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ナラティブ関係の本を読んでいて、次のようなパラグラフに出くわした。備忘も兼ねて引いておく。

When have novels ever delighted more juveniles and adults than Stephanie Meyer’s Twilight saga or J. K. Rowling’s Harry potter books (which are twice as long in their entirely as War and Peace) ? When was the last time any novels made a bigger cultural splash than the postapocalyptic Left Behind series by Tim LaHaye and Jerry Jenkins, with 65 million copies sold? When did authors sell more books to a more devoted public than John Grisham, Dan Brown, Tom Clancy, Nora Roberts, Stephen King, or Stieg Larsson? When has a literary genre outstripped the opportunity of the romance novel, which does a cool billion dollars in sales per year? When has any novelist been able to brag---as J. K. Rowling can---of having the same sum in her bank account?

Jonathan Gottschall. (2012). The Storytelling Animal: How stories make us human, Houghton Mifflin Harcourt

高校での指導では、

  • 現在完了形は、yesterdayや last yearなど特定の過去の時点を表す表現と共起しない。

という「ルール」を適用しているように思う。そして、Wh-疑問文の場合は、まさにその「特定の過去の時点」を取り沙汰するが故に不可、という理屈で、

  • When have you …ed/en形?

という表現を用いない、と説く人たちが多いという印象を持っている。
では、上記英文はどう捉えるのだろうか?

  • 過去の時点ではなく、今に焦点が置かれているから?
  • 修辞疑問 (反語) で用いられているので、実質特定の日時を答えさせるものではないから?

では、前後に、明確な過去形で時制が示された文があるのはどうして?
全部が全部、綺麗に説明できるわけではない。
言葉は生きている。

専修大の田邉先生の研究室ブログ「常時英心」で、こんな記事に出くわした。

informalな文脈で用いられる動詞 “buy” に関して。
私がこの「語義」に初めて出会ったのは、大学1年か2年で買った辞書。

  • ジャン・マケーレブ、安田一郎 『アメリカ口語辞典』 (朝日出版社、1983年)

pp. 164-165 で豊富な実例とともに、的確な解説と訳語が示されている。
目的語としては、

  • 説、説明、意見、申し出

があげられている。
学習者の立場からすると、

  • なぜ、「買う」という意味から、「相手の言うことを認めて納得する;正しいと思って受け入れる」という意味が生まれるのか?

という疑問を持つのは当然で、「かくかくしかじかの比喩や連想が働いて今に至っているのだ」という回答もできようかと思う。しかし、この語の、この語義だけの比喩・連想を説明できたからといって万事がうまく行くわけではない。

  • では、formalな語義を受け持つ動詞 “purchase” にも同様の比喩が働いているか?
  • では、buyの反意語・対義語である、sellには同様の比喩が働いているか?

というところを考え併せて見る必要があるだろう。
手元の辞書を引く限りでは、purchaseにはこのような目的語をとる語義の発展は見られない。
一方、sellの方は、Merriam-Webster’s Essential Learner’s で、

  • to persuade someone to accept or approve of (something or someone)

という語義が見られる。特にスピーチラベルは貼られていない。ということは、こちらの語義の方が英語としてはより中核に位置するものなのではないか、という想像ができるだろう。
あとは、それぞれの初出を求めて、より信頼の置ける辞書やコーパスにあたって、自分の想像を裏付けるべく「調査」していけばいい。そして、今の時代はそれが可能である。
私が考える、教材研究というのは、このようなものである。
もう一つ、私が気になっていたのは、「価値を認めて受け入れる」という buy の比喩と、credit の語義との関連である。
Cambridge Dictionary Onlineでは、動詞として用いる creditで、

to believe something that seems unlikely to be true: He even tried to pretend he was my son - can you credit it? It was hard to credit some of the stories we heard about her.

のように、定義と用例が示されている。この語義の「もと」になっているのは、名詞としてのcreditであろう。同じく、Cambridgeより引く。

praise, approval, or honour: She got no credit for solving the problem. Her boss took credit for it/took (all) the credit instead. To her (great) credit, she admitted she was wrong. I gave him credit for (= thought that he would have) better judgment than he showed.

この「認めて与えるプラスの評価」というような語義が、どのようにして、上述の動詞の語義へと転用されるのか、語源を繙くだけでは十分とは言えまい。「後出しじゃんけん」をするならするで、恨まれないような「三色」の出し方を準備しておく必要があるだろう。

さて、
高等学校で英語を教えている先生方、来年度用の教科書の選択はもうお済みでしょうか?
「呟き」とFBで次のような情報を流してみましたが、あまり反響はありませんでした。ちょっと意外です。

高等学校は各高校が教科書選択を行うものだが、最近は教育委員会が予め篩にかけてリストを作り、そこからしか選ばせないという動きになってきている。歴史ばかり気にしていると英語の実態に気が付かない可能性も。以下、京都市のもの (7/25付 pdfファイル)。

コミュニケーション英語I の例をあげると、文英堂の『ユニコーン』はダメで『グローブ』は良いなど。英語表現IIにいたっては2社2冊しか選ばれていない。「選定委員」「調査研究委員」の双方に名を連ねる川原正敏さんは京都市立堀川高校の英語教諭らしい。委員名簿がこちら。(こちらもpdf)

京都市立高等学校に勤務する先生方は、7月25日に告知されたこの「教科書一覧」を見てから、各校で採択する教科書を読み始めたのでしょうか?で、最終の届け出はいつなのでしょうか?他の市立高等学校に勤務の方で、このような手順に詳しい方がいらっしゃいましたら、是非お教えて下さい。

一覧表を見る限り、相当数の教科書が落とされています。しかも、委員の選定基準も教科書の選定基準も不明 (ここでの「不明」の意味は、同サイトで「明らかにされていない」ということ)。教科書会社サイドはこれにどう対応しているのか知りたいです。
私が一番気になったのは「発表時期」です。7月25日、といえば一学期も終了です。この一覧表から、各校が選定するとなると、他の業務を何も入れないで取り組んで早くても7月末。ちょっと考えにくいです。各校で6月末から7月中旬くらいまでで選定採択をしておいて、それを教委に吸い上げ、一覧表を作り、「後出しじゃんけん」でそれらしい「趣旨」を発表する、というのが現実的な落としどころだと思うのです。もし、この教委の言うとおりに教科書選定をするのだとすれば、選定の基準ごとに「各教科書の対照表」や最終的に何を採り何を落とすかの理由が述べられる「議事録」などが残っているはず。
いったい、「現実」はどうだったのでしょうか?京都市立高校の関係者からの声が聞けるといいのですが。お盆明けくらいには市教委に問い合わせてみるつもりです。
これが、公式サイトのページ。http://www.city.kyoto.lg.jp/kyoiku/page/0000149552.html

京都市立高等学校というのは全部で9校です。9校しかないから、その学校で使う教科書は事前に「教委」が選んでおくことにする、というのは説得力のあるものでしょうか?そういう理由なら、市を「特区」にして、指導要領の例外にしておいて、市立高校の教員や有識者で「独自教科書」を作成したらいいのでは?というのが率直な感想です。

地元でも猛暑。
殺人的な暑さで、昨日は38度を越え、今日も37度を超えました。
屋外では勿論、空調の効いていない屋内でも、運動をしてはいけない気温です。
競技スポーツの指導者、学校の部活動の顧問の方は、是非、次のプロ・マルチアスリートの小笠原崇裕さんのブログをお読み下さい。

「気合いが入っていたら」とか、「集中していたら」とか、「嫌々やらされているのではなく、自分から進んでやっていたら」などという理由付けは、全く意味を成しません。少なくとも、スポーツの指導者を名乗るからには、この程度の「良識」「常識」は身につけ、「理」を弁えておいて欲しいと思います。

昨日、世界陸上で、女子マラソンの中継を見ていました。30度を超える環境での過酷なレースだったと思われます。福士選手の銅メダルと木崎選手の4位を称賛するのは良いでしょう。偉業です。その一方で、五輪金メダリスト、ベテランの野口選手は好調を伝えられつつも、33km付近で途中棄権しています。私は、野口選手の勇気ある判断・決断だったと評価します。

ということで、本業の我がチームは今、お盆休み真っ最中です。

本日のBGM: ゆっくり歩こう (スタジオバージョン) / Junk Fujiyama