今週は、私が還暦を過ぎて初の女神参拝。
haratomo様のライブで旧渋谷公会堂に行ってきました。今回は3階席しか当たらなかったので双眼鏡を持って。改修後、初の旧渋公でしたが、想像以上に音が良かったのでプラマイプラス!
6月は、一年間で私の調子が最も停滞する時期なのですが、haratomo様の歌声で心身ともに浄化されたように思います。ありがとうございました。
物販はほぼ完売状態で、缶バッジだけゲット。ここには青い鳥がいます!
続いては告知。
ELEC (エレック=一般財団法人 英語教育協議会)の2024年度 夏期英語教育研修会(文科省後援)のプログラムが発表になりました。
こちらは「同友会」ではなく、「協議会」の方のプログラムですのでお間違えなきよう。
申し込み受付はまだのようですが、こちらで、主として「中学・高校の教員」を対象としたプログラムが確認できます。
https://www.elec.or.jp/wp-content/uploads/2024/06/b41da36301c7db22f4ed9f1433ee4115.pdf
開 催 期 間 ● 〈対面のみ〉 7月25日(木)---8月16日(金)
時 間 ● 9:30 -12:20 / 13:30 - 16:20
開 催 期 間 ● 〈オンラインのみ〉 8月18日(日)、21日(水)、24日(土)
時 間 ● 9:30 -12:00 / 13:00 - 15:30(対面研修) ●定員● 各コース 60名 *一部30名定員があります。
受 講 料 ●<対面> 1日制 11,000円 <オンライン> 1日制 8,800円 (資料代・税込)
会場●コンフォール安田ビル地下1階 (東京都千代田区神田錦町2-9)
私は、8月15日の午前の講座(対面)を担当します。
2012年以来なので、12年ぶりの登壇ですね。
午後の講座は、神奈川大学の久保野雅史先生です。
上記リンク先pdfからの切り出し。
私の講座は、対面での「『チャンクで積み上げ英作文』のトリセツ」のようなものです。
これまで、何回かオンラインの講座で行ってきたものを凝縮してお届けします。
『チャンクで積み上げ英作文』(三省堂)は学校採択専売教材なので、実物をお渡しすることはできませんが、
文未満の要素/単位としてのチャンクの「文法」の重要性
意味と語順、チャンクの内部構造の把握・理解・定着に役立つ「名詞は四角化で視覚化」の記号付けのシステム
チャンクの類型化とそれぞれの「得手不得手」
チャンクの類型それぞれでのチャンクの精選と配置、指導・学習の順序と積み上げ
文へ、さらに大きな単位であるディスコースへの積み上げ
などについて、三省堂編集部のご理解もあり、スライドやハンドアウトで教材の写しも豊富にお見せすることが可能となりました。
- 名詞句の限定表現
などと簡単に括られがちですが、前置修飾一つをとってみても、その発達段階の精査は大変です。
最も単純な構造と思われがちな
- 形容詞+名詞
のチャンクであっても、
大きな家a large house
大家族a large family
大観衆a large audience
(Basic編「四角化ドリル1」
の三つは同じ、largeという形容詞を使っていても、それが結びつく名詞は異なり、明らかに習熟の差、発達段階の差があることでしょう。
また、
満点a perfect score
全く知らない人a perfect stranger
(Standard 編「四角化ドリル1」)
の二つでも、同じperfectという形容詞を使っていながら、発達段階には差があるだろうと思います。その一方で、「全く知らない人」と英語で言う場合に、現代英語の使用頻度としては、
- a complete stranger > a total stranger > a perfect stranger
という順になるだろうとも思います。
L2として、学校教育を中心とした環境で学ぶ日本の学習者にとって、「自然な習得の順序」だけにしたがっていては、間違いなく時間切れですから、そこを駆け抜ける必要が出てきます。
その「学習」によって、文未満の要素/単位としてのチャンクを整備する、チャンクで認識する眼を持つ、ということは、教室内外で接する英語を、捉える「レセプター」を備えることを意味する、と私は考えています。
次のような<名詞1+名詞2>で1が2に対して形容詞の働きをするものが明示的に指導されることは、日本の教材ではあまり多くない印象です。
夏休みsummer holidays
森林火災 forest fires
石鹸受け a soap dish
(Basic編「四角化ドリル4」)
食器用洗剤 dish soap
風邪の治療法 a cold remedy
社会的な性別間格差 a gender gap
(Standard編「四角化ドリル2」)
名詞と名詞の組み合わせで言えば、後置修飾の第一歩は、純粋な形容詞が単独で名詞に後置するものよりも、
- <名詞1+前置詞+名詞2>
のように前置詞+名詞2が形容詞句となって、名詞1を修飾するものの方を早く身につけるのではないかと思います。
机の上の本 a book on the desk
カゴの中の鳥 a bird in the cage
(Basic編「四角化ドリル13」)
とすれば、当然<前置詞+名詞=副詞句>との識別が重要になってきます。
私の部屋で in my room
机の上で on the desk
(Basic編「四角化ドリル7」)
川の向こうに across the river
角を曲がったところに around the corner
通りに沿って along the street
(Basic編「四角化ドリル8」)
午後に in the evening
3月11日に on March 11th
(Basic編「四角化ドリル10」 )
と、いうチャンクを精選したドリルを配し、形容詞句以前に、副詞句に出会わせる配慮はしています。
また、
2人掛けのテーブル a table for two
料理の才能 a talent for cooking
(Basic編「四角化ドリル15」)
で、用途や機能を表す for + 名詞にも出会う機会を作っています。
この辺りが未整備のまま、
寝台車a sleeping car
飲料水 drinking water
(Standard編「四角化ドリル2」)
を扱う際に、それぞれをパラフレーズして
- a car for sleeping / a car for sleepers
- water (fit/good) for drinking / water good to drink
とするのはちょっと強引過ぎると思うわけです。パラフレーズする前に、「そっちの形」に出会わせておかないと、というのが私の英語教師としての基本的な視座です。
英語の知識も運用力も身についた方なら、ここまで私が述べてきた例で、前置修飾が単純ではないことが分かってもらえると思うのですが、初学者、初級者はそう簡単にはいきません。
ただ、
- 「初級レベルはクリアーしたので、もっと難しいことをやってくれ!」
と思いがちな初級の上、中級の下くらいの学習者に、この前置修飾を丁寧に扱うことを理解してもらうのは結構大変です。
個人情報 personal information
保護者の同意parental consent
社交術 social skills
連続殺人犯 a serial killer
(Standard編「四角化ドリル2」)
ここに示した前置の形容詞は全て、純粋な形容詞で -alで終わるものですが、その意味・働きによって、名詞との結びつきによって、当然発達段階には差があり、丁寧な扱いが必要となります。ということで、これらはBasic編では深入りせず、Standard編の早い段階でまとめて扱っているわけです。
同じ「前置」であっても、分詞による修飾は「動詞」としての意味・用法を理解し習熟しておくことが望まれるため、スパイラルな学習が有効です。
見た目は「動名詞」と同じ、 -ing形。
燃えている家a burning house
沸き立つお湯boiling water
増大する人口 a growing population
瀕死の患者 a dying patient
衝撃の事実 a shocking fact
(Basic 編「四角化ドリル22」)
行方不明者 a missing person
暴風雨 a raging rainstorm
はた迷惑な癖 an annoying habit
満足の行く夕食 a satisfying dinner
(Standard編「四角化ドリル7」)
見た目は「過去形」と同じ、 -ed/en形
落ち葉 fallen leaves
話し言葉 spoken language
ゆでたまご boiled eggs
驚いた表情 a surprised look
(Basic編「四角化ドリル25」)
迷子 a lost child
再三の警告 repeated warnings
落胆した表情 a disappointed look
経験豊富な先生 an experienced teacher
未開封の手紙 unopened letters
(Standard編「四角化ドリル7」)
限られたスペースで、『Basic編』と『Standard編』からチャンクを抜粋しました。単純な構造と思われがちな「前置修飾」でも、これくらいのことを考えて準備しておくことが重要だというのが、この「名詞句の限定表現」に焦点を当てて30年以上現場で指導してきた私からの呼びかけ、投げかけです。
実際の英語の運用では、これに「後置修飾」が入ってきます。
本当に指導の準備は大丈夫ですか?
ということで、8月15日の私の講座では、できる限り
- 英語のチャンクの実例
- 教室での指導で用いた具体的な教材の実例
をもとにお話し、受講される皆さんと同じ地平を見渡し、その実感を共有したいと思います。
蛇足と言うか、老婆心と言うか、最後にひとこと。
名詞句の限定表現を指標として発達段階や習熟度を診ようというのであれば、日本語との対比・対照も含めて、先行研究に当たっておくことは重要だと思います。
- E.クライニアンズ (Everett Kleinjans) 『日英両語の比較と英語教育』(大修館書店、1959年)
は、私がソーシャルメディアで幾度となく言及し、書影もあげていたかと思うのですが、近年の「名詞句」の研究の参考文献でこの名を見ることは皆無ですね。
確かに、構造言語学的な枠組みを古いというのは簡単ですが、このレベルまで、ことばを掘り下げて、というより、そのことばの地平まで降りていって考えることなしに、何が見えるのだろうか、と今年還暦の私は思うわけです。
原題は
A descriptive-comparative Study Predicating Interference for Japanese in Learning English Noun-head Modification Patterns
既に、大学院生を指導する教官がこの書を知らない世代になっているだろうと思われます。
繰り返し同じことをいいますが、読んだ上で、「それは今ではもう使えないですよ」と捨てるのは結構です。
ですが、まずは、読んでおいて欲しいと思うのですよ。
本日はこの辺で。
本日の(心の)BGM: Fine (原田知世@旧渋谷公会堂/2024年6月20日)