地味 or 滋味?

正業の実作は、高2進学クラスから。
前時に用例採集した<助動詞と時制のズレ〜横綱+大関>をおさえてから、<If節の3タイプ>の理屈を板書。自分が学習者として納得したのは、「流し素麺の三角飛び蹴り」という独創的な考え方だったのですが、副詞節で既に「条件のif」を扱っているので、3つまとめることでなんとかなるでしょう。楽観視。
あとは、それぞれの用例採集に出かけるべくフィールドワークです。このフィールドワーク用に、初任間もない頃からずっと使っているのは、

  • The Kid’s Book of Questions, Workman Publishing, 1988

もともと、大人向けの内容でThe Book of Questionsのシリーズがあったと思います。(邦訳も森瑶子さんがされていたかと…。) その子供版で、総質問数は、260。全てに “if” が含まれているわけではありませんが、こんな質問が見つかります。

  • 1. If you were the ruler of the world and you could have anything you wanted as well as have people do anything you wanted, do you think you would get greedy and mean or would you be a good and fair ruler?
  • 3. If your mother promised to be home at 2:00 in the afternoon to take you to the movies but didn’t show up until suppertime and didn’t even phone, what would be a good punishment for her? Would punishing her be likely to make her on time in the future?
  • 4. If all your best friends were willing to be absolutely honest and tell you exactly what they liked most about you and what they liked least about you, would you want them to?
  • 8. If you could have a round-trip ride in a time machine and travel any distance into the past or future, where would you want to go?
  • 11. What would you do if everyone in your family forgot your birthday?
  • 18. If you could be invisible for a day, what would you do?
  • 25. If you knew that by being the teacher's pet for two years you would lose all your friends and be teased by everyone, but that you would later grow to be very successful and happy, would you do it?
  • 30. If you woke up tomorrow and by magic were already grown-up and had kids of your own, how would you treat them differently from the way your parents treat you?
  • 224. If you were to offer your parents one tip on how they could be better parents, what would you tell them?
  • 227. If you bought something in a store and the clerk gave you a dollar extra in change, would you say anything about his mistake?
  • 233. How do you think your life would be different if you were three inches taller? three inches shorter?
  • 255. If, by magic, you had the power to pick one person and always be able to read that person’s mind, who would you pick?

当時はもっぱら「英語IIA」の指導で、スピーチライティングの「お題」に使っていました。
その後加わったのが、

  • 201 Questions to Ask Your Kids/Parents, Avon Books, 2000
  • 『If 想像力と創造力を育む100のもしも』 (早稲田出版、2005年)

です。
『201本』は、表から読むと、親や先生が子供に訊く質問、裏から読むと子供が大人に尋ねる質問という作りになっています。
『If』 は翻訳物なので、日本語による訳註・解説、回答のサンプルもあります。

普通科の2年は、不規則変化動詞暗唱大会。
A-B-B型の27個の動詞と意味を踏まえた上で、きちんとした英語の音とリズムで繰り返すことが大切です。多くの動詞は既に、<動詞+名詞>のコロケーションで導入済み。この後、受け身と完了形の「やり直し」をするためにも、ここで良い出会いを重ねて顔なじみになっておくことが大事。ペアで、日本語で意味を言われたら、即活用を唱えるところまで。あとは、テストに向けて、綴り字というハードルをクリアーすること。think, bring の活用と、catch, teachの活用で躓く者には、「過去形・ -ed/en形で、綴り字が “-aught” になる動詞はまず、この2つを覚えておく、この2つの動詞の原形には、-a-の文字が含まれているから、それを意識して書く練習を。」と助言。
午後の一発目は高3進学クラス。
昨日は神奈川新聞の良いコラムを紹介したのだったが、今日は朝日新聞から酷いコラムを反面教師として紹介。こういうことを「有識者」に好き勝手に言わせないために、「市民」としての教養を高め、論理的にものを考えて行動し、発言することが大切。そのために、きちんと学びなさい、と力説。
音読で残っていたところをカバーして終了。
関係代名詞のthatに強勢をおいて読んでいる者がいたので、しつこく音源の部分再生を繰り返す。後半の分詞構文の意味処理を今やっているようではダメ。リソースが分散されてしまいますから。

  • Cultural diversity is not something that is going to go away tomorrow, enabling us to expect mutual understanding.

いつもしっかりと準備をしている生徒が、思わぬ強勢で読んでいたので、

  • 今読んだところで、 should とneverではどちらの情報が重要度が高い?

と確認。英文は容易なもの。意外なところでクセが見えてくるものです。

  • We should never be optimistic about cultural diversity. There exist clear trends, sequences and traditions. Even in countries where political and economic change is currently rapid, deeply rooted attitudes and beliefs will resist a sudden transformation of culture.

語彙のポイントとしては、

  • They had sensibly stayed in bed.

の “sensibly” から、文修飾副詞の話し。これは必ずしも一定の書き換えパターンがあるわけではないので、柔軟に。安井稔先生の本かMichael Lewisの本に、一覧があったような…。

  • People of different cultures share basic concepts but view them from different angles and perspectives.

では、“share basic concepts” を取り上げ、まずは、conceptsの語尾の音声に注目させて、子音連続での音変化の傾向を指摘。語義語法では、shareのパラフレーズ。定番の “have something in common” は確実に。目的語にどのような名詞を取りうるか、では清水かつぞー先生のエピソードを。「相合い傘」くらいならすぐに出て来る生徒もいますが、「共有する」という日本語のイメージから解放されないと、shareの「肝」は掴めませんから、「英作文眼での読書 (inspired by 金子稔先生)」です。
最後は、conceptの類義語を眺める。

  • idea; notion; thought

は必須。私は授業でよく「一般名詞の活用」と言うのですが、この種の名詞は前段での陳述をまとめる時にも有効なので、まとまった論述をする時にはライティング力を支える語彙力となります。(拙著『パラグラフ・ライティング指導入門』の、p.168を参照されたし。)

  • image; view; perspective

など、「理解するということは頭の中に映像を作ること」という比喩に基づく整理をして終了。

6限はすぐに校舎棟を移動して普通科の高2へ。こちらのクラスは「暗唱大会」への坂の途中といったところ。
こちらの頭の切り替えは大変ですが、手を抜かないことが肝要。始業時のちょっとしたハプニングもご愛敬、早速、活用表の空欄補充。まずは自力で、A-B-B型か、A-B-C型か、空所以外をよく観察して、特徴を思い出して解答。その後、辞書で発音も確認。カナ発音も使いようです。教師がきちんとした音声でモデルを示し、生徒の発音を矯正できる「余裕」があればの話しですが。座って黙々と淡々と調べ作業を進める時間を経て、しっかり音読で終了。ただわいわい賑やかなだけの活動でごまかさず、教師の話芸に頼るのでもなく、やるべきことをきちんと組み立てて、各自が「課題」を見つければ、実りのある授業になるのだという好例をまた一つもらえた1時間でした。生徒に感謝。

放課後は、新課程のカリキュラム会議。1年次からコース分けをする学校ではないので、理科の扱いが難しい。私は「学習指導要領」の法的拘束力をなくすことが大切だとかねてから主張していますが、学校には学校の教育目標があり、カリキュラムは組まねばなりませんので、いろんな綱引きです。英語に関して言えば、進学クラスのカリキュラムは私の案をもとに、必修を終えたら学校設定科目を入れる方向で検討することに。この頭痛はしばらく続きそうです。

夕飯は鍋。具は野菜と地鶏と葛。でも、魚出汁も利いていて美味。
器には柚胡椒を少々。喉には八海山を少々。

アジア大会の結果を見て、日本代表の来し方を暫し考える。
娘の笑顔に癒され就寝。

本日のBGM: One of the nicer things (Richard Harris)