蓼喰うよりも鋤焼き

2学期最初の「今月の歌」シリーズ。
高1は、Billy Bragg の”There is power in a Union”。
発音にとまどうところはあれども、テーマを考えると、King牧師、Severn Suzuki のスピーチと並行して扱うのには良かろうという判断。最近よく用いている、ホワイト修正テープで斜めに数本線を引き、その部分を復元させる方式。「繰り返し」と「対比」、そして「韻を踏む」という英語の歌詞の特徴を活かして、聴く前にできるところはやってしまう。語彙で、英国英語特有のものはこちらから若干解説して補足。ライブ映像をTVモニターから見せ、本当に独りでやっていることを確認してもらう。

高2は、昨年も使った、The Beautiful South の “The Table”。
3バージョンを適宜使い分けて聞き取り。主題の設定、ユーモア溢れる視点、歌詞の構成、表現・言葉遣いなどなど、彼らの最高傑作の一つと評価しているのだけれども、日本ではいかんせん注目度の低いアーチストであった。(彼ら自身のPVそのものが、この歌を茶化すかのような映像だけに、なかなか理解されないのも無理はないと思う。YouTubeを眺めていると、英国でのライブでは “Woman in the wall” のような曲でさえ、ファンは合唱しているのだなぁ。とはいえ、”Prettiest Eyes” みたいな曲をまたいつか書いてくれるとファンは思っていたのですよ。)
まず、「木を切ってどのように家具を作るのか?」という発問から。曲の冒頭、“a heart of very near wild oak” などの ”this table” の特徴を述べる部分で張った伏線を、歌詞確定時に辿らせる。
助動詞と時制のズレ、完了形と受け身と句動詞の合体ロボ、命令文+ or、知覚動詞+目的語+原形、など、高校英語の肝を徹底できるという副産物もある。
歌詞のサビの部分で、

  • Tables only turn when tables learn.

というわかりにくいturnの語法が出てくるので、ことわざの「一寸の虫にも五分の魂」を辞書で引き、

  • Even a worm will turn.

を確認させる。黒板にミミズの絵を描いて ”turn” の解説。

この表現、古くは、田中先生の『岩波英和』 (1958) で、「いかに卑しい身分のものでも、あまりに虐げれば憤る」という極めて真っ当な訳がなされている。柴田先生の『新アンカー英和』 (1988年) では「我慢にも限度がある」という補足。ISED (1942年) では、諺として、"even the meekest person will resist if oppressed long enough." 菅沼先生の『ショーター英英』(旺文社、1981年) では、"A worm will turn."で、"The meekest will resist if oppressed too long. "と簡明。今の英語では、The worm turns. とか The worm will turn. など個々の場面場面で、このことわざから生まれた表現のバリエーションも使われているようだ。MED (米語初版, 2002年) では、"the worm turns" に、"used for saying that someone who has been treated badly for a long time suddenly stops accepting this situation and becomes stronger" と定義を載せている。

普段洋楽を聴かない人も、歌詞検索サイトなどで一度じっくりと読んで欲しい。

高3は、「疑問文シリーズ」の入試問題演習。

  • 助動詞の番付表で一番位の高い力士が前に出て疑問文を作る。
  • 引き出したい情報は疑問詞とともにさらに前に出す。
  • 主語が疑問詞の時はそのまま。
  • 疑問文のための助動詞の語順の入れ替えは一文で一回まで。

という単純なルールの適用なのだが、

  • Do you know who he is?

はまだいいとして、

  1. What do you think caused the accident?
  2. How old do you think that man over there is?
  3. Where do you suppose we should eat out tonight?

などが壊滅的にできない模様。英語ネイティブも最近では、いわゆる間接疑問のあとの語順にブレが生じているけれども、文法を学ぶのであれば、まずは原理原則をおさえてからだろう。
上記、1. の英文であれば、

  • “Do you think the traffic jam caused the accident?” “No.”
  • “Do you think the heavy rain cause the accident?” “No.”
  • “Then, what do you think * caused the accident?”

という流れで基本文から疑問詞をくくり出す練習をしておくことが大切。(*は足跡の位置。以下同様)
2. も同様に、

  • “Do you think he is in his twenties?” “No.”
  • “Do you think he is in his thirties?” “No.”
  • “Then, how old do you think he is *?”

3. でも、

  • “Do you suppose we should eat out at Royal Host tonight?” “No.”
  • “Do you suppose we should eat out at Mishima-Tei tonight?” “No.”
  • “Then, where do you suppose we should eat out * tonight?”

という具合に、どの情報を疑問詞として引き出すのか、基本文を想定してみるのが、回り道のようで結局は確かな道。
今例文を書いていて、「三嶋亭のすき焼きがまた食べたいなぁ…。」と思っていたら、今晩の夕飯はすき焼きだった。和室に卓袱台を置き、ランチョンマットを引いて、箸を並べ、杯を用意して、では、いただきます!

本日のBGM: The Table (The Beautiful South)