Fluency presupposes accuracy.

祝日を挟んで、週末の授業。
進学クラスのみの4コマ。
1限の高1は、「オーラル」のコマだけれども、時制の総復習でGGBから問題を抜粋。解説はほどほどに、良質の英語と格闘。
いわゆる「現在完了進行形」がターゲット。wh-疑問文まで。
正解を書き込む前に音読で、スラスラ言えるのを確かめてから解答。今日は、高1にも逆L字の厚紙作成を指示しておいた。別に私のオリジナルではないが、左から右へと情報をチャンク毎に処理するための小道具としては良くできていると思う。
2限は高3のライティング。
GTEC Writing Training で評価・指導にあたる日本人メンター用の「観点別フィードバックコメント一覧」から、今回の範囲であるpersuasive passageを書くにあたっての該当箇所を読み上げ、メモを取らせる。この一覧はN先生とK先生の苦労の末に出来上がったもの。講座のシラバスやタスク自体も改訂したい部分が多々あるので、フィードバックの観点やコメントにしても、これで最終完成形というわけではないのだが、現時点では極めて良くできた枠組みだと思う。そのうちに、新たな展開が生まれることを期待。
4限が高2のライティング。
こちらは「定義」の続編。書き直しのフィードバックを経て第1回目のリバイズをして提出したものに、私のさらなるダメ出しのフィードバック。その朱書きを読ませながら、見直しのポイント、頭の働かせ方・頭の中の地図の修正、辞書の引き写しではなく自分で使いこなせるレベルの語彙の選択とそれに見合った構文の選択、などなどを一人ひとり指導助言。複数の辞書間の横断による比較検討、引き写しだけで終わるのではなく、今一度、自分自身の経験や実感をもとに「定義を生き直す」ことを求めています。
「保健所」の定義で、

  • the public go for a health consultation

という表現を使った生徒に対して、「あなたの使いこなせる語彙で、consultationっていうのは守備範囲のどのあたりにいる語ですか?」と問うて、言い換えを求めます。別の生徒は、「保健室」の定義で、

  • students can go to get medical help or advice

などという表現を使っているので、それを参考にして、自分と重なるように定義を生き直していくわけです。とてつもなく時間がかかり、効率の悪い、出口がなかなか見つからない、少人数教室でなければ許されないような授業展開ですね。語彙を易しくしたからといって、構文が簡単になるとは限らないのがさらに厄介なところ。
例えば、「階段」というお題に対して生徒が書いてくるのは、

  • a set of steps inside a building that the public can go from one level to another. But it is inconvenient for old people and a person with different abilities to use.

のくらいの定義・説明。
これに対して、

  • 「階段を上り下りする」といったばあい、 “go up and/or down” のあとに、stairsとかstepsと目的語を直接取ることができるのか?
  • 「上の階または下の階への移動で通る一連の足の踏み場」というような説明をする場合に、「踏み場を通る」での「〜を」にあたる部分は直接目的語でいいのか、それとも何か前置詞を必要とするのか?

というようなやりとり、辞書調べを経て、

  • a set of steps built between one floor and another that you use when you go up or down
  • a series of steps inside a building that you put your foot on when you go from one level to another

などという定義に至ることになります。
ちなみに、A. Roomの辞書によると、stairsとstepsは次のように定義されています。

‘Steps’ is the more general word, although most ‘steps’ are external ones, as those that from a flight, or a single ‘doorstep’. However, single ‘steps’ exist indoors as well, especially the ones that have to be minded when passing from one room to another---the underfoot version of ‘Mind your head’. Ladders have ‘steps’, and so of course do ‘step’-ladders, while a pair of ‘steps’ is not a ladder that has just two ‘steps’ but a ladder that has corresponding sides (like a pair of scissors) and which does not need to be leaned against a wall. ‘Stairs’, by contrast, are almost always fixed indoor ‘step’ ion a ‘staircase’, and a single ‘stair’, on which children and animals sometimes like to stop and stare, is one of many on a complete set. The only common use for ‘stairs’ out of doors is as a landing stage by a river, as Horselydown ‘Stairs’ and George’s ‘Stairs’ on the Thames in London just below Town Bridge. (p.233, Dictionary of Confusing Words and Meaning, Routledge & Kegan Paul, 1985)


「エスカレーター」の定義を生き直したことで、身近な補足説明の必要を感じたのか、「小さな子どもの事故」に言及した生徒がいたので、accidentという名詞を先行詞にした際の関係詞の使い方 (accident whereとaccident in which) をCOCAで確認し、用例を示す。私自身の好みとしては、accidentの場合は in whichを使っているように思う、とコメント。話しことばなら、関係代名詞や「同格」のthat節などに頼らず、分割してリズム良く畳みかければいいのだけれど、構文の難易度・複雑性に対応するなら、書きことばの文法も理解だけではなく、習熟しなければ。
corrective feedbackに関しては、Truscott以来、研究者は喧しくやっているけれども、極端な話し、私はそのfeedbackによりライティングのaccuracyが向上しなくても一向に構わない。そのタスクで終わりじゃないのだから。この一連の「定義」の課題で求めているのは、語彙を易しく言い換えたら、それに伴って満たさなければいけない一定の文法項目、構文があるのだ、ということに気づいて、その習熟に励もうという意識を喚起することである。Accuracy comes and goes. と喝破したのは、Michael Lewis だったか Bartram & Waltonだったか。どんなに優れたタスクをお膳立てしたところで、そこで「気づき損なう」者は必ずいる。また、そのタスクで「気づき済み」の項目が、習得され、その後も失われないという保証はない。「気づき損なった」時、「気づいたけど忘れてしまった」時に、種明かしの終わったその同じタスクをもう一度課すことは出来ないのだから、仕切り直しのための何らかのレファレンスを用意してシラバスを進むのが教師の務めだろうと思う。そうは言いつつも、John Bitchener & Dana Ferrisの、

  • Written Corrective Feedback in Second Language Acquisition and Writing

を注文してはいますけれど…。

1限の内容など忘れた頃に7限で再度高1クラス。
規則動詞の過去形・-ed/en形の綴り字&発音マトリクス完成タイムトライアルから。ストップウォッチ片手にペアでタイムを競わせつつ、間違いやすいものを観察。一定の盛り上がりを見せたところで、stripsにある動詞を『グラセン和英』の巻末にある基本文型一覧にも収録されているかどうか確認し、重要度と例文を実感してもらう。
残り時間は、GGBからの抜粋で、いわゆる過去完了の演習。番付表の確認につづいて、最後は、『フランダースの犬』からの一場面で過去完了が使われている場面を板書。イメージを浮かべられるかを問うてチャイム。

本業は一休みで、帰宅。
この週末はグランプリシリーズの中国大会。
まず、金曜日は男女のSP。
長洲未来選手はようやくしなやかなリズムが出てきた感じ。今季はちょっと体が重いかなと思うけれども、どう考えても、米国の代表じゃないとおかしいでしょう?GPシリーズにこだわらず、世界選手権に照準を合わせて欲しいところだけれど、去年のことがあるのでねえ。
ロシアのもう一人のシニアデビュー、15歳、ソトニコワ選手は緊張からかオープニングのコンボで転倒。その後もスピードに乗れず。この子は器械体操とかバレエとかやってたのだろうか、体の動き方が普通じゃないように感じた。
個人的に飛躍を期待していたマカロワは今大会も調子が出ず。軸が細く取れていないので、スピンもジャンプも今ひとつ。ロシアはジュニアから凄い選手がどんどん上がってくるので大変だろうなぁ。
男子は、羽生選手が成長の跡を見せてくれました。暫定二位。フリーに期待。
明けて、土曜日は明け方から雨。晴耕雨読ではないけれども、読書三昧。
午後になって、パンの仕込みの合間の時間を持て余したのか、妻が何か映画はないの?というので、『野生のエルザ』のDVDを貸す。私はその間に仮眠を挟んで、一冊読了。

  • 皆川三郎 『修辞法と英文構成』 (竹村出版、1969年)

当然、絶版の古書で、前オーナーの書き込みがありますが、この書き込みがまた良いところに書いてあるわけです。この方は、英語のセンスが良かったんだろうなぁ、と思わせてくれます。

GPシリーズ中国大会は、女子は順当にコストナー、長洲の順だったが、その後はミスをした者が落ちていく展開。ソトニコワは精彩を欠いたが、それでも3位に留まる。マカロワは7位。
男子は、当然表彰台を争うと思われていたガチンスキーと羽生選手が大きなミスで脱落。羽生選手は気迫漲る演技だっただけに、コントロールができなかったのだろうか。序盤での4回転や3回転コンボの影響がこれほどあるのだと考えると、パトリック・チャンの強みである「スケート技術」がいかに凄いのかがわかってくる。ジャンプでスクワットをしたり、スケーティングで漕いでいてはダメなのだ。「滑る」ことが高い次元でできるからこそ、高難度のジャンプを入れることができる。燃費が良いからこそ、ここぞという時に爆発的な加速ができる。羽生選手も筋力はこれからが充実してくる年齢なので、体重管理としなやかさとを両立させつつ、「滑る」技術をさらに研ぎ澄まして欲しいと思います。ケガから復帰の殿はSP, LPとも不本意な演技だったものの、二位で表彰台へ。勝負はやってみるまでわからないものです。ただ、今大会、フリーだけの出来で見れば、地元中国の宋楠が1位という部分を地上波では全く取り上げていないのが気になりました。宋楠はオープニングが4T・3Tのコンボ、直後に4Tそして3+と序盤でスコアを稼ぎまくる演目でした。その宋楠でさえ、154.03点。カナダ大会のチャンの出した170.46点の内訳を見ると、エレメントで80点台後半、プログラムコンポーネントでも80点台を揃えておかないとチャンの一人勝ちということになりかねません。チャンはあれだけミスをしていながら、プログラムコンポーネントは87.64点。違う大会での違うジャッジとはいえ、これだけプログラムコンポーネントの保険があれば、エレメントでは思い切りできるでしょう。
ファンとしてはこのGPシリーズでの得点や順位に一喜一憂せず、選手が自分のプログラムをいかにミスなく、高い次元で遂行するかという部分をしっかりと見て、世界選手権での雌雄に注目したいと思います。次回は、NHK杯。やかましい実況や、人間ドラマを煽る応援団はいないことを期待します。

本日のBGM: Don’t be sad (青山陽一 with 鈴木慶一)