英語教師 表と裏

以前、公立の高校で外国語(英語)教育を重視した学校に勤務している際に、「3年間でサイドリーダーを20冊読破」、「英語I,IIでは検定教科書を2冊使用して、インタラクティブに行う」「1年からライティングを重視し、スピーチ指導を並行して行う。2年前半でプレゼンテーション、2年後半から3年でディスカッションとディベート」「ALTやteam teachingを活用する」「文法の自学自習システムを整備する」等の取り組みを行い、2クラス約80名のうち、当初は20%程度だった英検2級の合格者が、半数にも及ぶまでに向上したことがある。ただ、オーラルだけをやっていたわけではない。文法プリントは3年間で1500枚にも上り、ライティングの添削なども膨大な量になるわけで、担当の英語科教員(の多く)は、朝7時から、夜9時過ぎまで職員室で授業の準備に追われていた。学区のレベルではまさに中堅。大学進学も国公立はほとんどいないし、もし早慶上智などに入れば御の字というくらいのレベルであったため、英語はすばらしくできるが、大学は中堅の大学に進学するという生徒が多かった。その後、単位制を活用して、英語の単位を外国語科以上に取得することが出来るという学校に異動し、ライティングを中心としたシラバスを構築した。すでに10年が経とうとしているが、この時のシラバスは高校レベルでは日本一の内容の豊かさだったと自負している。私のライティングの他にも、プレゼンやディスカッション・ディベートを重視した授業を作っている先生、再入門講座を作っている先生など、どの教員も自信を持って得意な分野を『営業』していたように思う。この学校も、高校入試で入ってくる生徒の英語力は中堅レベルであったが、授業をフル活用した生徒は、外語大、早慶上智レベルにはちゃんと合格していたし、教育学部の体育課程に進む生徒でもセンター試験で英語は160点以上取っていた。資格試験・検定試験でも、帰国子女や留学経験者ではなくともTOEFLで520点くらい、TOEICでは730-750くらいの習熟度の生徒が出てきた。このころは、勤務校が自宅に近かったこともあり帰宅は学校を出るのが10時、11時ということも珍しくなかった(一度、過労死対策として勤務時間を計算したところ、週77時間という週があった)。まさに、教員と生徒の自助努力で成り立つ危ういバランスである。
そんな背景を経て、今のSELHiの取り組みを見ると、はたして本当に恵まれているのかと思うわけである。

「まず、SELHi 指定校である高知西高校(筆者勤務校)の取り組みです。平成15年度から英語科カリキュラムに訳先渡し授業を導入し、その余剰時間を2つの方向、文法(教科書2--3課終了毎に基本文法に関する授業を行う)と多読(学年後半にもう1冊別の教科書を読む)に活用しています。これで通常の2--3倍の英語量に生徒は触れます。」(『英語教育 2004年4月号』(大修館書店)

これで本当に、成果が上がっているといって良いのか?もっと地道に泥臭い努力を続け、大学進学や検定試験・資格試験ではなかなか測ることのできない英語力の向上を果たしている、また生徒のself-esteemを育んでいる学校は数多あるはずである。そういう学校の、汗まみれの先生方をこそ、メディアはもっと取り上げて欲しい。