書き手の筆、書き手の声

高3の進学クラスは流石に夏期課外講座から引き続き、「センター試験」の過去問を扱っています。とはいえ、私の授業なので、解法を伝授する、というよりは「ここまで読めるから答えが一つに決まる」というアプローチです。

訳読を忌避する人たちは昔も今も数多いますが、その人たちが訳読に代わるどのような細部の正確な読みを伝授してくれたかというと、甚だ心もとない「スキミング」だの「スキャニング」だのという、上滑りの top-topでいつまでも、bottomに辿り着かない、腑に落ちない、落ち着かない作業だったりします。

私の教室では、「速読」が求められるとか、「情報処理としての読解」が必要とかいうノイズには耳を貸さず、地道にはじめから順番に読んでいき、読めたところから全体像を構築し、更に読み進めて、自分がそこまでに描いた全体像を加筆修正していく、というようなまどろっこしい営みを求めています。わかるようになるまでは、かなり面倒で退屈です。自分で読めるようになるまでは、かなりつ(ま)ら(な)いです。

今週は、現在の第3問のBで出題されている、「不要文選択」問題。正確には、不要文を除くことで、パラグラフ内の文と文の「つながり」を強め、それぞれの文が主題の成立に貢献し収束する「まとまり」をより高める、ことを求める出題です。
私は、この「不要文選択」問題を、単なる「読解問題」とは捉えず、センター試験型の「多肢選択」による解答を求める試験における「ライティングの代替」問題として捉えて、授業準備をしていますが、それでも、多くの高校生にとっては、まず「読むこと」に困難を多く抱えることでしょうから、授業で扱った英文をもとに、問題の解法というよりも、「読むこと」を基盤とした英語学習、英語力の向上のための取り組みとして、ブログで再現、解説したいと思います。

ツイッターで一部、私の手書きノートの写真がアップされていたかと思いますが、当該の英文に対応して、そちらも再録しますので、併せてご覧下さい。

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17R-3B-1.jpg 直

では、まずこちらから。

2017年本試験3B-1

Wearing proper shoes can reduce problems with your feet.
Here are some important points to think about in order to choose the right shoes.

  • (1) Make sure the insole, the inner bottom part of the shoe, is made of material which absorbs the impact on your foot when walking.
  • (2) The upper part of the shoe should be made of breathable material such as leather or cloth.
  • (3) Some brand-name leather shoes are famous because of their fashionable designs.
  • (4) When you try on shoes, pay attention not only to their length but also to their depth and width.

Wearing the right shoes lets you enjoy walking with fewer problems.

まず、段落冒頭の下線部に移るまでの英文で「話題」と「主題」を掴むことが必要です。大事じゃなくて「必要」。英語が苦手な人の多くが、分かるところだけを摘み食いして、「話題」だけで引っ張っていき頓挫しています。

それでは、第1文。

  • Wearing proper shoes can reduce problems with your feet.

「適切な靴を履くことが足の問題を減らすことを可能にする。」

まずここで「話題」が提示されています。キーワードとなる、「靴」「問題」「足」がみな複数形であり、theがついていないことに注意して下さい。「無冠詞・複数・一般論」です。ここでの your は目の前のあなた、ではなく、誰にでも当てはまる一般論として使われています。(ここで、「読者」に向けられたyourとして意味を読んで「あなたの足」と理解しても、致命傷にはならないでしょうが、それが致命傷にならないとわかるのは、この英文が読めている人の判断です。)

ここでの主語は、wearingから始まる動名詞、つまり「ことがら」であって、shoesという「もの」ではない、ということがわかるかどうかは、結構大きな英語力ですが、そこで躓く人も、動名詞がわからないというよりは、ここで出てくる “proper” という形容詞を知らない、自分の守備範囲にない、というケースが多いように思います。文法がわからないまま読むのは交通ルールを知らずに車を走らせるようなものですが、語彙がない状態ではまず車が走ってくれません。どちらもきちんと学ぶ必要があります。文法については後でまた詳しく述べますが、ここでは語彙を。

properは「適切な、ふさわしい」という意味の形容詞です。『エースクラウン英和』では、CEFR-Jのランクで、A2という必修語扱いですが、CEFR本家とも言えるCambridge系の辞書ではB1表示なのです。

  • real, satisfactory, suitable, or correct

と定義されています。
World Book Dictionaryでは、

  • right for the occasion; fitting

という定義がなされています。英語が分かる人は、この段階で、「正しい」「ぴったり」という実感をもって読み進めることになります。

続いて、第2文。

  • Here are some important points to think about in order to choose the right shoes.

「正しい靴を選ぶために、考えるべき重要な点がいくつかある。」

ここで「主題」が提示されています。「重要な点」「考える」「選ぶ」「正しい靴」というキーワードを並べ、それを結びつけて日本語で、今の和訳のような理解ができる人は、もう既に英語が得意な人でしょう。

some important pointsの核になるpointsを四角化し、その右のto thinkを見たときに、そこから下線を延長してto原形で形合わせをする後置修飾だと分かるかどうか。
前置詞のaboutのあとに、前置詞のinが続いていて、気持ち悪い人がいるかもしれませんが、in は、"in order to 原形" のinで、aboutの直後が足跡です。そこには本来、四角化したpointsがいた跡なので、ルール違反にはなりません。このような大きな名詞のかたまりをつかめるかが重要です。
in order to 原形と単純なto原形との違いは「名詞でも形容詞でもなく、どどいつ(=副詞)ですよ」という目印、「結果ではなく目的ですよ」という目印です。

第1文の、properを受けて、ここでは、 the right shoes という表現を使っています。「履く前には選ぶ」ことが必要なので、「正しい靴を選ぶために」、いくつかのポイントを押さえるわけです。ここで「話題」が靴だからといって、rightが靴の右足の方だと勘違いしている人はいませんか?shoesと複数形であることも確認して下さい。ここは誤解を与えないためには、“the right pair of shoes” とでも書くべきところですね。

  • right = suitable or appropriate for a particular purpose, situation, or person (MW’s Learners)

という定義を見ると、英語のわかっている人は、「その靴を履く人にとってぴったりの;ふさわしい」という理解でこの先へと進むことがわかってもらえると思います。

ということで、ここから下線部祭りになりますが、この先の記述は、ここまでで明らかになった主題、

  • 選択するためのいくつかの要点を押さえ適切な靴を履くことが足に付随する問題を減らすことを可能にする。

を支持する、貢献する内容である必要があります。「不要文選択」という設問にはなっていますが、「足の問題に関連している?」「適切さに言及している?」「靴を選ぶ際の選択肢になっている?」などという判断のものさしを手元において、読み進めて下さい。

下線部の1,

  • (1) Make sure the insole, the inner bottom part of the shoe, is made of material which absorbs the impact on your foot when walking.

make sure は、英語が得意ではない人には酷な表現です。ここでは、thatの省略された節(私の授業では、その中にとじカッコのある「ワニ」)が来ています。
(?)「確かめる」というような日本語で覚えていると、後ろにthat節が続いているのに、あたかもwh-節や、if節であるかのように読んでしまい、多くの場面で誤読に繋がります。make sureの場合は、「確かめ」てもいいんですが、最終的に「そうなっていないとだめ」です。「確実に、ちゃんと…であるようにする」ということです。この文では、「the insole (靴の中敷き)がちゃんとした素材でできている」ものを「選んで履け」ということで主題に貢献します。

今、私が使った「ちゃんとしている」という表現は、主題のキーワードである proper, rightに合致するものですが、「どのようにちゃんとしているか?」が本文で適切に書かれているかを読み取ることが求められています。当然、主題のキーワード「足の問題(になりそうなこと)が軽減される」ような記述が予想されます。

“the insole(=中敷き)の直後に ,(=カマ) が来て、the inner bottom part of the shoe(=靴の底の内側の部分) という同格での言い換え(注釈)が来ていることに気づかないと、「ちゃんとした」に関わる要素が複数あると思ってしまいますが、2つ目の カマ の後の be動詞が、is ですから、主語は単数でないとおかしい、という抑止弁が働きます。
ただ、ここでは、同格の言い換え(注釈)がわかりにくいので、我慢のしどころでしょうか。
“is made of material which absorbs the impact …” は手がかりを作りながら順番に進んだほうがいいかもしれません。
まずは、小結の助動詞isでの受け身で、付き人の-ed/en形が、 made 。 A is made of B で、「AはBで作られている」という意味ですから、B = materialで中敷きの素材を例にとっています。では、どのような素材なのか?で「ちゃんと足の問題を軽減する」という記述になるはずですから(もしならなければ、この文は不適切ということです)、“material which absorbs the impact on your foot” の関係代名詞whichでの下線延長(=後置修飾)を辿って、absorb(=吸収する)という動詞を見たときに、「…を吸収する素材」という「もの」の確認をすることが大事です。そこから、absorb の目的語に来ている the impact on your foot の名詞+前置詞+名詞のひとかたまりが、「あなたの足への衝撃」=「足に付随する問題」の例だという理解ができることが望まれます。「四角化ドリル」の生きるところです。では、その「衝撃」はいつ起こるのか?当然、靴を履く場面なのですから、ここでのwhen walking は「歩く時」という理解でいいでしょう。whenが接続詞で、主語+be動詞となる “you are” の省略、と考えてもいいと思います。この場合は実際に歩く際の衝撃ですから。

  • 「衝撃を吸収する素材でできた中敷き」のある靴を選んで履くことで「(歩行時の足への衝撃という)足に付随する問題」を軽減できる。」

という内容で、主題に合致しています。

ここまでの名詞が単数形であることが気になる人がいるかも知れません。基本的に市販の靴では、右足と左足の構造や機能に差はないと考えれば、わざわざ複数形で「一揃い」にするまでもないことがわかるだろうと思います。

次に、下線部2です。

  • (2) The upper part of the shoe should be made of breathable material such as leather or cloth.

「靴のアッパーの部分は、天然皮革やキャンバスなどの通気性のある素材でできている方がいい」

ここでも「素材」の話ですが、部位・場所が違います。
the upper part of the shoe (靴底に対する、靴の上の部分。足のつま先から甲にかけての部分)の素材を取り上げています。第1文がmake sureだったのに対して、ここでは、
“should be made of …” と主張を表す横綱の助動詞 should が来ています。第1文と同様、この文も主題に合致するとすれば、「足に付随する問題とその軽減」に関わる記述となるはずです。
“breathable material” 「呼吸可能な素材」って何でしょう?裏返して、「呼吸不能な素材」とは?ここでは、靴の素材ですから、「通気性のある素材かどうか?」を取り上げています。「通気性がない」ことによって「足に生じる問題」って何でしょうか?
そう、「ムレ」ですね。「水虫」などの菌の増殖がすぐに思いつくでしょうが、これは本文には直接書いてありませんので、悩んだ人もいるかも知れません。
具体例としては、 “such as leather or cloth” 「天然皮革や生地(布地)」とあります。「革」や「キャンバス」ということですね。

続いて、下線部3。

  • (3) Some brand-name leather shoes are famous because of their fashionable designs.

今、下線部の2で「革靴」の話が出てきましたが、ここでは「革靴の中にはおしゃれなデザインで有名になっているものもある」と言っています。「名声とその理由」です。
主題は何だったか、を忘れないでください。「適切な靴の選択着用による足に付随する問題の軽減」だったはずですから、この下線部3は「不適切」な内容となります。
この下線部の記述が、もし主題に貢献するとすれば、この後に「名声」「ファッション性」によって起因する「足に生じる何らかの問題」が述べられなければだめです。例えば「靴の中にはデザインやファッション性を重視しているが、耐久性のない素材で作られているものがあり、そういう靴を長く着用すると、より早く足が疲労し障害を生む可能性がある」などという内容が続かなければならないでしょう。では、続きを読んでみましょう。

選択肢では最後となる下線部の4です。

  • (4) When you try on shoes, pay attention not only to their length but also to their depth and width.

「あなたが靴の試し履きをするときは、長さだけではなく、深さや幅にも注意しなさい」
“try on A” は、「Aを試しに着用してみる;試着する」。この場合は靴ですから「試しに履いてみる;試し履きする」ということです。下線部3を支持する内容にはなっていませんね。
“pay attention to …” で「…に注意する;気をつける」は大丈夫でしょうか?ここでは、私の授業でよく言う「だけじゃないTEIJIN」の、“not only B but also C and D” で、「BだけでなくCやDも」という情報の足し算がありますので、

  • their length は、既に筆者と読者で共有していることや一般常識、前提
  • their depth とwidthは、筆者が強調したいこと

を踏まえた上で、主題との合致を確認して下さい。靴を選ぶ際の sizeの一般常識は「長さ(=length)」ですね。

主題は「足に付随する問題」と「正しい靴の選択・着用」ですから、

  • length
  • depth
  • width

がそれぞれ、どのように「問題」になり、靴の選択によってそれが解消するのかを考えておきましょう。
それぞれの名詞の元になる形容詞はわかりますか?

  • long 長い
  • deep 深い
  • wide 広い

では、その対義語・反意語は?

  • short 短い
  • shallow 浅い
  • narrow 狭い

です。deep / shallowの対比は、日本語であれば、「甲が高いか低いか」ということになるでしょう。
ここで筆者が「問題視」しているのは、

  • あなたの足にとって、靴が too long or too short; too deep or too shallow; too wide or too narrowであることです。最大で、2x2x2で8パターンの「問題」が生じますが、これらの形容詞をまとめて、それらに、より上位の概念でラベルを貼るとすれば、
  • too tight or too loose

ということです。靴は「きつ過ぎても、ゆる過ぎてもだめ」という筆者の声が聞こえるでしょうか?では、「きつ過ぎもせず、ゆる過ぎもしない靴」とは?

最終の1文、

  • Wearing the right shoes lets you enjoy walking with fewer problems.

「正しい靴を履くことが、あなたに、より少ない問題で、歩くことを楽しませる」

という日本語で、なんだかわかったようなわからないような、ということはもうないでしょう?
キーワードの “the right shoes” も、下線部4で見たように、「あなたの足にきつ過ぎずゆる過ぎないピッタリ合った靴」という実感が湧きませんか?英英辞典の定義を確認したところを思い出してください。

  • right = suitable or appropriate for a particular purpose, situation, or person (MW’s Learners)

英語がわかっている人は、もう既に、この意味を頭の中に持って、ここまで読み進めてきたわけです。

ここでも、主語は、靴ではなく、wearing = (靴を)履くこと、と「ことがら」であることに注意して下さい。
“enjoy –ing” で、「歩行、ウォーキングを楽しめる」「楽しんでウォーキングできる」という意味がわかるのは、“let +人・もの+原形” での、使役動詞let の理解が前提です。映画『アナ雪』のテーマ曲での “let it go” ですっかりお馴染みでしょう。『アナ雪』であれば、「人・ものの意向・成り行きに任せる」「したいことをさせる;能力を開放させる」という場面がイメージできるかと。

ここでは、「ウォーキングを楽しみたいと思っているものの、足に問題を抱えていて楽しめない人も、正しい靴を履くことで、その問題は軽減して、楽しみたいという気持ちに任せられますよ」という締めくくりとなっています。

最後の “with fewer problems” という表現の「比較級」fewer を見落とさないで下さい。「より少ない問題」、つまり「軽減された問題」ということで、主題を提示した文章の冒頭の、

  • Wearing proper shoes can reduce problems with your feet.

の “reduce” に対応しています。

ここで、冒頭の文は can と助動詞だったのに、最終文は、 “Wearing the right shoes lets you enjoy walking with fewer problems.” と現在形が使われていることに納得がいかない人がいるかも知れません。この最終文での現在形となっている動詞はletです。使役動詞として使うletは「(結果として)可能にする」という意味を含んでいますから、意味の上でもきちんと冒頭の文に対応しているのです。

ということで、まどろっこしく、一つ一つ読んではちょっと戻り、また全体を見渡して、最後まで読み進めてきました。ここで、この完成した文章(段落)全体をもう一度通して読み直して下さい。

Wearing proper shoes can reduce problems with your feet. Here are some important points to think about in order to choose the right shoes. Make sure the insole, the inner bottom part of the shoe, is made of material which absorbs the impact on your foot when walking. The upper part of the shoe should be made of breathable material such as leather or cloth. When you try on shoes, pay attention not only to their length but also to their depth and width. Wearing the right shoes lets you enjoy walking with fewer problems. (95 words)

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英文を読み解く際の問題が少し軽減された感じがしませんか?まだ難しく感じますか?「こんなやさしい英文で、わかりきったことをクドクドモッタイつけて話していないで、ズバリ本質を解説してくれ!」と感じますか?

あなたにぴったりの教材、学習材を選んで学ぶことも、靴選びと同様、またはそれ以上に、あなたの「学び」に付随する問題を軽減するのではないでしょうか、と述べて本日は終わりにしたいと思います。ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

本日のBGM: 耳をすまして(冬にわかれて)