ツイッターでかねてより英語に関する有益な情報を発信続けている
「史上最強の英語コロケーション」さん
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の英語コロケーションクイズの結果が衝撃だったのでこちらでも取り上げて考えてみたいと思います。
私自身は「史上最強の英語コロケーション」さんと直接の面識はないのですが、オンラインでのやり取りはよくさせていただいていて、学ばせてもらっています。
以下は私がいつもツイッターで呼んでいる「コロケ先生」で失礼します。
当該のクイズ出題はこちらから。
【#明日の英語クイズ No.1121】
— 史上最強の英語コロケーション (@super_level) 2025年11月30日
Q. 英文の空所に適切なのは?
The party had a ( ) atmosphere, with guests mingling casually.
クイズは二択で relaxingかrelaxedかを選ぶもの。
このような -ing形と -ed/en形は「現在分詞」と「過去分詞」と分類されたり、「分詞形容詞」と呼ばれたり、単に「形容詞」として扱われたり、と様々ですが、どのような環境でどちらの表現形式を選んで使うか、という選択・識別の観点は、同じものになるでしょう。
出題に使われる英文例は常に周到に考えられているので、学びどころが多く深いのがコロケ先生のクイズですので、今回も、
- The party had a ( ) atmosphere, with guests mingling casually.
のwith以下が明確な使用場面・状況・情景を示しています。
それだけに、クイズの回答結果に驚きました。
コロケ先生の解説ツイートがこちら。
【#今日の英語 No.1121】答え. relaxed
— 史上最強の英語コロケーション (@super_level) 2025年12月1日
▶︎ a relaxed atmosphere(高頻度)
☞ 人々がくつろいだ (relaxed) 状態の雰囲気
📚類義語: friendly, causal, etc.
▶︎ a relaxing atmosphere(低頻度)
☞ 環境 (照明, インテリア, 音楽, アロマ, etc.) が人々をくつろがせる (relaxing) 雰囲気 https://t.co/KV0gwXU487
ここで “relaxed” の「類義語」で friendlyやcasualをあげているところと、“relaxing” に「環境」という括りを使って、具体的な要素を示しているところに着目。
続いて、こんな補足もされていました。流石です。
(解説)今回はパーティーに関する形容詞relaxing と relaxed の区別💪
— 史上最強の英語コロケーション (@super_level) 2025年12月1日
→ 後半の with guests mingling casually(招待客が気さくに交流していた)の記述から relaxed が適切だと分かる💡
※コロケーションの頻度自体も a relaxed atmosphere(打ち解けた雰囲気)の方が一般的
前置修飾の奥深さをあらためて実感させてくれる、良い出題と解説だと思いました。深謝。
名詞の前置修飾の重要性に関しては、日々の授業でも、このブログでも、私が公開しているnoteの記事でも繰り返し伝えている積もりですが、定着、使いこなしは「事程左様」に面倒なのですね。
以下、私のnoteの記事を紹介。
動詞型や動詞の用法に依存せずに理解運用できることをめざしたものが前半。
名詞句の限定表現 得手不得手(前半)
note.com
不定詞や分詞 (-ing形とed/en形)など、動詞型や動詞の用法への習熟も求められるものが後半。
名詞句の限定表現の得手・不得手 (後半・復刻版)
note.com
この「後半」のうちで、-ing形と-ed/en形に特化して補足し解説したものが次の記事です。
所謂「準動詞」の地図・その3 (「分詞」の分相応加減を体感する)
note.com
今回コロケ先生が取り上げた "a relaxed atmosphere" も補充しておく必要がありそうですね。
relaxed/relaxingとその類義語 (friendly, informal, comfortable, quiet, cozy) や対義語(tense, charged, strained) を含めて、ざっくり検索してみました。
COCA
GLOWBEで地域差、文化差を推測。
10 & 11の不定冠詞の例は明らかに誤用と思われます。
NOW
12の不定冠詞の例も誤用ですね。
続いて、「環境」の側面に着目しての検索。
COCAで音楽 (music) を限定する形容詞を見繕って。
GLOWBE
NOW
悩ましいのは、上述の「雰囲気」の限定・形容で、そこにいる人に焦点を当てて表現しようといっても、実際には calmedやsoothedはヒットしないというところ。
結局、「そうは言わない」「普通はこう言う」というのが慣用表現の慣用表現たる所以で、まさに「世に連れ」で、時代が変わり、世の中が変わると、「ことばづかい」も変わってきます。
動詞の relaxに近い意味の英語表現に、
- unwind
があります。拙ブログだと、こちらの記事で言及しました。
句動詞 wind down を取り上げたもの
他動詞unwindを取り上げたもの
では、この “unwind” をさらに分詞形容詞とした、 “unwound” が限定用法で用いられる場合に、relaxedと同じ文脈で用いられるか、というと、unwoundが使われるのは「リラックス」文脈ではなく、通例は、もともとの「ネジ緩め(緩み)」の文脈になるようです。
比較的新しい語、用法としては、句動詞の
- chill out
があります。calm down とパラフレーズされることもあるように「落ち着く」文脈で用いられます。
COBUILDでは B2表示。
chill out
PHRASAL VERB 落ち着く
To chill out means to relax after you have done something tiring or stressful. [INFORMAL]
- After school, we used to chill out in each other’s bedrooms. 放課後に私たちはよくお互いの寝室に入ってくつろいだものだった。
Cambridgeでは、Web版では slang表記ですが、アプリ版ではinformalの扱い。
chill out (ALSO chill) INFORMAL
phrasal verb B2
to relax completely, or not allow things to upset you:
- I’m just chilling out in front of the TV.
このCambridgeの注記にあるように、動詞のchill単独でも同じように使われてきています。
日本語のカタカナ語にも最近では「チル」「チルい」が入ってきていますね。
大辞林と大辞泉でチルアウト
大辞林(チルい)と三国(チル)
そして、このchillやchill outから派生した形容詞が、上述のrelaxedやrelaxingのような文脈で使われるか、というのもまた悩ましいものです。
chill単独で、この文脈で表すことを期待される形容詞の用法が既に確立していることを確認。
NOADのchillの語義2番にある例は叙述用法。
chill
2. North American English
informal
very relaxed or easygoing: the island is really chill and laid-back | I'm kind of a relaxed, chill guy.
ハイフン形容詞でのchill-outは限定用法で。
chill-out
informal
adjective [attributive] intended to induce or enhance a relaxed mood: this is chill-out music of the most exquisite kind | a chill-out album | the venue includes a large central dance floor and a quiet chill-out room.
- ed/en形が形容詞化したものも、既に辞書に収録されています。
Collinsの一般用から。
語義の3番が当該のrelaxedと言い換えられる「落ち着いた」ですが、語義の1番も人の形容に使われます。
chilled
adj
1. (of a person) feeling cold
2. (of food or drink) kept cool
3. Also: chilled-out (informal) relaxed or easy-going in character or behaviour
ハイフン形容詞の chilled-outは限定も叙述もあり。
OALD (英英和)から。
chilled-out
adjective also chilled informal くつろいだ
very relaxed
- a chilled-out atmosphere くつろいだ雰囲気
- He felt totally chilled. 彼はすっかりくつろいだ気分だった.
ここでは、 “very relaxed” と定義されていて、atmosphereの限定で使われています。
OALD原著には次の例があります。
- the moody lighting and chilled-out atmosphere of the bar
英和辞典だと、ジーニアスの第5版では紙版でも用例が見られていたのですが、現行の第6版では、用例が2つともデジタルプラス周りになってしまいました。紙版の最大の弱点です。
せっかくイマドキの
- a chilled-out atmosphere リラックスした雰囲気
を載せていたのにねぇ…。
因に、G6やコンパスローズ英和では、chillout/chill-outは名詞のみを項目立て。G6は名詞の形容詞用法という体で “chill-out music” の用例を載せています。
WisdomとO-LEXは形容詞も項立てしています。
オンラインコーパスで実態を推測。
COCAは2019年までの集計ということもあるのか、chilledやchill-outはヒットしません。
GLOWBEで見る限りでは、chilled/chilled-outは、やや英文化圏寄りなのかも知れない、という印象。
NOWで近年の状況を見てみましょう。
CLを眺めておきましょう。
chill単独
chilled
ハイフンでchill-outは少数派?
chilled-outはさらに少数派?
その一方で、形容詞chillingにはネガティブな意味があることを忘れてはいけません。
chilling
ADJ ぞっとさせる
If you describe something as chilling, you mean it is frightening.
- He described in chilling detail how he attacked her. 彼は彼女を襲った時のぞっとする話を詳細に語った。
そのため、例えば、atmosphereのような広い意味を持つ語との共起を検索した際には、単純なヒット数だけでは判断できず、一つ一つ語義を確かめる必要があります。
chillingの環境を一つ一つ見ていこうという意志の強い方のためにCLを。
こんなに調べたのに、その結果を眺めてみて、結局落ち着かない、という感じになりましたかね。
でも、こうして、あらためて調べたり、あれこれ考える契機を与えてくれたコロケ先生と、クイズに答えてくれた方々には感謝です。
ありがとうございました。
本日はこの辺で。
英語の「修飾」を考える材料としては過去ログのこちらも是非。
- ing形と-ed/en形との識別の問題に関して、考慮に値する例がこちらの過去ログに。
relating toとrelated toを例にとって考察しています。
本日のBGM: 散る 散る 満ちる (奇妙礼太郎 feat. 菅田将輝)
2025年12月3日 追記:
辞書での 形容詞としての "relaxed" の扱いを引いておきます。
Wisdom vs O-LEX
G6 vs G5 では、やはり「デジタルプラス周り」での用例カットの問題が大きいですね。
COBUILD米語英英和 vs OALD英英和 訳語の微妙な差にも着目。
Cambridge vs LDOCE Cambridgeで、語義によるCEFRのランクの差にも着目。
MW's の学習用から。
relaxed
2: informal and comfortable: casual
- The restaurant had a relaxed atmosphere.
- The seminar was very relaxed---we met at the professor's house instead of the lecture hall.
- We have a relaxed dress code at the office.
NOADの用例はODEとちょっと違っていました。
relaxed
- adjective free from tension and anxiety; at ease: we were having a great time and feeling very relaxed | the relaxed and comfortable atmosphere of the hotel.
ODEの用例には、"and comfortable" がなかったので、この and のペアがあることによって、形容詞の立ち位置がよく分かると思います。




























