邯鄲の歩み

8月13日の同友会のサマーワークショップで、「入門期の指導」から扱うので、現在のペンマンシップの状況を調べていた。メディアで紹介される小学校英語活動(教育?)では、表向き全くと言っていいほど文字指導・書写指導には触れられないのだが、実際に書店の児童英語のコーナーに行くと、「初めてのローマ字入門」「初めてのブロック体」「初めての筆記体」など、かなりの数の練習帳が市販されていることがわかる。そのほとんどが、「xx編集部編」のような系統性の薄いもの。中学校の入門期指導ではどうなっているか、というと英語教育系のコーナーには全くと言っていいほど「文字指導」「書写指導」に関する書籍はないのですね。小学校の授業では表向き文字指導・書写指導をしないといっても、大文字・小文字の区別を覚えるために「書くこと」も必要であろうし、小学生を持つ保護者が「文字」も書けるようにさせたいという要求は看過できないだろう。そうすると、このような練習帳で系統立った指導もなく文字を書き始める小学生が増える可能性があるのだ。そして、文字に関してバラバラな学習履歴を持つ生徒を中学校1年生で教えなければならなくなる。学習者心理として、隣の子がいわゆる「筆記体」をいきなり書いてたら、いろんなこと考えるでしょ?英語の音と文字の識別ができて、しかも一つ一つの文字を適切に書ける子供が書体のバリエーションを広げることには何の問題もないだろうが、まだ文字認識が曖昧なうちにpeer pressureにさらされては、入門期にして英語嫌いを生みかねない。小文字と大文字の入り交じった綴り字、いわゆるブロック体と筆記体の交じった綴り字などが頻出してしまえば、私が中1の教科担任なら、頭を抱えるだろう。こういう状況を考えると、私が以前いた私立中学・高校は文字指導の伝統を大事にしていた、と思う。全ての子供たちが自信を持って文字を書ける、単語を写せるということは教室での英語活動にとって重要な意味を持つのである。今回の同友会のワークショップでは、そんな思いも含めて文字の形態的特徴と文字のつながりから扱います。高校生のhandwritingの実例も交えて、入門期に適切に文字が書けることの意味を考え直してもらう予定です。
その後、夕方まで、8日のELEC協議会のワークショップ内容を吟味。レジュメを簡潔に、ワークシートを系統的にと考えているのだが、扱う要素が多すぎたり重複したりして中断。このところ自分の実践を発表するのに汲々としていたので、理論概説書を読んで頭の整理。言葉の定義、活動や要素の分類など、いろんな研究者がいろんなことを言っているのだが、それでも洞察を得ることはできるので、やはりきちんとした研究はありがたいものだ。
夕方からは某社の新企画で編集サイド、K先生とA先生と顔合わせ。本当にこんなに仕事抱えて大丈夫か?でもK先生、A先生は全国のいろいろな研修にもお呼ばれしている人たちなので、編集からすれば私が一番暇そうに見えるのだろうなあ。頑張りましょう。その後、3人で駅周辺の居酒屋で英語教育放談。

山岡大基先生のサイト「地道にまじめに英語教育」で「英語教育論」が展開されているのだが、7月17日付け、7月20付けの記事は本当に考えさせられた。折しも、柳瀬先生のサイトで、この山岡先生の両日の記事に言及されていて、論点・争点の持つ意味が大きいことを実感した。多くの英語教師(と英語教師志望者)に読んで欲しい。前にもこのブログに書いたと思うのだが、『英語教育』(大修館)はこういう論考を載せて、英語教育学者を刺激しないと駄目だと思う。
高校英語教育に影響力の強い山岡氏といえば、もうお一方。この4月より立命館大学の教授となられた山岡憲史先生が、立命館大学の高大連携事業のような企画で講師をされるようです。「スキルアップ講座」と題して、予備校講師も招いて数学と英語の二教科で行われる模様。英語は 8 月 22 日(火)〜 24 日(木)の3 日間。
山岡先生の担当講座は、

  • 受験英語の誤解と真実
  • 受験の力をつけるコミュニケーション活動

(詳細はこちらからpdfを→ http://koudai.ritsnet.jp/koudair/project/s_youkou.pdf )
残念ながら申し込みはもうすでに締め切りとのこと。どなたか参加する方がいましたら情報をお寄せ下さい。
こういう面白い企画を首都圏の大学はやってくれないのだろうか?