「涙がもうあふれちまって」

週末は本業。土曜日は午前中に代表合宿のトライアルを見る。パートナーは前日に続いてアテネ五輪代表選手。強風というに相応しいコンディションではあったが、前日よりもパフォーマンスは改善されていた。流石。前日の出来を見る限りでは今ひとつだったので、メールを送っておいたのだが、情報をしっかりと消化吸収できるようにはなってきている。今回の合宿トータルでは高い評価を得て、選考はクリア。3月以降の合宿に進めることになった。選手と個人的に少し話したときに、「先週見ていただいた時には良い感じはあったんですが、その後合宿中は自分の中でのエントリーのゼロポジションがちょっと分からなくなってしまって…」とこのレベルの選手でもまだまだ、technical precision comes and goesということか。迷ったら艇に訊くことが大切なのだが、まずは走らせないとしゃべってくれないのも艇なのだ。でも「まだまだ戦えるってことですね」という前向きな声が聞けて何より。
昼からは自チームのOB会の年度総会のようなものに続いて、卒業生の追い出しコンパ。総会では、最後に足かけ13年に及ぶこのチームでのコーチ生活の締めくくりとなる挨拶を。登壇する前に前監督から”Don’t cry.”と言われた瞬間から、もう危ない感じで、話し始めると涙で視界がぼやけてしまいました。追いコンは銀座のいつものお店で。最近卒業していった選手や海外からわざわざ参加(?)の若手OBなど盛り上がりも加速。最後は日付をまたいで合宿所に戻ってきました。みなさんお疲れ様。
吉右衛門、加藤剛を見る。帰省のためにチケット予約。
週が明けて、Acrosticは最終ラウンド。全グループに立ち会えてよかった。いままでのコンピュータ室とは変わって今回は普通教室でマイクなし。どのグループも良く準備していたようだ。発表に前後して「今月の歌」の練習。

  • 背中合わせ一人一文読み
  • 対面リピーティング

の様子をビデオに撮っておいた。音読バリエーションの指導にいつか使えるだろう。
明日で高2の今年度授業もフィナーレ。Best GroupとBest Poetに贈る副賞も考えておかねば。英詩の朗読、韻律などに関して解説を加えて終わりにしようと思う。日本語の歌詞や詩歌についても触れる時間をとっておきたいものだ。
帰宅後、

  • 鈴木主税編『私の翻訳図書館』(河出書房新社、1996年)

を再読。巻末の翻訳書関係ガイドは重宝だが、出版から10年で、このリストの中にも絶版が目立つ。なんとかならないものか。巻頭の中野好夫・大岡信「翻訳ということ」はもともと1980年の対談。読み応え有り。他にも清水幾太郎、田中小実昌、別宮貞徳、河野一郎、小島義郎、大岡昇平、池上嘉彦、柳父章、多田道太郎などなど、興味深いセレクションです。どこかで見かけたら是非一読を。収録作品のうち、池上嘉彦『ことばの詩学』から「翻訳の困難さ:その言語的側面」の冒頭を紹介。

  • 言葉というものはすでにできあがった思想に符号をつけるというようなものではないと言いましたが、日常自分にとってすっかり習慣となってしまっている母国語の枠内にとどまっていては、このことはそれほどはっきりと意識されないかもしれません。しかし、他の言語と接触し、母国語がそれと対比される機会があれば、そのことはたちまち明らかになってきます。翻訳はそのよい機会です。日常の翻訳レベルでもすでにそうですが、なかでもその言語での創造的な可能性が高度に発揮される詩的な言語の翻訳の際には、もっとも鮮明な形で現れてきます。

授業で詩を扱う意義を見直す人が増えてくれれば…。
本日のBGM: Sinky-York (ジッタリン・ジン)