虹を待ちながら

春雨というにはあまりにも寒い天候の中、強化合宿に行ってきました。
0コーチを車で湖まで。車中での雑談で印象に残ったのが、「ゆる」の話し。

  • 緩めることで、出力が劇的に上がるとか、技術改善に直結するということではなく、いかに「緊張」によって「自分の体の持つ本来の動き」が損なわれているか、に気づくこと、いったんリセットする感覚を持つことにより大きな意味がある。多くの選手は、その感覚を知らないままハードなトレーニングをし続けているから。

オンとオフ、と口でいうのは簡単だけれど、実際に実現するのは大変なのです。
我がチームの選手は補講や追試で充分に乗艇ができていなかった分を取り返して余りある出来で、久々に褒められる内容。前日に国体覇者のH選手の漕ぎをしっかりと間近で観察したのもプラスになりました。
One session が約90分。片道の中盤で10本程度のスプリント。他チームの上級生に一人抜かれただけで、あとは終始高い艇速を維持して漕ぎきったのは、大きな進歩でしょう。レースペースに繋がる予感を持たせてくれました。
技術的には、この冬場からずっと課してきた、one by one (スクエアとフェザーとを1本ごとに交互に漕ぐ) と、シート前1/2 lengthで5本ぶら下がり、1本full lengthの効果がようやく出てきて、エントリーからの初動は、参加選手中最も精度の高いものとなっていました。後はとにかく、パワー。セッティングが決まり、ファイナルの落ち着き先がはっきりしてきたので、強く漕ぎ続けることで以前よりは筋力はアップするでしょう。下半身の一層のパワーアップは確かに必要なのですが、レッグプレス系のレジスタンストレーニング種目を取り入れる際には、深く畳んだところで「タメ」を作りすぎないように慎重にプログラムを組みたいものです。連続のBox jumpをやりたいのだけれど、手頃な高さのものがないんだよね。
とにかく、雨に打たれた合宿で、桜のほころぶ陽気が恋しい二日間でした。

進学クラスの春期課外は、新年度に向けての心構え、新教材の確認といった当たり障りのないものから、学級文庫の活用法、さらには今春の卒業生のうち成功例・失敗例を振り返る、というような内容。
新年度の教材内容や選定に関して、いくつか気になるところを。
高2 「ライティング」では、検定教科書として 『ジーニアス・ライティング』 (大修館書店) を選びました。これは、完全にTM保存のためです。補助教材として、阿部一・浦島久『コーパス口頭英作文』 (DHC)、柳瀬和明『日本語から考える英語表現の技術』 (ブルーバックス) を使用します。この教材での小テストも追試も再試もやりません。やるならもっと別のテストで英語力とそれを下支えする力をみることになるでしょう。
辞書は『エースクラウン英和』に続いて、『ウィズダム英和』 (三省堂) を購入。これは、語法対策というよりは読解での未見の語彙対策という感じか。どうせ高3で必要なのだから、もう今買っちゃえば、というくらいのものです。
「リーディング」では、最初、教科書以外に、K書店の某教材が中学既習事項の英文で書かれているということもあり、授業ではバラで使用しディクトグロスをするつもりで書店を通して注文していた。ところが教科書販売の前に書店から、「出版社が小口のロットではバラ納品は不可と言っていますので、他のものに変更しますか?」といわれ、ディクトグロスができないなら使う意味がないので止めることに。中国地区、さらには本社の営業担当の方とも、注文を受け付ける条件についてあれこれお話させていただき、「今回の対応は非常に残念です」と伝え、今年度まで使っていたK書店の教材を全て取りやめにした。もう、おそらく二度と私が選ぶことはないだろうと思う。今回の私のケースで、現在この出版社のサイトでは、「バラ納品は○○部から受け付けます」という但し書きが全てに入るようになった模様。新たな被害者が出ないことだけがいいことですね。

ということで、高1で買わせていた文法の総合本は止め。美誠社の『ブレイクスルー』も候補にしていたのですが、今のところ、決定したものはありません。入学者の英語力と相談して年度途中で何か必要なら買うことになるでしょう。
高3の演習系の科目は、読解でK書店のものを2年間使っていたのですが、これも取りやめ。いいずな書店に換えました。あんまり変わった感じがしないけどね。リスニングとリーディングの底上げに、長沼& 河原コンビによる、『L&R デュアルト英語レーニング』 (コスモピア)。これは、現時点で日本で唯一のボトムアップ処理を鍛えることができる教材なので使わない理由がありません。とりわけ、テクストタイプのバランスが良いのです。文法語法演習は『アップグレード改訂版』 (数研出版)。この分野は、去年から数研で同じですが、今年は改訂もされているので、まあ妥当な選択かと。本当は、『シリウスジュニア』 (旺文社) が使いたかったのですが、絶版ではね…。
めぼしい教材はこんなところでしょうか。
で、肝心の講習はというと、
高1 (新2年) の講義は、『新クラウン英文解釈』 (三省堂) から。基本文例。いわば「技練」ですな。
高2 (新3年) の方は、学年末試験の記述問題やり直し再提出と更なるダメ出し。関係副詞はなんとかなったようだが、詰めが甘い。beforeの前後関係の自然な語順での処理はまだまだ理屈が分かっていない模様。in such a manner の具体化は、実感として言葉を読んでいない欠点が浮き彫りに。3年になる前に全部片づけて下さい。
その後、3月残りの1週間で終わらせることのできる教材を各自が学級文庫の中から1冊選んで直ぐにとりかかるという課題。宝の持ち腐れは私が悲しむだけで済むけれど、早く消化吸収しておかないと、新2年が使うようになって、肝心な時に使えないという事態になるので覚悟を決めて取り組むべし。

先日の日本英語教育史学会に参加した折りに、高梨健吉氏の訃報を知った。江利川先生のブログで学参のレビューが連載され、高梨氏の本も自分の家で何回も読み返していたところだっただけに、クリシェではあるが「巨星墜つ」という言葉が浮かんだ。学会の方々の落胆はいかばかりか。謹んで哀悼の意を捧げます。
今回の広島での例会参加は自分でも慌ただしい日程の中、ゆっくり皆さんとお話しすることもできなかったのだが、来年度からは関西方面での実施ということで、3月の広島例会も今年が最後とのこと。節目となる回の会に参加できたのは幸運だったのだろうと思う。

本日のBGM: Ballet for a rainy day (XTC)