Can you help me?

文部省は大学に対するコントロール権を手放すことはまったく考えていません。ただそれは露骨に強権的に行われるよりも、いままで以上にもっと砂を噛むような過程として行われるというだけです。「改革」のなかでも非常に曖昧なやりかたで行政指導が行われていますが、まじめに対応すればするだけ、ある種の「カフカ的」状況に追い込まれます。ある大学が「改革」のプランを持っていって、文部省に行く。まだ若いキャリアにどうにか会ってもらって説明をします。かわいそうになるくらい説明に行く教官はぴりぴりしていて、なんでもかんでもが向こうのシグナルに見える。わずかな時間でこちらのプランを示して説明しても、返答も腹芸みたいなものが含まれていますから明確な答えは出てこない。それでも、たまに行政の隠語でいう「サウンド」というのが来るわけです。この方向での改組プランは、どうも向こうは見込みがありそうと考えてくれているらしいとか、これは見込みがなさそうだとか。それで方向が誘導されていきます。いくら現状をきちっと分析した改革プランを持っていったところで、それをこちらに自主的に決定させてくれるわけではないのです。ただひたすら門前払いが続きます。それなのに、ではどうしたらいいと考えているのかというと、それはそちらで自主的にお考え下さい、というだけです。自由に、自主的に、個性的にやって下さいといいながら、持っていくものについてはきちっとそこでフィルターがかけられています。(岩崎稔「『改革熱』という病と知の自立」、『現代思想』1999年6月号、青土社)
「文部省」という名称でもわかるように過去の話だ。7年前の特集からの抜粋。当時、私は高校の進路進学担当のメインをしており、「進路通信」のようなものを発行していたのだが、その時、この抜粋を生徒・保護者向けの通信に敢えて載せた。その当時の自分の高校が置かれている状況と重なるものをそこに見たからに他ならない。独法化に際しての大学に関連した騒動と簡単に片づけてはならない。
今回の「高岡南高校での必修単位未履修生徒大量発覚」という報道に端を発する「問題」で、メディアはこぞって現在の高等学校が置かれている状況を批判的に報じている。「生徒は被害者だ」というのはあまりにも短絡的な視点だろう。無責任な報道には憤りを覚える。指導要領に関する「世間」の理解のなさはしょうがないとしても、週5日制実施にあたって、カリキュラムを策定するためにコマの奪い合いが起こるだけでなく、公立高校でも学校によっては週当たり32単位を超える設置が認められており、学校間格差を生んでいるというようなことは世間に知られているのだろうか。

今回、騒動に巻き込まれていない東京都の例を見てみよう。
東京都立八王子東高校 http://www.hachiojihigashi-h.metro.tokyo.jp/
東京都立日比谷高校 http://www.hibiya-h.metro.tokyo.jp/pdf/17keiei_houkoku.pdf
東京都立国立高校 http://www.kunitachi-h.metro.tokyo.jp/

八王子東では週当たり34単位の授業が設置されている。週5日で単純に考えると、7時間授業が4日、6時間授業が1日という計算。
日比谷高校では週当たり自由選択履修者は36単位、そうでないものは35単位。教育課程表を見ればわかるが、高2では、自由選択科目を選択すると、週当たり39単位となるので、週5日で考えると、8時間授業が週4日、7時間授業が週1日という時間割となる。
どうですか?8限まで授業してたら、課外活動ができないでしょ?それ以上に、教員の勤務時間はどうするのか?ってことになるはずなんですよ。ではどうやって活路(抜け穴?)を見いだしているか。

  • 「総合的な学習の時間」を集中講義や、行事と抱き合わせで認定する。
  • 1単位時間を50分ではなく、45分でも認定する。休み時間を短くして1日7時間授業を組んでも終業時間が遅くならないように工夫する。

こういう学校は実質的に教育委員会の主導で「改革」を進め、数値目標などを設定しているのである。都立国立高校のサイトの中で、「進学指導重点校」の指定を受けるにあたっての校長の文書を読むことが出来る。(http://www.kunitachi-h.metro.tokyo.jp/8shingaku/oshirase.html

高岡南高校はある意味「マジメ」に週当たり32単位でのカリキュラムを組んでいた。上からの「サウンド」の届かない学校は藻掻きながら沈み続けていくしかないということなのだろうか…。

今日は、朝は5:30から本業。夕方からFTCでお茶の水へ。若手の熱気に感化され、2次会まで。H先生、A先生と語らう。終電ギリギリで帰宅。明日は採点で終日を費やす予定。
本日のBGM: I love the sound of breaking glass (Nick Lowe)