祝祭

熊本遠征より帰還。
予想通りタフな合宿&レースとなりました。
30日は睡眠時間確保のため移動のみ。
明けて合宿初日は、なんと「霜注意報」。
自分の体調管理が大変重要です。
艇庫に行くと、続々と各地から選手団が集結、斑蛇口湖も活気を増してきます。
艇の積みおろしとリギングを済ませて午前午後とも乗艇練習。自チームから参加の選手は4X+に乗ると、ストサイ落ちの艇の傾きを生むので、少年チーム監督から1Xでレースに臨むように指示。ポジションの徹底とフェザーリングでのグリップの矯正で16kmの午前モーション終了。午後はスピード対応も含めて2時間ちょっと。午後になっても気温が上がらずカタマランの上は寒かったです。

2日目からはいよいよレース形式。
この合宿のサブタイトルが、

  • めんそ〜れ がんばれちょるる GW合宿

地元熊本をはじめ、大分、長崎、福岡、宮崎九州地区の強豪校、中国四国地区は広島、島根、愛媛。遠くは福井から、そして、今年インターハイ開催の沖縄と来年国体開催の山口で、選手総勢約200名とそのクルーを率いる、あまりにも熱く濃い指導者たちが集結しました。
指導者のスタッフミーティングで組み合わせ、役割分担、配置、諸注意。引き続き、選手全体でのミーティングでトラフィックルールと、レースの進行に関する指示。
班蛇口湖はジュニアの日本代表選考会も行われる2000mのコースなので、初日は2000mを2本。来月のジュニアに出漕することが決まっている選手は、正月に行われた「ウインターズカップ」に引き続き、1Xで出てその成長を評価するという狙いもあります。4X+、2X、1Xと艇種により1分から2分の間隔で次々とレースが行われます。1本目と2本目のインターバルは2000mを回漕して戻って、艇をスタート位置に並べたら、またすぐにスタートという感じなので30分空かないくらいでしょうか。高校生でも2年生だと、2000mレース初体験の選手もいて、このような条件下でペースを考えながらきちんと追い込むのは大変だと思います。その一方、全力で漕ぎ出したものの、その強度に耐えられない選手も出てきます。タイム集計に基づきランキング発表。この平均タイムが明日のレースの組み分け、レーン配置に使われます。
午後は、レースの評価を活かして、じっくりと練習。他県のチームに目をやると、シートチェンジやクルーの組み替え、などなど試せるものは何でも、という感じのところもあり。山口県選抜は4X+も1Xもそのまま。課題を愚直に。
この日の夜に、全参加チームの顧問・コーチによるミーティング。懇親会ですね。私の場合、本業こそ長いですが、高校チームの指導をするようになってまだ4年なので、顔に見覚えがあっても名前を存じ上げない方も多数。大分のS先生、O先生は、日体協のC級コーチ研修時代からのお付き合いなので自己紹介もそこそこに、本業談義。伝統校・強豪校を率いる方、異動で新天地でチームを作っている方などなど、情報を集めたり、交換したりするのではなく、この競技に対する熱い思いを語り、チーム・選手の冷静な分析を語り合う充実した会となりました。

3日目は、1500mを3本。
漕手の感覚としては、このレースが強度的に一番きついだろうと思います。初日に霜注意報が出ていたのがなんだったのかと思うくらいの陽射しで、気温は28度。
艇種も、漕手も速い順にレースを組んでいますから、前の組で、離されて最下位になると、次の組で水を空けてトップになったクルーとの入れ替えが待っています。生き残れる者が強い、というサバイバルレースの様相も呈してきました。案の定、2本目、3本目とリタイア続出。
男子の1Xでは、高校生に混じって、本県選抜の成年選手であるH先生が引率だけでなく、レースにも参加していて、当然のごとく毎回トップなのですが、その成年選手に食い下がるU高校の選手は、レース後、他の選手がクーリングダウンも早々に揚艇する中、自分からH先生にアドバイスを求めて1周4kmをさらに漕いでいました。
岸に上がってきた、H先生に尋ねると、

  • いやぁ、向こうから「お願いします」、といわれたら断れないですから。いいもの持ってると思いますよ。

とのこと。県外の選手がこういう機会を生かしているのだから、県内の選手ももっと貪欲になって欲しいものです。
午後は各クルー毎に練習。レースだけではなく、普段の各チームの練習を見る機会があるのは収穫です。女子1Xでは、昨年の全日本を高3で制した大分のA選手が成年から参加。当然のことながらこちらも全てトップタイムです。このA選手に食い下がるべくいい動きをしていたU高校の選手は、スクエアワークも含めて丁寧にかつ強く大きく、しかも、かなりの距離を漕いでいたのに感心しました。Y先生に聞くと、UTはいつも20kmとのこと。これが習慣となれば、強くなるのですね。男子4X+で常にトップタイムでゴールしていた、M高校のクルーは、チーム内の漕手の上位4人ではない、とのことでしたが、この競技に対してとても真剣に、真摯に取り組んでいることが外から見ていても分かるトレーニングでした。

最終日は、1000mを4本。20分間隔くらいで、生き残りをかけ、ガンガン行きます。気温は前日を上回る30度。今季初半袖ポロで、赤く日焼けしました。
そんな中、レースでは男女併せて、76クルー中6クルーが棄権。でも、本当に強いところは4本とも強いのです。4X+や2Xをバラして、1Xで出てきたりと、ちょっと前日までとの対戦相手とは異なり評価が難しい状況となりました。それでも自チームの1Xは、真ん中よりは上に位置できたので、初参加としては許容範囲ギリギリかと。
本県選抜の男子4X+は、順位こそ上下はありましたが、同じクルーで全レース完漕というのは最低限の目標クリアーでしょうか。ただし、「完漕」というと聞こえはいいですが、1レース入魂で完全燃焼、というのではなく各レースに均等にエネルギー配分をする無難な、安全策を弄していても達成できることでもあります。自己評価との摺り合わせがきちんとできるかが肝要。次は、全レースで追い込み、自分の殻を破ること、自己ベストを越えることを期待します。
今回の合宿を企画・運営してくれた九州、中国、四国の各先生にお礼。レースのスタート・呼び込み・計測・記録には、I先生はじめ地元九州の先生方が配置、遠くから来たチームの指導者ができるだけ水上に出られるように、との配慮で計3艇あるカタマランのうち、1艇を期間中優先的に山口県に貸して頂きました。おかげで、指導も映像記録もスムーズに行えました。深謝。
最終日のレースを昨晩駆けつけたOコーチに見てもらい、午後は山口県選抜各クルーとも技術と心身のチューニング。

揚艇後は急いで艇の積み込み。
昨年は1時過ぎに菊池を出て、約6時間とのことでしたが、今年は、午後も練習を見てもらったこともあって、4時頃に出発。
途中、ナビで何度も下道を促されましたが、結局関門海峡を越える橋もトンネルも一つなわけですからその合流がまた滞るだろうとの判断で、ひたすら高速。太宰府から福岡方面まで25kmの渋滞という情報だったので、その前の基山でいったんトイレ休憩し、その後は渋滞を堪え忍びながらSAに寄らずに家路を急ぎました。
選手を家まで送って、約5時間半。ICを降りてからの下道で、途中、ナビの地図が古いのでしょう、橋を渡れず迂回した分、ちょっと遅くなりました。私の自宅までは、そこから1時間ちょっとなので、現地から約6時間半で無事その日のうちに帰還です。流石に腰が痛くなりました。

妻と娘にレースの報告。娘は寝ずに待っていたのか、車の音で目覚めたのか。嬉しいものです。
A書店で頼んでいた、

  • Maria V. Snyder (2010), Inside Out, Harlequin Teen

が届いていた。これは、Twitterで知り合った、渡辺さんが「洋書ファンクラブ」で薦めていたもの。出版社名で、自分からはちょっと手を伸ばさないだろう部類の本。居心地のよい、自分の繭から踏み出す勇気といっては大げさだが、自分でもよくクリックしたなと思った。 いつ読めるかはわからないのだけれど。
シャワーを浴び、簡単に缶ビールで自分を労ってから、就寝。

明けて5日、子どもの日も快晴。やや風強し。本業も今日は完全オフ。洗濯日和です。
録画予約をしていたと安心していた『外事警察』の一挙再放送が、もののみごとに失敗。ちょっと落胆。DVD買おうかね…。
合宿の合間に読めたらいいな、と思って持って行った本2冊は往復運搬のみで終わりました。

  • 長谷川潔 『日本語と英語 その発想と表現』 (サイマル出版会、1974年)
  • 長谷川潔 『日本語から見た英語 その類似と異質』 (サイマル出版会、1976年)

ということで、連休の最後に自宅で読んでおります。
内容もさることながら、引用参考文献のリスト、和・英の語句両方から引ける索引など、この時代の書籍の良質さというか、書き手、作り手の良識をあらためて感じた。
前者から引く。

  • 英作文、特に和文英訳をやっていて、つねに気がつくことは、いかにも日本語的な表現で、どうにも英語になりかねる表現にぶつかると、かなり達者に英語を書ける日本人でも、なんとなく異和感のある英文に訳してしまうことです。しかもそれらのほとんどが、和英辞典を丹念に調べてきた、いわゆる文法的にはかなった英文なのに、英米人が書く文章とはどこか違うのです。/ 日本人が英語で文章を書く場合、和英辞書がどうしても必要なことは、今さらいうまでもありません。しかし、和英辞書に記載されている日本人独特の表現の訳語が、とかく英語らしくないのはどういうわけなのでしょうか。/ 一つの理由として考えられるのは、和英辞書でありながら、原点を日本語におかないで、英米の文学作品や、辞書、随筆、論文などからの例文を無理やり日本語にあてはめて、訳語として記載しているからでしょう。/日本語らしい日本語を、英語らしい英語に翻訳するためには、英語の発想からでた英文に原点をおくよりは、むしろ私たちの母国語である日本語をよく分析して、それに相当する英語表現をさがしだして英訳するほうがよいと私は考えるのです。(まえがき、pp.2-3)

どこから読んでも得るところ大なり、の本なのだが、私が興味を引かれたのは、

  • 5 擬声・擬態・擬情語の比較 (pp. 184-223)

後者は、2年後に刊行された続編ともいうべき書だが、こちらでは、

  • 4 発想と表現からみた英語の文型 (pp. 135-198)

が勉強になった。例文の多くは、日本文学の英訳から採られているのも前著と同様である。

日本語の発想と英語表現、英語らしさに関する、私の頭のチューニングも済んだので、GTEC for Students公開会場テストの優秀賞受賞作品決めに取りかかりたいと思う。

本日のBGM: Carnival 2000 (Prefab Sprout)