センター試験の外国語

いわゆる「センター試験」の初日の試験の問題が公表された。おそらく、英語に関しては学芸大付属、筑波大付属あたりの先生がコメントをしてそれが新聞にのるのだろうが、外国語は英語以外にも独仏中韓があり、この出題に関してはあまり話題にならない。来年度からは新課程対応となるので、現行の出題形式は最後になるというのに、この形式に関して何が良くて何が要改善なのか、という建設的な批評を一般の人は目にする機会がないままである。(大学入試センターから発行されている冊子を読んだことのある一般人はほとんどいないだろう)
コミュニケーションとしての力を測る良問である、などという可もなく不可もなくというコメントは不要である。予備校など受験産業側が出しているコメントに次のようなものがある。「センター試験の英語は、英語の基礎学力を判定する目的で出題されていますが、それは決して付け焼刃的な知識を問うものではなく、コミュニケーションの手段としての英語力を、どの程度身につけているかを測るためのものです。」
50万人以上が参加する国民的行事のようなこの試験。建前では、中学校から授業のある英語と、高校で初めて扱われる他の外国語との間に到達度の差は歴然として存在するだろうから、出題形式だけで評価方法の妥当性を語るのは危険であるが、敢えて指摘しておきたい。果たしてセンター試験は外国語の能力を測定しているのだろうか?
・細部にとらわれず内容を読み取る速読力
・図表や絵と文章の内容を対照させる情報処理能力
などが外国語の読解力で不可欠な構成概念だとするならば、英語では図表や絵を用いた出題が必ずあることは頷けるものである。では、なぜ、フランス語、韓国語では図表・グラフ問題は出題されないのであろうか?今回の出題では,中国語でグラフが1題(4問)、ドイツ語でホテルの宿泊料金表に関わる設問が1問あっただけで、フランス語、韓国語では英語のような図表、絵が解答を左右する出題は見られなかった。言語が変わると、読解問題でも要求される能力は異なるということだろうか?また、英語の出題では、「英文和訳」や「和文英訳」という形式は姿を消しているが、他の外国語では全て両方とも出題されている。到達度の低い段階では、日本語との翻訳により内容理解や語彙、構造についの理解・知識を見ることが有効だとされているのだろうか?英語と他の外国語の出題とを比べてみると、英語で出題されている図表・グラフ・絵に関わる問題というのは、ただ単に「英文和訳」「和文英訳」という形式を使えない苦肉の策でしかないのではないだろうか。
外国語の能力に関して日本で一斉に行われている試験がこれでよいのだろうかと疑問に思う。センター試験という一つの事例だけを見ても、この国での外国語の能力というものに対しての定見のなさを窺わせるに充分である。
小学校での英語教育に手をつける前に片づけておかなければならないことは山ほどある。