用例(辞書編)

辞書にも例文は不可欠である。学習用といわれる英和辞典ではなおさらである。
以前、文英堂が『ユニコーンジャーナル No.51』に学習用英和辞典について思うところを書いてくれ、というので原稿を書いたことがある。(蓋を開けてみたら、何のことはない『ユニコン英和辞典』という新刊の辞書についてのヨイショ企画であった。私の原稿だけが明らかに浮いており、編集部の意図が今もってわからない。さらに、この編集部は著者校のゲラをよりによって私が退職した前任校に送りつけるという大失態をしでかしてくれたのだが、あれは嫌がらせだったのだろうか…)
そこで指摘させてもらったことは、三点。当時考えていたことと、基本的には変わっていないが、今では自分の中で問題の所在がより明確になっている。

・ 電子辞書ではなく、紙と活字の辞書であればフォント、書体にとことんこだわり、文字認識に関わる視覚的負担を極力軽減すること。
・ 英英辞典が定義語彙を制限することで、使用者の理解を助けていることを鑑み、英和辞典でも語の定義や語法の解説に用いる日本語そのものの使用に関して、何らかの規範・制約を設けることで英語の情報処理以外の認知的負担を軽減すること。
・ 英和辞典は、用例・例文の日本語訳を収録せざるを得ないため、英英辞典に比して、スペースを倍必要とする。そのことを踏まえた上で、全体の収録語彙を大幅に削減し、ある語義に対する、また文型に対する用例を惜しまず積み重ねて収録すること。

新機軸に頼らずとも、コーパス言語学の恩恵を抜きにしても、この三点を改善するだけで学習用英和辞書は改善される。
三点目に関しては、日を改めて詳述したい。
『ユニコーンジャーナル』の記事へはこちらから↓
http://www.bun-eido.co.jp/textbook/ujournal/uj51/uj512525.pdf