If it’s in you to do wrong

先週は、委嘱されて、出張に行って参りました。
所謂「高円宮杯」につながる、英語弁論・暗唱大会の県大会です。私は「審査員」という立場で参加させて頂きました。弁論の部、24名、暗唱の部8名。そのうち、弁論の部では上位3名が東京での中央大会へと駒を進めることになります。
このブログで「高円宮杯」に言及したことはあまりないかと思います。過去ログでも、

だと、思い切り「批判的」論調です。
また、こちらの、

では、「内容」にも苦言を呈しています。
そんな私を審査員に起用するのですから、県の中英研の人たちは懐が広いですね。
審査員は英語ネイティブの英語教師が2名、日本語母語話者の英語教師が2名です。
英語ネイティブのバックグラウンドは、英国生まれで豪州に移り住み日本へという方、カナダから日本へという方。日本語ネイティブのもう一方は、元指導主事という経歴の持ち主で、この方が審査委員長。審査員での打ち合わせも時に楽しく、時に厳しく終え、入賞者を決定しました。大会要項で示されているように、著作権のこともあり、審査基準の細目や、個々のスピーカーの「弁論」について、詳述することは避けますが、全体的な印象と、気になるところを幾つか記しておきたいと思います。

まず、英語の音声について。
私を審査員で起用した狙いは、おそらく「内容」とか「構成」、「論理」、「表現」といった、ライティング指導で私がこれまで培ってきたものを反映させて欲しいというようなことだったのではないか、と推測するのですが、大会で一番気になったのは「音声」でした。

  • 「英語」になっていますか?

と問いかけたい人が何人かいました。これは、アメリカ人のように、イギリス人のように、カナダ人のように…、と「ネイティブらしさ」を求める、というのではありません。英語の音声として知覚・認識ができるゾーンに納まっているか、ということです。「同化」や「脱落」などの「音変化」の前に、「調音」をきちんと身につけ、適切な「リズム」で練習することが大切だと思います。このことは、練習している本人だけでなく、指導する先生の側に気を付けて欲しいことでもあります。

  • 早口
  • 口先だけの声

はダメです。「♪そこに〜あなたは〜いません〜♪」という感じがします。

  • 自分の身体に響いているか、自分の声になっているか

を感じる余裕が欲しいと思います。
私の勤務校の今年度の入試問題 (読解) で出題した内容が、まさに「スピーチコンテスト」の講評でしたので、その草稿から、一部を引いておきます。

The first thing I’d like to point out is the speed of your speech. Don’t speak too fast. But how fast is too fast? That depends. You are not speaking at the same speed all the time. When you are starting your story, you are not speaking that fast. You want to catch your listeners attention. And you are naturally starting to “talk” to them so that they can follow you. When you repeat something in your speech, however, you are speeding up. You do not have to wait that long. Do not speak too fast. Talk to your listeners. You do not need any tongue twisters. If you are speaking too fast, that will make your sounds unclear, and you will sound too busy. That will make it worse. Learn to make the correct and clear sounds first. Then, go on to the comfortable rhythm. English has its own rhythm just like Japanese does. Don’t go for the speed. Improve your sounds and rhythm. Make your sounds clearer and clearer.
I feel that many of you also need to study how your body works when you speak. You can feel the parts of your body when you are speaking. Of course, you speak with your lips and tongue. Your lungs are working very hard to breathe in and out. But they are not the only parts you use when you are speaking. You speak with your whole body. I am not talking about “body languages” here. You are speaking with your body and you should feel the sounds your body makes. Just think of how you are playing the guitar. A guitar has the strings on it, and you have to pick them to produce sounds. But only picking the strings doesn’t sound well enough. The vibration of the strings goes to the body of the guitar, and it gets bigger there. The body of the guitar works just like a “speaker” of the stereo set. This way, you produce deeper, stronger and richer sounds. The same is true when you are speaking. Feel your voice and how it will “speak” with your body.

今回のスピーカー一人一人の原稿を取り上げることはできませんので、「スピーチ」の一般論を語る際の、私の意見だとお考え頂きたいと思います。

内容・構成に関しては、審査委員長の講評にもありましたが、

  • 1段落1アイデア

の原理原則を踏まえておくことが大事だと思います。そのためにも「つながり」と「まとまり」を常に意識することです。「トピック」が単なる話題つながりで流れていくのではなく、主題を受け継ぎ、一つの文とその次の文の「つながり」を保つこと、そして「まとまり」を薄める、崩す新たな要素 (具体例であれ、意見であれ) を「入れない」ことが大切です。締めくくりで、話題が拡散したり、テーマのレベルが一段階高くなってしまったりというケースが見られました。

表現でまず気になったのは、定型表現の使い方です。「標識語」とでもいうのでしょうか、

  • For example,

の使い方を身につけるには、多くの「適切な」実例に触れるしかないのかな、と思います。その具体例は、何をサポートするためのものなのか、ということが一番大切です。そこがきちんと押さえられていれば、わざわざ “for example” と目印 (耳印?) を入れなくとも、聞き手は付いていくことができるはずです。

説得文での、「頭出しチャンク」とでも言うべき、

  • I have … reasons

という表現の前後が、本当に「因果関係」で結ばれているか、ということも、気になりました。この、「それは、本当に理由になっていますか?」という部分も、適切な用例と数多く出会うことで身につけるのが一番ですが、指導者からの適切な助言が必要な部分でもあるでしょう。

明らかに書き言葉で使われるであろうものが、くだけた表現の間に挟まれていたりする部分も気になりました。「…した途端に; …するとすぐに」という意味で、

  • S+V upon …ing

という文を使っていたスピーカーが複数いましたが、誰かの引用でないのであれば、ここはやはり、as soon as と接続詞を使う方が望ましいのではないか、というのが私の感想です。

決め所となる表現で、「イディオム」に頼るのも、良し悪しです。

  • そのイディオムが決め所で使えるのに、あそこやここであまりにも不自然な英語が出てくるのはどうして?

という感想が頭を過ぎります。

名句名言の引用も、自然に使えて初めて効果的と言えます。その意味では、今回の出場者には「浮いた」引用は見られなかったことをとても喜んでいます。
この「引用」についても、入試問題の中でメッセージとして投げかけていました、先程と同様、草稿から引いておきます。

The last thing I want to tell you is quotation. Quotation is some words and phrases you borrow from other books, poems or speeches. Some of you quoted famous phrases in your speeches. But I don’t think it is a good idea to use “beautiful old phrases” from books you borrow from a library. You are all teenagers. You know a lot of things in Japanese. But how old is your English? Imagine you were a first grader in elementary school, born and brought up in Japan. Can you quote something from the words of famous politicians, artists or scientists? Many of you cannot even repeat them. If so, how can you do that in English? You can see that it is not always a good idea to quote President Obama, Mother Teresa, or even Shakespeare. You can take time to see if you will sound right.

確かに「高円宮杯」の中央大会入賞者のアーカイブを見ると素晴らしいスピーチが並んでいます。その中には、素晴らしい引用がなされているものもあります。でも、その引用も含めて、スピーチ全体が、その人らしく響いてこそ、良い引用であり、良いスピーチなのだと思います。

今回の大会上位の入賞者は、細かな減点要素はあるにせよ、上で書いたような部分で気になるようなところが少なく、総じてよくできたスピーチだったと思います。特に、1年生で入賞した生徒のスピーチには驚かされました。中学校でのコミュニケーション活動の成果は勿論ですが、小学校での英語活動、そして「学校外」での塾や英語教室の指導、「英語子育て」などがどの程度寄与しているのか知りたくなりました。

今回、中学生の英語のパフォーマンスを肌で感じられる機会を与えて下さった中英研の皆さんに感謝します。そして、予選を経て、県大会に出場した中学生の皆さんの健闘を称えたいと思います。有り難うございました。

さて、
自分の実作は一進一退というか喜怒交々というか…。
看護科は、予告していた教科書の「音読テスト」。廊下にビデオカメラを立て一人ずつ収録しながら、様子を観察。
習熟度にも個人差がありますから、難易度自己申告制を採用してみました。

  • 教科書の「写真」だけを印刷したものを持って、英文を言う。
  • 教科書の「順送りフレーズ訳」だけを持って、英文を言う。
  • 教科書本文を印刷したものを持って、Read and look up。

フィギュアスケートや器械体操のように、基礎点が異なります。難易度の高いチャレンジをしても、大きく失敗すると、安全策で「出来映え点」を狙うよりも得点が下がることも考えられるわけです。
約40人いますから、タイマーで一人1分の制限時間を設定しました。オーバーは減点ですが、早く終わったからいいというものでもありません。一番大変なのは、自分の順番を待っている生徒が音読練習をする声が大きすぎて、廊下で収録している時にかぶってくることでした。この学校にきて、「もっと静かに…」と教室で音読させたのは初めてでした。若干名、放課後に回りましたが、全員収録完了。

進学クラスの方では、「英語弁論暗唱大会」の様子を伝え、実際のスピーチを読み聞かせたり、原稿を読ませたりしました。高3の「ライティング」では、一つを取り上げ、このスピーチをさらによくするにはどう助言するか?という「課題」も与えてみました。でも、これは、高3だからできることで、高1の生徒が、この「超中学級」の生徒たちの英語からどのような刺激を受け、自分の英語学習や英語運用に役立てるか、正直難しいです。見栄えの良いコミュニケーション活動だけではなく、やはり、地道なトレーニングも必要ですから。

週末は英検があり、午後から強風の中、本業で湖へ。自然に逆らってもムダ。まずは、自分との戦いです。
明日は明日の風が吹くのでしょう。

結婚記念日に近所のお店で買ったケーキの残りを、美味しくいただきました。
小市民万歳。

本日のBGM: Get Down (Curtis Mayfield)