朝7時くらいの日差しが既に「熱い」と感じられる危険な気温で、水浴びをしたいくらいです。
健康第一、安全第一で過ごしましょう。
今日は、恒例の「気になる語法」というよりも、その語義・語法の扱いで気になることを。
謂わば
- 気になる「語義・語法の扱い」
です。
一つ目は、「雑」「乱暴」「配慮のない」イコール(=)の扱い。
ツイッターではかなり以前から指摘していて、個人的には見るたびに「嗚呼、またか…」となるものです。新しい教材が世に出るたび、辞書が改訂されるたびに、見ては期待を裏切られることが多いので、こんな投稿をソーシャルメディアでしていました。
熟語集とか問題集とかでなんでもかんでも=にしてしまうのは本当に考え直してほしい。
— Takashi “即時停戦” Matsui (@tmrowing) 2024年7月23日
このツイで載せた4枚のグラフを見比べてください。 https://t.co/tg8drOfv7E
もともとのツイートは今年の3月。
同じことがこの<動詞+目的語となる名詞>の結びつきでも言えますね。
— Takashi “即時停戦” Matsui (@tmrowing) 2024年3月23日
アルコールを控える;お酒を呑まないようにする
「どの表現から学ぶか?」
「どのように学ぶか?」 pic.twitter.com/ld5qVgdgq9
その時の写真も再掲しておきます。
「アルコールを控える;お酒を呑まないようにする」という動詞表現と名詞との結びつき、所謂「コロケーション」と、その使用頻度です。
テスト対策などで兎角、同意での言い換えを詰め込もうとしがちな日本の英語学習環境では、eschewとforgoとshun を相互に置き換えられる語として教えられたりします。目的語が「アルコール;お酒」であれば現代の使用頻度にそれほど大きな差はありません。
では、そこに、「…を控える」意味の句動詞refrain from を重ねると…
いくら書き言葉のデータとはいえ、頻度の圧倒的な差を気にしないわけには行かないでしょう。
では、ここに、abstain from を重ねると…
さっき圧倒的な頻度の差を感じたrefrain from でさえ霞むほどの頻度の差が見て取れます。
では、ここに、他動詞のavoidを重ねたら…
使用頻度に大きな差があることが分かるでしょう。
動詞が目的語とする名詞の意味の範囲が広い動詞/句動詞になれば、alcoholという名詞を目的語にとる際に、
- 「アルコールの摂取」=「飲酒」を控える
以外にも、
- アルコールの「使用」を控える
という場面が含まれることもあるでしょう(火気厳禁のエリア等)。
そういった「ノイズ」を除いたとしても、これだけの頻度の差があるということは知っておいた方が良いと思います。
因に、英英辞典の類いで「類語辞典」を引くと、
go without, go without sth phrasal verb
go without (sth) · forgo · give sth up · do without (sb/sth)
These words all mean to not have or do sth that you usually have or do.
forgo
[T] (formal) to decide not to have or do sth that you would like to have or do
No one was prepared to forgo their lunch hour to attend the meeting.
(以上、Oxford 類語辞典より)
最後の用例が、ちょっと分かり難いかも知れませんが
- 誰もランチタイムを返上してまで会議に出席しようとはしなかった。
というような意味です。
今見たように、forgoという動詞はgo withoutとかdo without といったグループリーダの率いる動詞群で捉えるべきではないかとさえ思います。
気になる扱いの二つ目は、言行不一致というのか、羊頭狗肉というのか、体が名と合っていないというようなもの。
こんなツイートをしていました。
お願いがあるのですが、英語の「お願いがあるのですが」に当たる表現を現代英語の使用実態に即して教材や辞書に収録していただけないでしょうか?
— Takashi “即時停戦” Matsui (@tmrowing) 2024年7月23日
最近目にした熟語集では、助動詞 Would/Willのついた形でしか索引にないので、do me [us] a favorでそもそもの検索がががが…。 pic.twitter.com/f70A5i96qQ
「お願いがあるのですが…」に当たる英語表現なので、皮肉でツイートしたのですが、ほぼほぼスルーですね。
これも、写真を再掲しておきます。
問題集や熟語集では、兎角
- 「落とせない口語表現」「差がつく口語表現」
などといった「煽り」にも似た小見出しをつけて表現を無理やりまとめたり、一覧/コラムにしたりしてくれますが、「口語」というなら、Canを載せないと意味がないでしょうし、「最新の」というなら、こういった経年変化を踏まえた上で、取捨選択すべきでしょう。
「最新の問題集」の語彙や表現が、最新の英語使用の実態に沿っていないって、困るでしょう?
こんな例もありました。
「一番厄介なのが安易な=での置き換え」は本当に再考して欲しい。
— Takashi “即時停戦” Matsui (@tmrowing) 2024年7月22日
たとえば
(be) content with に対して contentedを示す場合に生息域を示すのは無理でも、使用頻度くらいは注を付けるべきでしょう。
最近見た某熟語集ではガッツリと並記でした…。 https://t.co/TFu2qjJvCi pic.twitter.com/HEgs3H28OZ
contentとcontentedです。
こちらも写真を再掲。
関連するツイートがこちら。
私のハンドアウトの抜粋。
— Takashi “即時停戦” Matsui (@tmrowing) 2024年7月22日
単語集でも、熟語集でも、頻出問題集でも、評判を受けて採用するのは簡単ですけど、その後でこういう全ての問題での確認作業が待っているわけです。
頼りになるのは辞書とオンラインコーパス? pic.twitter.com/AX1oDoe0m8
私の授業傍用ハンドアウトの抜粋がこちら。
私が「入試過去問の膨大なデータベースをもとに最頻出の語彙・表現を厳選」などという売り文句に辟易しているのはこういったところが多分にあるから。
とはいえ、8月に出る新刊には期待しています。
本日はこんなところで。
本日のBGM: same old news (Lake Street Dive)