『FENニュース聞き取り60分』

(金星堂;1978年刊;カセットテープ60分1巻)
文字通り、FEN(現AFN)の定時ニュースを集めたもの。高1の冬休みかな。当時の教科担当M先生にまずテープをお借りして、コピー。ひたすらディクテーションと音読をしていた。当時、ソニーのLL対応カセットデッキ(再生速度可変機能付き)を使っていたので、まずは、普通に聴いていてよくわからないところを30%遅くしてみたのだが、『モゴモゴ』と低い声でもったりしたリズムとなってしまい、かえってわからなくなった。そこで、30%スピードを上げ、130%のスピードにして速い再生をしたものを、兄のラジカセにダビングし、自分のソニーのデッキで、さらに130%にして(169%のスピードということ)聴いていた。今のように、ピッチ(音程)まではコントロールできないので、ほとんど甲高い声で早口でまくし立てる感じ。その『キュルキュルッ!キュキュ、キュー』などというリズムの波を捕まえては、もとのスピードに戻して(30%早回ししてダビングしたものを30%遅くすると、もとのノーマルなスピードになるわけです)確認。この方法は、自分で見つけたこともあり、やっていて、面白かった。
1本のニュースを何回も繰り返し、もう書けないというところまで書き取ったら、M先生のところにテキストを見せてもらいにいく。あまりの出来なさ加減に幻滅することも多かったが、そのうち、キュルキュルのリズムが自分の中に生まれてきて、ノーマルで聴いているときに、頭の中には更に速いスピードで音が走っているような『錯覚』が生じて、ノーマルの音声が『ゆっくり、はっきり』と聞こえはじめた。そこからは、学習は加速していき、音の連結・変化、トピックに関する語彙(結局これが決め手でしたね)などを詰めていくことでどんどん理解が深まり、聞き取りの力が伸びていった。最後のほうになると、M先生も面倒くさくなったのか、テキストごと貸してくれて、1冊終えることが出来た。酷使したカセットデッキは計2回修理に出した。(この後、FENのラジオ放送そのものにチャレンジしようとしたが、AM放送は北海道の田舎では日中はノイズばかり。仕方なく、短波でキャッチできるよう、アンテナを自宅に設置して聴いていたというのが後日談。)
教材シリーズ第6弾で、とりあえず、一段落。ここまでで、中学3年から高校卒業まで、いわゆる英語のネイティブスピーカーと接する機会のほとんどない、田舎の学習者がどのように英語を「学習」してきたかが概観できたのではと思っている。