♪一日一歩、三日で三歩、三歩進んで二歩下がる♪

今日の高3は、文整序段落完成。学習合宿で扱ったものより、やや難しい素材。「知性は遺伝する」話。一人一文担当で、音声中心のやりとりで順序を確認し、グループ間での比較を経て整序。詳細は教師の範読を聞いて確認。その上で音読。センターの過去問を解く際の、目の付け所は与えられたので、単なる過去問の答え合わせに終わることなく、英語力養成に寄与することでしょう。
問題は2年生。Dictoglossもどきの手法で導入。ペンを置き、全文を聞き終えてから、メモを書き出す。2回やってグループで情報交換。1文聞き終わってからペンを取り、書き出す。最後までいったら情報交換。次に、一人一文を与え、担当者会議で意味と発音を確認した後、それぞれがグループ内で読み上げ、それを書き取る。最後は、机の上に一文を拡げ、筆記用具を持たずに他の文を見に行き、覚えて帰ってきて自分のワークシートに書き出す。音読をして、スラスラ言えるようになったら、裏面に清書。
夏期休業中に「発音熟達度チェック」(島岡丘先生開発のもの)を与えて練習させておいたのだが、体育祭空けにビデオ取りすることを告知。授業の終わりに、「この段階でできていることと、今年度の終わりにもう一度やってできていることに変化が無ければ成績は上げられない。」と言う話をしたら、鼻で笑う輩がいて、激怒!特別クラスにいるにもかかわらず、授業に集中して、その授業でやっていることをできる限り身につけようという意識がないから、いつまで経っても進歩がないのだ。勉強をなめるのも大概にした方がよい。徹底的に釘を刺しておいた。
同僚の先生からは、「高3から受験レベルの物語文」の指導方法で相談を受けた。これは私も悩みながら試行錯誤の状態。一番いいのは、自分で物語や小説を書いてみることなのだろうが、時間が足りない。高1、高2レベルでの私の過去の実践例から一つ紹介、セルハイで読解を主として扱っている高校の資料から抜粋。他には、5分間ミステリーとか、2分間ミステリーとかの短くて、読者の持つスキーマに依存できないタイプの読解を課すことのできる素材を紹介。何か、いい指導法をお持ちの方、情報お待ちしています。
別の同僚からは、「教師がリスニング力を伸ばすにはどんな教材があるか?」と言う相談を受け、podcastingとか、DVDで字幕の出る映画でおもしろくて英語がわかりやすいものとか、あれこれ話していた。「やっていくうちに自然に身に付くものはないものか?」というdemandingな問いに対する直接的な答えは残念ながら持っていない。やはり、スキルを向上させようというのであれば、トレーニングの側面は消えないだろう。
さて、トレーニングと言えば、先日ブログのコメントで、

  • 英語を使えるようになるのも訓練なのか?
  • いつごろ(から)、英語を職業にしようと思ったか?

という少しタイプの違う2つの問いが寄せられたので、暫し考えてみたい。

まず、最初の質問。これは、「使える」というレベルと「訓練」の質とがかなり曖昧ながら、答えはYes.でしょう。一部の帰国子女・海外在住子女の言語獲得を除けば、ほぼ全ての外国語は訓練により習熟していくものであると考えられます。スポーツにたとえる人は結構多いのですが、野球の千本ノックをひたすら受けるというよりは、ゴルフの素振り、打ちっ放し、コースデビュー、大会参加、というように、よりdemandingな状況にさらされつつ、その前の段階の基礎を徹底して固めていくというような習熟をイメージした方がいいように思います。基礎の徹底、は必須です。タイガー・ウッズやアニカ・セレンスタムでもスイングをチェックするコーチが必要なのですから。
では、実際どのように訓練で英語が使えるようになるのか?という問いには、「使える」中身の記述を考えることが役立つと思われます。いわゆる、Can-do statements (CDS) です。
数多ある、Can-do statementsの中で、私は相変わらず、Canadian Language Benchmarksの基本的な枠組みを高く評価するものです。身近で単純化されたコミュニケーションの場面での言語使用から、やや複雑な状況での言語使用、さらには高度な言語運用が求められる状況まで大きく3つの段階を想定し、その中で、初歩的、やや発展的、充分な、流暢な、とそれぞれのスキルが習熟していく様子を4つのレベルで記述していく発想が秀逸です。決して発達段階がリニアに右肩上がりにはならないことをよく分かっているのですね。
(この枠組みの特徴は90年代の暫定版の方が顕著に現れていたと思います。現行の2000年以降版は、global standardを意識せざるを得ず、個性が薄れた気がします。)
先ほどのゴルフの例えで言えば、

  • 素振りの段階で、なんとか振れるレベル、かなりスピードと方向が安定してきたレベル、素振りだけ見ればゴルファーだとすぐわかるレベル、申し分ないスイングを身につけたレベル、と習熟してきても、実際にボールを打つ段になれば、なんとか当たるレベルのスイングとなり、一見技術が逆戻りしたかのような発達段階を示すものです。そこから、確実に前に飛ぶレベル、遠くにとばせるレベル、正確に距離をコントロールできるレベルというような習熟を見せるでしょう。では、実際コースに出て、いろいろなライで、さまざまなコースのレイアウトでボールを打つとなれば、それまでできていたはずのレベルではボールが打てない、コントロールできないなど、より高次の実力発揮が求められるわけです。

ここではスポーツのトレーニングの比喩を用いましたが、言語の運用であれば、「人」を相手にすることが多いので、「一人でもできる訓練」と「相手がいないと成立しない訓練」とでは異なる配慮が必要となるでしょう。

以下、Theoretical Framework Finalより抜粋しておきます。SLA研究の先進国であるカナダで、「成人の第二言語習得の自然な発達段階を記述するに充分なモデルは現在のところ得られていない」と言っていることは注目すべきだと思うのですが…。(ここから理論的枠組みはダウンロードできます→ http://www.language.ca/display_page.asp?page_id=257
2.4 The relationship between language development and the progression of the Benchmarks

  • The CLB scale does not claim to reflect the “natural” sequence of ESL development./The CLB is based on a theory of language proficiency rather than on a theory of second language acquisition: an adequate model based on a description of a natural sequence in the development of adult second language acquisition is not available./The CLB scale does not imply linear, sequential, additive or incremental learning/acquisition processes./Language learning and acquisition are not just cumulative but integrative processes./The CLB proficiency framework makes no claims as to when and how specific language features in the competencies should be achieved. Its focus is on description of the outcomes, not on the process and the timing to achieve them./The hierarchical structure of the Benchmark stages implies progressively demanding contexts of language use./Proficiency development is described as the increasing ability to communicate in progressively demanding contexts of language use (see Glossary - "demanding contexts of language use" for examples). Such contexts require increasing levels of quality of communication (e.g., accuracy, range, fluency, appropriateness and an increasingly more sophisticated relationship between function, form and context).

直接的な答えとはならなかったかも知れませんが、考えるヒントとなれば幸いです。
二つ目の質問。いつ頃から、仕事にしようと思ったのか?これは、大学2年生のときですね。大学の教科教育法でW先生の講義を聴き、「私がやらねば誰がやる!」とキャシャーンばりに意欲に燃えた次第です。学習者としての私のバックグラウンドは、過去ログ(http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20050307 から http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20050313 までの6回分)を参照して頂ければと思います。疑問点はコメント、メール等でお寄せ下さい。
今日のタイトルは「365歩のマーチ」から。では、ここでクイズです。
この原則に従って進んでいくとすると、365歩前進するためには何年かかる計算になるでしょうか?

本日の夕飯は秋刀魚。蓮根と水菜のサラダ。妻に肩と背中の整体をしてもらい、少し楽になる。
明日はゼロ限から授業。早起きします。

本日のBGM: The Climber (Neil Finn / One Nilより)