早10月。
今年度は、猛暑で体育祭も中止になったので、私が担任をしている進学クラスの高3は、2学期唯一の大きな行事、文化祭でのバザーも終えて一段落。あと残すは進路実現のための取り組み。そう受験ですね。
既に、AO入試で合格を決めた者もいて、教室内の温度差もチラホラ出てくる頃ですが、「それぞれ、それなり」ですから、
- できることだけを続けていくだけさ(inspired by 佐野元春)
ということですよ。
高3の授業での「センター試験」過去問を使った授業の様子をこちらのブログやツイッターで紹介してきましたが、先週今週と、筆記の第4問。所謂「図表・グラフ付き読解」を扱っています。
2017年の本試験で悩ましいところがあり、原典を確かめたかったのですが、ダウンロードは有料ということでツイッターでボヤきました。
原典はこちらの雑誌に載った論文の模様。
流石に、この原典を読むのにお金出してまでは買いませんけど。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0169204614002370
それを見ていた(見かねた?)親切なW先生が、超多忙の合間を縫って光速対応でファイルを送って下さいました。本当にありがとうございました。
ということで、2017年第4問。センター試験の問題文に関しては、DNCのサイトで過去問ファイルをダウンロードするか、私の手書きノートの写しをご覧下さい。
第1段落で主題の輪郭がはっきり出てくるわけですが、キーワードとなる、
- childhood
- children
- adolescents
という語はきちんと整理しておいた方がいいと思います。ここでの adolescents「青年」というのは、通例、12歳〜18歳位の人をさすものですので、一般的な大学生は含まれない、裏返せば、日本の環境でいえば中高生に当たるのだ、という「実感」が大事でしょう。いってみれば、ここでも「単位は文化である」ということです。
論理展開、構成でいえば、ThereforeとThusでの因果関係を的確に掴むことが大事ですが、そのためには、その前後の文の文構造を的確に掴み、「読める」ことが求められます。
- Physical activity in your childhood, such as playing sports and exercising, can greatly benefit your health when you are older.
での横綱の助動詞canの可能性と、比較級 (older)
- Therefore, it is important to promote physical activity in childhood for one’s good health.
とりあえずのitの種明かしのto promote (原形)で、このpromoteという動詞自体に「比較級」のにおいを感じられるか。
- The school yard is one place where children and adolescents can be encouraged to take part in physical activity.
関係副詞のwhereでの名詞句の限定表現と、その下線延長部分での、encourageの受け身。さらには、必修のイディオム、「活動に(積極的に)参加する」take part in。
- Thus, knowing how schoolyards are used by students may give us some helpful ideas to promote their physical activity.
…ingでのワニ(所謂「動名詞」)とその腸内環境にあるhowのワニ。そして、そのhowのワニの腸内環境にあるto promote their physical activityの to原形を、ideasからの下線部延長(後置修飾)と読むか、目的を表す「どどいつ」と読むか。
という辺りが一般的なチェックポイントとなるでしょう。
ただ、私が気になるのは、第1文と第3文での 助動詞canでの「可能性」の示唆、と第4文でのmayの「可能性」の弱さでした。
第2段落は、基準時制が過去形で、調査結果が順々に述べられるところですから、「分類・定義」にしたがって、頭文字などのメモを取ることが有効でしょう。
- A study was conducted at four schools in Denmark in order to investigate how much different types of schoolyard areas were used and whether students were active or passive in these areas.
研究や調査を「する」という時の動詞の典型的なコロケーションでは、do; carry out; conductが必修でしょう。 investigate (= to examine a crime, problem, statement, etc. carefully to discover the truth) という動詞は、CEFRではB2レベルの動詞ですが、アカデミックな分野では超頻出語です。andのペアは、howでのワニと、whetherのワニであることは簡単に分かるでしょうが、”how much / different types of schoolyard areas were used” という意味のかたまりは一読で把握できたでしょうか?さらには、”whether students were active or passive” でも、本来はactiveかpassiveかの単純な二者択一ではなく、 その境目も含みグラデーションがあるということは分かりますね?
- In the study, schoolyard areas were classified and defined by their primary characteristics.
general な情報提示から、specificな説明へという流れに乗れば大丈夫でしょう。この後に必ず、classify されたschoolyard areasが列挙されるはずです。
- Grass represented playing fields and natural green lawn areas, often used for soccer, but without any marked lines or goals.
この、representは「代表する」という訳語で覚えている人が多いでしょう。
森保ジャパンは日本代表ですから、その代表チームの個々のメンバーをイメージできて、「嗚呼、確かにこのメンツは森保ジャパンだな」とわかれば、その訳語でも大丈夫だと思います。 A represents B(= A is equal to B) で「AとはBである」ときに使われます。ここでは、Aにラベル、Bには実態となる個々の要素や集団が来るわけです。この段落そのものが、各種areasの分類と定義を示すためにある段落なのですから分かりますね。「サッカーに使われることは多いけれど、(サッカー競技につきものの)ラインは引かれていないし、ゴールもない状態」にある、と補足しています。
- Multi-court referred to fenced areas on various surfaces, like artificial grass and rubber, designed for tennis and other such ball games.
refer toでは、「言及する」という訳語で覚えている人が多いかと思いますが、この段落の列挙で使われているのですから、他の動詞(句)とのバランスを感じましょう。MW’sでは、“to have a direct connection or relationship to” とありますが、Cambridgeでは、”to talk or write about someone or something, especially in only a few words” とあります。普通は、「人」が端的に語るわけですが、ここでは、その主語のところに「ラベル」がきているわけです。
そして、途中の NaturalとPlaygroundは省略して、分類の最後へ急ぎます。
- Solid surface described the areas with the hardest surfaces, like concrete.
このdescribeも、この第2段落の他の動詞と並べて意味を感じることが大事。describeの目的語に来ている名詞が具体的な描写・情景を表し、その描写・情景をsolid surfaceというラベル(=ことば)で表しているわけです。
最初の大きなハードルは、次のidentifyでしょうか。
- These areas were identified by flat open spaces, often having numerous markings painted for games and benches set in different places.
このidentifyの語義は授業で使っている教材の解説では「認定する」と訳していて、完全に間違えていました。受け身になっているから、分かりにくいことは確かです。
A identify B で、Aには特徴や属性を表す名詞が、Bには本体・個体が来て、「Aなので、Bだと容易に分かる」という意味で用いられます。
Random House英和ではこの語義に対し、
His gruff voice quickly identified him.
という用例を示しています。
ケンブリッジでは、
Even the smallest baby can identify its mother by her voice.
A robin is easy to identify because of its red breast.
という用例。
COBUILD のAdvancedだと、第8版も最新の第9版も、
If a particular thing identifies someone or something, it makes them easy to recognize, by making them different in some way.
と定義づけ、次の用例をあげています。
She wore a little nurse's hat on her head to identify her.
能動態で示すなら、
- Flat open spaces, often having numerous markings painted ... and benches set ..., identify these areas.
ということになります。挿入での often having ... の付帯状況での補足は、flat open spacesというかなり漠然とした複数形の名詞句に具体的なイメージを与えるためには必要なので、ここを省いて考えるのは、文構造を掴むためには有効かも知れませんが、やはり、その後で、この部分を付け加えて読むことが大事だと思います。
このidentifyの読みは、各種「過去問解説」ではどうなっているか、比べて見てもいいかも知れません。
教学社の『赤本』では、identifyの語句の注は無しで和訳を示していますが、文意は外していません。
河合塾の過去問レビューでは、identifyには「確認する/特定する」という注をつけ、和訳を示していて、ちょっと問題ありかな、と思います。
駿台では、和訳は適切でしたが、注は「be identified by ...『…によって確認 [認定] される』というもので、少々舌足らずという印象です。
ただ、このセンター試験の英文は原文を書き換えたがために、却って分かりにくくなったように思うので、各種「解説」の執筆者の頭を悩ませたのも無理からぬことです。
原文では次の通りなのですから。
This area type is characterized by level (flat) open areas, often with various painted markings for games and benches placed in different places.
こちらの方が、余程すっきりしてますよね?
だったら、はじめからこっちの英文を読ませればいいのに、と思います。
- ないものねだりでしょうか?
- グラフや図表があって、その説明を分かりやすい英文で書いてしまうと、受験生を悩ませるような問題が出来ないんでしょうか?
ということで、生徒や受験生には無理でも、指導する側の人は原典がわかるものは、原典を読んでおくことも大事かな、と思いました。第2段落に該当する箇所のみ、原典から引用します。詳しくは原典の論文をお読み下さい。
Each area type was categorized by its primary characteristic. Grass represents various play fields and lawn areas, often used for soccer but without any markings or goals. Multi-court represents framed play areas on surfaces like artificial grass, rubber, concrete pavers or asphalt designed for different ballgames like basketball and soccer. Solid surface represents all paved areas with surfaces like asphalt or concrete pavers. This area type is characterized by level (flat) open areas, often with various painted markings for games and benches placed in different places. Natural represents areas with shrubs, trees, natural stones, etc. Playground represents areas with playground equipment such as swings, slides and climbing frames, typically grouped and placed on surfaces like sand or gravel. The few areas that could not be categorized into one of these five groups were assigned to the area type other, which for instance contains shelters and pent roofs.
ここから先は、私の手書きノートのメモ書き、解説の写しをダウンロードしてお読み下さい。
第3段落
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第4段落
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第5段落
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第6段落
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本日はこの辺で。
本日のBGM: Chasing Rainbow (佐野元春)