今日から10月。
2024年がもう4分の3終わったことになるわけです。
ソーシャルメディアのtwitter (今ではX)では相変わらずというか、懲りずに「英語そのもの」の情報を発信していますが、反応は疎らです。あまり主語を大きくするのもどうかとは思いますが、日本は学生、社会人に関わらず「英語に取り憑かれたように学ぶ人たち」が多い筈なのに、「英語そのもの」に興味関心のある人が少ないことに驚きます。
最近の話題。
どんなテキストを使ってもちゃんと教えられるのがプロ、とか嘯く人がいるが、例えば教材に
— Takashi “即時停戦” Matsui (@tmrowing) 2024年9月30日
「このクラスの3人に1人がパソコンを持っている」という意味で
one out of (every) three students ... has
しか示さないのは勘弁して欲しいんですよ。
まず当世PC所持率、そしてout ofとinの選択の問題。 pic.twitter.com/gW8K4trJar
こちらで整理しておきましょう。
- どんなテキストを使ってもちゃんと教えられるのがプロ
とか嘯く人がいるが、例えば教材に「このクラスの3人に1人がパソコンを持っている」という意味でone out of (every) three students ... hasしか示さないのは勘弁して欲しいんですよ。
まず当世のPC所持率とその評価をどうするか、そして前置詞out ofとinの選択の問題が絡んでできますから。
この「所持率」はこちらの調査から引いています。
t.co
和文英訳の課題としての「日本語表現」としての適否も考えないと。
そして、前置詞の選択問題。
良い辞書を手元に置くことが、頻出問題集や学参に依存しない英語学習の第一歩でしょうか。
『ジーニアス』の語法注記にあるように、取り出す分子の数がoneのときは前置詞 in が優勢。
Ngram Viewerで極端な例でざっくり検索
- one in/out of ten people
- nine in/out of ten people
全体
米
英
私が自分で教える際には
- 「前置詞はout of が汎用性が高い。inも使えるがoneの時以外は稀」
ではなく
- 「oneの時はout of よりもinが使われるので注意したい」
と強調しています。
ケタ違いとトリプルスコアって、随分違いますよね?
ことばは生き物なので、「…なんて言わないよ絶対」ということほど断言が難しいものはそうそうありません。
それでも、現時点での
- 通例
- 優勢
はあるのでね。
前回のエントリーで取り上げた「…に関する」に対応する英語表現では、
- relating toとrelated to
のように-ing形でも-ed/en形でも英語として認められる語句があることを示しました。
これに関連して、relate toの類義表現の refer toでも、-ing形と-ed/en形の両方が使われているという「言語事実」があります。
refer toの語義には、「言及する」以外に、
- 1 [A2] to describe or be connected to somebody/something (OALD)
- If a word refers to a particular thing, situation, or idea, it describes it in some way. (COBUILD)
がありますので、relateと同様にただ「関連付ける」だけでなく、ことばで表す要素が感じられるでしょう。
では、どんな環境では -ingが用いられやすく、どんな環境では-ed/en形が用いられやすいのでしょうか?
- statement / tweet / note / caption /question / headline
など、先行する核になる名詞の意味が「ことがら」の要素が強いと-ing形を取りやすいでしょうか?
その観点で再度、relate toを見てみましょうか?
最も頻度の高いcaseや、かなり頻度の高いmatterで既に、related toとrelating toの両方が使われていますので、refer toと同じ考え方を当てはめるのは難しそうです。questionやqueryでも-ing形ではなく related to の方が優勢です。
そうすると、やはり、relate界隈に何かあるのではないか、と思ったりするわけです。
ことがらの要素が強い名詞informationでrelateの類義表現を見ておきましょう。
relating to/related to に加えて、relevant to / relative to を含めて検索しています。
これは、一次資料に当たらないと何ともいえませんね。
relevant toの例
The family of a man murdered in a sectarian attack 35 years ago have asked police to hand over any information relevant to the case from electronic devices seized from a suspect arrested in connection with recent far-right protests.
The family of a man murdered in a sectarian attack 35 years ago have asked police to hand over any information relevant to the case from electronic devices seized from a suspect arrested in connection with recent far-right protests.
— Belfast Telegraph (@BelTel) 2024年9月25日
✍️ @AllisonMorris1 https://t.co/1DlY1gWSEr
35年前に宗派間の抗争で殺害された男性の遺族は、最近の極右デモに関連して逮捕された容疑者から押収した電子機器から、事件に関連するあらゆる情報を引き渡すよう警察に要請した。
relative toの例
ALEA is currently requesting that anyone with additional information relative to this crash to please contact the Mobile Highway Patrol Post at 251-660-2300.ALEA is currently requesting that anyone with additional information relative to this crash to please contact the Mobile Highway Patrol Post at 251-660-2300. https://t.co/Tx7KufpBcg
— NBC 15 News (@mynbc15) 2021年5月17日
ALEAは現在、この事故に関する追加情報をお持ちの方は、モービル・ハイウェイ・パトロール・ポスト(251-660-2300)までご連絡くださるようお願いしています。
誤用であれ、少数派であれ、その表現形式が使われたということは、そこにその表現を発した話者が存在したということを意味しますので、それはそれとしてしっかり受けとめたいと思います。
私は過度の単純化で軽々に結論を出そうなどとは思っていません。
ただ、その異なる語彙項目・表現形式が現れる生息域の違いは何なのか?
その語彙項目・表現形式を選択する人がたとえ少数であっても、その心理には何があるのか?
他とは違う何か特別なものがあるのか?
ということには少しでも迫っておきたいと思っているのです。
英語学習や英語教育に関心のある人の、何人に1人がこのブログに辿り着き、さらにそのうちの何人に1人が、このような「英語そのもの」の記事に目を通し、さらにさらにそのうちの何人に1人が、最後まで読んでくれるのかはわかりませんが、私は多分、今後もブログを更新し、英語表現そのもの、語義と生息域の話しをし続けるだろうと思います。
本日はこの辺で。
本日のBGM: One in ten (UB40)