2013 Tokyo!

tmrowing2013-09-16

本業の東京国体から帰還。
2020年夏季五輪開催地決定に沸き立つグローバル都市東京で開催される、ドメスティックなナショナルスポーツイベントに参加という、貴重な体験でした。選手として4年、コーチとして13年、東京の大学チームに関わってきた私が、山口県の監督として参加というのもちょっと複雑な心境でした。
私が監督を務める成年男子は、2Xが予選はスタートでの出遅れが響き敗者復活戦廻り。敗者復活戦はなんと予選と同じ組み合わせでこれまた3着で敗退、準決勝に進めず。1Xは予選レースでのスタートで飛ばしすぎ終盤失速で敗者復活廻り。敗者復活戦は終盤ヒヤリとしたものの、1着で準決勝進出。準決勝は逆風に思うように艇速が伸ばせず、追い上げ空しく3着で最終日に進めず、順位得点なしという結果に終わりました。
選手の皆さん、お疲れ様でした。インカレ後の豊田湖での強化練習が台風の影響で思うようにできなかったことが悔やまれますが、「タラレバ」は禁物。もっと練習をして、もっと力を付けるしかないでしょう。来年以降も宜しくお願いします。
少年女子は、コーチでH先生が来てくれたので、リギング等お任せ。予選を順当に上がり、準決勝進出。メダルを争う強豪とのレースで後半負い上げるも届かず4着で敗退。最終日には進めず、順位得点ともなしとなりました。
監督として6年目、入賞のない初の大会となりました。来年以降、さらに厳しい状況が予想されます。

負けた人間が大会を振り返ると、愚痴のようになりますが、やはり記録として残しておきます。
今大会は、埼玉県戸田市の戸田オリンピックコースではなく、江戸川区平井大橋上流の荒川特設コースでの開催。「特設」ということで、漁船・輸送船などの船舶やプレジャーボートの航行がフリーという環境でのレース。話しには聞いていましたが驚きました。
大潮を避け、干満や逆風による波浪を考慮し、異例の5日間の会期で開催したわけですが、勝ち上がり・組み合わせ・レーン抽選など「東京国体ローカルルール」なるものに翻弄されました。
代表者会議で、私も含め多くの監督から質疑が飛び「確認」した、「タイム差」でしたが、結局、公式のレース結果のどこにも「計算結果」は表示されることなく、各クルーやチームが確認するためには、全て「自分で計算する」しかない (そして多くの人は諦めて、組み合わせが表示されるのを待つ) のでした。
各レース「着順の決まったクルー」の平均タイムを算出し、その平均からの差を「タイム差」と称しています。干満や流速が異なる環境でのレースを補正する目的だそうです。
代表者会議で私が乱暴に例示した、

  • 第1レース、1着3分。5着3分20秒。平均タイム3分10秒。1着はマイナス10秒、5着はプラス10秒。
  • 第2レース、1着3分。5着4分。平均タイム3分30秒。1着はマイナス30秒、5着はプラス30秒。

となった場合、「10分しかレース時間が違わずほぼ同じ環境下での『3分』の持つ意味が、後続のクルーの存在、つまり、より遅いクルーのタイムで変わってしまう」という、ボート競技の根幹に関わるルール変更ではないか、と問い質したわけです。我々は、スピードを競っているのであって、平均からの隔たりを競っているのではないのですから。
回答は、原発事故以降に話題となった「東大話法」とでもいうもので、根拠に基づく説得力のあるものではありませんでした。
どのレースも、1位で上がり続けられる「際立った強さ」のあるクルーはいいでしょうが、相対的な優劣を勘案・考慮し、レースプランを立てざるを得ないようなクルーにとっては悩ましい「ルール」です。
コンディションの差を補正するのであれば、コース内のどこかで、

  • 実際の「流速」を計測して補正する

方がまだ理解できるように思いました。

また、会議で私が質問をした、「規格艇」の図面の問題は、杜撰な回答しか得られず、多くのクルーが「我慢」を余儀なくされたのではないかと思います。

  • 女子1X艇の艇構造図とリガー構造図での寸法が違う

これには、「入力ミス」との答えでしたが、ミスであれば、大会以前に「訂正」されていてしかるべきでしょう。代表者会議の席で、「図面にミスがあった」と言われても、対処の仕様がないではありませんか。この部分の計測を「計測委員会」が艇の会場搬入時に立ち会って検査しているのか?という問いに対しては、「抜き取り」でしか計測していない。とのことで、艇の個体差に対する疑問・不信は拭えません。そもそも、各ブロック予選を勝ち抜いてきたクルーが事前に準備した「ローロック」を装着すると、

  • スパンが短か過ぎて、適切なリギングができない

ということでは、「規格」艇という意味がありません。その大会ごとの「企画」艇ではないのですから。
リガーのメインステイが短く作られているのか、艇の幅が短く作られているのか、女子1X選手がリガー位置を一番上で取り付けてかろうじて156センチ取れるか取れないかという状況で、初日の配艇練習では、ほとんど乗艇出来なかったクルーが続出しました。私の担当する男子でも、万が一を考慮し、大会公式サプライヤーであるD社の製造するローロックを「購入」し対策を講じましたが、その後、H県のN先生から携帯に電話がかかってきて、

  • なんか、貸し出し制に変わったらしいよ。

という知らせが…。
規格艇の信頼度は、「配艇」制度の根幹です。まずは艇・リガーの「精度」が信頼できなければなりません。

公式配艇練習が始まった9日には、太平洋上で熱帯低気圧 (台風) の発生が確認されていましたが、この台風の進路やその影響に関する「対策・準備」については代表者会議では一切報告・説明がありませんでした。結果、最終日には台風の影響による大雨、増水、強風、波浪で、レースに必須の施設が損壊。順位決定戦の一部と決勝の全レースが中止となったのでした。決勝中止は2000年の富山国体以来でしょうか。
山口県勢のレースがない最終日、朝からコース脇の「観客席」と名づけられた、ベンチも何もないただ網が張られた河川敷の水たまりに立ち、順位決定のレースを見ていましたが、増水により流速が増し、女子2Xや男子1Xで3分を切るようなタイムが出ていました。
この2Xや1Xのレース時間帯でも、ステッキボートが定位置に付けなかったり、コースブイが流されていたり、増水により目視できなくなっていたりするコンディションでしたから、応援中の某県監督や、観戦中の某コーチとも、

  • 決勝レースはできるのか?

と話しをしていました。上流での雨水による増水や、上げ潮による増水となれば、危機的状況は予想されたと思います。
少年女子の1Xがスタート前に落水、レースを入れ替え少年の4X+を先に行おうとするも、強風と激流によりスタートが上手く行かずにやり直し。3度目のスタートをした頃には傘も差せないほどの強風で白波が立ち、オールを取られるクルーが続出しました。私はこのレースをゴール前で見届け、土手でレースの伴走をしていたS県の方に、スタート周辺の状況も聞き、

  • これはレースのできるコンディションではないな。

と確信し、引き上げてきました。
案の定、コース施設の損壊でレースは中断。その後、中止という判断となりました。
着順の確定した順位決定はそのままの順位と得点、中止となったレースは順位決定戦は各クルー1着と同等で一律5位に、決勝レースのクルーは1着と同等の一律1位に、という結果でした。公式記録をよく見ると、私の見届けた少年男子4X+は結局「中止レース」扱いで、一律5位という順位が付いていました。あの強風と白波の中、2度のスタートやり直しを経て、漕ぎ抜いた彼らの思いはしっかりと受け止められたのでしょうか。
この「想定外」の環境で、レースを行い、勝敗を競った少年・成年の各クルー、監督コーチなどチームスタッフの健闘を称えたいと思います。
関係者のご苦労は察しますが、反省点が多く、後味は決して良くありません。

  • ルールや運営を含めてレースをする選手に対して優しくない大会

というのが私の感想です。
旧友の一人は、

  • ロウイングに対する愛の感じられない大会

と評していました。
来年の長崎国体へ、大会運営のノウハウが引き継がれていくだけでなく、「思い」もリレーして欲しいと切に願います。

月曜日が祝日だったので、もう一泊伸ばして…、などという余裕もなく、台風の影響を避けるために日曜日の早めの便で帰ってきました。

本日のBGM: 一回休み