「有難うさん」

岐阜から帰ってきました。
父の実家を訪れるのは初めて。
岐阜までのJRチケットを購入して、住所を頼りに斎場の地図をGoogle mapで確認。思いの外、最低気温が低い模様で、天候がどうなるか気になるところ。
母の葬儀の時はお寺で、父の葬儀の時は斎場で、通夜が終わった後、夜が更けるまで親族皆でその場で飲み、語らい、私はお香典の金庫番で、金庫を枕に床に就いたのですが、彼の地の通夜のしきたりがどうなっているか全く分からないので、郷にいれば何とやらで行くことに。鞄には、宮本輝編 『魂がふるえるとき』 (文春文庫) を入れておいた。
兄が一足先に岐阜入りしているので、様子を聞いて私は昼過ぎに合流。
往路の新幹線で読んでいたのは、

  • 川端康成 「片腕」 (昭和38〜39年)
  • 永井龍男 「蜜柑」 (昭和33年)
  • 武田泰淳 「もの喰う女」 (昭和23年)

名古屋で在来の特急に乗り換え、

  • 川端康成 「有難う」 (大正14年)

を2回読み終えたところで目的地の駅に到着。

喪主は、叔父の長男。私からすると従兄弟。娘婿の方に、迎えに来て頂いていました。深謝。
なんと、川辺は隣町といってもいいくらいで、車で20分程度で行けるそうです。
兄はともかく、私は叔父一家以外で岐阜に住む父の従兄弟などの親戚と会うのは、ほとんど初めてという状況で、会う人ごとに、

  • ○○さん (私の父の名) にそっくりやね。

といわれ、胸にこみ上げてくるものが。ここには、父のことを覚えていてくれる人がこんなにいるのだと。
おつとめを滞りなく終え、通夜の参列者が帰った後は、親族のうち数名が控え室に残り飲み明かし。朝になったら、ビールの箱が三ケースくらい空いていました。
告別式を終え、出棺では、父の代わりというわけではありませんが、棺を持つひとりに。
収骨、初七日の繰り上げ法要 (?) を終えたところで私だけ、失礼して帰山。
土日の両日ともに晴天。桜も満開で、犬山城など、地元のお祭りもにぎわっていました。
帰りは名古屋での乗り継ぎでかなりの待ち時間があったので、いったん改札を出て、腹ごしらえ。
少し買いものを済ませて、新幹線。
復路で読んだのは、物凄く時間のかかった

  • 泉鏡花 「外科室」 (明治28年)

あっという間に終わってしまう

  • 井上靖 「人妻」 (昭和25年)

読むのを楽しみにしていた、

  • 永井荷風 「ひかげの花」 (昭和9年)

そして、往路で読んだ、

  • 「有難う」

を再読。いいなぁ、これ。
大人にならないと分からない深みを持った世界が確かにあった。短編の良さを再認識。
駅前の駐車場で車に乗り換え、日付が変わる少し前に帰宅。

月曜日は新年度初の出校。始業準備を昼まで、その後、湖へと移動。約二時間の乗艇練習。
今日は、古典的な「ラダー (Ladder)」で技術的な課題を確認。
文字通り「梯子」のように、一定の時間や本数で、SRを上げ続けていくメニューです。SR22/24/26/28までのUT〜TRのセットとSR24/26/28/30↑のAT〜RPのセットをベースにフィニッシュ周りで課題の浮き彫りになったところを集中攻撃。メインメニューはSR28↑で5分X2セット。スクエアで2kmダウンをして揚艇。明日明後日は、2分オン・3分オフのエルゴメニューです。来週は、3分オン・2分オフに移行の予定。
さて、
はてなのriversonさんのブログで、気になる日本語の語法に触れていて、私も暫し考えていた。
コメントで書いた、歌手名を思い切り間違えていて、恥ずかしいやら申し訳ないやら。そうですよね、B&Bなら、ブレッド・アンド・バターですよね。湘南の風を感じさせる音楽ですから、都会的フォークのビリー・バンバンではありませんね。
ということで、その語法。

  • 散る (ちる)

という動詞で主語にくる名詞は?「花」か「はなびら」か?やはり、「咲く」のが「花」だから、「散る」のも「花」でしょうね。「花弁」というのは、「片・平」なのだから、「舞う」とか「降る」ものなのではないか、というのが日本語母語話者としての私の言語直観。
「散る」を、「まとまっていたものが、離ればなれになる」という意味で用いると考えたとしても、まとまっていた状態を「花」と認識しているのであって、「花弁」を集めたら「花」になるわけではないと思うのですが。今風の日本語は違うのですかね?
そんな、ことを考えていた帰宅時の車中で、ラジオから『花』が。作曲の滝廉太郎は知っていたが、作詞は武島羽衣とのこと。

  • 櫂の雫も花と散る

ですよね。
件の曲の方は、この「散る」を含む歌詞が、「桜の花びら散るたびに」とあるのだが、一本の桜の木全体でどれだけの花弁があるのかを想像して、英語の “Every time S+V, ….” というフレーズが頭に浮かんだ私としては、心がざわめいて仕方がありません。落ち着いて歌詞全体を読んでみると、フラッシュバックというか、モザイクというか、パッチワークというか、一貫した物語にはなっていないのですね。
良質の短編小説のような楽曲を作るアーチストは、今いないのでしょうかね…。

本日のBGM: I’ll only miss him when I think of him (Blossom Dearie)