大学)英語授業の可能性をここに見いだすことも可能である。」と、ひとりごちたところで、次のページが「リノベーション・ブルース」。ふー。
明日は朝5:30から本業。午後から参宮橋で全英連の打ち合わせ。
本日のBGM: Learning How to Love You (John Hiatt)