高3ライティングは遅れていたクラスの「ことわざ」リライトから。すでに前時の終わりに、もう一つのクラスのフィードバックのハンドアウトを配ってあったので、それと合わせて、このクラスのフィードバックを配布。前日の段階で、約30人のドラフトを2時間強でチェックして、その後ハンドアウトを作成。計4時間弱の作業時間。今年は時間割の関係で曜日がずれているからまだいいものの、昨年度は同じ曜日にコマがそろっていたので、この作業だけで6時間以上が費やされていたのだ。今年はまだ楽。今日のクラスから1例抜粋。
Sample J
- “Yudan Taiteki” is one of the most common Japanese proverbs for Japanese. The literal meaning of this proverb is that 1. carelessness is a greatest enemy. We generally use this proverb 2. when someone is carelessness about something. For example, when the strong basketball team has a game with 3. the weak team, if the stronger one 4. carelessness about the game and cut corners in the game, 5. the strong team lose in the game. The lesson this proverb teaches us is that 6. if you carelessness about something, you 7. couse unexpected failure, so don’t be off guard 8. even if it is trivial things.
- 最上級だから、the。
- someone, somethingともに曖昧すぎる。具体例は具体化せよ。何にでも当てはまってはダメ。品詞の混同に注意。Carelessnessは名詞。形容詞はcareless。ここでは文脈からいって、too carelessとでもする。
- weakerと比較級を使うか。the apparently weak team 「見るからに弱そうな」など工夫せよ。
- andのペアは何と何?品詞のミスに加えて動詞が欠落しているので読み手が推測しにくい。 the stronger team was too careless about the gameとするか、 the team did not do their best in the gameとでもする。Cut corners は角を曲がるときに直角ではなく、丸く曲がる → ずるをする;横着するということだが、ここでは不適切だろう。
- lose の他動詞用法を確認。ここでは even the strong team will [would] lose the gameとでも言葉を補うべきところ。
- 品詞のミス。ここまで繰り返すと、瀕死…。
- 綴り字。 原因となる;引き起こす = cause ということか? failureとのコロケーションを確認。If , then の論理だが条件だから、主節は助動詞があった方がよいだろう。6.と合わせて考え直せば、 If you are too careless about something that you are very good at, you will suffer unexpected failure. などが適切か。具体的な名詞、動詞を文脈からあぶり出す苦心を!
- it は単数。では何を指すのか?the goal の意味? what you desireとでもいう内容?trivial things は複数で矛盾?6. 7.と合わせて考えるべし。if you are too careless before you reach the goal, you will suffer unexpected trouble. So, don’t be off guard even if the goal is just around the corner. または、… even if the path to the goal seems easy /… until you reach the goal などの具体的な表現と比較せよ。
というようなフィードバックも参考にして、自分のドラフトを書き直すわけである。自分と同じことわざを選んでドラフトを書いていた生徒が他にも最低一人はいるので、比較しても良いのだ。最終の自己評価コメントから一部抜粋。
- 自分自身よくことわざとか知らないので、ただでさえ難しいのによけいに大変でした。やっぱり使用場面の適切・不適切が気になります。
- 和英辞典を簡単に使うべきではないと思った。
- 具体的に何かを書く、ということが意外と難しいと知った。
- it やthemを具体的にするとより説得力が増した。
- somethingなど明確でないものを多く使ってしまっているので減らすよう心がけたい。
- 「型」を知っていると筋道が立てやすく流れのある文章が書けた。言葉の微妙なニュアンスをもう少し理解したい。
- 3つのチャンクを押さえれば、言葉を言葉で説明するという難しい定義文も書けることがわかった。
高2はグループ課題で提出されたパラフレーズの解説。2学期になって難易度が上がり、授業についていくのがしんどくなった生徒にも配慮して、これまでの流れや、授業の大きな目的、活動と活動の間の伏線、底流となるテーマのつながり、グループ活動での留意点などを伝える。今回は担任の先生、英語科主任の先生のお手も煩わせているのだが、結局は教室で、教師と生徒の関係で解決するしかないことなので、まずは考えるきっかけを提供。これで即相互理解とか信頼関係とかが出来て即解決するとは到底思えないが、お互いの接点、結び目ができたことの確認からリスタート。来週月曜日でテスト前最後の1コマなので総まとめの予定。
某TV局で爆笑問題の太田光が、某教育再生会議のメンバーに「あなたは教育というものを過信しているように見受けられる」と切り込んでいたのを見て、昨日の「英語教育にもの申す」の倫太郎さんとの会談を思い出した。仕事がらみの話がメインだったのだが、教育について胸襟を開いて語れる人がいるのは、今ではとてもありがたいことなのだ。
同僚のK先生とも話したときに話題にしたのだが、今や「世間」が教育や教師に期待することというのがオーバーフローしている。極端な対比で言えば、
- 自分の子どもにはいじめの被害者になって欲しくない→教師はうちの子どもの発するサインを見逃さないで!
- 勝ち組に入れるように良い学校に行かせたい→教師はもっときちんと授業をして、うちの子の学力をしっかり伸ばして!
というのを両方突きつけられて、公立の小中学校の先生はどうすればいいのだろう。読売・朝日・毎日などの全国紙では、社説や1面下のコラムなどで、教育の理念・理想を語り、産経に至っては「ダメ教師を早く辞めさせろ!」というような印象を振りまいている。一方でそうしておいて、他方、週刊誌・月刊誌では、
- 偏差値50以下のお買い得な私立高校はここだ
- 私立にまけない公立中高一貫校はここだ
- 社長を輩出する高校ランキング!
- 就職に強い大学ランキング!
- 東大・京大合格者数高校ランキング!
などと競争を煽る取り上げかたをする。
教育は完全に市場であり、教育は投資であるとしか捉えられていないところに問題があるとは考えないのであろうか。現場の教員の疲弊感、閉塞感、手詰まり感、諦観という視点も合わせてメディアに乗せようものなら、「そんなのは一般企業では当たり前のことだ」と一喝、一蹴される。これは、昨今の公務員バッシングでも同じ構造のように思う。
私が高校生だった頃の話を。何も、当時の教育を美化するつもりはない。英語の学習の一環として、「教材としてつくられた」ものではなく、普通のアメリカ人、俗物が読む雑誌をいくつか読もうとしていた時期がある。ジョークも理解できなきゃ、とナショナル・ランプーンとか、月刊のPlayboyを読んでいたこともある。Playboyはグラビアやパーティジョーク以外にも、著名人のインタビューや、結構マジメなコラムやエッセイが載っており勉強になった。ある月のエッセイで、当時のアメリカの少女が被害者となるレイプなど性犯罪に関しての論考があった。マジメに問題の原因や世間での議論の趨勢をくくった後での、結論でのいなし方が今でも鮮明に記憶に残っている。(もっともその時の英語表現自体は忘れてしまったが…)
- そんなことをいうのだったら、いっそ、10代の女の子の存在そのものを法律違反としてしまったらどうなのだろう
週末は本業のイベント。週明けまで更新はお預けでしょうか。
本日のBGM: Renaissance Eyes (Don Dixon)