”about the way that I feel”

tmrowing2012-02-18

金曜日は進学クラスのみ。
高1は、週明けのプレゼンに向け最終の班内摺り合わせ。
並行して、いわゆる「基本動詞」の基本義とその展開。
「コア」だ、「イメージ」だ「フィーリング」だ、と力んだところで、その頭の働かせ方、心の共鳴のさせ方は日本語による「補助線」がなければ意味をなさないので、私自身かれこれ十数年使っている例文を眺めてもらい、「出会い」をイメージして、これまでに読んできた副読本などの教材へとまた旅に戻る、という直ぐには実らない授業。
高2のライティングは、「時制」活用の96文型を通過し、「時」を司る副詞節でのトレーニングも終え、「時」の把握と「時系列」での記述描写の段階から、「空間」「位置」の関係と「形状」の記述描写へと進む。
東京にいた頃に作った、前置詞のドリル裏表でスタート。
prepositions.pdf 直
表面は、絵を見て英文の空所を適切な前置詞で補充する単純作業。その後、ホワイトボードに貼られた正解の英文を前にして音読して覚える。自分の席に帰ってきてから必要に応じて修正。自分のワークシートに適切に前置詞が用いられている正しい英文が揃ったら確認の音読、Read& Look upで、絵と表現とのマッチング。ここからが、トレーニング。裏面には同じ絵と空所無しの英文を印刷。前置詞に関わる部分は印刷しておき、主語と動詞など、いわゆる「内容語」を、抜いておいて、適切な箇所を自分で見つけて補充して音読する練習。この段階では、正解を書き入れるのではなく、補充するべき箇所のみを確認。だって、答えは表面にあるのだから。忘れたら、絵を見て英文を作り、表面でチェック。ここまでの下準備をもとに、週明けまでの課題は、教師になってからずっと使っているJ. B. Heatonの3部作のうち、上級編からの抜粋。「窓から見える景色の描写 (= describing scenes)」。ちょっと時間がかかるので、宿題です。中途半端な時間が余ったので、来週やろうかな、と思っていた、「人物の顔かたちの描写 (= describing faces)」の入門編。6人の顔の絵が描いてあり、その描写に使うべき語彙が項目ごとに与えられていて、質問に答えていくと、描写ができるという、タスクと言うには少し大雑把な練習。6人のうち、3人分の描写は既に与えられていて、絵とのマッチング。マッチングができたら、個々の英語表現と絵の細部、facial featuresとか、complexionなどを照合して、自分で使う時の準備。残った3人を自分で描写してみるという、手順で進みます。それができたら、今度は自分の友人から一人を選んで描写する、という応用題。大雑把ながら、とりあえず致命傷にならない程度の「描写」にはなりそうです。
どんな英語なのか、一人分だけ引用します。

He has a long, angular face and a pointed nose. He has a small moustache and short black hair. His eyes are small and he wears glasses. He has a fiant scar on his left cheek. He looks very serious.

このシリーズ、緑=入門、赤=初中級、青=中上級という三部作ですが、一番最初にでたのは『赤本』。初版は1966年。その後『緑本』が1975年に出て、『青本』は1986年。私が教師になった年です。『青本』には、これ以外にもグラフの説明や、図表を元にを英語でプレゼンする時に活躍するであろう、”cycle” や “development” も扱われていますし、“comparison” や”classification” など、ディスコースレベルの「ライティング」の練習には重宝します。センター試験のグラフ図表問題に絡めて高3の授業で使ったこともあります。『パラグラフ・ライティング指導入門』 (大修館書店) で私が紹介したナラティブの実践でも、このシリーズの『緑本』を使っていました。また、時を表す副詞節を使った例文集を作るに当たっては、『赤本』から、「帽子売りとお猿さん」でナラティブを書いてもらい、その生徒達が書きたかった表現を拾って一覧にまとめていました。全ての例文が、生徒一人一人が自分で表現活動で取り組んだpicture story素材を元に作られているので、習熟と定着には効果的だったと思っています。

ただ、残念ながら、現在流通しているのは、『緑本』のみのようです。『赤本』『青本』は、ネットで検索すると、べらぼうな値段がついていました。ちょっと食指は動きそうにないでしょう。でも、古い学校なら、英語科の書庫の奥などに眠っていたりするかもしれないし、同僚のベテランの先生や、もう退職されてしまった方ならお持ちかもしれません。定型表現のリストさえできてしまえば、あとは、生徒の習熟度・発達段階に合わせて、productionの分量をコントロールしたり、「書く相手」の設定をコントロールしたりすればいいので、学校に1セットあるといいですね。
(山口市近郊にお住まいの方であれば、私に連絡して下されば短期的にはお貸しできます。)
このような「描写」も含んだディスコースに関しての概説書は日本語でもいくつか出ているでしょうが、現場の教師が使える簡潔でいて具体的な用例も揃ったものは、というと「帯に短し襷に長し」という感じです。

  • 上田明子『英語の発想 明快な英文を書く』 (岩波同時代ライブラリー、1997年)

というとても良い「ライティング」の本があるのですが、これも絶版。山口市の中央図書館にはありましたので、近郊の方は一度手に取ってみて下さい。
4コマ漫画の描写といえば、anfieldroadさんを思いつきますが、英語教材でこの “Picture Stories” を扱った入門レベルのテキストが、

  • Sandra Heyer. Picture Stories for Beginning Communication, Prentice Hall

です。私の持っているのは、1989年の第2版。私がまだ駆け出しの頃に、成城学園中の関先生に教えて頂きました。

  • Look &Listen で絵を見て範読を聞く
  • Let’s Talk では、Q&Aの形式で、描写をしながら、「語る」
  • Listen & Write では用意されたテクストのディクテーション
  • Let’s Write では、”Write the story in your own words.”

と4技能をフルに活用しつつ、「棒暗記」で終わらない、優れた練習問題が16話収められていて、今こそ中高現場での需要があるように思うのですが、これも残念ながら絶版のようです。
自分の使ってきた教材が、このように、ことごとく絶版になっているというのは考えさせられますね。

明けて、土曜日は本業も開店休業。
朝から雪交じりでしたが、学校に寄って本を受け取り、その後床屋へ行ってさっぱり。
帰宅したら、大人からお子様までお客様で大賑わいでした。ガーナ出身のSさんから、チョコをいただきおやつに。
今回、職場に届いた本は、

  • 文部省 『中学校外国語指導事例集 英語を書くことの指導』 (開隆堂、1966年)

です。先日、文科省から発表された「書くこと」の調査結果が気になっていたので、どこかにあるはずだと探し回った甲斐がありました。ハードカバーで300頁を越す、内容の濃い「指導事例集」です。
文科省側委員.jpg 直
文部省が選んだ作成協力者の先生方。文部省側のトップは、石川二郎氏。編集には教科調査官の宍戸良平氏が当たっている。
研究指定校.jpg 直
そして、研究指定校。この「事例集」の取り扱い上の注意も。
目次.jpg 直
目次を見て目を引くのが、「語のつづりに習熟させるための指導」が研究主題の一つ目であり、多くの頁が割かれていること。文字指導も含めて、この時代の指導手順とその成果、定着の度合いを振り返ることに意義があると思っています。これは、中学校の先生にとってより意味を持つ事例でしょうから、3月11日の公開研究会の時にお持ちしようと思います。

万年筆の修理が終わったという連絡を受けたので、文具店まで。元通りの姿で一安心。これまで以上に大事に使います。

本日のBGM: Must I paint you a picture (Billy Bragg)