the secret of annotation

この連休には、本業の全日本選手権が開催。
TVの地上波でも1時間放送されていました。
様々なドラマがあったことでしょう。
今回は、戸田行きは断念。
来週は、国体前の県強化合宿、10月に入って直ぐに岐阜国体への派遣で、週末不在が続くため、正業である勤務校の2学期の土曜日課外の私の担当分を入れられる週でこの週末をはずせませんでした。国体の県代表選手も含めて、現時点の主要な選手のパフォーマンスをしっかりと見ておきたかったのですが、仕方ありません。
大会自体は4日間でも、その前の配艇練習での岐阜入り、そこからの帰山を考えると、1週間以上授業をしない計算になるので、授業の振り替えなどの準備もそろそろやらないと。

台風一過の実作は淡々と。
商業科2年は、4日空いた分、復習というよりはやり直しの「仕込み」から。連休明けの1限の開始5分で寝ている者がいて、中断。高校でも進学校などの先生の中には、「単調な講義になると生徒は寝てしまうので…」などといって、授業の構成や、話術などの問題に帰する人がいるけれど、そんなことばかりが教室のダイナミズムや変数ではないのです。授業の最後に触れておこうと思って、用意していたFB経由の本田圭佑選手の言葉を読み上げてから、授業に戻る。今日は、パート1の記号付け。四角化で視覚化ととじかっこの徹底。一つの文にとじかっこが2つ以上ある時の頭の働かせ方など。今回は、接続詞ではなく、関係代名詞の後置修飾で拡充された名詞句の把握がポイントなのですが、名詞句の把握では、簡単そうに見えるところにも落とし穴が待っています。

  • simple meanings such as animals, tools and things from nature

で、from natureは、andを越えて、animalsやtoolsを修飾できるのか、という問い。それに自信を持って答えられるように、"things from nature" の例を各自で考えてもらう。「台風」「地震」「雷」などの例が直ぐにあがった。天候や気象条件、極端な話しなら「災害」とか「天変地異」などとラベルを貼るような「もの」について述べていて、ものはものでも、「生き物」とは違うのだ、という理解が求められるところ。
明日は、「音声指導」。強勢とリズム、個々の音、チャンクのまとまりでの音の繋がり・変化・脱落という3項目立ては1学期と同じ。この指導の中で、フォニクス的な指導を少しずつ。
高1進学クラスは、土曜日課外で90分をかけて丁寧に行った、復習・定着の「手作り」ワークシートの続きが出来ていない生徒が多く、ダメ出し。まだまだです。連休で2日半という時間を与えられて出来なかったことが、授業のある平日でどの程度出来ると考えているのか?
高2の方は2コマかけて、「リーディングスキル」。
テクストタイプについておおまかに。上田明子先生の絶版本を活用。
タイプというからには分類する観点があるはずなので、そこを解説。「あくまでも目安」と念を押した上で、4タイプ。日本語との対比も交えて英語での表現形式上の特徴について考える。この時の視点も、

  • Reading like a writer

を忘れずに。
まずは、instruction。
高校生が「指示」を与えるという場面は、現実の学校生活においてどのくらいの頻度であるのだろうか?しかも「指示を書く」となると?では、家に帰ったら?街中では?

  • 「レシピ」、「薬の服用上の注意」、「家電製品のトリセツ」

などほとんどが「与えられる」側。この3つの中では、まだ「レシピ」が日常性が高いかもしれない。昨日たまたまTVで『レシピの女王』などというのを見たので、その話も振ってみたが、「レシピを書いて人に教える」機会はそれほどない。ましてや、「服用上の注意」や「トリセツ」などは。instructionそのものの「機能」「目的」に焦点を当て、「それはいったい何であるか?」ということに加えて、「何ではないのか?」「どうなるとそれではなくなるのか?」ということを意識してもらい、

命令文と、肯定的なはっきりとした意味を持つ動作動詞が中心となり、現在時制を中心に記述される。「取扱いの注意書き」や「トラブルシューティング」など、If SV, SV. などの条件文の中で出てくる、助動詞的表現以外で、助動詞が使われることは少ない。

という一般論を述べておきました。
今日の本題は、narrative。明け方から、ハンドアウトの英文パラグラフの例、解説の日本語をせっせと書き、プリントアウトして、足湯をしながら音読。通りの悪いところ、借りてきただけの賢そうな言葉づかいなどを修正したり、差し替えたりしていたので、まあまあスムーズに展開することができました。
「語り文」というと、chronological orderという要素は指導されるのでしょうが、では、どのような表現形式がその「時の流れ」を表しているのか、という部分では、「習うより慣れよ」、「読書百遍…」ということなのか、なかなか身についてはいないようです。今日、授業で一緒に考えたのは、

  • 英語の動詞には過去形がある。意外にも、「いつのことなのか?」に合わせて、その「語」自体の形が変わって合図が出来るのは、この「動詞」だけ。
  • 「えっ? だって『昨日』は、yesterday、『今日』はtoday、『明日』はtomorrowって、『いつのことなのか』に合わせて変わっているじゃない!」と思った人がいるかもしれない。でも、それは、「語」そのものを入れ替えている。それに対して、動詞はそれ自体が「形」を変えて、「時」を司ることができる。便利だよね。
  • ということで、「動詞は時制が決まればとじかっこ」というのを、来る日も来る日も来る日も来る日も、やってもらっていたわけだ。

というようなこと。今これを書いていて思い出したのですが、(?) 「まだ行われていないことには動詞の原形を使う」などというルールを作ってしまう人が稀にいるようですが、せいぜい言えるのは「原形は『時』を司ることから自由」とか「原形は『いつの話しなのか』という、動詞の肝といえる要素を手放している」というようなことではないか、と思います。
授業で解説したのは、

narrativeな文章では、段落での基準となる動詞の「時制」とその移り変わりがはっきりと示される。動詞の他には、時の前後関係のbefore / after、時の推移や動作行動の同時並行を表す目印として、later, や meanwhile, at the same timeなどの表現が効果的に使われている。その他にも、change, become, turnなど「動詞の意味そのもの」が変化を表す動詞、more, betterなどの比較級によっても「時の流れ」は示されている。比較級感覚が身についていれば、growとかimproveなどからも、「時」を感じ取れる。first, second, thirdなどの序数、twice, … timesなどの回数・繰り返し、again, anotherなどの語でも、時間の変化が表される。

ということ。ハンドアウトには、それを端的に示す、教師にとって都合のいいパラグラフ、文章のみを厳選して載せてあります。そのうちの一つだけ。

1-9. Before Ann Sullivan came to our house, one or two people had told my mother that I was an idiot. I can understand why. Here was seven-year old girl who at the age of 19 months had become deaf and blind. And because I was deaf, I could not learn to speak. The few baby words I had known were locked in my mind. Struggling in a world of silence and darkness, I acted almost like an animal.
But this was before Ann Sullivan came to stay. She was a lively young woman with patience and imagination. As she was a born teacher, she dreamed of turning a deaf-blind creature into human being.
(旧旧課程Revised MILESTONE English Readers IIB, 啓林館)

これは、倉庫にあった旧版ではなく、谷本誠剛 『物語にみる英米人のメンタリティー』(大修館書店、1997年) からの孫引き。この本は「物語」という大テーマだけでなく、パラグラフというその「要素」を考えるヒントを与えてくれる良書でもあります。
今年度使っている『リーディング』の教科書も啓林館なのですが、この旧版の英文は引き継がれていない模様。となれば、「読み」に特化した科目が消える新課程では、いったいどんな文章を読ませようというのでしょうかねえ…。
とまれ、このヘレン・ケラーとサリバン女史の話しが、次のdescriptive writingへの伏線となっていますので丁寧に。

放課後は、体育館でエルゴの指導。いかに線が細いとはいえ、出力が女子並みではスピードは出ません。低レートでも全力で漕ぐ、というのは確かに難しいのですが、最初の10本と次の10本で漕ぎが変わってしまうようでは問題外の遙かソト。自分の身体がどう動いているのか、観察して知るには、「脳」がリラックスしていないとね。

遅めの帰宅。

  • ルイス=キャロル作 多田幸蔵訳注 『ふしぎの国のアリス』 (旺文社、1966年)

をパラパラと。これは旺文社英文学習ライブラリーの一冊。多読ブームの今だからこそ、この時代の訳注教材を振り返る必要があるように思う。

基本的に見開き対照で左頁が英文、右頁が対訳。頁が変わるごとに、英文和文ともに1から順に番号が振ってある。新たな頁でまた1から順に。途中の挿絵、写真。時折挟まれる風物など文化的背景の解説や蘊蓄。巻末には、作者・作品の解説。3回分のテスト (内容理解、語彙・語義・語法、和文英訳を含む)。*による重要度表示つきのかなり細かい英語索引、和文索引。

といった様相で、今風の多読テキストとは全くの別物。和文索引があるのにはびっくり。広告頁を見る限りでは、このシリーズは、19冊出ていたらしい。頑張って集めてみようかな。このコンセプトで、英教がやっていたような、日本の高校生向けのretoldを作ればいいのに。まずは、ライターを確保したり、育てたりしないとダメだけど。

山田穂の残り2合ほどでお燗をつけて晩酌。
最大収縮の後の最大弛緩。

本日のBGM: Modern Lovers (Garland Jeffreys)