if memory serves

新年早々、とんでもないニュースが舞い込んできました。
こちらが3日のSkyの速報。

BREAKING: Explosions and low-flying aircraft heard in Caracas, Venezuela's capital


速報:ベネズエラの首都カラカスで、爆発と低空飛行の航空機の音が聞こえた

  • まさか!

と思ったのも束の間、次々と衝撃の展開に。
こちらが4日のCBS。

After months of preparation that included building a replica of Nicolás Maduro's compound and studying his daily habits, U.S. forces arrived at the Venezuelan president's residence in downtown Caracas just after 2 a.m. local time Saturday.
Here's how the U.S. captured Venezuelan leader Nicolás Maduro.


数か月にわたる準備の一環としてニコラス・マドゥロの居住区のレプリカを作り、彼の日々の習慣を研究したのち、米軍は土曜日の現地時間午前2時過ぎ、カラカス中心部にあるベネズエラ大統領の私邸に到着しました。
米国がベネズエラの指導者ニコラス・マドゥロをどのように捕らえたのか、こちらで解説します。

このCBSの記事では “capture” という動詞を使っているのですが、この「ことば遣い」に関して、こんなツイートが回ってきて驚くやら呆れるやら。

BBC journalists have been banned from describing the kidnapped Venezuelan leader as having been kidnapped.
The BBC News Editor has sent this to BBC journalists.


BBCの記者は、誘拐されたベネズエラの指導者を「誘拐された」と表現することを禁じられています。BBCニュース編集長がこの方針をBBCの記者に送付しました。

そのツイートの写真を転載。

https://pbs.twimg.com/media/G95woD9XMAAp1DY?format=png&name=medium

昨日の私のツイートがこちら。

もう、底が抜けたとか、タガが外れたとかじゃないレベルで事が進む国がアメリカ。
ルールは全て自分で決めるんだから、他の誰も止められないし、咎められないよね。

この元記事は引用しません。

  • 英語教育目的論

をテーブルを囲んだ有識者が議論している間に、日に日に世界の現実の方が悪くなる (inspired by 佐野遊穂) 一方なのでは?という気がします。

私としては、もう多くは期待していないので、自分に出来ることだけを続けていくだけです (inspired by 佐野元春)。

CBSからは、こんな明るい話題も提供されてはいるんですよ。
フィギュアスケート世界女王、米国のアリサ・リウ選手のインタビューです。

Alysa Liu: The 60 Minutes Interview
youtu.be

Transcriptはこちらから。

www.cbsnews.com

ちょうど今、noteでも公開している「話法のレファレンス」の元となる「私家版」の改訂をしていて、そこで取り上げている項目に go や be動詞+ like があるのですが、 そのうち、

  • be like , “引用部”

の例がいくつか出てくるので採取しました。

  • 🎶どれを選んだかは内緒なのさ🎶 (inspired by 小沢健二)

CBSから、もう一つ。
今度は悲しいニュース。

Ohio police release video of person of interest in killing of dentist and his wife
www.cbsnews.com

報道見出しは限定詞省略語法など、自分の英語表現のモデルとしてそのまま使うには面倒ですけれど、(the) person of interestは「容疑者」「重要参考人」の意味で事件報道では頻出です。

記事本文から、「気になる語法」を含むこの一節をお読み下さい。

In a statement released by the family last week, loved ones described Spencer and Monique Tepe as devoted parents and partners whose lives were centered on service, family and community.

私が何処を気にしたか、おわかりでしょうか?

  • service

です。
この英文をDeepLに和訳してもらうと、初手ではこうなります。

先週家族が発表した声明の中で、愛する人々はスペンサーとモニーク・テペ夫妻を、奉仕と家族、そして地域社会を中心に人生を歩んだ献身的な親でありパートナーであると述べた。

こちらはKagi訳

先週、遺族が発表した声明で、親族や友人はスペンサーさんとモニーク・テペさんを、奉仕、家族、地域社会を人生の中心に据えた、献身的な親であり伴侶だと表現しました。

Google翻訳だと次の通り。

先週、家族が発表した声明の中で、愛する人たちは、スペンサーさんとモニーク・テペさんは献身的な両親であり、パートナーであり、その人生は奉仕、家族、そしてコミュニティーを中心にしていたと述べた。

どの自動翻訳も、serviceを「奉仕」と置き換えています。

私が気になったのは、center on する対象としての要素の列挙の整合性、つまり「奉仕」「家族」「地域社会」という具体例のレベルのつじつまが合っているのか、というところです。
この訳語で並べてみる限りでは、「奉仕」だけ浮いているように感じられるのです。

このserviceとfamily とcommunityという3つの要素は、tribute(s)でしばしば見聞きする組み合わせです。
次の追悼の言葉をお読み下さい。

Condolences to the Family of Trevor Lloyd Samuels
Our deepest condolences go out to the family and loved ones of Trevor Lloyd Samuels during this heartbreaking time. Losing someone so suddenly, especially a man who dedicated his life to service, family, and community, is a pain no words can fully ease.
www.facebook.com

DeepL訳だとやはりserviceは「奉仕」となります。

トレバー・ロイド・サミュエルズのご家族へのお悔やみ
この悲痛な時を過ごされるトレバー・ロイド・サミュエルズのご家族とご親族の皆様に、心よりお悔やみ申し上げます。突然の別れ、特に生涯を奉仕と家族、そして地域社会に捧げた人物を失う痛みは、言葉では到底癒やせないものです。

元記事はこちら。

Retired Jamaican Correction Officer Killed in Queens Days Before Trip Home
primenewsplus.com

CBSの動画もあります。

68-year-old father of 5 struck, killed by moped driver in Queens
youtu.be

この2つの例ともに、「追悼」文脈で使われていますが、serviceはどのような意味で用いられているでしょうか?
serviceにはさまざまな意味がありますが、自動翻訳では「奉仕」という解釈です。
しかしながら、もし「奉仕」や「献身」という訳語をあてるのであれば、当然、「誰に対して?」、「何に対して?」という対象への言及がないと違和感を覚えます。
そして、要素の列挙で「家族」や「地域社会」という具体的なものと並置されるのでは、全体の意味が整合しないように思えます。
「奉仕・献身」の対象が「家族」や「地域社会」という解釈は明らかに間違っているでしょう。

ここでは無冠詞の単数形ですから「不可算」の扱いだと考えられますので、不可算での代表的な意味は次のようなものとなります。

1. 軍務(Military Service) や公務 (Public Service)を指す
   軍隊や警察あるいは官公庁などの職務に従事すること、つまり「国や公のために働くこと」そのものを指すと考える。
→二例目の “correction office” は刑務所などで働く看守や矯正官ですから、当てはまりますが、一例目の歯科医師とその妻には当てはまらないでしょう。


2. 社会貢献やボランティアを指す。
→要素の列挙で “community” が出てきますから、意味の重複を避けるためにも、”community service” とは別の内容を表す訳語の工夫が必要になります。この意味でserviceを「社会貢献」とするなら、communityの方の訳語も再考が必要でしょう。


3. 宗教的奉仕 (Religious Service)を指す
→morning serviceは「朝の礼拝」ですから、宗教的活動を欠かさない人だった、という意味で解釈できないわけではないですが、その意味であれば、形容詞のpiousとか名詞のpietyを使えば十分という気がします。

今回、私が取り上げたservice / family / community という具体例のレベルが整合するためには、それぞれの語の果たす役割、何を代表しているのか、というところを考える手間が必要でしょう。

service →「公的な活動」 →publicな貢献。「公務」に限らず、仕事を含め、広く、見知らぬ人を含む他者、世の中の人の役に立つ活動を指す。

family→「私的な活動」→パートナーや親や子といった愛情の対象に対して、privateな役割を果たすことを指す。

community→「地域社会での活動」→自分が暮らす近隣の人 (= community) との関わり、生活の基盤となる人とのつながりを指す。

のように捉えて初めて、3つの具体例の意味が整合するように思います。

先の2例は追悼文でしたが、次の記事はご存命の方たちを讃えるものです。

The Kobayashi Brothers: A Legacy of Service, Medicine, and Community in Colorado
ccoe.us

その記事の中から、”service, family and community” を含む一節を取り上げます。

Leading by Example
The Kobayashi brothers’ careers are filled with peak experiences—life-saving surgeries, humanitarian missions, and years of mentorship—but what truly defines them is their collective commitment to service, family, and community.

上述の観点を活かして、訳してみましょうか。

模範となって導く
小林三兄弟の経歴は、救命手術や人道支援活動、長年にわたる後進の育成といった輝かしい経験に彩られている。しかし、彼らを真に定義づけているのは、社会への貢献、家族、そして地域での絆に対する、三兄弟に共通した献身的な姿勢である。

文脈におけるserviceの語義を確認しましたが、同時にcommunityの語義にも光を当てることにもなり、考えた甲斐がありました。

本日はこの辺で。
本日のBGM: Complication Shakedown (佐野元春 & the Heartland)

open.spotify.com

※2026年1月8日追記:
この日のタイトルで使っている成句 "if memory serves" にはさまざまな変種があります。
ざっくりと「文頭縛り」で、NOWとCOCAで検索してみましたのでご覧下さい。
まあ、慣用表現全般に言えることですが、「英語ネイティブはこう言う vs そうは言わない」言説も慎重且つ丁寧に対応することが肝要です。